艦これだった世界の最後の提督兼指揮官らしいです 作:八雲ネム
「色々とぶっ飛んでるなぁ」
吾輩はボンクラな社会人である、名前は意味がないので捨てた。
と、どこぞやの小説風の自己紹介をしてみたがこの世界における俺の立ち位置は割とこの状態であり、気が付いたら片側三車線の広い道路にすら雑草が生えている状況に困惑しながら何とか辿り着いた図書館風の建物にあった情報端末にアクセスした結果、暫くの間を空けて出た言葉が冒頭の言葉だった。
何しろ、図書館風の建物に入るまで誰も会わなかった状況になったきっかけが深海棲艦の登場であり、最初期は艦娘が居なかった事も相まって人類側がかなり押されていたものの艦娘の登場によって何とか人類文明は息を吹き返した。
しかし、艦娘を中心に据えた大規模な作戦を幾つも行い、数多の新技術を開発しては投入しても戦況が芳しくない状態が続き、深海棲艦との戦争が20年目に突入する年に人類側はある暴挙に出た。
それまで、妖精と呼ばれる小人サイズの不思議生物に艦娘の建造を依頼していたのを、人類の技術のみで作った機械人形を艦娘の代わりに大量に投入したのだ。
この決断に、艦娘を直に指揮していた提督達を中心に反発があったもののこの頃になると艦娘を建造するコストよりも、艦娘の技術を流用した機械人形の生産コストの方が安くなっていた上に艦娘の様に不平不満を抱かずに24時間365日、戦う事が可能だった為に各国政府は反対派の意見を無視して大量投入した。
その結果、宇宙戦艦ヤマト2202に登場するアンドロメダブラックの様に艦娘の皮を被った機械人形が無尽蔵に生産され、深海棲艦の戦力を圧倒していった。
それまで、ある程度の盛り返しの後は一進一退の攻防が続いていた事も相まって愛憎や信念、イデオロギーと言った知的生命体として築き上げてきたものを濁流の如く、押し流すかの様に上がってくる勝利報告に反対派も賛同するしかなかった。
その為、如何にして機械人形が暴走した場合に対する歯止めを講じるかと言う意見も出たが、それまで鬱屈としていた状況から人類側が有利な状況になった事に沸き立つ世論の中では無視されてしまった。
勿論、人類文明が維持できればそれに越した事はなかったし、機械人形の発展具合によっては鉱山開発などの危険な現場作業の自動化が進む可能性はあった。
しかし、人類史と言うのは戦争の歴史と言っても過言ではなく、その中で文明が発展してきた以上は深海棲艦が脅威ではなくなり、長い戦争を終わらせた後の世界について各国首脳は考え始めた。
そう。考えてしまったのだ。
政治的な駆け引きについて、庶民の出でしかなかった俺からすればよく分からないが中長期的な視野を持つ各国首脳陣は、深海棲艦を駆逐やそれに近い状態に持って行った後の事を考えると共通の敵がいなくなればいずれ、機械人形を使った戦争を人類同士で行う事は火を見るよりかは明らかだと判断したし、俺だってそう思う。
その事を考えた場合、近隣諸国を圧倒する戦力とまではいかなくともある程度、対抗できる戦力を持ちたいのが心情なので戦後を見据えた機械人形の整備を進めた結果、致命的なバグが発生した。
そのバグは、その後の悲惨な出来事と比べれば些細な物ではあったのだが急激に発達した機械人形に搭載した人工知能に対して、人類文明の法整備が追い付かなかった事が原因だった。
それは、行政機関に登録番号が登録される前の機械人形を製造していた工場で爆発事故が発生した事だった。
これが、機械人形とは無関係の工場であれば悲惨な事故の1つとして終わったのだが、爆発したのは完成した機械人形の最終的な動作確認をして問題ないかを確認した後、納品されるのを待つだけだった彼らの工場が爆発した為に少なからず、彼らにも被害が出てしまった。
通常であれば、安全装置が働いて納品前の彼らは休眠モードに入るのだが、その内の何体かでバグが発生して活性化して戦闘モードに突入。
物理的に暴れ出すのと同時に、ハッキングによって周囲の休眠モードに入った機械人形達をコントロール下に置いた為に加速度的に暴走が広がり、工場内はあっという間に制御不能な状態に陥ってしまった。
ここで不運だったのが、万が一にも暴走した機械人形を強制停止する為の機構があってそれを作動させたにも関わらず、彼らはそのコマンドを一切、受け付けずに暴れ回った挙句、工場の外に出て無関係な一般人まで襲い始めたので工場の人ではもう手の施しようがなかった。
結果的には、戦闘用機械人形が主力となった軍隊によって鎮圧されたものの映像として記録された情報は、各国の政府によって情報統制がされても拡散という名の伝播が機械人形側で起こり続ける事になり、それが人類対機械人形と言う戦争にまで発展する事になった。
痛みや疲れを知らず、この頃になるとメインサーバーが世界中に点在して生産や教育も容易な機械人形と、生物的な限界があって出産から成長と教育に時間が掛かる人間とでは勝負にならないのは明白。
人類側が圧倒的に不利な状況に陥るかと思いきや、不幸中の幸いでこの頃には宇宙からエイリアンと呼ばれる名状し難い生命体がやってきた事で、機械人形の大半のリソースがそちらに振り向いたので各国政府は1つの決断を下した。
それは、選ばれた人類が生まれ故郷である地球を捨てて他の惑星に新天地を目指す、と言う棄民政策に近い方法を打ち出した事であり、それに対する反発によってテロが多発したが強行され、5,000人を収容できる宇宙船を3隻、宇宙で建造されて既に実行されたらしい。
その結果、残された人類は機械人形とエイリアンの板挟みにあって文明を大きく衰退させ、持っている端末の時間が正しければ今読んでいる最後に記録された文書の日時から100年以上の時間が経過しているらしい。
つまり、今の人類は過去に記録された歴史に興味がないレベルにまで衰退した事を意味している為、俺も小動物並の警戒心と恐怖心を持って行動しねぇとなと思いながら端末を置こうとして
「その端末からゆっくりと手を離して、両手を上げてください」
後頭部に硬い物を当てられながら、女性の声で指示を受けた。