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例の黒服…だったか。
理事なんかとは比べ物にならないほど危険な雰囲気のする大人から情報を貰い、
軽く装備の検討をしながらその足で俺はある所へと向かっていた。
情報の中にあった先生との戦闘データ…。
データ上では圧倒的な戦力差であるのにこちら側は先生に大きな被害を一切与えずに”敗北”している。
先生を知る前の俺だったら信じられなかったと思うほどの内容だが、詳細は外部のへの委託の関係で不明となっている。
これから先生を相手取るにあたってたとえ直接的な戦闘はしないとはいえ少しでも情報は集めておくべきだ。
指示の癖や傾向…なんでもいい、少しでも生存率をあげなければならない。
ならば直接話を聞くしかないだろう、例の委託された先…
”便利屋68”とやらに…。
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便利屋68、恐らくは俺と同じようなフリーで仕事を受ける何でも屋のようなものだ。
ブラックマーケットでもほんの少しだけ聞いた覚えがある、
なにせ”生徒”の何でも屋だ、薄暗い企業側からしても何かと使い道があるのだろう。
普段は”生徒”なんざに自分から会い行くになんて絶対にしないが…今回は事情が事情だし…
それに俺と同じように金で動く相手ならばやりようがある。
__あったぞ、これだな。
書類にあった便利屋の連絡先を見つけ手でなぞる。
プルルル…プルルル…
ガチャ
「…もしもし、便利屋68…であっているか?」
「依頼をお願いしたい、あー…そう難しいことじゃないんだが…話を伺いたいんだ。先生についての。」
「ああ、すまない。俺はアシヤと呼んでくれ。それで、どうだろうか?」
依頼を通して情報を集める。
この手の情報は情報屋にも売っていないし、1度聞いたなら流せば俺にも依頼料にならん程度の金は入る。
端金で死のリスクを減らせるなら安いもんさ。
その後、やけにテンションの高い嬢ちゃんから今日のアポを取りその足でアビドスにあるという便利屋の事務所へと向かった。
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便利屋事務所、綺麗かつかなり良い立地にあるそれは利益を稼げている証左のように感じる。
ピンポーン
「あー、依頼したアシヤだが…。」
ドタドタドタドタ!
ガチャ!
「…ふふ、いらっしゃい。歓迎するわアシヤさん。」
なにやらすごい足音とともにドアが開いたかと思えば、
開け放たれたドアの凄まじい勢いとは裏腹にクールな態度で俺を迎えるなんだか見覚えのある赤髪の嬢ちゃんがいた。
見覚えのある記憶の違和感に身を任せ嬢ちゃんの顔を観察するとふと気づく。
___あれ?これ、闇銀行で行員に詰められてた経営難の嬢ちゃんじゃないか?
あんな立派な事務所から出てくる人物としてギャップがすごい様に感じてならないが、生徒を怒らせていいことはないので心の奥底において話をする。
「あんた…あー…いや、なんでもない。それで、あんたが便利屋68の社長さん…であってるか?」
嬢ちゃんは胸を張りながら話す。
「ええ、いかにも、私がこの便利屋68の社長。陸八魔アルよ。これからよろしくお願いするわ!」
どうか違ってくれと思いながら聞いた質問はどうやらあっていたらしい。
___俺の記憶が正しければ、企業を名乗るくせに金の管理も事業の見通しもできんだの散々なやつという印象があるんだが…大丈夫か?
ペーパーカンパニーだのなんだの酷い言われようだった記憶が頭をよぎり一抹の不安をかかえる。
…まぁいい、俺は情報を聞きに来ただけだし…というかそろそろいい加減…
「あー…とりあえず、中に入ってもいいか?」
嬢ちゃんはハッとしたような顔をして慌てた様子で俺を中に入れてくれた。
なんとか自己紹介もそこそこにようやく事務所の中に入ることができたようだ。
「アルちゃんおそーい!何話し込んでたのー?」
「な、す、すこしアウトローとして話をしようとしたら部屋に入れるのを忘れてただけよ!」
「…流石にはしゃぎすぎじゃない?」
「あ、あれが運び屋…アル様…大丈夫でしょうか…。」
事務所の中に入るとそこには赤髪の嬢ちゃんの他に三人生徒がいた。
それぞれ見つめる視線は様々だが一際目立つのは一際小柄な嬢ちゃんの俺を警戒するような目と赤髪の嬢ちゃんのとてもキラキラした目だろうか。
……なにか違和感があるな、これは…。
「こんにちは…今日依頼していたアシヤだ…。」
ちらりと嬢ちゃんらに目を向けて話を続ける。
やはり…。
「…何故か既に俺のことを知ってるみたいだが、普段はブラックマーケットで運び屋をやっている。よろしくな。」
赤髪の嬢ちゃん以外の生徒が少し驚いたような顔をする。
「…本物みたいだね…ブラックマーケットで依頼受けた時に何度か名前を聞いたからもしかしてとは思ったけど…。」
「くふふ、本物のアウトローの運び屋さんがうちに依頼に来るなんてねー?
掛けてきた電話番号を見た時はまさかと思ったけど…
ほんとに来ちゃったよ!」
…そういえば仕事用のから掛けてたっけな…。
先生へのトラウマか黒服とあったことによる動揺によるミスか…まあ仕方がない。
それに誤算はそれだけじゃない。
名前と電話番号から連想されるほどどうやら俺が思っていたより俺の名が知れていたようだ。
「まぁ、あそこで長生きしてる運び屋なんざ俺くらいしかいないし、同業なら情報も入りやすい…当然といやぁ当然か…。」
正直、知識やらなんやらもブラックマーケットの一住人程度で大した実績もないから知名度なんざほぼないはずだが、
やはり同業なのが大きいだろう、依頼を受ける企業が被っていれば名前を聞く可能性は上がる。
実際俺も便利屋については依頼を受けた時にそれとなく聞いたことあるしな…。
「まぁ知ってるなら話が早い、今日はよろしく。
名刺とかいるか?依頼の時見してくれたら1割引にしてやるよ。」
そう言って財布から名刺を取り出す。
いつも財布に忍ばせているものだがせっかくだからな…
「えー?あっくんしれっと宣伝しに来てるしー!今日の依頼ってそんなんだっけー?」
「悪い悪い、フリーだとこういうマメなのが大事なもんで…。」
そう言って名刺をしまう…が、なんか赤髪の嬢ちゃんだけ欲しそうに見ていたので1枚だけ渡して残りをしまった。
「こ、これがアウトローの…。」
「…なぁ、この嬢ちゃんはなんなんだ?」
「くふふ、あっくんはアルちゃんの好きなアウトローだからねー、ワクワクしてるんじゃないー?」
「そんなに売れた名前のつもりはないが…それにアウトローなんて良いものじゃねえしな。」
「…まぁ、今日はちょっとテンション高いけど、うちの社長はいつもあんな感じだから気にしないで。」
どんな社長だ。
つい先刻まで俺と同類、同業だと思ってたのがアホらしくなってくる。
「まぁいいさ、依頼料分の働きをしてくれりゃあそれで文句はない…。」
「…はっ!そ、そうね、今日の依頼があるものね!」
「…たしか、直近での戦闘の話を伺いたい…だっけ?」
…あぁそうそう、先生の話…と初めから言うと警戒されかねないので少しぼかして伝えていたんだったか。
「ふふ、任せてちょうだい!」
アルと呼ばれていた嬢ちゃんは胸を張りながら立ち上がり話す。
「室長のムツキに課長のカヨコ、ヒラのハルカ…!」
「そして社長のこの私!みんな一流のアウトローな便利屋として色んなことをやってきたわ!なんで聞いていいわよ!」
一人一人指をさしながら自信満々に話をする嬢ちゃんはやっぱり異様にテンションが高い。
「…じゃ、単刀直入に。アビドスでの学園襲撃…その時のことについて話を聞きたい。」
「!…よく知ってるね。まだそんなに経ってないはずだけど…。」
課長と呼ばれていたカヨコの嬢ちゃんが反応する。
「まぁ、耳が早くなけりゃあんな街で飯を食って行けねえからな。」
追求されても面倒なので適当に誤魔化す。
「どうしましょうムツキ…すごくアウトローっぽいわ!」
「好きだね~アルちゃんも~。」
「アル様…楽しそうですね、えへへ。」
「…。」
「…ごめん、いつもはもうちょっとちゃんとしてるはずなんだけど…いや、うーん。」
「…まぁいいさ、それより。例の戦いは凄まじい戦力差があったと聞いてたが…。」
「…うん、そうだね。単純な傭兵の数だけでもかなりの差はあったかな…元々アビドスは生徒が少ないし…。
…でも私たちは…。」
カヨコが話す横に割って入るように小柄で笑みを浮かべたムツキの嬢ちゃんが話をする。
「いやー!上手いこと先生にしてやられちゃったよねー!」
「…まぁ、そうだね。そこは間違ってない。」
カヨコの嬢ちゃんはムツキをじーっと見ながら話す。
「はい…アル様に任せてもらっておきながら…うう、死にます…。」
なるほど、見間違いかと思うほどの数の差だったが事実だったようだ。
しかしそんなにもすごいものか…アビドス、そして先生ってやつは…。
「そうそう!私たち便利屋と大量の傭兵を前にすごい指示で捌ききっちゃったのよ!まさか定時まで耐えられるなんて…。」
…ん?
なんか今赤髪の嬢ちゃんが聞き捨てならないことを…。
「あ?定時?どういうことだ………
まさか雇われの傭兵共は帰ったのか?途中で?」
「あ…。」
はぁーっとため息をついてカヨコの嬢ちゃんは話す。
「…まぁ、そういうこと。あの先生の指示なら分からないけど…さすがにアビドスの極少数の生徒であの量の傭兵を全部やっつけるのは無理がある。」
「いやー、あの時はこっちも事情があってねー?あんまり長い時間雇えなかったんだよねー!ね、アルちゃん?」
「う、うぐ…。そ、そうね…。」
話を振られた赤髪の嬢ちゃんはバツが悪そうにあさっての方向を向く。
なるほど、そういう事か…とはいえ、あの数的不利の状況で時間切れまで粘れるのは流石ってところだな…。
「…事情は理解した、じゃああとは先生やアビドスの連中の動きのくせとかわかるか?なんでもいい、小さなことで構わない。」
俺がそういうと嬢ちゃん達は目を合わせて話し始める。
「それで言うなら…」
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「…まぁこんなところかな。」
メモを片手に大まかな使われた戦術や動きのくせ、役割を教えてもらい話を終える。
「どう?役に立つならいいんだけど…。」
「いやいや、大助かりさ。ありがとよ。」
「…そう……。
ところで、いや、仕事だし深く突っ込むつもりはないんだけど…。」
カヨコは聞きずらそうにしながら話す。
「やっぱりこんなこと聞くってことは、アビドスの奴らとやり合うの?」
…まぁ分かるか、恐らくは俺のバックにいる依頼主のメカ野郎のことも察しているだろう。
「答えられない。」
とはいえ、雇い主の情報を漏らす訳にも行かない。
今、金を払っているのはこちらだ。答えてやる義理もない。
「…分かった。」
「そうか、話が早くて助かる。…今日は貴重な情報ありがとよ。依頼料は口座に振り込んどくから名刺の電話番号にでも…。」
依頼料分の情報は聞けたのでそう軽く話だけして玄関へと向かう。
「えー?あっくんもう帰っちゃうのー?あっくんの話も聞きたかったのになー」
「だめよムツキ、アウトローは忙しいんだから!…これ、私たちの連絡先よ!何かあれば連絡するといいわ…ふふ、利害が一致すればその時は…。」
…正直依頼以外で個人的にこうやって生徒と関わりを持ちたくないのでクソいらないのだが…。
「…そうか、ありがとう。貰っとくよ。」
…こいつらはあの先生から”逃げ切っている”。
いや、俺のような弱小ボディとは異なり生徒として身体能力が高いということもあるが、話を聞いた限りそれを抜いてもこいつらはそこらの生徒よりひとつ頭抜けた実力者に思える。
…傭兵共によってアビドスの連中が弱っていたり、そもそも追われる理由がそこまでなかったり俺とは状況が異なる部分もあるが、
それでもあの先生から逃げ切って今ここに立っているのは結構すごいことのように思える。
まったく、俺の逃げ足への自信が崩れちまうな。
あの銀行で散々な言われようだったあの社長がこの便利屋を何とか保てているのはもしかしたら個々の強さゆえなのかもしれない。
さて、そんな実力者の生徒共のこいつらを下手に敵に回すのは自殺行為もいいとこだ。
社長さんが腹ん中じゃ何思ってるのか知らんが、表面上だけでもにこやかに務めるのが丸いだろう。
「じゃあな、あんたらも何かあれば依頼するといい…。」
そうしてアウトローな便利屋を名乗りにしてはやけに字の綺麗な連絡先の記載された紙を受け取り俺は帰路に着いた…。
にしても…大した話はしてないはずだがやけに疲れたな。
便利屋、ねぇ…。
俺から言わせてもらえばごっこ遊びにしか見えない。
他の連中はわかった上でのように感じるが、
これみよがしに貼られた一日一悪も、社長…アルの嬢ちゃんの発言も、現実を知らない”生徒”らしいものに感じる。
「ま、でも、当人たちには俺やガラクタどもと違って明確な力があるしな…。」
現実を知らなくても、夢を見ても、騙されようとも…実際には悪事なんでできる程の覚悟なくても。
強さがあれば全てねじ伏せられる。
だけど、だからこそ、
俺は、俺らは何もかもなかったから考えるしかないんだ。やるしかないんだ。悪もアウトローも、人の道をはずれたことも。
真っ当に手段を選んで夢を見たまま綺麗に生きられるなんて、
嬢ちゃんのような限られたひと握りの力を持ったやつの特権でしかないんだ。
___そこんところをよく分かっているのかね?あの嬢ちゃんは。
地面を見らりと確認し、水たまりに反射する自分のヘルメットを踏み潰して我が家のあるブラックマーケットへと足を進めた。
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プルルル、プルルル…。
帰り道。
便利屋の事務所を出て少しだろうか。
ここ最近の雨のせいでギシギシと嫌な音が鳴る左足の修理について考えていると仕事用の携帯から着信がなる。
___最近は治安の悪化のせいで少なかったが、俺個人への運び屋の依頼か…?
さっきの便利屋の件といい俺の名も捨てたものでは無いのかもしれないと思いつつ電話に出る。
ピッ
「もしもし、こちら運び屋アシヤです。ご用件は?」
『”………お時間、よかったかな?君と話をしてみたくてね、アシヤくん。”』
電話に出た瞬間、背筋が凍る。
___これは、この声は。
俺はこの声を知っている。
心臓が早鐘のようになり、動揺も隠せぬまま口から声が漏れる。
「あ、あんた…シャーレの先生、か…。」
『”…声だけでよくわかるね…。正解だよ。”』
『”さて、もう一度聞くね。アシヤ、今時間はあるかな?”』
手に持った携帯は既に電話に出たはずなのに、手汗とともにガタガタと震えていた。
ちなみにアシヤくんのブラックマーケットでの知名度はその辺の一般人からすればほぼ0で、一部の企業の人間や業界人は少し知っている人もいるというレベルです。
生き残るために名前をコロコロ変えたり消えたりしてきたので当たり前といえば当たり前かもしれない…。
先生の性別はどちらがいいでしょうか?
-
男先生
-
女先生