ジェイムズ・P・ホーガンの星を継ぐものと葬送のフリーレンを掛け合わせてみたものです。暇つぶしになればと

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第1話

勇者ヒンメル一行が魔王を討伐してから五年後、世界中に一冊の本が突如として現れた。

その本のタイトルは “星を継ぐもの”。

中には「人類の起源」と「この星の歩んだ過程」が詳細に記されており、読んだ者たちを大いに困惑させた。

著者は ジェイムズ・P・ホーガン。

 

本の冒頭は、ジェイムズ少年の生い立ちから始まる。

彼は幼いころから疑問を抱いていた。

なぜ人間、魔族、エルフなど、多種多様な生命は「似た姿」をしているのに、寿命も、肉体構造も、精神性も、これほどまでに違うのか、その疑問を探求することが彼にとって日常であった。

その探究心はやがて青年期を迎えても衰えず、二十五歳になった彼は女神の石碑の調査に没頭していた。

女神の石碑――世界各地に点在するそれは、

かつて存在したとされる“女神”と、“女神の魔法”と呼ばれる原理不明の魔法体系を記した聖典でもある。

ある日、何の変哲もないはずの石碑から突然、膨大な魔力が溢れ出した。

ジェイムズは為す術もなくその奔流に呑まれ、ただ目を閉じて収まるのを待つしかなかった。

そして――。

魔力の気配が消え、恐る恐る目を開けた彼の前に広がっていたのは、

石碑でも、草原でも、森でもない。

見たことのない灰色の巨塔。

高さ数十メートルはあるだろうか。

後に「コンクリート」という物質だと知る建造物だったが、

当時の彼には理解できるはずもなく、そのまま気を失った。

 

ジェイムズが目を覚ましたのは、

ふかふかとした白い布で作られた、見たこともない寝具の上だった。

白い衣をまとった男女が現れ、彼に何かを語りかけた。

しかし、その言語は北側諸国でも南側諸国でも聞いたことのないもの。

困惑するジェイムズのため、後に医者と判明する人物が絵を使って説明してくれたおかげで、ここが“医療施設”であると理解できた。

医師たちもまた、彼の言語を理解できず、

あらゆる言語資料を使っても意思疎通はできなかった。

その後、彼は ある巨大企業 に引き取られることになり、

その企業の職員によって、この世界の言語と常識を学んでいくことになる。

この手記は、ジェイムズがこの世界で持ち帰った知識と、“星を継ぐもの“

それによって生じた“被害”について語っていくつもりだ。

異世界に来て二年が経つ頃、

ジェイムズはこの世界の言語をほぼ理解し、普通に会話ができるようになっていた。

そして一つだけ決定的な事実が判明していた。

――この世界では、ジェイムズは魔法を使えない。

生活は企業が全面的に支援してくれたおかげで何一つ不便はなかったが、

見返りとしてジェイムズは自らの世界について語り、研究協力を行った。

関係者らとは、次第に冗談を言い合うほど仲が良くなっていった。

「ジェイムズ! また君の世界について聞きたいんだ。明日は何時から空いてる?」

「今のところ何の予定もないから、いつでも大丈夫ですよ。」

「そうか! 島田がね、早く話を聞きたいって、ずっとせっついてきてるんだよ。」

「はは、それは嬉しいですね。」

こうした会話の中で、職員たちは一つの仮説に辿り着いた。

ジェイムズは、この世界の人類より“以前”に存在した人類なのではないか?

この世界の学説では、人類――ホモ・サピエンスの誕生は五万年前、だがジェイムズがこの時代の人間でないことはこれまでに発見した痕跡で証明できる。

ジェイムズの記憶には当然5万年前の人類のそれをはるかに超えた文明が存在していた。

確証こそなかったが、彼の証言には矛盾がなく、医療検査でも嘘をついている兆候は見られない。

 

“星を継ぐもの“によるとジェイムズと企業スタッフたちはおよそ5年間、過去この惑星にジェイムズたちがいた根拠の探求や科学的実験を繰り返していたという。

ちなみに彼がいた企業の名前は”bio nanotechnology“と言い、医療、医療に使用する科学技術を研究開発、販売をする企業であった。

ある日、ジェイムズは企業内で微弱な魔力?のようなものを感じた。

元の世界と比べるとないに等しい魔力だったが、5年もの間、魔力とは無縁の世界にいた彼にとっては、無視できないほど強い感覚だった。

その気配は、ある研究室の前でひときわ強くなった。

ガラス越しに中を覗くと、見慣れた研究員の島田が機材を操作しており、外で見ている彼に気づき、研究室から出てきた。

「ジェイムズ? どうしたの、こんなところまで。」

「少し気になることがあってね。歩いてたらここまで来たんだ。……ところで島田、君たちは何をしているんだ?」

「私たちは“ナノマシン”っていう、すごく小さなロボットの研究をしているの。」

「ちょうど今、人間の脳波で制御するモデルのテストをしていたところよ。」

「ナノマシン……それの影響なのか? この部屋から、魔力を感じるんだ。」

「……この部屋から? 本当に?」

「あぁ、間違いない。」

「…………」

「島田、大丈夫か?」

「ええ……ジェイムズ、研究服を用意するわ。ちょっと中まで来てくれる?」

「ああ、構わない。」

そして、彼が感じていた魔力の正体を知ることになる。

それは―― ナノマシン だった。

ジェイムズが近づくと、ナノマシンの挙動は明らかに活発になり、彼の脳波に対してだけ、異常なほど敏感に反応を示した。

ジェイムズが意識を向けると、ナノマシンは彼の“指示”通りに形を作り、動きを変えることすらできた。

この結果から改めてジェイムズの脳を重点的に研究することとなったが、ジェイムズの前頭葉にはこの世界の人間には存在しない部位があることが判明する。

彼の脳とナノマシンは、互いに強く共鳴していた。

これはつまり――

ジェイムズの世界の“魔力”と、この世界の“ナノマシン”が非常に近い概念である、という証明でもあった。

しかしジェイムズも企業も、実用的な研究を優先していたため、この重大な事実の意味を深く考えることはなかった。

——そして歳月は流れ、ジェイムズがこの世界に来てから12年が経過した。

彼の協力もあってナノマシンの開発は飛躍的に進み、ついには一般人でも使用可能な段階にまで到達していた。

脳波によって形状を変え、自在に動かすことができる新世代のマシン。それは、この世界の常識を根底から変えてしまうほどの革新的な技術であり、同時に使い方次第では危険にもなりうる代物でもあった。

そのため、危険と判断される行為はナノマシン側が自動的に拒否し、企業側からも強制的に停止・制御できるように制限が厳重に組み込まれている。幾度もの検証の末、それらは「問題なし」と判断され、いよいよ世間へ発表される瀬戸際まで来ていた。

ジェイムズ自身の年齢も40に迫っていたが、この世界へ来たことを後悔したことは一度もなかった。

ただ、どうしても拭えない違和感が一つだけあった。

ナノマシンから生み出した生命体——通称“ナノ”。

魔力とナノマシンに似た感覚があるのだから 当然と言えば当然なのだが“ナノ”が魔族や魔物に限りなく近い感覚があったのだ。

25年間過ごした元の世界で味わった恐怖が未だに染み付いており、危険がないと頭では理解していても、“ナノ”に対する苦手意識だけは消えることがなかった。

 

ほかにも、人体へ直接ナノマシンを注入し、肉体を強化したり寿命を延ばしたりする実験を目の当たりにしたとき、どうしてもエルフやドワーフといった、かつての人種を思い出してしまうことがあった。

だが、それらの記憶は意識の端に押しやり、できるだけ考えないようにして日々を過ごしていた。

やがてナノマシンは何事もなく全世界で販売され、しばらくの間は経済・スポーツ・医療・軍事といったあらゆる分野で活用され、活況を呈した。

世界経済は一気に上向き、人々の暮らしはかつてないほど豊かになっていった。

だが、その均衡が永遠に続くはずもない。

——これまでの人間の営みを鑑みれば、むしろ崩れることのほうが必然だった。

ナノマシンの悪用による犯罪が増加し、そして戦争。

かつての戦争とは比べ物にならないほど苛烈で無慈悲な戦闘が各地で繰り広げられ、人口は急速に減少していった。

文明そのものが衰退の坂を転げ落ちるように崩壊へ向かっていく。

そんな混迷の中、ジェイムズが52歳を迎えた時——転機は突然訪れた。

この世界に初めて来た場所へ、ふと足を向けたときのことだ。

27年前と同じ景色の前で過去を振り返っていると、突如として、あのときと同じ膨大な魔力の奔流が身体を呑み込んだ。

気がつけば、元々いた世界へと戻っていた。

目に映るのは、当時と何ひとつ変わらない景色。

あまりの唐突さに驚愕しながらも、身体の奥から溢れ出す魔力の感覚、そして——魔法が使えるという事実が、確かに自分が帰還したのだと告げていた。

 

 

ここまで見た人は、もうある程度の予測はできているだろうが

改めてだが、この手記は、ジェイムズがこの世界で持ち帰った知識と、“星を継ぐもの“

それによって生じた“被害”について語っていくつもりだ。

 

ジェイムズがこの世界に戻って初めに試したことは、あちらの世界で感じていた違和感

ナノマシンと魔力の関係を確かめることだった。

あちらの世界でナノマシンの研究を自身も協力していたことからナノマシンが“企業側からも強制的に停止・制御できるように制限が厳重に組み込まれている”このことを知っておりそのために必要なコードも知っている。

 

――ジェイムズ・P・ホーガン20510401――

 

これがナノマシンを制御可能にするコードであり、研究スタッフたちがジェイムズへのシャレを込めて付けたものらしい。

 

ジェイムズにとっては想像通りの結果でもあった。

問題なく魔力を使用することができその使用方法に際限はない。

コードを使用することによって過去に起こった出来ことそしてあの時からどれほどの時間が経過したかも理解することができた。

あの時代から10万年近く経っており、そしてその長い長い時間の中で、ナノマシンは自律的な進化を続け、構造も概念も変容し、ついには——

魔力という全く新しい“生命的エネルギー”へと成長していた。

 

魔物や魔族の正体もここまでくれば簡単だ。

人類の管理下から外れた“ナノ”が自律的に進化を続けた結果、今の形があるのだ。

魔族に心がないのも当然だったのだ、そもそも生物ではなかったのだから

エルフやドワーフもナノマシンで改造された人間で本質的には変わりがない。

 

これを知ったときジェイムズはどう思ったのだろうか。

二つの世界での出会い、そして過去の世界の滅亡と現在

“星を継ぐもの”を世界に出しているのだから恐らくは怒りだったのではないだろうか。

自身で世界中の魔力を管理することも可能なほどの力“コード”を手に入れたのにそれを手放し世界中に流布した。

 

その結果、余計な力を手にした者達により世界は混沌だ。

魔物・魔族をコードによって制御するもの、魔力を自由に使い争いを激化させるもの

自身に魔力を注入し改造するもの、過去にあったことを再現しようとするもの

 

願わくば“勇者”にこの混沌を鎮めてもらいたいものだが

恐らくそれは叶わないだろう。

この手記は、ジェイムズがこの世界で持ち帰った知識と、“星を継ぐもの“

それによって生じた“被害”について語っている、そしてそれを二度と起こさせないために未来へ抜けて書いた手記である。

 

                                           チャーリー

 


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