今回はファデュイ襲撃。楽しんでいただけたら幸いです。
ドゥリン討伐から一夜明け。徹夜の作業を終えてドラゴンスパインを後にし、モンド城まで戻ると祭が開かれていた。祝勝会というやつだろうか。あ、もちろん長司の格好はやめて白い装束に真白空我真君の面を被ったハクアの格好に戻っている。
「……人が仕事してたのにいい気なもんですね。でも、大丈夫です?……
「怖いけど……私は、ご主人様の眷属だから!」
「いやあなたも魔神ですよね?」
濃い紫色の髪を長く伸ばし、リネットの子供時代に着ていたフリフリの正統派メイド服を身に着けた*1少女の名はヴィー。Venomの頭文字と、彼女を見ていて思い出したビビアンから付けたダスタリオの新しい名前だ。ダスタリオの名は騎士団に知られてるから偽名をつけざるを得なかった。見た目はまんま、ゼンレスゾーンゼロのビビアンである。塩の像で造形を見せて擬態してもらったのである。なんで名前がビビアンまんまじゃないのかというと、フォンテーヌに同じ名前のバケモノがいるからだ。同じ不定形だから共通点はあるけどもね。そもそもダスタリオって名前は私のヘウリアみたいないわゆる魔神名だから個人名があってもいいだろう。
「私は人間にも見捨てられるぐらい弱いし……怖いよ?」
「璃月では民と言うのは魔神や仙人に蹂躙されるか庇護されるかの存在でしたが……どこの生まれなんです?」
「たしか、レムリア…?私を崇めてたのは元々その土地に住んでた人達みたいだけど……」
「ああ、フォンテーヌ……」
多分、その先住民は
「自信を持ってください。私の眷属なんでしょう?そんなおどおどしてたら逆にばれますよ」
「で、でも……」
「なら、キャラを強くしてみましょう。なのです!なんて語尾につけてみるのはどうでしょう?」
「こ、こうなのです……?」
「グッド。それなら貴女をドゥリンだったなんて誰も思いませんよ」
お手本をしながら提案すると、両拳を握って口元を隠すように照れるヴィーに、思わずサムズアップした。何を隠そう。原神の最推しは綺良々で、ゼンゼロの最推しはビビアンである。スタレはフォフォね。シッポ人格フォフォ、いいよね……。
「あ、お帰りなさいハクアさん!宴に参加せずどこに行ってたんです?」
「俺達も交代が来たら参加するつもりです。おや、その子供は…?」
「お疲れ様です、スワン、ロレンス。彼女は他国からの旅行者の様で、龍災に巻き込まれて洞窟に閉じこもっているのを見つけたので保護してきました。そうですね?」
「は、はいなのです!」
私の目配せに、ブンブンと過剰に頷いて見せるヴィー。その様子に憔悴しているとでも勘違いしたのか、門番2人は快く入れてくれた。さて、ジンに報告しにいかないとなあ。私、長司としてほとんど関わってたから外で色々調査してたことになってそうだし。原作通りに……もうだいぶ崩れたけど原作通りにいくなら、もう多分ウェンティから神の心を奪ってファデュイも撤退しているはずだし、問題ない、はず……?考え事していると、服の裾を引っ張られ視線を向けると、目を輝かせながら噴水広場を見つめているヴィーがいて。
「ね、ね!ご主人さま!あの人達は何で歌って踊ってるのです?」
「それは、祝勝会だと思いますが……もしかして、お祭りも知らない?」
「おまつり……なのです?」
首を傾げるヴィー。あまりに不憫に思えてきた。私ですら自分の都市で年に何回か祭はしてたっていうのに、ヴィーもといダスタリオを神と崇めてた連中は利用するだけして祭事とかやらなかったってこと?ううむ、こう言っちゃなんだがフォンテーヌの系譜を感じる……。
「祝い事……もわかりませんか。そうですね。嬉しくて楽しいことがあったから、みんなで騒いでるんですよ。特にモンドは酒と詩が自慢の自由を謳う国ですからね。お酒飲める口実ってだけで喜んでそうです」
「よくわかったな、ハクア。大団長から許しが出たと、騎士団も騒いでいるんだ。嘆かわしいことにな」
すると、ウェイターの様に御盆に乗せたワイン瓶を手にしたディルックがやってきた。ディルックは私とヴィーに視線を向けると、なにか言いたげな様子。ヴィーは自分を攻撃してきた一人だとわかったのか、私の影に隠れて萎縮していた。
「……君は、緑の彼女の様になにか訳アリな女の子を連れてくる趣味でもあるのかい?」
「失礼な。可愛い女の子は好きですが、そんな趣味はございません!」
「……まあいい。ハクア、君に免じて、問題を起こさないのなら……君を信じよう」
「ありがとうございます?なのです」
「ほう。ハクアより礼儀があるらしい。見習ったらどうだろう」
「おや、まだボコボコにされたの根に持ってます?お坊ちゃまだからって訓練で手を抜く方が失礼では?」
「君、そういうところだぞ」
ディルックは呆れながら行ってしまった。首を傾げながらも騎士団に向かおうとすると、騎士団本部横の高台から手を振る人物が見えて。騎士団に向かうのは後回しにして、彼のもとに急ぐ。
「こんにちは。どうしたんですか?アルベド」
「やあ。長司さん。彼女が偽ドゥリンかな?初めまして、僕はアルベド。錬金術師さ。ドゥリンとは……厳密には違うけど、兄弟みたいな関係かな?」
「ご、ご主人さま!?」
開口一番、私の隠してること全部言い出したアルベドに、慌てて周囲を見渡し誰も近くにいないことを確認する。心臓に悪い!!
「な、長司ってなんのことです?」
「推理は簡単だ。誰にもわからなくなる認識阻害……あのお面の呪いの類かな?たしかに誰だかはわからないけど、君が滞在中に騒ぎが起きて駆けつけない時点で察しはつくさ。わざわざ普段使わない両手剣を握ってたみたいだけど、ガイアと斬り合えるのは中々いない。ああ、多分ガイアも気づいてたと思うよ?ディルックをかつて完封した君の腕前を自分で確認したかったんじゃないかな?」
「こ、この子は偽ドゥリンではなくヴィーですよ?」
「僕はドゥリンと近しい存在だ。心臓とほぼ結合していたんだ、気配の残滓ぐらいわかるさ。でもすごいね、髪色以外はほぼ人に近い姿に擬態できるなんて……服は用意したものかな?もしかして、君もレインドットの創造物だったりするのかい?」
「い、いやあの……その……」
「……参りました。他言無用でお願いしますよ」
「もちろんさ。あ、ジン団長に報告に行くんだろ?ならその間、彼女を僕に預からせてくれないかな?擬態を完璧にする手伝いぐらいはできると思うよ?」」
ニッコリ笑顔のまま、そう提案してくるアルベド。ヴィーは涙目で見上げてくるが、正直まだ驚いたら擬態が崩れそうになるし不安なところはあるから渡りに船だ。アルベドなら信用………信用……信用、できる……?それに、ちびドゥリンの件で役に立つかもしれないし。
「わかりました。ヴィー、この人は悪い人じゃないです。なんなら厳密には人間でもないです。なので、私が帰ってくるまで彼の言う通りにしていてください。いいですね?」
「ご、ご主人様が言うならわかったのです……」
ご主人さまとしてはあっさり言う事を聞くのが心配でたまりませんわよ。そんなこんなで自室に向かったアルベドにヴィーを任せ、私は執務室に向かうもジンは不在だった。
「このタイミングで不在……あれ、もしかして?」
もしかして……ストーリー、終わってなかったりする?原作ではトワリンを倒して浄化し自由にさせた後、壊れた【天空】のライアーを返却するというイベントが発生する。ちなみにバーバラ初登場はここだ。それに同行したのが旅人とウェンティ、そしてジンだったはずだ。で、その直後に旅人とパイモン、ウェンティだけで大聖堂の外に出た際にファデュイ襲撃が……ああ、もう!!
「残業反対!!」
ドラゴンスパインにいる間に全部終わったと思ってたのに!なんならシニョーラからは自分たちの邪魔をするなとまで言われてるけど!偶然通りがかったなら助けないわけにもいかねえよなあ!?とか言ってたら大聖堂の前から複数のシャボン玉と冷気が空に吹き散っている光景が見えた。もう、始まってる!!
「ふーん、これが「神の心」?集めているチェスの駒とは程遠いわね?」
「それは多分、君にセンスが……ないからだと思うよ」
「ロザリーにセンスがないって?」
駆け付けた先に見えたのは、異様な光景。まず、原作でいたはずの取り巻きファデュイたちがおらず、そこにいるのは蹲るウェンティと、彼から奪った「神の心」を手にしたシニョーラ、そして巨大な泡に閉じ込められた蛍と、ちっちゃな泡に入れられて風船みたいに飛びそうになっているパイモン、そして右掌に泡を形成して、それをウェンティにぶつけんとしているルネウだった。私は咄嗟に手を出そうとして、塩の武器は無効化されるのを思いだして謎空間に手を突っ込み、適当に引っこ抜いたそれを投擲する。
「っ!?」
「そこまでです!」
投げつけたそれは、ルネウが放とうとしていた泡に炸裂、破裂。途轍もない衝撃が秘められていたのか、ぐにゃぐにゃにねじれた鉄くずになってしまったが、持っててよかった、そこらへんで拾った鉄尖槍*2。私は魔神戦争時代から愛用している、かつてシトリウスを倒して一応の免許皆伝となった際に、モラクスから祝いの品としていただいた、彼が穢れのない翠玉を磨き出して佩剣した片手剣「磐岩結緑」*3を構えてシニョーラとウェンティの間に立つ。塩を使わず戦うなんて何年ぶりだろうか。ぶっちゃけ、能力使わないと素手の甘雨にすら勝てなかったのだけど。
「あら、汐風騎士のハクアじゃない。バルバトスがやられてようやく出てくるなんて騎士失格ね?顔を見せるなと言わなかったかしら?ルネウ」
「任せて、ロザリー…!」
泡をグローブの様に両手に纏い、距離を詰めてくるルネウ。咄嗟に剣を振るって遠ざけようとするも、いつの間にか目の前まで迫っていた小さな泡が破裂。目つぶしに怯んだところに、彼女の放った右ストレートが放たれる。刃で受け止めんとするも、恐るべき表面張力で刃を押しのけて、衝撃が剣身を通して襲い来て、ウェンティを巻き込んで殴り飛ばされてしまった。やっぱり、能力の相性とか関係なく普通に強い!能力でゴリ押してた今までのアトラスとかシトリウスとかエリゴルス、グレメリーにダスタリオとかと全然違う!
「ぐうっ…!」
「無傷だなんて、生意気ね?」
掲げられたその手に巨大な泡を握り、叩きつけてくるルネウ。今度は剣で防ぐと同時に割れるも、内包されていた衝撃波が吹き荒れ、私は大聖堂の壁に叩きつけられた。今気づいたが、大聖堂の大扉が恐らくシニョーラの氷で閉ざされている。中のジンたちが異変に気づいても横槍させないようにしてたか、厄介な。
「ウェンティ、ハクア……!」
「あら?」
すると、蛍が泡の中で風元素を大爆発させたのか泡を破壊し、満身創痍で降り立ち剣を構える。間髪入れずルネウの放つ小さな泡の弾を斬りつけ……ると見せかけて、泡に衝撃が内包されていると判断したのか、剣の腹に泡を通して流すように受け流しながら懐に飛び込む蛍。面食らっていたルネウの腹に繰り出される……はずだった一撃は、氷塊で防がれてしまった。シニョーラだった。
「ロザリー、ボクはまだやれるわ」
「それ以上やったら我慢できなくなっちゃうでしょ。…いいわ。「神の心」を手に入れたもの、もう用はないわ。私達がやった物的証拠は何もない。馬鹿騒ぎしていた騎士団もようやく気付いたみたいだし、来る前に帰りましょう。ルネウ」
「わかったわ、ロザリー」
「待って…!」
興奮して泡を纏った掌を蛍に叩きつけんとしていたルネウを窘めて、泡を用いて自分たちを透明化させ、去っていくシニョーラ達。蛍は止めようとするも、目くらましの泡で怯んでしまい、完全に去ってしまった。してやられましたね……。
「生きてますか、ウェンティ」
「……なんとかね。神の心が無くても、まあ困らないかな?」
「ごめんなさい、私……【淑女】が一緒に戦ったからって、油断してた」
「それ言うなら私も今更来ておいて、いいところなく負けてるんで蛍よりひどいですよ。それより、あれいいんです?」
そう言って上を指さすと、泡の中でグルグル回って気持ち悪くなっているらしい非常食がいて。
「たーしーけーてー……たーびびとぉー……」
「パイモン!?」
慌てて壁を登ってパイモンを開放しようとする蛍。そうしているうちに氷が解けて、ジンの馬鹿力で扉がこじ開けられてジンと中を警備していた騎士団、バーバラも出てきた。
「何事!?い、今治すからね!」
「ハクア、いったい何が……」
「あー……証拠はないんで訴えるのは無理です?」
「は?」
ヴィーのことも話さないといけないのに。これから、どうしますかねえ。
実は能力の相性関係なく普通に強いルネウさん。自分の能力を最大限使う戦闘センスはヘウリアにも匹敵します。
ダスタリオ改め、ヘウリア初めての眷属「ヴィー」登場。見た目はゼンゼロのビビアンです。アルベドもこれには興味津々。
次回は……これもアンケートにしますかね。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
次回は……
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