お待たせしました。
| 2nd.STAGE順位表 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 参加者総数3652 リタイア者数1220 死者数82 | ||||
| 順位 | 氏名 | タイム | 合計P | 総合順位 |
| 1 | G・ツェペリ | 18日7時間23分 | 101 | 2位 |
| 2 | D・ブランドー | クビ | 90 | 3位 |
| 3 | N・ジョースター | 1/2 | 140 | 1位 |
| 4 | サンドマン | 1馬身 | 85 | 4位 |
| 5 | ホット・パンツ | 3馬身 | 55 | 5位 |
まばらな針葉樹林と背の低い草が生えた岩の山脈を登っては降り、登っては降りる。
十月下旬のロッキー山脈は天気がよく変わる。比較的過ごしやすい涼しさかと思えば、冬のような寒さで雪が降ったり、強い風が吹いて雪が溶けたり……とにかく“山の天候”そのものという印象を受けた。
その代わりと言ってはなんだが、空気はとても澄んでいて、晴れた夜の満点の星空の元で行うキャンプは格別だ。
僕たちは順調にスタート地点から約380kmほど進んでいた。
……左手の『穴』は、まだ塞がらない。
もう痛みはない。穴がぽっかり開いたまま、傷が治ってしまったからだ。安定したピアス穴のように。
五日も経って、吐き気すら催す最悪の気分は治まったが、それでもまだこの穴を直視するのは気が引けた。
ジャイロの方も……この五日間、僕の手については何も触れてこない。今でも。
穴を隠すために巻いた包帯には、「遺体」から染み出たエネルギーで文字が焼き付いている。
『movëre crũs』『Recupera』。
「ニコラス」
────名前を呼ばれて顔を上げると、少し前を進んでいたジャイロが立ち止まり、双眼鏡で崖下の方を見ていた。
「お前、Dioの野郎となにか因縁あるよな」
「……因縁?」
「
オレのことは眼中にねえって感じでな……」
「……」
先頭を走るジャイロに近付けるわけにはいかなかったため、僕が壁になる形であえて受けたが──その結果、僕とB-グッドは三着で入線した。
体当たりはルール違反ではないから別にいい。
しかし、頂点とか権力とかを欲しがる彼が、たとえ一時でも誰かに先を行かれることを許したのは、確かに不自然に見える。
「僕にさえ勝てればこのレースにも勝てる……と、彼は考えているのかもしれない。
理屈ではなく、勝負への「直感」として……精神的な意味で」
僕とディエゴは過去に国際レースで何度か戦った。僕が彼よりあとに入線したのはこれが初めてだ。
その過去を克服する意図があったのか……それとも、ただ僕が「ジョースター」で彼が「ディオ」であることが彼を苛立たせるのかは……わからない。
「僕が君をあえて勝たせているとディエゴは察している。
僕を潰せば、君も脅威ではなくなると考えている可能性はある」
「……。オレがおたくの下駄履きヤローだって?
ムカつくよなァーーやっぱりィィ〜〜〜……。見捨てっか?」
「え?」
「落馬してるぜ、Dioのヤツ……。
あそこだ。うずくまって座り込んでる」
ジャイロが指さした先。僕たちがいる道のずっと崖下、岩の起伏をいくつか越えた場所に、空馬のサラブレッドがいるのが見えた。美しい尾花栗毛──シルバーバレットだ。そのすぐ近くにディエゴの姿がある。
気づかなかった。もうそんな地点まで来ていたのか?
「顔から流血だ。レースは遅れるかもな。ひょっとするとリタイアかも……」
「様子を見に行ってくる」
「お優しいこって」
ジャイロはにやりと笑って僕をからかうくせに、僕が崖を降り始めると後ろに着いてきた。根が医者なのだろう。まったく素直じゃない。
下り坂を何度も降りて、倒れているディエゴの元に近付いていく。
B-グッドは途中まで従順に歩いていたが、ディエゴがいる場所まであと10mもないというところでなぜか、難色を示して立ち止まる。ジャイロのヴァルキリーも嘶きを上げてその後ろで止まった。彼女は……怯えていた。
僕はジャイロに、馬たちとその場で待つよう頼んでから、地面に降りた。
ザッザッと砂を踏みしめ、地面から生えている尖ったものを避けながら、僕はディエゴに近付く。
酷い怪我のようだ。その辺に転がっていた彼のヘルメット──“Dio”という自己主張の激しい金色の飾りから分かる──にも血がべっとりとついているし、彼の頭から流れた血が地面に広がっている。
「……ディエゴ! 僕だ! 大丈夫か!?」
応答はない。返事をする元気すらもないのか、それとも──ただの無視か? 後者ならいいけれど前者なら困る。
僕は更に近付いて傍に寄り、地面に落ちていた彼の手袋をよけて膝を曲げる。
「傷を見せてくれ。手当を──」
「触るなッ!!」
──僕が伸ばした右手はバッ!!と弾かれ、少しの痛みが走った。彼の
ディエゴは項垂れ、地を睨みつけながら、唸った。
「失せろ……ニコラス・ジョースター!
さっさと先に行け……!
このDioに……お前の施しはもういらない!」
…………。
彼の顎に血のしずくが伝い、地面についた彼の手に零れる。爬虫類の脱皮のように……乾いた皮膚が剥がれ落ち始めている手に。
「わかったよ……。……またあとで」
僕はもう塞がった切り傷の血を拭い、ディエゴから離れ、背を向けて歩き出す。
戻ってきた僕がB-グッドに跨ったとき、ジャイロが言った。
「仲悪いの?」
「……」
次の『遺体』の場所、クルス山まであとわずか15kmというところで、日が暮れ始めた。
僕としては多少無茶を押してでも先に行きたいところだ。だが、ジャイロとヴァルキリーに無理はさせられない。
近くにある小さな村に一晩泊めてもらうことに決め、向かっている途中。
走っているB-グッドとヴァルキリーの様子が変わった。片や苛立ち、片や怯えているように見えた。
「おいニコラス、馬が怯えてるぞッ!
ヤツだ! Dioだッ!」
ジャイロも愛馬の異変を感じ取って声を上げる。
僕たちが振り向くと、つい数十分前に怪我を負っていたディエゴが、右頬に大きな絆創膏を貼って、意気揚々と遅れを取り戻し僕たちの後ろにつけてきていた。
「さっきとは違いずいぶんパワフルじゃあねーかよ。
ニコラス! 絶対こいつに先行かせるなッ!」
「いやジャイロ、どうせ目的地は僕たちと同じだ。彼だって夜道を行く気はないよ」
ディエゴが僕たちの横に並ぶ。
「当然だな。今日はもう終わりだ……日が暮れる!
君たちもこの先の村で泊まるつもりか? 懸命な判断だ。この辺は猛獣がいるからな……キャンプはやめた方がいい」
「……」
「この間、日が暮れた時に猛獣に囲まれたんだ。数匹のクーガーと数匹のガラガラヘビにな。クーガーとガラガラヘビがオレの行く道を塞いで通れなかったんだ…………。
廻り道しようと思ったら……このうち片方がなんとオレの馬に道を譲ってくれたんだ。親切にも譲ってくれたんだぜ、動物がだ……。
いったいどっちの猛獣が馬に道を譲ってくれたと思う?
クーガーか? ガラガラヘビか? どっちだと思う?」
僕は好奇心に負けて答えた。
「ヘビだね。だって“
「正解ッ!
でもその後クーガーに食われたりして! 「“うま”ーっ」とか言って!!
ワッハハハハハハハハハハハーーッ」
「アハハハハハハハハハハハーーッ」
思いのほか彼の反応は良く、気が狂ったように笑い出したから、僕もノリに乗って大声で笑ってみた。その迫力に猛獣も怯えて逃げていきそうだ。
ディエゴは晴れ晴れとした表情で言う。
「気分がいいッ! なにかすごく気分が爽快なんだッ!
さっきの落馬のせいかな……体もすごく軽いッ! 日が暮れるのが残念だ!
ニコラス・ジョースター! 君も馬の名手ならこんなこと出来るか? ハイ!!」
前言撤回、晴れ晴れというより『ハイ』だった。彼はバカラッバカラッと走り続ける馬の鞍上で、少しのブレもない見事な倒立を見せる。
僕にもできるか? 色々な姿勢で走れるように訓練はしたが、倒立までは試したことないな……。
そう考えたところで、ジャイロからの激しいツッコミが入った。
「ニコラスッ!! オイッ、おめー絶対やるなよ!
クソッ、天才騎手ってこんなラリったヤツらばっかなのか!?」
「そんなわけないだろ。様子がおかしい」
ディエゴは鞍上での倒立に留まらず、変なポーズを決めたり馬の首にぶら下がったりしている。
「どうせ同じ村に泊まるんだ。とりあえず……見守ってみよう」
日が完全に落ちてしまう前に、僕たち三人は山奥の小さな村に到着した。
山の岩肌に煉瓦造りの家が建ち並ぶ、そこそこの規模の集落だ。数十人の村人たちは総出で歓迎してくれた。『ぼく』やディエゴの“騎手としての名声”は届いていないようだが、レースに興味津々な彼らからの質問攻めをかわすのは大変だった。
解放されて、宿として借りた空き家に落ち着く頃には、すっかり夜になっていた。
ジャイロが夕飯のための薪を集めに行く間、僕は部屋に残って調理の準備を済ませることにし、かまどに残っていたわずかな薪に火をつけケトルと鍋に湯を沸かした。
ついでに部屋を温めるため、いくつかある窓の戸を閉める。
────最後の窓を閉めようと近付いたとき、家のすぐ外に人影が見えた。
そこには、先程別れたはずのディエゴがいた。
彼はその見目の良さもあってか僕とジャイロよりも多くの村人に囲まれていたので、身代わりとして人混みの中に置いてきたのだった。その文句を言いに来たのかもしれない。……という冗談はさておき。
僕は息を潜め、ディエゴの様子を観察した。
彼は、煉瓦造りの壁の前にうずくまり、地面の石ころを指先で遊ばせている。
その後ろ姿はまるで土遊びする子供のようで、なんだか昔を思い出す。八年前、ジョースター家でバイトしていた頃の彼はまだ十二歳。歳の割には大人びていたが、幼さが抜けきらないところがあり、嫌なことがあると厩舎の隅で────と、考えた矢先。
ディエゴは石ころを二つほど拾い上げると、大きく口を開いてパクゥーッと
そして、ゴクンと
「(……!?)」
ディエゴはまた石を口に入れ、嚥下した。飲み込む時に逐一、顔を上に向ける仕草はどことなく鳥の食事に似ている。
「……何してるんだ、ディエゴ」
思わず声をかけると、ディエゴは体を動かさず首だけでグルンと振り返った。
はっきり言って不気味だ。
「別に……」彼はゆっくりと扉を開き、部屋に入ってくる。
「僕の見間違いじゃなければ、今……石を食べてるように見えたけど?」
「ああ〜。……ニコラス……、あんた、知らないのか?
消化剤さ。胃の中で食べた物を砕いて消化を助けるんだ。
『胃石』っていって、
「……」
もうお互いリッパな大人なんだから、趣味嗜好にとやかく言わない方がいいのだろう。
それなりの年月が経ったことが頭ではわかっているのに、ジョニィと彼の歳が近いこともあって、どうもかつての子供扱いが染み付いていてよくない。
これも不要な『感傷』か。
僕は最後の窓の戸と、部屋の扉を閉じた。
「じゃあ白湯でも飲むか?
口の中が砂まみれなのはイヤだろ。体も温まる」
「ああ……、……もらおうかな」
僕は彼に背を向け、ケトルからコップに湯を注ぐ。
十月のロッキー山脈はなかなか冷える。もし恒温動物と変温動物のいいとこ取りができるならつらくはないのかもしれないが、温まるに越したことはないはずだ。
「そこの椅子に座っ──」
バシン!
と──振り向きざま差し出そうとする直前のコップを、鬼気迫るまでの勢いで奪われた。
悪意かといえばそうではなく、ディエゴの視線は既にコップのみに向けられ、こちらの反応を気にも留めない。
ディエゴは手袋をした両手でコップを握り、立ったままグイッと天井を向いて呷り始めた。
頬に貼られた絆創膏の下、
「ククククク……ククゥ〜〜……」
「……」
彼は人外めいて、喉から小さく音を鳴らした。
僕が何も言わずそれを見ていると、隣の部屋から人の呼吸と足音が近付いてきて、僕の後ろで立ち止まった。
振り向けば、薪の束を胸に抱えたジャイロが訝しげな顔をしている。
「……何やってんだ、ニコラス」
「おかえり。いや、彼の様子が相変わらずおかしいから見てたんだ」
「『彼』……つったって、オマエ……」
────ジャイロの顔色が変わった。
目を大きく見開き、顔を引き攣らせる。
「ニコラス、ゆっくりこっちに来い。絶対に振り返るなよ……」
「え?」
「いいから来いッ!」
何事かと思ったが、ジャイロが僕の背後に向けた視線の動きですぐに合点がいった。
僕は彼の忠告を無視して後ろを振り返る。
そこにいたのは、ゴツゴツとした固い鱗を纏う獣。
体長は二、三メートルほど。その半分以上を長く伸びた尻尾が占める。
鋭い鉤爪がついた太い後脚に対して、前脚は小さく退化している。尖った牙が並んだ口からはその食性が肉食中心であることが見て取れる。
スタンド能力であるが故に厳密に言えば違うと思われるが、その姿はかつて図鑑で見た「デイノニクス」に似ていた。
ディエゴの姿は消え、彼が僕から奪ったはずのコップはその後脚に踏み潰されて床を濡らしている。
ならディエゴはどこにいったのかというと、恐竜の背中の模様に繰り返し「DIO」と
────ディエゴ・ブランドーは、中型二足歩行の『恐竜』の姿に変身していた。
「こいつは! 「スタンド能力」かッ!」
「待て、ジャイロ。攻撃するな!」
「……!?」
ホルスターからすばやく『鉄球』を取り出したジャイロの前に手を出して制止する。
恐竜化したディエゴは、頭と尻尾をユラユラと揺らしてその場に佇んでいる。鉤爪の射程範囲内に立っている僕を襲ってくる様子はない。
ジャイロもそのことに気付いたのか、鉄球の回転を止めた。
「今から君に三つの説明をする。よく聞いてくれ」
「! …………」
僕が立てた人差し指を見て、ジャイロは眉を顰めた。
「一つ目……この恐竜の正体はディエゴだ。だが、この変身は彼の意思によるものではない。
彼は今「敵」に操られている。
「敵」の目的は僕を殺し、『遺体』を奪うことだ。
そういう命令を受けたんだろう。だからディエゴはわざわざ僕の元を訪ねてきた」
僕たちは理由もなく顔を合わせるような仲良しではない。悲しいことに。
二本目の指を立てる。
「二つ目。次の『遺体』の在処は既に分かっている。
ただしそれは「敵」の方も同じだ。ヤツは僕たちが『遺体』を見つけるのを待ち伏せている。近付けば必ず奪い合いになる」
「…………」
「そして三つ目は──「波紋」のレッスンだ」
僕が立てる指が増えるごとに険しい顔になっていたジャイロだが、波紋と聞いて片眉を上げた。
「波紋法には、相手の体に微細な波紋を流すことで催眠状態にするという技がある。
基本的には単純な命令かつ、短い時間しか効果がない……だが、元々ボーッとしている人間や、
僕は恐竜ディエゴの首を軽く叩いて撫でた。
が、彼は何の攻撃性も示さない。クンクンと鼻を鳴らして僕の
ジャイロの顔色が青くなった。
「もちろん倫理的に怪しい技だから推奨はしないぜ。
だがお察しの通り、さっきディエゴに渡した飲み物に「波紋」を仕込んだ。彼の意識は今、僕たちを仲間だと認識している」
僕の推察が正しければ、ディエゴさえ抑えてしまえばこの戦いは勝ったも同然。
「さっさと敵を倒しに行こう。
────波紋の“魔術”が解けてしまう前に、な」
………………。
ジャイロは数秒の沈黙の後、金ピカの歯を剥き出しにして拳を握り言った。
「てめえ〜〜〜……一発殴らせろ」
「え」
♢
冷たい風が吹き荒び、夜空には神々しいまでに輝く北極星が見える。
クルス山麓の村、そのすぐ近くの丘の上。
針葉樹林と岩場には無数の気配が潜んでいる。その中を、臆することなく堂々と闊歩する一匹の獣がいた。
鋭い鉤爪で岩肌を掴み、谷を下り、崖を越えていく。
やがて獣は丘の頂上に登りきった。
すると不思議なことに、
布の塊を咥えた恐竜、ディエゴ・ブランドーは、流砂の中央でただ立ち尽くす。
動いているものしか捉えられない恐竜の目は、すぐ傍に突如現れた謎の石像──いや、エネルギー体の「
「
「“悪魔の手のひら”……。
なるほど……君がこの丘に近付いてから出現したということは……『遺体』同士とは引き合う性質を持つようだ」
と、そこに近付く人影がある。
乗馬しているようなシルエットに見えるが、その男が騎乗しているのもまた『恐竜』だった。そして周囲の岩場にも、似たような中型の恐竜がわらわらと姿を現す。
彼が恐竜たちに襲われないのは、彼こそがこの恐竜の群れの中心核であるからに他ならない。
「よし……。よくやったぞ、ディエゴ・ブランドーくん。
君のことを「恐竜化」させてみんなの“リーダー”としたのは正解だった。わたしの命令の通り、無事『左腕』を回収してきたのだから……本当によくやってくれた」
「フハアアアアーー……」
ディエゴは息の音で応えた。彼が口に咥えている布の塊は、ちょうど
男の名は「フェルディナンド」。地質学・古代生物学の学者。
二年ほど前、アリゾナの砂漠で『悪魔の手のひら』を探索中にスタンド能力を身につけた。
スタンド名は「スケアリー・モンスターズ」────傷をつけた生物を“恐竜化”に感染させ、変身が完了すれば完全なる支配下に置けるという能力。
また、変身させた恐竜に“群れのリーダー”としての役割を与えれば、“その他の恐竜が指示に従い”、“他の生物を傷つけると恐竜化を感染させる”能力を付与することもできる。
スケアリー・モンスターズの恐竜は、凄まじい筋力と鋭い嗅覚、優れた動体視力を持ち、夜目が利く。反面、止まっているものは認識できず耳もあまり良くはないという特性がある。
(フェルディナンド自身は恐竜には変身しない。恐竜のことを「アホ頭」と見下しているからだ。研究対象ではあるが、自分自身がなりたいというわけでは決してないのだろう……。)
フェルディナンドは恐竜の背から地に降り立ち、砂の上で沈黙している「
「これが……」
手を伸ばせばおそろしいほど何の抵抗もなく届き、『両眼球』はフェルディナンドの震える手のなかに収まった。
男は畏れ多くも『眼球』を手の内で転がし、空に浮かぶ半月のかすかな光にかざして、学者らしく観察する。
「ああ……なんて見事な『遺体』だ。
とても1900年前の『遺体』とは思えないみずみずしさだ……」
独り言が多い。興奮も畏怖もあるだろうが、勝利を確信するとよく口が回るようになるのはこの世界の常。
一通り眺めたあと……気が済んだのか、フェルディナンドは思い出したように恐竜ディエゴの方を振り返り、彼の口元にその手を伸ばした。
「さあ、『左腕』もこのわたしに────」
パン!
────突如、乾いた音が木霊する。
「は……」
その時、フェルディナンドの首元に
襟の下から“ブシュ”と生ぬるい鮮血が噴き出す。弾丸は頸動脈を掠め、気管をも傷をつけた。血液は喉を迫り上がり口から吐き出される。
「ガフッ! ──な……な、にィ……ッ!?」
フェルディナンドはうろたえた。なぜなら──周囲に従えている数十匹の恐竜たちは、ディエゴを始め一匹たりとも『敵』の気配に反応していなかったからだ。
恐竜たちは史上最強の護衛であり、攻撃生物。奴らの目を掻い潜って接近してくるなど不可能だ。かといってここは丘の上、長距離からの狙撃というのも考えられない。
ならばこの攻撃はどこから、一体誰が────?
「ハッ!!」
そして気付いた。『敵』は
恐竜化したディエゴの
パン!
────銃口が二度目の火を吹く。 ダメ押しの弾丸はフェルディナンドの腹部に命中した。
「ウグッ!」男は痛みに襲われ地面に膝を着き、二つの『眼球』を取り落とす。
『眼球』は砂の上を転がっていく。その先には、
『遺体』に選ばれ、『遺体』を引き寄せる者。
恐竜ディエゴの影から、銃撃犯がユラリと姿を表す。その顔はフェルディナンドにも見覚えがあった。
写真を見せられ、「殺せ」と命じられた標的────。
「ニコラス……ジョースター……!!」
「『回転』の力で身体を平らにして、恐竜の側面に張り付き身を隠した……おまえ自身は夜目が利かないために気付かなかったようだな」
鉄球の『回転』には、人体を平らにするという謎の技術がある。言ってる意味がわからないと思うが、できるものはできるので、そういうものと受け入れるしかない。
ジャイロが『回転』の技術でニコラスの体を平らにし、ニコラスは持ち前の騎乗能力と『波紋』の力で恐竜ディエゴの胴体の側面にしがみつき、恐竜の群れの目を掻い潜ってここまでやってきた。
「は? ……?」
フェルディナンドは首を押さえながら頭を捻った。大量に出血し、血圧が下がっているせいで脳に血が足りず……いや、仮に無傷で頭脳をフル回転させても、何が起こっているのか理解できなかったに違いない。
「な……にしてるぅぅ……ディエゴ・ブランドー……!
ゴホッ……な、なぜわたしを……守らない!? ガフッ! 恐竜ども……! わたしを……、
────ハッ……」
ニコラスは両手でリボルバーを構え、フェルディナンドの頭に銃口を向けた。あと数分の命である『敵』が、少しでも“最後の悪あがき”を見せるならば、その時点で確実に死に至らしめられるように。そこに一切の慢心はない。
ディエゴはただ静かに成り行きを見ている。ディエゴを“リーダー”としている恐竜たちもまた、ニコラスを攻撃する様子はない。
恐竜たちが素早いといっても、弾丸が次こそ脳を貫く方が早いということは、瀕死のフェルディナンドにも理解できた。
「────彼が、どう思っているかわからないが……」
ニコラスの足に、地面を転がってきた『両眼球』がコツンと当たる。
「僕にとってディエゴは、第二の「弟」のようなものだ。
叶うことなら……『
レースで競い合うのはいい。だが殺し合いたくはない。誰かを傷つけてほしくもない。
それが筋違いで破綻した願いだということは分かっている────だが祈るだけなら許されるはずだ。
『運命』を
砂の上に垂れて染み込んでいく鮮血を見下ろしながら、ニコラスは語り続ける。
「ま……おまえに恨みはない。どのみち死んでもらうことになっただろうからな……
「……!! ……ヒッ…………!」
『敵』は悲鳴じみた呼吸を最期に、ドサリと地に崩れ落ちた。
周囲からヒトの呻き声が聞こえ始める。ディエゴが「感染」させ恐竜化していた村人たちが元の人間の姿に戻りつつあった。すなわち、「スタンド使い」本体の精神力が失われたということだ。
ニコラスは銃を下ろし、撃鉄を慎重に戻すと、失われていく命を前に十字を切った。
「……あなたに、母なる大地に抱かれる安らぎがあらんことを」
周囲の恐竜が村人の姿に変わった。いや、これは戻ったと言う方が正しいか。
状況が読めず戸惑う人々の中に紛れていた二匹のクーガー──おそらくフェルディナンドが能力で恐竜に変身させていた──を鉄球で撃退したジャイロは、戦闘が終わったことを確信すると、愛馬たちを連れてニコラスの元に向かった。
彼はジャイロに、「戦いは“暗殺”で片付けてくるから、君に馬を任せたい」と言った。
……ニコラスにはやると言ったらやる「スゴ味」があったので、ジャイロは渋々従った。
馬たちと共に息を潜めている間、他の恐竜から襲われることはなかった。ニコラスがディエゴという司令塔を先に抑えていたからだろう。
丘の頂上で二つの『眼球』を手にし、敵の死体の前に佇むニコラス・ジョースターの姿は、ジャイロの腹の奥底に何か嫌なものを感じさせた。
そのすぐ側に、人間の姿に戻ったディエゴが倒れ伏しているのも見えたが、そちらは気絶しているだけのようだ。
「殺したのか?」
「…………」
ニコラスは答えず、ジャイロの目をじっと見た。
「ジャイロ」
「ああ」
「…………彼を埋葬したい。手伝ってくれ」
「……ああ……。…………そうだな……。
「回転」で穴を掘る方法を教えてやるよ」
彼がおもむろに『両眼球』を顔に近付けると、ひとりでに引き寄せられ吸い込まれていく。
触れず、視界に入れるだけでも畏れ多いというのに、その『遺体』に
「ウオエエェェ……眼球が押され……うぐおおお……」
「…………」
ジャイロ・ツェペリは、そんなこと一ミリだって想像したくもない、と思った。
ニコラスとジャイロが一人の男を土に埋めている間に、気絶していたはずのディエゴは忽然と姿を消していた。
獣の足跡を残して。
♢
ディエゴ・ブランドーは、イギリスの貧しい農村で生まれた。
食うに困っていた母は、産まれたばかりのディエゴを一時は“なかったこと”にしようとしたらしいが、土に埋めたはずのディエゴが雨で増水した川に流されているのを見て思い直し、必死に助けようとして共に川に流された。
母子は川のはるか下流で農夫に拾われ、そいつが勤めていた農場に雑用で雇われ、だが貧しさは何も変わらず────ディエゴが六歳の頃、母は齢二十三という若さでこの世を去り────それからディエゴは独りで生きてきた。
母を貶めた農夫の男。母を殺したも同然だ。ディエゴは奴を必ず見つけ出し復讐することを決意した。
母と幼い自分を見捨てた、名も顔も知らない父親も。無関心を決め込んだ農場のヤツらも、農場の領主も。全てが許せない。過ぎた時間が怒りを宥めることはなかった。
復讐には権力が必要だ。
そしてオレを邪魔するヤツらは、母と自分が受けた仕打ちよりももっと屈辱的に「誇り」を切り裂いて地面に這いつくばらせてやる────。
息を引き取る前、母はディエゴにこう言った。
自分が死ぬのは自分の罪のせいであり、ディエゴは悪くないと。農場のどんな暴れ馬もおまえの言うことは聞く、馬に乗ることこそおまえの才能だよ、と。
今から八年前。ディエゴが十二歳のとき、縁あって馬乗りの家に雇われることができた。もちろんディエゴの才能を見越してのことだ。
ジョースター家────聞くところによるとアメリカの貴族崩れで、向こうの大陸ではそれなりの名門一家らしく、当主の仕事の関係で数年前にやってきたという話だった。
ディエゴは厩舎で下働きをしながら、盗める技術はすべて盗もうと目を光らせた。そうするうちに、将来ディエゴの『障害』になるであろうものが見えてきた。
長男のニコラス・ジョースター。当時十六歳、既にイギリスのいくつもの重賞レースでトロフィーを獲得しており、天才ジョッキーと呼ばれていた。
奴もまた馬乗りとしての輝かしい才能に満ちていた。ともすれば、ディエゴ以上に……。
ニコラスが騎乗したあとの馬の世話をしながら、ディエゴは虎視眈々と彼を狙った。技術やクセを研究し、対策するためだ。いずれ大舞台で戦うことになる相手だと信じて疑わなかった。
彼にはディエゴと近い歳の頃の弟がいたが、奴には兄ほどの才能はなかったため眼中にはなかった。家も金も人も全て持った坊っちゃん面はディエゴを苛立たせたが、それだけだ。
遠巻きに見た彼ら兄弟は、とても仲睦まじく見えた。家族という存在を母親しか知らないディエゴには到底理解できなかった。
ある日『事故』があり、ニコラスは弟をなくした。
直後にニコラスが出場したレースの結果は、当然に一着。
しかしその後、彼はみるみるうちに憔悴していった。表情を失い、口数が減り、やがて馬の調教に現れなくなった。
ニコラスの父、ジョージ・ジョースター卿の様子は一切変わらなかったが、部屋に引き篭る息子を心配するような素振りを見せることもあった。
農夫たちの間で、彼は食事すら取っていないのではないか、このままでは弟の後を追うように亡くなるのではないかと噂になった。
だからディエゴ・ブランドーは、ニコラスの部屋を訪ねて、酷くやつれた顔をした彼に
断っておくが、決して、決して────彼より
同じく家族をなくした過去で同情を誘い、彼の弟が空けた椅子にディエゴが座ることができたなら、奴が父や兄から与えられるはずだった教育や投資を代わりに受けられるのではないかという打算があったからだ。
はたしてディエゴの目論見は成功した。
ニコラスは少しずつ調教に顔を出すようになり、自分が持てる知識や技術をディエゴに教え始めた。弟にそうすると約束していたように。
ジョースター卿の方も、弟に使うはずだったリソースを大いにニコラスに与え、それでも余った分はついでにディエゴに与えた。
使い古しの道具でも、ディエゴの少ない稼ぎでは買えないものばかり。お下がりの服で過ごすディエゴを見た農夫たちは、まるで本当の弟のようだと称した。
数週間後。
ジョースター家がイギリスから引き払いアメリカに帰国する際、ニコラスは自分よりはるか下の方にあるディエゴの頭を掻き回すように撫でたあと、こう言い残した。
「ディエゴ・ブランドー。君はいつか僕にとって最大の『ライバル』に成長するだろう」
「君の母は気高く生きて君を守った。とても尊敬できる人だ……。だからこそ、君はこれからもその母親に恥じないよう生きていかなければいけないよ」
「競技者としてその上昇志向は望ましい。
だが『飢える』ならもっと気高く────
更に数ヶ月後。ディエゴの元に届いた新聞記事は、ニコラス・ジョースターが史上最年少でアメリカのクラシック三冠を達成した偉業を讃えていた。
あれから八年。
ディエゴは二十歳になり、イギリス競馬界の騎手としての地位を確立していた。
だがこの『スティール・ボール・ラン』レースに至るまで、国際レースでニコラスに勝てたことはただの一度もなく。
二十四歳──母の享年を過ぎた──ニコラス・ジョースターは未だ、ディエゴ・ブランドーが超えるべき男として『
♢
『ロッキー山脈を背後に背負い、
『まずは集団のトップに位置するのは現在総合1位「ニコラス・ジョースター」!
そのすぐ左斜め後ろ半馬身で総合2位「ジャイロ・ツェペリ」、総合3位の「ディエゴ・ブランドー」と並んでおります』
『そして若干距離をあけて、ジョージアから来た「ポコロコ」、続いて裸足の健脚「サンドマン」、モンゴルの騎馬民族「ドット・ハーン」、メキシコの「ガウチョ」、ロシアの軍人「バーバ・ヤーガ」の順──』
『距離は510kmあり最短予想行程七日間もあるのに、夜が明けたら実力選手たちが続々集結して来ています!
まるで「人間」「磁石」だ!散らばっていた感覚距離がどういうわけか固まってくるのです! また接近戦になるぞッ! ゴール前のデッドヒートになるのは必至!』
長い草に覆われた緩やかな下り坂を駆けていく。直線距離3km先、湖の向こうに見えるのがキャノン・シティ、
『
二人のポイント差は50P、ここで差を縮めておきたいというところか! なおDioと3位の「ジャイロ・ツェペリ」とのポイント差はたったの11P!
『スティール・ボール・ラン』レースはまだ前半戦、全員十分に優勝を狙えますッ!』
「あいつ……やはりお前の言う通り────あの山の『悪魔の手のひら』でスタンドに目覚めたのか?
それで仕掛けてくる気かよ……今ここでこのオレたちに」
「いやジャイロ、今は気球が監視している。
失格になるリスクを負ってまで攻撃をしかけてはこないはずだ。
だが気をつけろ。ディエゴはあの「恐竜」の能力を得た。
馬の呼吸の数、脈拍、汗の量、歩幅────彼に今まで
『さあ〜〜〜〜〜〜〜てゴール直前に立ちはだかるのは周遊3900mのキャノン湖です。ここでこの地形の解説をいたしましょう。
湖の「右」へ行くと水辺を回り! 起伏はありませんがゴールまでの距離は2400mとけっこう長いッ!
「左」から回るとゴールまで700m短い1700mだが断崖道となっておりアップダウンは今まで以上に激しいぞッ!』
『どちらの道を選択するのか!? 五日間も山を越えてきた「馬たち」の筋肉へどのような化学変化を起こすのか!?
それは何者にとっても、いえ馬たちにとってさえ未知なる経験ッ! その決断が各選手たちの駆け引きとなります!』
「当然「右」だッ! いいかジャイロ、右だからな! フリじゃあないぞッ!」
「わあーってるよ!! ウルセーな一時間おきに言いやがってッ!」
『ニコラスとジャイロは右に向かう!
おおーっとディエゴは左へ向かったァァーーッそしてやはりサンドマンも左を選択しますッ!なんと「ポコロコ」もそれに続く!崖に賭けたぞッ!
右には「ドットハーン」「バーバ・ヤーガ」「ガウチョ」と続くッ!
ゴール前デットヒートの開始ですッ!』
『ここで「右回り」ニコラスとジャイロが加速する! 速いッ!
『一方「左回り」ディエゴも速い!起伏をものともせず! 信じられませんッまるで馬が跳ねて飛んでいるかのようッ! あれは本当に馬の動きなのでしょうか──これが英国の貴公子の
『さああーーッDioが崖を超えてゴール前に突入する! サンドマンも崖を下りてきた! ニコラスとジャイロが湖畔右先端を回り込んでくる!
トップはDio!Dio!ここから残り500m! やはりこの三人か!』
「(あれは……)」
僕の目には、崖を降りてくるディエゴのシルバーバレットの蹄が
馬は奇蹄目の動物だ。おそらく、『恐竜化』の能力を拡大解釈して愛馬の体を変化させているのだろう(いずれは“ランプ”なんか作り始めるのだから)。
偶蹄目の中でもヤギの蹄は切り立った崖を捉えるのに適しているらしい。だからディエゴは「左回り」ルートを選び、あれほどの速さで崖を超えてくることができたのだ。
シルバーバレットの蹄は幻のように元に戻りひとつになった。
だが、こちらも負けてはいない。僕とジャイロも最終直線に突入する。ヴァルキリーは大きく息を吐き、首を振った。
『ニコラスとジャイロが更に加速したァーーッ! まるでウサギに襲いかかる猟犬のようにDioを追いますッ!
Dioが逃げる! ニコラス追う! 差が縮まっていく! Dio逃げ切れるか! ジャイロ届くのか! ニコラスか! 残り200mッ!』
『追うッ! 二人が追うッ! スピード衰えないッ!
Dio逃げる! ジャイロ五馬身! 四馬身! 捉えた! 捉えた!』
その時。
ディエゴのシルバーバレットの後脚の筋肉が不自然にうごめき、ドバッ!と地を蹴った。
「はッ!」
飛来した小石がガッ!!と僕の
「ぐあッ!?」
「ニコラス!?」
『ああっと!? ニコラス崩れたッ! 崩れたニコラス・ジョースター!
あと30m! えッ!? B-グッド
ニコラスだ! 20m! ニコラスだ! かわした!! ニコラスだ! 強いッやはり強いッ!!』
『ゴォーーーーールッッ!!』
ワアアアアーーーーーッ
『ニコラス・ジョースターッ! ニコラス・ジョースターッ! 着順はなんとニコラス・ジョースター、ディエゴ・ブランドー、ジャイロ・ツェペリの順!
そしてポコロコ!乱入してサンドマン!ドット・ハーン、バーバ・ヤーガ、マック・ザ・ナイフ、遅れてガウチョの順!』
『ディエゴ・ブランドーがゴール直前「小石」を踏みニコラスに当たるというハプニングがありましたが! ニコラスの馬B-グッドは立派にやってくれましたッ!』
『なお「小石」を踏んだのはあくまで偶然であり「故意」である証拠がないためディエゴ・ブランドー選手は「失格」とはなりません────』
大音量の歓声に包まれる。
僕はB-グッドの荒い歩調に揺られながら、顔に滴る血と泥を拭った。波紋のエネルギーを体に巡らせて傷の回復を促進させる。
ヴァルキリーに乗ったジャイロがすぐに追いついてきて、僕の右側に並んだ。
「無事か!?」
「ああ、これくらいすぐ治る」
「…………あの野郎……」
「…………」
少し先まで進んでいたディエゴは僕の方を振り返っていたが、ジャイロに睨まれたからか、荒い息を吐くシルバーバレットに跨ったまま何も言わず僕たちに背を向けて歩いていった。
B-グッドが耳を絞っている。泥をかけられたことに腹を立てているらしい。
こいつがゴール前で加速したのは、僕が一瞬よろめいたせいで競り合いの興奮が抑えられなくなったからだ。
ここでポイントを稼ぐつもりはなかったが、くしくも『運命』の通りになってしまった。
…………。
小石が命中したのは
ただの偶然かもしれない。だが『左目』は本来、ディエゴが手に入れるはずだった「部位」。
「……切り替えよう。君より先にゴールしてしまった……今後のことを考えないと……」
『この時点ですでに次のステージ「
デッドヒートを制したのはニコラス・ジョースターですが──遡ること一時間前に「ホット・パンツ」選手がゴールを単独で通過して優勝しております。
「ホット・パンツ」100P、タイムボーナス一時間獲得となっています』
「なんだって……? 既に通過してる……だと?」
「…………」
ジャイロが放送の声に目を見開く。
────ホット・パンツ。
いろいろな意味で会うのに気が引ける相手だが。
……きっと、『ぼく』が避けて通ることのできない道なのだろう。
「ちょっと待て」
「…………」
「……まさか……オマエが「このステージでかっ飛ばすな」って言ったのって“コレ”か?
『また』か? 『また』なのか? ええッ?」
「…………」
「なんとか言いやがれ」
「ごめん」
「『また』かよォォッてめえっ先に言えーーーッッ!」
| 3rd.STAGE順位表 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 参加者総数2432 | ||||
| 順位 | 氏名 | タイム | 合計P | 総合順位 |
| 1 | ホット・パンツ | 5日9時間51分 | 155 | 2位 |
| 2 | N・ジョースター | 5日10時間59分 | 190 | 1位 |
| 3 | D・ブランドー | 頭 | 130 | 4位 |
| 4 | G・ツェペリ | ハナ | 136 | 3位 |
| 5 | ポコロコ | 4馬身 | 78 | 6位 |
| 6 | サンドマン | 首 | 110 | 5位 |