鮫子のヒーローアカデミア   作:鯖缶詰

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打ち切り
十ヶ月のダイジェスト兼エピローグ


多古場海浜公園での地獄のような日々が始まった。

季節は巡り、吹き付ける風が熱を帯び、やがて凍てつくような寒さへと変わっていく。その残酷な時間の経過の中で、緑谷出久という少年の肉体と精神は、鮫子という名の名工によって徹底的に打ち叩かれ、魂の奥底から作り替えられていった。

 

【修行初期:吸着の完成と水面の壁】

 

修行開始から三ヶ月。出久はついに、海浜公園の護岸コンクリートを、重力を嘲笑うかのように垂直に駆け上がることができるようになった。足の裏にチャクラを一定量、かつ途切れさせることなく集中させる。初めて壁の頂上で夜風を浴びたとき、出久の瞳からは、長年彼を縛り付けていた「無個性」という呪縛が剥がれ落ちるような涙が溢れた。

 

しかし、その先に待っていた「水面歩行」は、彼の自信を無慈悲に粉砕する絶望の壁だった。常に形を変え、反発の強度が揺らぐ水面。そこにチャクラを適格に放出し続ける技術は、未だ習得には至っていない。

「水は生き物じゃ。お前の焦り、恐怖、心の乱れがそのまま水面に伝わっておるぞ」

水面に泰然と立つ鮫子の嘲笑を浴びながら、出久は何度も冷たい海へと没した。鼻を突く塩水の味は、己の未熟さを突きつける苦い味だった。

 

【修行中期:禁忌の知識、八門遁甲への畏怖】

 

ある嵐の夜。叩きつける雨の中、鮫子は出久に、経絡系に存在する八つの「門」――『八門遁甲(はちもんとんこう)』の概念を伝授した。

「肉体のリミッターを強制的に外す禁断の業じゃ。今の軟弱なお前が使えば一瞬で肉体が崩壊するが……いつか、お前が世界という名の理不尽を叩き潰すための切り札となるはずじゃ」

その言葉の背後にある、死の気配。出久は「限界を超える」という言葉の真の意味を悟り、そのあまりの重さに震えた。だが、それは後に彼が「個性」という圧倒的な才能に立ち向かうための、唯一にして絶対的な戦略的希望として、彼の脳裏に深く刻み込まれた。

 

【食の闘争:愛が満たす肉体の覚醒】

 

並行して行われたのは、鮫子の水分身による、執念とも言える徹底した栄養管理だ。

毎食、三段重ねの特大タッパーに詰められた、高タンパク・低脂質の「アスリート専用弁当」。

「食べろ出久! 筋肉はお前の努力を裏切らんが、飯を食わねば筋肉は育たん!」

当初、その膨大な量に吐き気を催していた出久だったが、一口ごとに鮫子の献身を感じ、それを全て力へと変換しようと歯を食いしばった。十ヶ月で、彼の体重は筋肉のみで十キロ以上増加。鏡に映る自分の厚くなった胸板と、腕に浮き出る太い血管を見るたび、彼は自らの中に「ヒーロー」としての器が構築されつつある実感を噛み締めた。

 

【体術への特化:印の挫折と組手の地獄】

 

当初、鮫子は自身の得意とする「水遁」も教え込もうと試みた。しかし、ここで出久は大きな壁にぶつかる。

複雑怪奇な『印』の結び。コンマ数秒で十二支の印を完璧に切り替える指の動きに、出久の神経はついていけなかった。

「……ごめん、鮫子。僕、やっぱり『印』は無理みたいだ……。自分には才能がないのかな」

俯く出久の頭を、鮫子は荒っぽく撫でた。

「シャシャシャ、よい! 潔い決断じゃ。ならば方針転換といこう。お前は術に頼る必要はない。チャクラの全てを身体強化と、その拳を叩き込む一点に注ぎ込め!」

 

忍術を諦めたその日から、修行はひたすら水分身たちとの、骨の軋むような泥臭い組手へと移行した。打撃無しの組み合いから始まり、重心の制御とチャクラの維持を脳ではなく、脊髄に直接書き込んでいく。

準備期間の最後のほうには、ようやく本格的な「打撃戦」が解禁された。複数の水分身が放つ容赦ない連撃を、チャクラで研ぎ澄まされた感覚で捌き、一瞬の隙に反撃を叩き込む。

「無個性」の出久が、天賦の才能を持つ者たちと渡り合うための唯一無二の武器。それは、魔術的な術理を捨て、純粋な身体能力を極限まで引き上げた「忍の体術」として、彼の血肉に結実していった。

 

【終盤:静かな覇気と再生した砂浜】

 

そして迎えた十ヶ月後。

かつての卑屈な猫背は完全に消え去り、出久はただそこに立っているだけで、風に揺れる大木のような、深く静かな「安心感」を纏うようになっていた。それは他者を威圧する刺々しいものではなく、嵐の中でも決して折れない強靭さと、周囲を包み込むような包容力が同居した、不思議なオーラだった。

 

多古場海浜公園のゴミ山もまた、彼の十ヶ月の汗と執念の結晶として姿を消していた。出久は毎日、巨大なリアカーを引き、チャクラを全開にして廃棄物の山を運び出し続けた。近くのリサイクル業者と交渉し、自らの労働を現金へと変える逞しさも身につけた。

「軍資金まで稼ぐとは、逞しくなったものじゃな」と笑う鮫子の横で、出久が清掃し、彼女の水遁で磨き上げられた砂浜には、今や眩しいほどの白砂が戻っていた。

 

「出久、準備はいいか。今日はお前の夢が、現実へと牙を剥く日じゃ」

「……うん。行こう、鮫子」

 

出久の背負ったリュックには、今日も鮫子の愛が詰まった重たい弁当箱と、自らの汗で稼いだ成果、そして何よりも揺るぎない不退転の決意が入っている。

目指すは、憧れ続けた雄英高校。

緑谷出久の、理不尽をその拳でねじ伏せるための戦いが、今始まる。




出久と鮫子の十ヵ月間のダイジェスト兼エピローグ
原作介入にあんまりネタが思い浮かばないのでとりあえずここまで。
雄英高校編も書きたいけどキャラが一気に増えるので影の薄くなるキャラを書きたくないので、いまですら爆豪をもてあましてる。
AIで自分の妄想を形にできるのは楽しかった。
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