彼女曰く心霊スポットではないから一度こういう所を行って見たいとの事で行くことになった。
こちらは身内で使用したクトルゥフ神話TRPGのシナリオ【夢だった跡地】のウルトラマンendをせっかくならと思い投稿した物になります。
他サイトにも夢だった跡地のタイトルの小説がありますが、私の物ですのパクリとかではありません。
「ねぇねぇ、廃墟探索しない?!」
いつものように遊んでいると、普段は真面目な彼女が興奮気味にやってきた、どうやら何か見つけて来たようだ。
「いきなりどうした?」
「私の知り合いから有力な情報をゲットしたのよ」
「どうせSNSのタイムラインに流れてきた情報だろ?」
ちなみに以前「とある情報筋から得た情報なんだけど……」と神妙な顔で言って情報元は雑誌か何かだったので正直大した情報は期待していない。
「よく分かったじゃない、何と今回は廃墟の遊園地、名前はドリームランドって言うの!」
「なんか随分古い名前だな」
「なんでも東京のアレより古い遊園地なんだって」
「……へぇ」
「時代が進むごとに娯楽が多様化していって、年々客足が遠のいていたけど、大阪にできたアレでお客さんが一気に減って15年くらい前に閉園したんだって」
「なんかまた一つ頭が良くなったわ」
「どういたしまして」
彼女はいろんな趣味を持っており広く浅い色々な知識を持っていて、今は廃墟探索にハマっているようだ。しかし心霊系や怖い物は苦手で廃校や廃病院は怖いとの事で実際に行く気はないようで動画サイトで見る程度で満足していたようだが、どうやら今回はそうもいかないようだ。
「ちなみに場所はどの辺?」
「隣の県の中心からすこし離れた所にあって、ここからならかなり近い方そんなにかからないしで行ってみようよ」
「てかそこって心霊スポットとかになってないの?」
「調べた限りだとなってるっぽいけど目撃例とか近くに怪しいものは無いかな、とりあえず廃墟だから心霊スポットになってる感じだね、オカルト的な物を強いて言うなら世界遺産のお寺とかがあるくらいかな?」
「ならいい、のか……、じゃあ今度の休みに行くかぁ」
「やったぁ!、絶対だからね、絶対に予定空けておいてね!」
「はいはい」
後日、休みを合わせて件の廃墟に向かう事になった。
主要駅なので駅の外は都会で見渡しても様々なビルが乱立しており、とても近くに廃墟の遊園地があるとは思えない。
「……本当にあるのか?」
「これがあるんだなぁ、とりあえずここからバスが出てるからそれに乗って目的地に向かいましょう」
「ちょっとまって」
「何?」
「いやこんな真昼間に行ったら警備とかにつかまったりしないか?」
「大丈夫なんじゃない、というかバスの時間とかそっちは大丈夫かな」
バス停で時間を確認してみると1時間に2本あり、かなり遅くまで運行しているようで駅の近くで遊んでいても問題はなさそうだった。
「……案外早くついたな」
「そうね……」
バスに乗り込んでから直ぐに都会の喧騒がなくなり3分ほどで自然が多く見え始め、おおよそ10分程で目的の近くのバス停に到着した。
「とりあえずあそこで時間潰そうよ」
「まぁそうだな」
彼女が近くのファミレスを指定する、夕飯にはまだまだ早いが時間をつぶせそうな所はそこしかないようだ。
「そろそろいけるんじゃない?」
「いくかぁ」
時刻は日没からしばらく経過した程だ、さすがにもう警備などはいないだろう。
長居したせいで少し高くついた料金を精算してファミレスを出る、外にはさきほど利用したバス停とコンビニと閉鎖されたドリームランドの入り口がある、後は自然が広がっておりどこか寂しさを感じる。
「さぁ、いくわよぉ!」
そんな雰囲気とは正反対に彼女のテンションは高い、ついでに自分も少し上がってきた。
中への侵入は横道から簡単に入ることができた、一応立ち入り禁止なので厳重にしてあると思っていたがそうでもなかった。
至る所から雑草が生えたアスファルトの道を進んでいく、かなり放置されているようでひび割れが多く躓いてしまいそうになる。
すこし歩けば瓦礫の山になっている入場ゲートを通り抜けるとドリームランドの内部入れたようだ。
「おぉすごい」
初めて廃墟に侵入した事がうれしいのか大きな声が出てしまったようで、彼女が慌てて口元を抑える。
「確かにすごいな……」
自分も廃墟探索は初めてなので気持ちは分からなくもない。
「じゃあ順番に回っていくわよぉ」
入場ゲートだけでも見れる所はいくつもあるが崩れている所が多く進めない所が多い、従業員用の通路なども通れるのでまるでゲームのダンジョンを探索しているみたいだ。
「何かお宝とか無いかなぁ……」
「うーん時間も経ってるし無いかなぁ」
瓦礫から何か見つけようとしているが目ぼしい物は見つからない、機械類も破壊されており安易に触ってしまえばケガしてしまいそうになる。
「あんまりないから次行こう!」
彼女が飽きてきたようで次を目指す。
次はアーケード街跡地だ、この辺の建物はスプレーによる落書きが多く見られ、かなり痛々しいものになっている。
「廃墟はいいけどこういのは嫌だね、こっち行こう」
彼女も落書きに関しては嫌悪感があるようで落書きが少ない建物へ侵入していく、中はもともとお土産屋さんだったようで木でできた棚が散乱している。
「ココも大した物が残ってない、何にもないね」
「だねぇ、先駆者が粗方持って行ったんだろうな、アレなにこれ?」
何かないかと探していると古びた山の中に汚れ一つ無いメダルを見つけた。
「どうしたの、それウルトラメダルじゃん」
「ウルトラメダルって?」
「以前に放送されてたウルトラマンに変身するためのアイテムだね、でもそれだけだと変身できないからとりあえず持ってても良いんじゃない」
「そうなの?」
「コレを使うウルトラマンが放送されたのはドリームランドが閉園してからずいぶんたってからだし、多分私達みたいな廃墟探索に来た人が落としたんだと思う」
「じゃあ後で警察なりで落とした人に届けないとね」
「そうだね」
「他は……、特にないね」
「他に何にも無いのならアトラクションの方に行こう!」
「それもそうだな」
アーケード街で沈みかけた気持ちを切り替えて本命の所に向かう。
アーケード街を抜けて中央にある噴水跡に到着した。
「いいじゃん、すげぇじゃん」
「ほえー」
錆び付いたアトラクションは満月の光が当たって神秘的な様相を呈しており、廃墟の良さが分からなかった自分でさえコレは良いものだと思えるようだ。
「どうよ、すごいでしょ」
「さすがにこの光景を見たらもう否定はできないな」
「でしょー」
満足そうに彼女が笑う、周りが廃墟でなければ良いのにとか思ってしまった。
しかしそれからは地獄だった、朽ちて崩れそうな足場や悪臭の立ち込める部屋、触ったら今にも全部壊れそうな物が多くて迂闊に動けなかった、彼女は興奮して分からなかったのか小走りになりながらじっくりと見て回っている、そうやって無邪気に走り回っていると危なっかしくてしょうがない。
「おいおい大丈夫か?!」
「大丈夫大丈夫私軽いから」
そういって軽快にジェットコースターのレールに降りた、普通なら危険で立ち入る事ができない所に足を踏み入れる、もっともこの廃遊園地自体が立ち入り禁止だが……。
「本当に大丈夫、か?」
「大丈夫だって、こっち来なよ」
「お、おう」
恐る恐る自分もレールに乗ってみる。
「……何かいいな」
「でしょー」
レールに立ってみると背徳的というか何と言うか不思議な気分になった。
「行ける所まで行ってみようよ」
「いやさすがに危ないって……」
「行けるっしょ」
テンションが上がった状態なのでこうなってしまえばもう彼女を止められない。少し進みだすと大きな音と共にレールから落下した。
「ちょっ、おい大丈夫!?」
気を付けつつ慌てて彼女が落ちた所まで向かう。
「ヘーキヘーキ、下が柔らかくて助かったわ」
レールがスタートしたばかりの所だったおかげでそこまで高くもなく、地面も柔らかかったおかげでケガが無かったようだ。
「こっちおいでよ、こっからならすぐに出られるよ」
「……それもそうだな」
暗くて地面が見えないが彼女もいることだし勇気を出して飛び込む、確かに地面が柔らかい土のようで楽に着地ができた、確かにすぐに出られそうだ。
「流石に帰るか」
「……そうだね」
コースから落下すると上がっていたテンションが下がり冷静になり帰る雰囲気になった。
崩れた入場ゲートを通りドリームランドを出る、後は少し進んで立ち入り禁止の看板をよけて出るだけだ。
「……これおかしくない?」
「……だね」
もう5分は歩いたハズだが一向に出口である立ち入り禁止が表示してある看板が見えてこない。
「一旦引き返すか?」
「そうだね、高い所から見れば分かるかも」
そうして一度引き返す事になり後ろを振り向くとすぐ崩れた入場ゲートが見えた。
「もしかしてココに閉じ込められた?」
「っぽいね」
「ねえ、試しに走ってみて」
「おう」
試しに出口に向かって全力で走ってみるが一向に景色が変わる様子はない、試しに振り向いてみると彼女が腕を組んで立っていた。
「アレ?」
「これは完全に閉じ込められたね」
「てか動いてた?」
「私の目には止まっているように見えたけど振り向いた途端に息切れしていたから多分走ってたんじゃない」
「つまり出られないって事で閉じ込められたと」
「それで確定ね、さてどうやって脱出するか……」
「だなぁ……」
怪奇現象に遭遇し、落ち込んでいる自分に対して彼女の方はどう攻略してやろうかとテンションが上がっているようだ。
「うーん、どうやって出るんだろ……」
「何か分かるの?」
「何にも分からないよ、こんな体験は初めてだし、そもそもこういった状況はゲームで実況プレイとかでしか見たことないし……、とにかくしらみつぶしに探索するしかないかな」
「マジかぁ、まぁそうだよなぁ……」
再び入場ゲートに侵入して何か手がかりがないか探索を始める。
「……同じ、かな?」
改めて探索したが、手がかりになりそうな物は見つからない、特に注意して見ていたわけでは無いのだが先ほどとの違いは無いように思える。
「次行こ」
次はアーケード街に行ってみたがこちらも特に目ぼしい物は見つからなかった、前回行かなかった落書きが多くある建物にも行ってみたが残骸と呼べるような物しかなかった。
「せめてマップかパンフレットとかあれば……」
「昔の遊園地だけどホームページとか残ってないかなぁ」
「確か残ってたような、でも何故かスマホは使えるのね」
「使える方がいいんじゃね?」
「こういうのって大体使えないものなんだけど、でも使えた所で助けを呼んだ所で信じてくれるかどうかだし、それに調べ物ができるのなら便利なもんよ、謎解きってリアル知識を要求してくるのよ、北欧神話とか仏教とか星座とかね」
スマホが使える事でやる気が回復したのか饒舌になった、自分はまだテンションが上がっていないので「お、おう」としか答えられなかった。
再び噴水跡まで戻ってきた。
「喉乾いてきた」
「だなぁ」
時刻は既に日付が変わっており、それなりの時間が経過していた。今いる所は廃墟なので当然食料などを手に入れ手段はない。そういえばドリームランドのすぐ外にはコンビニがあったが出られないので意味はない。
「お腹も空いてきたし早く出ようよ」
「そうだな……」
早く出ていこうとやる気を出すと遠くからこちらに歩いてくる足音が聞こえてきた。
「……?!」
ファミレスを出てから人と会っていないのでおそらく自分たちと同じで閉じ込められた人がテンションが上がった彼女の声に釣られて来てしまったのだろうか、それとも別の何かだろうか。
「あなた達も迷子なんですか?」
彼女が臆することなく向かってきた人に対して話しかける。
「私達は迷ってはないですよ?」
向かってきたのは男女の2人組で装飾品が多かったであろうボロボロの軍服を身に着けている、しかし髪の毛や肌には一切の汚れはなく綺麗で普通の服装をすれば映えるであろう美形をしている。
「あの、ココから出られる方法って知っていますか?」
「閉園ならまだ時間がありますよ」
「……閉園過ぎて残っていたらどうなるの?」
「みんな楽しんでいますよ」
「……あなた達の服は随分ボロボロね」
「もうずっと新しい物が来ないんです」
どうも会話が出来ていない様子で彼女が少しイライラしているようだ。
「……で私達にはどうしてほしいの?」
「でしたらアトラクションを回ってはいかがでしょうか?」
「……これは全部クリアすれば脱出できるかもしれない、アトラクションは全部でいくつあるの?」
「アトラクションはたくさんあって僕たちも把握しきれていないんだ、でも見たら解説できると思うよ」
「本当について行くのか?」
「こういうのはやった方が良いの、変なプレイなんかしたら即ゲームオーバーなんて事もあるんだからね」
「そうなのか?」
「そうなの!」
「お、おう」
「それじゃあ行くわよ、一番近いアトラクションは何?」
「ココから一番近いアトラクションはムーンビーストゴーカートだよ」
「ムーンビースト、ドリームランド……あ~……」
その名前を聞いた瞬間に彼女が顔から余裕や楽しむといった感情が消えていく。
「何か知っているのか?」
「詳しく話したら余計な事になるから終わったら話すね、とにかく今は目の前のアトラクションをクリアする事に集中した方がいいわ」
「うっす」
2人組の案内で近くのアトラクションに案内された、廃墟探索の時には無かったハズだがいつの間にか大きなサーキットとも思えるような場所がありそこに到着した。
「ここがムーンビーストゴーカートだよ、ルールは簡単、ムーンビーストの攻撃を回避してゴールするだけ、大丈夫ダメージは終わったら無かった事になってるから」
コースの方を見てみると見たこと無いような生き物が走っているカートに向かって槍を射出していた。
「……アレやるの?」
「やるしかないでしょ……」
まるでテストを受けているような彼女の表情に生半可な気持ちではダメだと切り替える。
受付に向かうといつの間にかカートに乗り込んでいた、車の運転はゲームセンターのレースゲームを少ししかやった程度なので操作性がいまいち分からず不安定な走行になってしまった、しかしその不安定な運転のおかげで槍は全部回避できたようで何とかゴールまで到達した。
「うーん案外楽しかったかも」
最初こそ苦戦していたが徐々に操作になれてスピードも出せるようになったので段々と楽しくなっていった、そう思った瞬間にゴールだったので少し惜しい気持ちもある。
「私は散々なんだけど……」
彼女の方を見ると彼女自体は無事だがカートがボロボロになっておりもはや走行も不可能ではないかと思えるほどだ。おそらくかなり量の被弾したのだろう。
「少し休んでから次行きましょう、出来れば自分で歩ける所が良いわ」
「でしたらお化け屋敷なんてどうでしょう?」
「え、そこは……」
「いいじゃんお化け屋敷といえば定番だし」
そういえばお化け屋敷は行った事がないし、今のココから出られないという怪奇現象と比べればどうという事は無いだろう、どうせ作り物だろうし。
彼女と少しばかり休憩した後に2人組の案内でお化け屋敷に向かう、中は迷路になっており、出てくる物も怖いというよりも気持ち悪いと言った方が正しい見た目をしていた、脅かすだけで襲ってこないので安心して見られるハズだが彼女が全力で走ってしまうのでかなり早く終わってしまった。
「大丈夫か?」
「無理かも……」
ホラー系は元々苦手だと知っていたが逃げ出して肩で息をするほど疲弊するほどだっただろうか。
「休める所ってある、出来ればじっくりと座れる所がいい」
「じっくり座れる所……、となればジェットコースターですね!」
「休みたいんだけどなぁ、でも遊園地といえばジェットコースターだね、今回のは壊れたりしないよね?」
「もちろん、安心安全設計で目的地まで運びますとも」
お化け屋敷がまだ残っているようで彼女の足取りが重く到着まで時間がかかってしまった。
「さっきから見えていたアレに乗るんじゃないの?」
「アレはこの前使えなくなったから別のヤツなんだ、コレはこのドリームランドの中を一周するからかなり長い物になっているだ」
「それは凄い!」
ドリームランドの外周を見回して見ると暗くて見えづらいが確かに起伏が激しいレールが見える、これなら昼間なら遠くまで見渡せそうだ。
「できれば乗らずにこのまま椅子に座っていたいのだけど……」
「大丈夫、ドリームランドを一周するのに時間がかかるからココに戻ってくるまで少し時間があるからそれまでゆっくり休めますよ」
「……そう」
いつになく彼女のテンションが低い、ゴーカートでの失敗やお化け屋敷での全力疾走でまだ疲れが残っているのだろう。
「乗るしかないのよね……」
しばらく休んでいるとジェットコースターがやってきた、かなり頑丈そうな作りをしており、これなら大きく高低差で振り回されて問題ないだろう。
さっそく最前列に乗り込みしっかりと固定される、他に誰もいないハズなのに自分たち以外にも誰かいるように複数人がジェットコースターに乗り込む気配がした。
「それでは出発進行!」
大音量でベルが鳴り響きジェットコースターがゆっくりと動き出した、最初はやはり高い所に移動するためにほぼ垂直に上がっていく、角度のせいでどこまでが頂上なのか判断できない、今か今かとワクワクしながら落下までを待つ、そして……。
「楽しかった!」
人生で初めてジェットコースターに乗り込んだが、こんなに楽しい物とは思わなかった。
「私はもう、無理……」
彼女の方は苦手だったようで完全にダウンしていた、しかしジェットコースターで上がってしまったテンションのままに次のアトラクションに行きたくてしょうがない。
「ここから一番近いアトラクションは何があるかな」
興奮のあまり無警戒のまま二人組に食い入るように聞く、向こうは少し考えてから近くにある建物を指さす。
「アレは?」
「アレは……、確か以前にとあるヒーロー番組とコラボした時のアトラクションだったと思うんですけど、いまいち思い出せなくて……」
「おぉ、コラボいいじゃん行こう!」
せっかくネットが使える状況なのでドリームランドについて調べてみると、当時の番組キャラクターのヒーローショーをやっている画像がいくつか出て来た。それからウルトラマンのヒーローショーがかなりあったようで、そういえばドリームランドだけで画像検索をしてもウルトラマンの画像が出て来ていた。
関心しつつ歩みを進めていると彼女を置いていってしまっていたようで、彼女が慌てて追いついてきた。距離は大した事がないハズなのに短距離を全力で走ってきたようだ、しかも目から涙を流している。
「どうしたの、全力で走ってるし、涙も流しているし」
「え涙、本当だ……あんな見せられたらそうもなるか……」
「というかコレは何のアトラクションなんだ?」
「それが僕達には……」
「完全初見か、やってやろうじゃないか」
案内してくれた男女は分からなかったようだが、別にいいかとワクワクしながら挑む。中はどうやらヒーローと一緒に敵を倒す感じでゲームをプレイする感覚で遊べるようだ、さっきまでのアトラクションはどちらかというと道が決まっているが今回はどうなるか分からないので更にワクワクする。
「この勝負に負ければキサマ達は人形になって永遠にココに閉じ込められる事になるのだぁ、つまり二度と帰る事は許されない……フハハハハハ」
悪役のワザとらしい少しかすれ気味の音声が開始と共に響き渡る。
「やってやろうじゃないか!」
「いいねぇやってやろうぜ!」
彼女は己を鼓舞するように声を上げ気合を入れる、それに答えるように自分も吠える。2人で協力してステージを進めていく、なかなか手ごたえがあって難しく確実に子供はクリアできないであろう難易度設計だ。
「ようやく、これで最後だ!」
ついに最後のステージに到着した、最後はヒーローと一緒に巨大な敵を倒すイベント戦みたいな物だ、敵を追い詰めてとどめの必殺技を一緒にポーズを決めて叫ぶ、すると画面から目が開けられないほどの光が辺りを照らした。
「うわっ」
思わず手で視界を塞ぐ。
「……終わった?」
恐る恐る手を放して様子をうかがう、既に光は無くなっておりついでに遊んでいたハズのアトラクションは建物ごとなくなっていた。
「何だったんだ……」
「最後のあの光は何だったんだろう……」
「もう、ここから出るにはいったいどうしたら良いの?」
「……わかりました、こちらです」
「アレ?!」
さっきまで話が通じない雰囲気だったのが一変して真剣な表情になり出口を教えてくれる。
2人組の案内される方向は正面の入場ゲートから横にずれた方向を目指しており、おそらく昔は従業員用の出入口か何かだろうか。
「いきなりなんで」
「先ほどあなた達が楽しそうに遊んでいる姿を見て気が付いたのです。自分たちが何者なのか そしてドリームランドがもう無い事を……」
「なんでいきなり」
「なんでかはわかりませんが……、先ほどの光で私達は目が覚めたと言いますか、とにかく出口まで案内します」
「お、お願いします」
2人組に案内されて出口の方向へ向かいだすと目の前で小さな子供が泣いていた。
「何でこんな所に子供が、とにかくねぇ大丈夫?」
小さな子供に話しかけてみたが涙声になっており、上手く会話ができそうにない、ただ母とはぐれてしまったようだ。
とりあえずなだめて落ち着かせる、話しかけた事で少し落ち着いたようだ。
「うん、ありがと!」
泣いている男の子をなだめるとすぐに元気になったようで手に持っているウルトラマンのソフビを手渡してどこかに行ってしまった。
あっという間の出来事に茫然としてしまった、いつの間にかいなくなっていた、手にはウルトラマンのソフビだけが残っていた。
「あれ、こんな所ってまだ残ってたのか、何か無駄に用量圧迫してるし、消しておくか……」
どこからか呑気な声が聞こえたかと思うと、各所から獣の叫び声と共に化け物がこちらに向かって襲ってきた。
「ここは私達が何とかするから君たちは逃げて下さい!」
「逃げるってどこに?!」
「正門横の従業員用出入口なら外に出られるハズです! 地味な外見なので、一発でわかるハズです!」
「わ、わかりました!」
入り口の方向へ向かって2人で走り出だす。四方八方から化け物が出て来て囲まれてしまった。
「も、もう無理かも……」
「た、たすけて!」
苦し紛れに叫ぶと手に持っていたウルトラマンのソフビが光り輝きだし巨大になっていく。
「え、えええぇぇぇええぇぇぇぇええええ!!!!」
「ウルトラマンだ……」
アニメや特撮をしらない自分でも存在と名前だけは知っている、そんな光の巨人がそこに立っていた。
ウルトラマンはこちらを見てから親指をしっかりと立てて安心させてくれる、もう大丈夫だよ、と動かないであろう顔に関わらず優しく語りかけてくれたようだ。
ウルトラマンは早速腕をクロスさせて光線を放ち、化け物を一掃してく。化け物はその光線に触れた瞬間に蒸発して消えて行った。
「ちょっとさぁ、困んるんだけどさぁ」
ウルトラマンが粗方化け物を倒した時に全体に響き渡るように面倒くさそな声と共にどす黒い悪意が襲い掛かってきた。ウルトラマンはすかさず自分達ごと光の壁で防ぐ。
しかしその威力は凄まじいもので、徐々に押し返されているのが分かる。さらに胸中央にあるカラータイマーが点滅し始めて、いよいよピンチだと分かってしまう。
「がんばれーウルトラマン!」
叫んだのは自分でも彼女でもない、その方向を見ると先ほどウルトラマンのソフビをくれた男の子が力の限り叫んでいた。
「「がんばれーウルトラマン」」
今はもうウルトラマンに頼るしかない、そう確信した僕たちは子供にも負けないように一生懸命に応援する。
ウルトラマンは懸命に踏ん張って耐えているが、悪意はそれを嘲笑うように緩急をつけてウルトラマンを翻弄する。さらに時折化け物をけしかけたりして翻弄してくる。
それでもウルトラマンは緩急の合間を縫って化け物達を倒してくれているが、明らかに無理をしているのが分かる。
こんな必死な状態を見せられてしかも自分は何にもできていない。もう自分は必死になって応援するしかなかった。
「頑張れぇ、ウルトラマン!!」
【ウルトラマンがんばれー】
全力で叫ぶと周囲からもウルトラマンを応援する声が聞こえてきた。
「な、なんだ?!」
「光だ…」
「光?」
「思いは人も物も変わらないんだ……」
「……どゆこと?」
「とにかくみんながウルトラマンを応援してるの!」
「お、おう」
よくわからないがとにかく全力でウルトラマンを応援する。
【頑張れ!ウルトラマン!!!】
自分達の思いがあふれ出た瞬間に周囲から暖かな光が噴水のように噴き出した。その光が意思を持っているかのようにウルトラマンに集まっていく。
ウルトラマンは驚きつつもその光を受け入れていき、銀色の巨人が黄金の光を放っていく。
「なんだそれなんだそれ、ありえないぃ?!?!」
遠くから聞こえる叫びを無視してウルトラマンが雄たけびと共に悪意を弾き飛ばす、まだまだ湧き続ける光を自身の中心に集める。魂の奥底から超気合を込めてエネルギーを一点に集中させてから腕を十字に組んだ。
その衝撃だけで吹き飛ばされそうな衝撃が発生するが、こちらには一切影響がない。
そして放たれた光線は悪意の方向へ向かう、悪意も抵抗していたが、黄金に輝く光には敵わないようで徐々に押し返されていき、情けない断末魔と共に消えていった。
「終わった……?」
「みたいだね……」
ウルトラマンはしばらく悪意があった方向を眺めていた後に、こちらを向いて再び親指を立てて安全をアピールしてくれた、自分達も自然と笑みが出て答える。
そしていつの間にか夜明けになっていたようで日の出の光が眩しく見えた。
「お客様、お客様」
「……あれ?」
気が付くとファミレスのテーブルで目が覚めた。
「長時間の注文が無い状態での利用はお控えいただけますでしょうか」
「あ、すいません」
彼女を起こしてから朝食を急ぎ気味で食べてから会計を済ませてファミレスを出る。
「……夢だったのかな?」
「まぁドリームランドだし」
「やっぱ行ってたよね?」
「……だね」
財布をポケットに入れようとすると違和感があり、中を探ってみると何か入っていた。何だろうと思い取り出すとドリームランドのパンフレットが入っていた。
「マジかよ」
パンフレットをよく見てみるとついさっき脱出を手伝ってくれた2人組にそっくりなマスコットキャラクターが描かれていた。
さらにパンフレットの裏には(ウルトラマンがドリームランドにやってくる!!!)とイベントの案内も表記されていた。
「そういえばなんでウルトラマンが助けてくれたんだ?」
「ウルトラマンって光なのよ」
「ドユコト?」
「そもそもウルトラマンって言うのはね……」
それから彼女による解説が延々と続いた。