最古の英雄王になりたくて!   作:sk20100626

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第17話 吸血鬼の姫vs陰の実力者vs黄金の王

無法都市の天辺。崩れゆく「紅の塔」の最上階では、数千年の眠りから覚醒した吸血鬼の始祖、エリザベートがその圧倒的な魔力を解放していた。

彼女の背後に広がるのは、夜空を血の色に染める「赤き月」。そこから降り注ぐ魔力は、都市中の生命を吸い尽くさんとする死の波動となって広がっていた。

 

エリザベートが細い腕を振るえば、凝固した血の槍が空間を埋め尽くし、周囲の構造物を塵へと変える。だが、その絶望的な破壊の渦中に、平然と立ち続ける二人の「異物」がいた。

 

「……フン、目覚めて早々、騒々しい雑種だ」

 

黄金の輝きを放つ男、ギルガメッシュ。彼は蔵から呼び出した『黄金の防壁』で血の奔流を難なく弾き、退屈そうに首を鳴らした。

 

「……ギル、君が派手に宝具を撃ち込むから、彼女、すっかり怒っちゃったじゃないか。……でも、いいよ。この『絶望的な状況で三強が対峙する』シチュエーション。……120点だ」

 

漆黒のコートをなびかせる男、シャドウ。彼は愛刀を抜き放つこともなく、ただそこに「存在」しているだけで、エリザベートの放つ死の波動を霧散させていた。

 

「……血」

 

短く、枯れた声が一度だけ漏れる。

直後、爆発的な魔力の奔流が塔を粉砕し、赤き月の光と共鳴して都市全域を飲み込もうとした。並の魔剣士であれば、その立ち姿を見ただけで精神が崩壊するほどの「死」の気配。

 

だが、その沈黙の威圧を、二人の男が嘲笑う。

 

「……フン、喋らぬか。その方がマシだ。雑種の嘆きなど、王の耳には不快なだけだからな」

黄金の甲冑を纏ったギルガメッシュは、蔵から呼び出した黄金の椅子に座り、優雅に脚を組んだ。

 

「……いいよ。沈黙の始祖、言葉ではなく力で語るスタイル……演出としては最高だ。……ギル、君が派手にやりすぎる前に、僕が少しだけ『影の洗礼』を授けてあげよう」

漆黒のコートをなびかせるシャドウは、愛刀に指をかけ、至福の悦びに浸っていた。

 

エリザベートが静かに右手を上げると、空間が歪んだ。

数万、数十万の血の弾丸が、真空を切り裂いて二人に迫る。言葉による宣告も、構えもない。ただ「死」という結果だけが飛来する。

 

「――この(オレ)に蚊程度の血を浴びせるか」

 

ギルガメッシュが指先を弾く。

背後の空間が黄金に波打ち、無数の武具が射出された。

ドォォォォォォォォォォォォン!!

 

一振りの宝具が血の弾丸を数百ずつ相殺し、そのままエリザベートへと突き進む。彼女は避けない。ただ霧へと姿を変え、宝具を透過させる。その表情は依然として無機質であり、痛みすら感じていないかのようだ。

 

「……ほう。霧に逃げるか。ならば、その霧ごと蒸発させてやろう」

 

ギルガメッシュは蔵から一振りの瓶を取り出した。神代の聖水が詰まったその宝具を、黄金の波紋が弾丸として射出する。

ジィィィィィィィィ!!

聖なる飛沫がエリザベートの霧状の体に触れた瞬間、彼女は初めて顔を歪め、苦悶の沈黙と共に実体化を余儀なくされた。

 

「……っ」

 

「――そこだ」

影の中から、シャドウが跳ねた。

 

シャドウの抜刀は、もはや光の速度に近い。

エリザベートは瞬時に血の盾を幾重にも展開したが、シャドウの漆黒の刃は、その「概念」ごと盾を両断した。

 

「……言葉がないのはいい。だが、少しは驚きを見せてくれないかな? せっかく僕が、こんなに格好良く影から現れたんだから」

 

シャドウの刃がエリザベートの肩を裂く。

彼女は言葉を返さず、自身の傷口から溢れ出た血を巨大な鎌へと変え、カウンターの一撃を放つ。

 

ギィィィィィィィン!!

 

「……おっと。危ないね」

シャドウはそれを「たまたま」首を傾げただけでかわし、彼女の懐に潜り込んで囁いた。

「……真なる闇の底。そこには血すら届かない」

 

シャドウが指を鳴らすと、エリザベートの影そのものが牙を剥き、彼女の足を拘束した。

「……!?」

 

「……フハハハハ! 良いぞ、兄上! その捕縛、の『天の鎖(エルキドゥ)』の代わりにはならんが、余興としては十分だ!」

ヴィマーナを駆り、上空からギルガメッシュが笑い飛ばす。

 

エリザベートは、自身の魔力が「黄金」と「漆黒」という二つの理外の力によって、一方的に削られていく事実に、初めて恐怖に似た感情を抱いた。

彼女は天を仰ぎ、赤き月から直接魔力を引き出す。

スタジアムが、都市が、赤い光に染まり、彼女の背中に血の翼が展開された。

 

「……すべて、消えろ」

 

静かな呟き。それが合図だった。

都市全体を押し潰すような、極大の血の爆発が巻き起こる。

 

「……フン、やっと王を本気にさせるか、雑種」

ギルガメッシュは、蔵から「それ」を取り出した。それは吸血鬼を殺すことのみに特化した剣だった。

十字架の剣(ガルガーノ)

 

「……いいね。最後はやっぱり、このスケール感でなきゃ」

シャドウもまた、虚空へと高く舞い上がった。

「……ギル。君の輝きに負けないくらいの『力』、見せてあげるよ」

 

シャドウの魔力が、漆黒の極光そのものへと変貌していく。

 

エリザベートは、自身の全力の攻撃が、目の前の二人の「準備運動」に過ぎなかったことを悟る。

彼女の眼前に広がるのは、空間そのものを削り取る黄金の旋風と、すべてを無に帰す漆黒の波動。

 

「――アイ・アム……」

 

「――裁きの時は来た。……吸血鬼の姫よ(オレ)が道を示してやる」

 

二人の魔力が衝突し、赤い月の光は一瞬にしてかき消された。

エリザベートは、ただ立ち尽くしていた。彼女の誇りも、渇きも、数千年の執念も、この二人の「遊び」の前ではあまりに無力だった。

 

「――リカバリー――アトミック!!」

 

「――十字架の剣(ガルガーノ)!!」

 

カッ!!

 

音が消え、世界が真っ白な光に包まれる。

赤い月は粉々に砕け、紅の塔は土台ごと消失した。

始祖エリザベートは、その圧倒的な力に押し潰され、元の少女の姿へと戻って瓦礫の中に沈んでいった。

 

夜明け前の静寂。

瓦礫の山となった無法都市の中心で、二人の少年が並んで座っていた。

 

「……ふぅ。……ギル、最後のあれ、ちょっと派手すぎ。僕のコート、またクリーニングに出さないと」

シャドウは、ボロボロになったマントを翻しながら、不満げに笑った。

 

「……フン、避けきれぬ貴様の未熟よ。……おかげで、(オレ)の蔵にあった『最高の寝床』のストックが一つ減ったぞ。……弁償しろ、雑種」

 

「……はは、王様は相変わらずだね」

 

二人の最強は、沈みゆく月と昇りゆく太陽を眺めながら、次の「設定」を練り始める。

エリザベートという沈黙の脅威ですら、彼らにとっては、終わらない遊び場の一場面に過ぎなかったのだ。

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