旅人には荷が重過ぎる   作:後野茉莉

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 沢山の人に見られるのも恐い。誰にも見られず風化してしまうのも怖い。こわいものばかりの駄目人間、後野茉莉です。前回は一日で二話も投稿しましたが、次からはそうはいきません。きっと私がこれを投稿する頃には一週間も経っているはずです(適当)。ですから期待などせずに、パーっとトイレにでも行くような気軽さで評価0連打をよろしくお願いします。




最高の仲間

 池の、ちょうど中心にある小さな島。貴女達はそこで、不思議な力を発し続けている大きな像を──七天神像を見上げていた。

 

 「これが七天神像だぞ。ここは風神の領地だから、この七天神像は風神像って呼ばれてるな」

 

 パイモンはそう言いながらペタペタと風神像に手を当てる。

 

 「なんで風神の領地に連れてきたのか、だって?」

 「ほら、言葉は詩となり風と共に流れるだろ……その中にきっとおまえのお兄さんの情報があると思うんだ」

 「もちろん、神が答えてくれるかは、やってみないとわからないけどな……」

 

 パイモンは変わらず風神像を触り続けている。

 

 「言葉は詩となり風と共に流れるだなんて、随分と詩的な言い回しだね」

 「何言ってるんだ?ただの慣用句だろ」

 

 星空の向こうから来た貴女には馴染みがないが、テイワットでは極普通の言葉らしい。知らないと言うのも癪だから、とりあえず肯定でもしておこう。

 パイモンは悪びれもなく風神像を触り続けている。

 

 「……そうだね。ところでパイモン、いつまで風神像を触り続けるつもりなの?」

 

 パイモンの顔は、貴女のその言葉に決まりが悪いような表情に変わった。

 

 「ええっと、これはだな。なんか最初に見た時に表面がツルツルだったから触っちゃって……」

 

 貴女はパイモンに訝しげな目を向ける。

 

 「でも、ほんとにスベスベなんだぞ……そんな目で見るんだったら、おまえも1回触って見ればいいじゃないか!」

 

 パイモンは風神像の触り心地を強調するべく、風神像に両の手を当て、上下左右に動かしている。

 貴女は仕方なく、パイモンの言う通りに風神像に触れる。

 気のせいだろうか、貴女の手の中で風が渦巻き、自身の中に入ってくるような感覚を覚えた。

 

 「なんだこれ、風が出てきたぞ!?」

 

 気のせいではなかったらしい。現にパイモンは、貴女の手を傷がないかを直接貴女の手を触って、念入りに確認している。

 

 「大丈夫みたいだな。それにしても、オイラが触ってたときは風なんて出なかったのに、なんで旅人が触ったときは出てきたんだ?」

 「それについてなんだけど……」

 

 そう言って、貴女は先程の感覚を思い出し、掌に力を集中させ、風が巻き起こった。

 パイモンはそれを見て口をパクパクとさせた後、熟考する素振りを見せ、再度口を開いた。

 

 「もしかしておまえ、風元素が使えるようになったんじゃないか?」

 

 風元素。確かここまで来る道中でスライムが使っていた力だ。しかし、それはスライムだから使えるものではなかっただろうか?貴女はそのことをパイモンに話す。

 

 「全ての元素に言えることだけど、それぞれの元素に対応する魔力機関を持ってさえいれば元素を操ることができるんだぞ」

 「だから、おまえもその魔力機関を元から持ってたんじゃないか?ただ、普通、人間は持ってないし、なんで風神像に触れたら急に使えるようになったのかは分からないけど……」

 

 パイモンが言うには、どうやら私は魔力機関というものを持っているらしい。そういえば、パイモンは普通、人間は魔力機関を持っていないと言った。なら、普通ではない人間もいるということではないだろうか。

 

 「ええと、神の目を持ってる人間は元素を使えるんだ。あっ、神の目っていうのは神から授けられる外付けの魔力機関だぞ。」

 「神の目、オイラも貰えるもんなら貰いたいなぁ……もしオイラが神の目を手に入れたら、水スライムは一匹たりとも近寄らせないぜ!」

 

 神。その言葉に貴女は、唯一の肉親を奪い去った神を思い浮かべた。貴女の手に入れた力は貴女由来のものであるらしいが。

 

 

 ……もし、これが神の目だったら。もし、その神の目があの神から授けられたものだとしたら。もし、この力を得ることさえ、あの神の手のひらの上だとしたら。

 ……どうして、私は解放されたのだろう。どうして、私だけ解放されたのだろう。どうして、共に解放しなかったのだろう。どうして、どうして、どうして、どうし「なんにせよ、この世界の元素はおまえの祈りに応えた。いい兆しだと、オイラは思うぞ。」

 

 「だいぶ日も暮れてきたことだし、そろそろ野営地を作ろうぜ。あ!あそこにある森なんてどうだ?良い薪になりそうな小枝が沢山見つかるかもしれないぞ!」

 

 「?どうしたんだ旅人、変な顔して」

 

 ……パイモンは、いつもそう。私が落ち込んでいることも知らないで、出会ったときからずっと。

 お兄ちゃんのいない旅を続けて心が折れそうになったとき、握っていた釣竿を揺らして、パイモンはやってきた。それからも、事あるごとに私が落ち込むと、パイモンは何気ない話を私に降ってきた。

 

 「……なんでもないよ。ただ、パイモンは最高の案内役だなって、そう思っただけ」

 「オイラがテイワット1のガイドなのは当然のことだろ?そんなことより早く行くぞ。夜になってからだと薪拾いなんてできないからな。たく、前におまえが言ってたじゃないか」

 

 「さき、行っとくからなー!」

 

 貴女は再び、声には出さずにパイモンに感謝を伝えた。

 

 ……ありがとう、パイモン。あなたは、私の最高の仲間だよ。

 

 先を行くパイモンの後ろ姿が夕日と重なる。

 

 貴女は兄のいない旅を続けられる気がした。

 

 

 

 

 

 「うわぁ!風スライムだ!?」







パイモンは最高の仲間。
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