えっちなお兄様「ねえ、イケないことしよっか♡」 作:HE至上主義者
「……」
「……」
学校を出た私達は言葉もなく並んで歩いていた。雨は相変わらず強く降り続き、地面を叩く音がやけに大きく聞こえる。そのせいか、私とお兄様の間に流れる沈黙がより際立って……
「……」
「……っ」
(き、きまずい……!きまずいわ……!)
結局、差し出された傘をそのまま受け取り、意図せずお兄様と一緒に帰る羽目になってしまった私はあまりの気まずさに泣きそうになっていた。隣にいるのは一緒に暮らしているお兄様で、それこそ数週間前まではこうして一緒に帰るのが当たり前だったはずだ。なのに今はこうして隣を歩くだけで息が詰まりそうで――
(……って言うか、お兄様もなんで学校を出てからずっと黙っているの!?いつもだったらしつこいくらい話掛けてくるのに……もしかして最近露骨に避けていた事を怒っている……?いや、怒っていたらそもそも迎えになんか来るはずが……だったらどうして黙って……ああもう!何でもいいから喋って下さいなお兄様……!!)
お兄様に話し掛けない自分の事は棚に上げてそんな風に八つ当たりじみた事を私が考えていた。その時だった。不意にお兄様の口から小さな……雨音にかき消されそうなほど小さな呟きにも似た声が溢れ落ちたのは。
「……ねえ、ユリちゃん。俺何かしちゃったかな?」
「え?」
「……いや、ほら最近ユリちゃん俺の事露骨に避けているでしょ?だから俺が気が付かないうちにユリちゃんに何か嫌な事をしちゃったのかなあ~って思って……ねえ、ユリちゃん俺一体何をしちゃったのかな?」
「え?え?いや、お兄様は何もして……」
「……だったらなんでだ?」
「お兄様?」
お兄様の口調に違和感を覚え、私は思わず顔を上げた。その瞬間――
「いっ!?」
不意に視界が揺れ、気づけば、お兄様に腕を掴まれていた。
「お、お兄様!?な、何をっ……!?」
「……だったら、なんで俺のことを避ける?何もないなら、避ける理由なんてないはずだ」
掴まれた腕が熱い。決して乱暴に握られているわけではない。それでも逃がすまいという意思だけは、痛いほど伝わってきた。
「お、お兄様……」
こんな顔、見たことがない。いつも穏やかに笑って、三ヶ月前に家族になったばかりのほぼ赤の他人である私をまるで本当の兄弟のように気に掛けてくれる優しいお兄様が。その表情からは余裕が消え、真っ直ぐな視線だけが私を捉えていた。
「答えて」
静かな声だった。怒鳴っているわけでもない。けれど、その一言には逆らえないほどの圧があった。