ヘヴィーオブジェクト タマネギの調理法:アラスカ方面検証戦   作:明田川

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05+エピローグ

 

 

 いつの間にか地雷の一つには、何かが貼り付けられていた。爆薬と何かの容器、そしてバッテリーだ。それに気が付いたのは正統王国の実験が始まってからのこと、ほんの少しの爆薬が加圧された容器を引き裂いた瞬間からだ。

 

「そのていどのばくはつで、地雷はこわせない」

 

『壊せるなんて思ってないさ』

 

 通信は一方的なもの、エリートの言葉は正統王国に向けてなど発せられていない。では何故相手は会話を合わせて来たのか、彼女は更に苛立ちを隠せなくなっていく。

 

「しこうを読まれた、のせられた…!」

 

 そしてすぐに地雷は爆発、実験は成功に終わった。真上に打ち上げられた金属杭は速度を失い、自由落下に転じた末に地面へ突き立てられる。

 

『あの地雷は静電気式の推進装置に反応するんだ。静電気で機体を浮かせるために地面に噴射する反発剤と、一定の電流が指示無し状態における発射のトリガーだ』

 

『無敵の兵器は存在しないが、オブジェクトも例外ではない。地雷ですらこの体たらくだ、そちらの本体にはどんな弱点がある?』

 

「答えあわせはじらいだけか、そのていどでは何も…」

 

『では次だ』

 

 照準用のレーザー照射、一度見た手だ。しかし前回と違うのは、その照射元がタイニーリボルバーであったことだ。即座に反応した先にあったのは、最初の戦闘で破壊し、根本から千切れ飛ばした主砲の一つ。攻撃能力など無いはずのそれだった。

 

「いつの間に、いや…さいしょの妨害から、この答えあわせまで…まさかさいしょから時間かせぎのために……?」

 

 邪魔をするならば破壊するまで、副砲が主砲に砲弾を叩き込む。すると大きく何かが破裂し、青い気体がばら撒かれる。これが何かはエリートであれば誰もが知っている、プラズマを発生させるための特殊ガスだ。

 

『うちのオブジェクトはプラズマ砲特化、主砲に搭載されているガスの量も尋常じゃあない。しかもそれをアンタは自慢の副砲で吹っ飛ばして、ばら撒いてくれたなぁ?』

 

「撃つためにはオブジェクトが顔をだす、そこでふっとばして終わりにする!」

 

『単純だなお前、ビビりだろ』

 

 山を貫いて放たれた下位安定式プラズマ砲が、ばら撒かれた特殊ガスに突き刺さる。ガスは空気よりも重く、広がっても地面と近い。そしてプラズマと化した場合はオブジェクトを真正面から貫く威力を発揮するそれが、地面を焼くのに苦労するはずが無かった。

 

「ガスをばくはつさせて、地雷とセンサーとうを!」

 

『お嬢様!』

 

「このていどで、このていどで勝ち目がでるとでも!」

 

 満を辞して山から出たのは正統王国軍所属、タイニーリボルバー。それを真正面から破壊せんと立ち塞がるのは信心組織軍所属、デモリッションコード、真の名をテューポーン。

 タイニーリボルバーは脚部にコンテナを幾つか溶接しており、その中身は警告表示から明らかだった。プラズマ砲の特殊ガス、それを進みながら中身をばら撒いている。しかし爆発すれば自身の脚部にトドメを刺すだろう、デモリッションコードがプラズマ系の武装を持っていないことを信じての突撃だ。

 

「なにを…!?」

 

『じょせつにきたわ、じゃまなアナタもいっしょに片づけてあげる』

 

 右側の主砲3門が地面の地雷を大雑把に消し飛ばし、作った道を強引に突き進む。副砲のダメージは大きいが、即死はしない。

 ガスのタンクが空になったと同時に別の方向へ道を作り、漂うガスから距離を取る。そして主砲で起爆、見習う先は同国所属のインディゴプラズマか。

 

「もんだいない、まだ地雷は…」

 

『地雷は反発剤と静電気に反応するが、オブジェクトを浮かせるレベルの静電気がどれだけのエネルギーかは想像できるよな』

 

『このあたりは、オブジェクトのそうこうばんだらけ』

 

『ガスタンクは一種類じゃあない。プラズマの高音で幾らかは駄目になるが、それでも現場で無理矢理起こした不完全な爆発なら、反発剤はばら撒ける!』

 

 タイニーリボルバーが脚部推進装置の出力を一気に上げると、戦闘の中で周囲に飛び散っていた装甲板に電気が流れる。オブジェクトは装甲自体に焼き付けた基盤から送電を行う、流れる道は既にあった。

 季節外れのカーニバルだ、花火のように爆発が巻き起こる。周囲の地雷は次々と炸裂し、金属杭の雨が双方の装甲を叩く。

 

『じらいはこれでおわり。そのしゅほうも十分みた、いっぱつ芸はもうきかない』

 

「きかないなら、避けるひつようもないだろう!」

 

 直撃は避け、爆発の被害は甘んじて受ける。副砲による攻撃でダメになっている装甲が次々と剥ぎ取られていっても、タイニーリボルバーは止まらない。

 

『アンタは高過ぎる主砲の威力に怯えていた、だから接近されると戦い方に迷いが出る。こっちは何度も叩き落としているぞ、まだ撃つ勇気はあるか?』

 

「なにを、なにを!」

 

 主砲を向けた瞬間に、五門ある主砲の一つが呼応するように向きを変える。撃てば撃ち落としてやる、そう言わんばかりの動きだ。しかし動いているのは被害の少ない右側の主砲のみ、破片を浴びて既に一門失っている左側は、二度目の戦いでは発射を見せていない。

 

 副砲で確実にダメージは蓄積している、このまま主砲も続けてもぎ取ってしまえばいい。そのためには死角になる左側に回り込み、迎撃できないところに主砲を叩き込む。それでデモリッションコードの勝ちは決まる、笑うと同時に放った爆導索が三つある脚部の一つを破壊した。

 

『じっせんけいけんでは、私がうえ』

 

「だからッ!」

 

『おくびょうものなら、たたかいかたを変えなきゃよかったのに』

 

 接近して、真正面から撃ち合って、それはこのオブジェクト本来の戦い方だっただろうか。信心組織のエリートが目を見開くのと同時に、タイニーリボルバーが甘い想定の上を行く。

 

 左側の、今まで動いていなかった主砲の一つがぎこちなく向きを変える。放った一撃が狙うのは、デモリッションコードの持つ武装のどれか。精度が期待できない以上、当たりさえすればよかった。

 

「がぁッ!?」

 

『とうこうして』

 

「な、にを!」

 

 吹き飛んだのは爆導索、街一つは軽く吹っ飛ばせる炸薬量が自らを苦しめる。それでも核に耐えるオブジェクト、球形であることも爆風を流すことに寄与し、戦闘能力は失わない。

 

 ここで一つ思い出して欲しいのは、オブジェクトの戦闘はどのように決着が付くか、ということだ。敵を一撃で破壊できる主砲と最高時速500キロの速力が合わされば、勝利条件は明確だ。

 

 有利な位置から、先に撃つ。地雷は強引な処理によって周囲から失われ、被弾と爆導索の誘爆によって50万トンの巨大が軋んで動きが遅れる。

 

 二発目を撃つのはどちらが早いか、それはすぐに分かった。地雷原のど真ん中で起きた一際大きな爆発、オブジェクトが破壊されたにしては数段大きなそれは、周囲の地震計に記録を残させた。

 

 

エピローグ

 

 

 実践経験の少ない敵エリート、過去の戦闘記録から分かった傾向、そしてタイニーリボルバーの踏ん張りに、生き残った兵士たちの尽力。正統王国軍はアラスカの大地において、三度目の迎撃を成功させた。

 

「博打に次ぐ博打だったな、インディゴプラズマのレポートから特殊ガスの間違った使い方を思いついたまではいいが…」

 

「よく死なずに済んだよ」

 

 土砂にパイプを突っ込んで内部に特殊ガスを吹き込み、出力を最大限絞った主砲のプラズマで起爆した。それによってオブジェクトはどうにか動けるようになったが、上手くいくかは半信半疑だった。

 

「…運が良かったな」

 

「地雷の読みを外してたらお終いだったぜ、マジでな」

 

 情報部隊の士官である二人は、白旗を上げて撤退していく敵を山の上から呆れた目で見ながら話していた。その手には白湯の入ったカップがある、紅茶は生き残りの兵士達と、最大の功労者に配ってしまった。

 

「ありがとうお嬢様、貴女は勝利の女神だ」

 

『めがみなんて、信心そしきみたいなこと言わないで』

 

「…すまない」

 

『でもうれしい。勝たせてくれて、ありがとう』

 

 眼鏡をかけた士官は照れながらも、山の裏へゆっくりと帰ってくるタイニーリボルバーを見る。脚部の推進装置は限界ギリギリで、機体を浮かせられているのが奇跡としかいえない状況だが、こちらに主砲を手のように振りながらゆっくりと移動している。

 

「…今回やったことは、クウェンサーレポートの焼き直しだ。だが上手く行った、行ってしまった」

 

「俺達も前線を転々とさせられるようになるかもな」

 

 彼らは通信機のマイクを切り、その場に座り込んだ。彼らはオブジェクトを破壊したという戦地派遣留学生、クウェンサー・バーボタージュの戦闘記録の調査が目的だった。

 

 正確には単純な調査ではなく、否定することが目的だった。オブジェクトはオブジェクトでしか破壊できない。だからこそ、オブジェクト同士をぶつけ合い、過去に起きたような総力戦を行わない比較的クリーンな戦争形態が維持されている。

 

 人の手で破壊できてしまっては困るのだ、少なくともこの戦争で利益を得ている勢力の人々は。だからこそ彼らはその仕事を押し付けられたわけだが、否定するどころか肯定してしまった。

 完全に人の手で破壊したわけではないが、それでもこの戦争に生身の兵士が介在し、負けをひっくり返す方法を示してしまった。

 

「まあ、今は何だっていいさ。生き残ったことを喜ぼう」

 

「この戦争がどう転ぶのか、分かんないってのにか?」

 

「オブジェクトが否定されようと、あの兵器が主戦力で無くなる時なんて来ないさ。アレ以上の兵器が作られた時か、それとも…」

 

「それとも?」

 

「街一つを吹き飛ばせる新兵器として生まれたが、想定以上に深刻だった放射能汚染で使えなくなった核兵器のように、オブジェクトを今みたいに使えなくなる理由が見つかった時さ」

 

 彼らはもう一度白湯を啜り、勝っても負けても終わらない戦争に中指を立てる。世界に致命的な限界が来るまで、この図式は変わらないだろう。もし変わる時は、世界が終わる時かもしれないが。




居たかもしれない兵士たちの記録、みたいな話が好きなので、二次創作を書くと大抵同じような雰囲気になってしまう…!たった五話でしたが、楽しんでいただけたら幸いです。評価とか感想とか頂けると嬉しいっス。

ちなみに、ヘヴィーオブジェクトは現在20巻まで発売中です。とっても読みやすくスケール感もあり、各巻で終わるストーリーながらしっかりと伏線が積み重なり、最後はスッキリ終わる。非常にオススメです。

ヘヴィーオブジェクト談義してぇ〜!
Twitterの返信欄とDM空けときますわ、感想で殴り合おうぜ!みんな読めよな!!
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