ドゥリン戦の時系列のフォンテーヌの話。楽しんでいただけたら幸いです。
西風騎士団、ファデュイ、アビス教団が手を組んでドゥリン・ダスタリオを討伐したその日の朝。早朝のフォンテーヌ廷を歩く、一人の少年を連れた男装の麗人がいた。まだ薄暗く人通りは少ないが、それでも朝から仕事している人々の視線を集める美貌は常人離れしていて、朝日が差し込む様はまるでスポットライトを受けている様だ。フォンテーヌ名物たる舞台の女優にも思えるが、フォンテーヌ廷の人々は彼女が誰かを知っている。故に気さくに挨拶し、美女もまた気さくに返事を返す。開店前の往生堂フォンテーヌ支店に訪れた二人は、取り出した合鍵で開錠し中に入った。
「おはよう、クリーヴ。お邪魔だったかな?」
「あ、ペルヴェーレ!おはよう!約束通り、手伝いに来てくれたのね!」
「ペル姉さん!それにフレミネも!いらっしゃい!」
「ん。見て、ペル姉。今日のために千織さんに仕立ててもらったステージ衣装」
そんなペルヴェーレとフレミネを出迎えたのは、長い緋色の髪を三つ編みに編み込んだものを揺らし普段着である青色のワンピースを身に着けた童顔の女性、クリーヴ。さらに赤を基調としたステージ衣装とシルクハットを身に着けた少年リネ、緑を基調としたステージ衣装を身に着けシルクハットを手にした少女リネットが自分たちの衣装を見せつけた。
「ああ、綺麗だ二人とも。記念すべき日にふさわしいよ」
「うん、僕もそう思う…!」
「でもいいの、ペルヴェーレ。約束しておいてなんだけど、ファトゥスとしての仕事は……」
「ん、たしかに招集命令は出されていたが……私にとってはこちらを優先して当然だ」
「さっすが私のペルヴィ―!」
キリッと決め顔でドヤるペルヴェーレに、クリーヴは満面の笑みで抱き着いてペルヴェーレも満面な笑みで受け止めて抱き返しているが、子供たちは呆れ顔だ。堂々とサボってきたと言ってのけたこのペルヴェーレ、スネージナヤの執行官でありながらフォンテーヌ廷では、いろんな意味で有名人だ。数多の女を堕とすもクリーヴとのいちゃいちゃっぷりを見せつけられて撃沈し、いつもは冷静沈着なのにも関わらず身内が絡むと真顔でデレるおもしれー女として定着していた。逆にクリーヴはペルヴェーレが絡まなければしっかり者の看板娘として有名だった。
「いやいやいや。それで氷の女皇に目を付けられたらどうすんですか」
そこに、奥の居住スペースからのそのそと顔を出したのは、寝不足なのか不機嫌そうな白髪の女性。今現在、モンドで奮闘中のヘウリアと瓜二つの女性だった。綺麗なはずの白髪はぼさぼさで、右目に眼帯をつけている。服はめんどくさかったのかバスローブのままで胸がはだけそうになっていて、リネとフレミネは赤面して顔を手で隠した。
「か、母さん!は、破廉恥です!!」
「隠して!隠してえ!?」
「いやいや、色気の欠片もない私の裸なんて見られても平気でしょう。むしろ年増のものを見せてしまい申し訳ない。でもリネは子供の頃一緒にお風呂に入ったから見慣れて……」
「わー!!母さん!!それとこれとは違うよね!?」
「お兄ちゃん……私も一緒に入ったから覚えてる、よ…?」
「………これからお見せするのは消失マジックでございます」
「リネ、どんまい……」
イチャイチャしているペルヴェーレとクリーヴをよそに、体育座りして壁を見るリネと、その肩をポンポンと軽く叩くフレミネ。ちゃっかりリネットは神の目の元素スキルを用いてささっと持ってきた着替えで女性を着替えさせていた。
「……あれ?お母さん、この胸元……どうしたの?」
「うん?ああ、気にしないでください。ちょっと改造しただけなので」
「改造…?」
「あ、触らないでくださいねリネット。貴女は、本当に、マジで」
着替えさせている最中、その胸元から突き出た金属の突起に首をかしげたリネットを慌てて遠ざける女性。その反応から、それが何かしらのマシナリーなのだとわかる。
「それよりほら、仕込みは夜通しやったんです。予定通り手伝えるならペルヴェーレもフレミネも手伝ってください」
「心得ているさ、母上」
「はーい、ママ?」
「うん、白亜さん」
「母さん、任せてよ」
「お母さんは少しでいいから寝てて」
「ではお言葉に甘えますね」
昨夜から仕込んでおいた、広場を借りて行う予定の開業10周年イベントの料理やそのパーツを運んでいく家族を尻目に、自室に戻る女性。ため息をつき、モンドの方角を見やった。
「……はあ。旅人の動向を見守り、問題があれば対処する。それは確かに最重要事項です。稲妻での暗躍やナタでの「探し物」をするためにフォンテーヌを離れないといけない、だけどフォンテーヌでもやらないといけないことがあるから離れられない、故にとった解決策ですが……心が痛みます」
そう言って、胸の突起付近をトントンッと軽く叩く女性。すると胸元がカパッと蓋の様に開いて、胴体の内側を占める機械が納められた中身が露出した。まるでそれはクロックワーク・マシナリーの様だった。心臓近くにある注ぎ口に、冒険者協会に依頼して取り寄せた海水を注ぎ込み、蓋を閉めて蒸気を放出し、塩のみを抽出して全身に行き渡らせる。ヘウリアの姿をした塩のガワの内側にクロックワーク・マシナリーを動力源として仕込んだサイボーグに近い何か、それがこの白亜と呼ばれていた女性だった。
「……厳密には私はクリーヴたちの母親ではないのに。何時まで騙していればいいんですかね。私はヘウリアでも白亜でもなく、ザルツだというのに」
それは、ヘウリアが自分勝手にやりたいことだけをやるために、ある人物に依頼して用意した手段だった。シオンに続く第二の分身、ザルツ。それが彼女の名だ。
「……フォンテーヌの予言もそろそろですか。腹、括りますかね。まあ私の腹、今こんなですけど」
そう決意と共に、扉を開ける。さて、祭典の時間だ。十年も続いた人気の飲食店のために大勢の人間が集まっている。その中には水神様や最高審判官、最強の決闘代理人の姿もある。スポンサーである棘薔薇の会の若い女ボスやカブリエール商会の会長にも挨拶し、民衆の前で一礼して笑顔の下で内心毒づくのだ。
(絶対、演説が嫌だから逃げましたよね本体。のこのこ帰ってきたら覚えておきなさいよ本当)
登場、第三のヘウリア。その名はザルツ。この女、また気軽に魂分割してます。
元々かっこいいけど愉快なところがある人だから、クリーヴが生きてたらペルヴェーレはだいぶ愉快なおもしれー女になると思うんだ。
ペルヴェーレ→母上(お母様との差別化)
クリーヴ→ママ(お母様との差別化)
リネ→母さん
リネット→お母さん
フレミネ→(一応召使の子供たちなので)白亜さん(たまに口が滑っておばあちゃん)
呼び名はこんな感じ。ザルツの内部機械を作ったのは誰なんじゃろね。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
残るは香菱イベント、アンケートだと最下位だったけど…どうする?
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白亜の仲間入りの一幕は見たい