ブルーアーカイブ~~キヴォトスに舞い降りる嵐≪ストーム≫~~ 作:ジョージ
あと、先に予告しておくと、現時点のプロット内でアビドス編が一番原作から乖離してます。そこの所、よろしくお願いしますっ!
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ミレニアム、トリニティと続いて訪れたゲヘナにて、またしても生まれ変わった戦友である元グリムリーパーの少女、大神ハデスと再会した俺。こうして三大校と呼ばれる3つの学園を回り、同時にここにはかつての戦友たちが生まれ変わった姿で生活していた。こうして3人との再会を果たした俺は、本格的にシャーレ業務を開始したのだった。
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3人との顔合わせから数日後。
「隊長。こちらの事務作業終わりました」
「あぁごくろう。そこのケースにまとめておいてくれ」
そう言ってレンジャー4に、ペン先で終わった書類をまとめるケースを指さす。
「分かりました」
そうやって俺とレンジャー4はシャーレの執務室で事務作業を行っていた。ちなみにレンジャー2と3は外回り、と言うか依頼に応じてそれぞれの現場に行っている。予算についての相談だったり、復旧工事の助っ人としてだ。
「しかし、終わりませんねぇ」
「そうだなぁ」
レンジャー4の言葉に頷きながらも、たまった書類の山に目を向ける。数日前に一斉に送られてきた書類の山は、ある程度はさばいているがそれでもまだ終わりは見えない。
「どこもかしこも、問題ばかり、という事でしょうか?」
「……そうでないと願いたい所だがな」
スタンドに立てかけたシッテムの箱から聞こえるアロナの声に、気だるげに息を突きながらも答える。
「ともかくやるぞ。俺たちの働きがキヴォトスの復興を速めると信じよう」
「はい、大尉」
とにかく今は仕事をこなそう。そう思って居た矢先だった。
「ん?これは……」
レンジャー4が一枚の書類を手に取り、やがて僅かに表情をゆがめた。
「どうした?レンジャー4」
「あっ。すみません、少し気になった物がありまして」
「ん?なんだ?」
気になった物、という言葉が気になり、俺は席を立ってレンジャー4の傍へ歩み寄る。
「この書類は?」
「えぇっと、早い話、物資不足に関する依頼ですね」
「何?」
物資不足、と聞いて良い予感はしない。僅かに眉を顰めつつも、レンジャー4からすぐに書類を受け取り、内容に目を通す。
そこに書かれていたのは連邦生徒会宛に届いた手紙の内容だった。
≪連邦生徒会の皆さまへ。私はアビドス高等学校の生徒会長、梔子ユメと言います。単刀直入ではありますが、今の私達には物資が足りません。数日前からあちこちが混乱していて、不良生徒たちがアビドス自治区内に現れるようになりました。今は何とか皆で学校を守っていますが、このままでは弾薬などが無くなってしまいます。どうか、弾薬類だけでも補給をお願いできないでしょうか?それをお願いしたく、このようなお手紙を送らせていただきました≫
「……アビドス高校という所からの、物資の補給要請、という事か」
「はい。手紙の内容から考えて、恐らく連邦生徒会長の失踪後に行政管理が混乱した事で治安が悪化。この手紙を書いた生徒たちは自分たちの学校を守るために戦闘をしていたが、物資不足で手紙を出した、と言った所でしょうか?」
「恐らくな。……しかし不味いな」
「えぇ」
俺は眉を顰め、レンジャー4も深刻そうに頷く。キヴォトス全域は数日前まで混沌の中にあった。書類を見る限りでは、このアビドス高校とやらに物資が送られた様子はない。というより、こういった手紙の配送ルートが麻痺していたのだろう。この手紙が連邦生徒会に届いたのは4日前と書類の隅に書いてある。
「どうしますか?正直、今から物資を届けても遅い気がしますが?」
「……」
レンジャー4の言葉に俺は考えた。確かにこいつのいう事も分かる。今更物資を持って向かったとて、間に合うはずがない。だが、救援を求められているのも事実だ。となれば……。
「よし。俺はこの後、すぐにアビドス高校に向かい現状確認をしてくる」
「今日これから、ですか?」
「そうだ。物資が届かず手遅れになっているかもしれないが、それでも今も生徒たちが戦っているかもしれんのだ。先生としては、行かん訳には行くまい?」
「……仰る通りですね」
生徒が困っているのなら、傷ついているのなら、それを助けるのが先生という奴だろう。
「アロナ、外に出ている2人の端末にもメッセージを送っておいてくれ。俺は仕事の関係でアビドス高校という所に向かう。詳細についてはシャーレにいるレンジャー4かアロナに聞いてくれ、とな」
「了解ですっ!」
シッテムの箱の中でアロナがビシッと敬礼をする。
「そう言う訳だレンジャー4。俺は今日戻れんかもしれん。七神などから俺に問い合わせがあったら事情を説明しておいてくれ。重要度の高い内容だった場合は端末に連絡をくれ」
「了解」
「アロナは俺と同行してもらう。数は多くないが、またシャーレを強襲された時ようにと、七神から物資を貰っている。それをハンヴィーに乗せて運ぶ。なのでアロナにはアビドス高校までのルートガイドをお願いしたいのと、そのアビドス高校の概要を道すがら教えてくれ」
「了解しましたっ!お任せください、先生ッ」
「あぁ。レンジャー4。留守は頼む」
「はい。どうかお気をつけて」
「あぁ。行ってくる」
矢継ぎ早に2人に指示を出した後、俺はすぐにハンヴィーに物資やM16などを乗せ、シャーレを出発した。
市街地を出て、アビドス高校へと向かう道路を走る。
「それでアロナ。アビドス高校というのは、どんな所なんだ?」
このハンヴィーの助手席の前には、シッテムの箱を固定するアームがあり、そこにシッテムの箱が固定されていた。その画面に映るアロナに問いかける。
「はい。アビドス高校とは、元々大きな自治区を持った学園で、以前はゲヘナやトリニティと並ぶ三大校の一角に数えられる程の大きな学校だったそうです。しかし、連邦生徒会内部にあったデータベースによると、今から数十年前を境に、隣接する『アビドス砂漠』にて突如として大規模な砂嵐が頻発。結果的に環境は激変し、当時のアビドス生徒会は対策に追われたそうですが。結果的に砂嵐による被害を止める事は出来ず、砂に飲み込まれる形で自治区は浸食を受け衰退。生徒数や自治区内の住民は減少の一途をたどり、今の連邦生徒会のデータベースによると、在学生は僅か『6名』とあります」
「ッ。もう殆ど廃校状態、という訳か」
「はい」
「……間に合わなかった場合の覚悟もしておくべきか」
今更俺が向かった所で、手遅れかもしれん。例え彼女達が生き延びていたとしても、『何をいまさら』と激昂され、追い返されるかもしれん。しかしそれでも、確認しなければ。手遅れだろうが何だろうが、見届けなければ。確かめなければ。
そう考えつつ、アクセルを踏む足には、いつも以上の力が加わり、ハンヴィーは道路の上を疾走する。
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ハンヴィーをしばらく走らせていると、ついにアビドス自治区へとやってきた。市街地にハンヴィーで進入したのだが……。
「まるでゴーストタウンだな」
多少砂が積もっている所もあるが、見た限りではまだ居住可能な住居や建物はあった。だが、『人がいない』のだ。住宅街らしき場所を通っても、商業地区らしい場所を通っても。建物や砂こそあれど、生き物の、人の姿が無い。
まさしく、ゴーストタウンだった。
「誰も、いないですね、先生」
「あぁ。……怖いくらいだ」
アロナの言葉に頷きつつも、地図や途中にある、僅かに残った番地を示す物などで現在地を図りつつ、俺は手紙に物資の届け先として記載されていたアビドス高校の住所へ向けてハンヴィーを走らせた。
そうやって車を走らせていると……。
「ん?」
とある角を曲がった先で、俺は『ある事』に気づいて咄嗟に車を停めた。
「先生?どうされたんですか?」
アロナが突然停車した事を訝しんで声をかけて来た。
「人だ。いや、生徒を見つけた、と言うべきかな」
「え?それってもしかして、アビドスのっ!」
画面の中でアロナが目を輝かせるが、残念ながら現実は違った。
「いや。全員が全員ヘルメットを被っている。それに、明らかに10人以上いる。アビドスの生徒ではなさそうだ。それに……」
「そこの車ぁっ!お前なにもんだっ!出てこいっ!!」
車に気づいたヘルメットを被った生徒たちがハンヴィーに銃を向けている。とても友好的な態度とは言えない場面である。
「銃を向けられている。どうやら穏便に事が済まないかもしれん」
「えぇっ!?」
アロナは酷く驚いているが、こちらは元軍人だ。この程度ではビビらない。とは言え、数は向こうが上でこちらは1人。まともに撃ちあえば勝てないだろうし、相手は不良だろうが今の俺は先生だ。……一先ず穏便に済ませられるか、やってみようか。
俺はハンヴィーのエンジンを止めると、ゆっくりと、まずは扉だけ開けた。
「ッ!両手を上げて出てこいっ!」
「分かっている。今からゆっくりと出る。撃たないでくれ」
シートベルトを外し、助手席においてあったジャケット型のボディーアーマーとFDP―9に目を向けるが、羽織ったりしている時間は無いだろう。俺はまず、両手をゆっくりと外に出す。
「ゆっくりだっ!ゆっくり出てこいっ!」
リーダー格の女が指示を出してくる。俺はそれに従いながら、ゆっくりとハンヴィーより降りる。
「ッ!?」
「えっ!?」
俺が出ると、数人が何かに驚いて銃を下げてくれた。何に驚いたのかは不明だが、よし。良いぞ。とにかくまずは敵でない事を伝えなければ。
「撃たないでくれ。俺は連邦生徒会傘下の組織。連邦捜査部シャーレに所属しているものだ」
正直、連邦生徒会の者として名乗っていいのか不安はある。行政組織の人間である事が彼女達の逆鱗に触れる可能性も決して0ではないからだ。だが、今は出来るだけ穏便に。
「てめぇっ!そのアーマーどこで手に入れたっ!?」
「何?」
突然のリーダー格らしい少女の怒号。しかしその内容は、俺の予想を超える物だった。アーマー?つまりこのEDFレンジャーのアーマーの事か?だが彼女の怒りようはなんだ?とにかく、宥めるように努力しなければ。
「こ、これは俺の装備だ。俺は元軍人だ。その軍人時代からずっと愛用しているものだ。決して人から奪ったものでは……。」
「嘘をつくなっ!あの人は、このアーマーはそう簡単には手に入らないって言ってたぞっ!!それにそのアーマー、間違いないっ!色は違うが『嵐さん』と同じ形だっ!」
嵐、さん?誰の事を言っているんだ?まさか俺たち以外にも、更に他のEDF兵士の転生者がいるのか?
だが、今はそんなことを考えている場合ではないな。
「お前、嵐さんに何をしたっ!!」
不味い。リーダー格の少女がSMGを掲げ、他の不良生徒たちも銃を掲げる。不味い。相手はかなり頭に血が上っている。逃げるか?いや、それではしても居ない盗みの罪を認めるようなものだ。……かといって、このキヴォトスにおける彼女達のトリガーに掛ける指は、恐ろしく『軽い』。
説得を試みたとしても、下手をすれば撃たれて終わり。かといって逃げれば盗人の濡れ気味を着せられる事は間違いない。折角仕事を始めて、各校の生徒たちとの交流も増えて来た矢先、シャーレの先生である俺が盗人の可能性がある、なんて噂が広まれば、終わりだ。
「何とか言ったらどうだっ!」
このまま黙っている訳にもいかないし、逃げるわけにもいかない。説得は難しそうだが、やるしかない。そう思い口を開きかけた時。
「ちょ、ちょっとちょっと~~!皆ストップストップ~~~!!」
声が聞こえた。そして不良生徒たちの後ろから、人影が走って来た。数は二つ。そしてその2人が俺と不良たちの間に割り込んだ。
「はいはい、そこまで」
「ひ~ひ~。みんなちょっと、落ち着こう?ね?喧嘩はダメだよ~」
手で軽く銃を押し下げ、銃口を下げさせる桃色のショートヘアの少女と、肩で息をし、呼吸の荒い緑がかった髪色の少女。不良たちと、恰好が違うな。もしや、アビドスの生徒か?……いや、今はそれよりも、現状の打開が最優先だ。俺は彼女達の会話に耳を傾ける。
「ひ~、ふ~、な、何があったの?怒号が聞こえて来たから来てみたけど……」
「そ、それはっ!あいつのアーマーを見てくださいよっ!ありゃどう見ても嵐さんがしていたのと同じアーマーっすよっ!」
緑髪の髪の少女の問いにそう言ってリーダー格の少女が俺を指さす。
「え?」
「言われてみれば……」
緑髪の少女が疑問符を浮かべながらこちらを向き、桃色の髪の少女もじろじろと俺のアーマーを見つめる。
「あなた、一体どこの誰ですか?それに、そのアーマー。私達の知人がそれとよく似た、いえ。全く同じものを身に着けていました」
桃色の髪の少女が鋭い視線で俺を睨みつけ、スリングで下げていたショットガンに手を置く。
「最初に言っておきます。その知人は、私達にとっての恩人です。もし、その知人から奪った物だとしたら……」
……怖い目だ。まるで抜き身の刀身のような鋭い目だ。
「もうホシノちゃんっ!ダメだよそんな威嚇しちゃっ!」
「むぐっ!?」
が、しかし緑髪の少女が横から彼女に抱き着くようにして、止めに入った。
「離してくださいユメ先輩。ってかその無駄にデカい脂肪押し付けないでください嫌味ですか?」
桃色の髪の少女が恨めしそうに緑髪の少女を押しのけようとしている。
「だ、だってホシノちゃん怖いよぉっ!まずはお話を聞こっ!もしかしたら嵐さんの知り合いかもしれないしっ!ねっ!?」
「……分かりましたよ」
気だるげに息をついた少女は改めて俺に視線を向けて来た。
「率直に聞きますが、まずあなたの名前や所属は?」
「俺の名は一ノ瀬。連邦生徒会の下部組織にあたる連邦捜査部、シャーレに所属している者だ」
「連邦生徒会?」
桃髪の少女が僅かに眉を顰めた。……どうやら好意的、という訳ではなさそうだな。
「シャーレ?ってなんだっけ?」
「えっと、そう言えばSNSで何か書かれてましたね。行方不明の連邦生徒会長が作った組織だとか、何とか」
小首をかしげる緑髪の生徒に、傍にいた不良生徒の1人が伝える。しかし、妙な雰囲気だ。この二人以外は、どちらかと言えば、以前ビルの奪還戦などで戦った不良たちに雰囲気が似ている。なのに彼女達は2人と仲が良さげだ。
「そのシャーレ、とやらの人がどうしてこちらへ?」
「俺は今、連邦生徒会の下請けのような業務をこなしている。そして今日、俺たちの所に来た書類の中に、アビドス高校生徒会長、梔子ユメという名の生徒からの学校を守るための物資が不足しているため、物資提供をお願いしたい、と言った旨の手紙があってな」
「えっ!?」
桃色の髪の生徒の問いに素直に答えたのだが、何故か緑髪の生徒が驚いて声を上げ、他の皆も彼女を見ている。
「手紙や書類の配送網が混乱していて、連邦生徒会、更には俺たちの元まで届くのに時間がかかってしまってな。手紙が出されてからかなり時間が経ってしまったが、それでもとこうして物資を持ってきた、という訳だ」
俺は親指で隣のハンヴィーを指さす。
「ホントですかっ!じゃあ私の手紙届いたんだぁっ!」
「ん?私の?という事は、まさか?」
「はいっ!私ですっ!私がアビドス高校の生徒会長、梔子ユメですっ!」
そう言って、えっへん、と言わんばかりに胸を張る緑髪の少女改め、梔子ユメ。しかし、と思いつつ彼女達の様子を見る。
彼女達は、身綺麗だ。衣類はそこまで汚れた様子はないし、傷なども無し。何より物資の配達が遅れたにしては悲壮感や怒りがこれと言って見えてこない。手紙の文面からすれば、学校の防衛が難しい状態で、かなり焦っているようにも見えたが……?いや、今はそれよりも謝罪が先か。
「そうだったのか。ならば、改めて君に、いや、君たちに謝罪したい。理由はどうあれ、物資の供給が遅れてしまった事は事実だ。だからこそ連邦生徒会に属する者としてまずは謝罪したい。申し訳なかった」
そう言って俺は彼女に頭を下げた。
「い、いえいえっ!そんな頭を上げてくださいっ!物資を持ってきてくれたんですよねっ!それはそれでとても嬉しいですっ!」
「……もう殆ど意味ありませんけどね」
「ホシノちゃんっ!?」
桃髪の生徒の皮肉な言葉を彼女は驚きつつも窘める。
「折角持ってきてもらったんだしっ、貰える物は貰っておかないとねっ!今はアビドスだって大変なんだからっ!」
「……まぁ、確かにそれはそうですけど」
ふむ。話の流れからして、持ってきたのも全くの無駄という訳では無さそうだな。
「すまんが2人とも。確認のために聞きたいのだが、俺の持ってきた物資は受け取ってもらえる、という認識で構わないか?」
「あぁはいっ!欲しいですっ!」
「そうか。ならばこのままハンヴィーでアビドス高校まで運びたいのだが、構わないだろうか?」
「良いよね。ホシノちゃん?」
「まぁ大丈夫でしょうが、あぁでも。私達のどっちかはついて行った方が良いですね」
梔子の言葉に桃色の髪の生徒が顎に手を当てながら答えた。
「ほぇ?なんで?」
「いや、いきなり部外者が連邦生徒会所属を名乗ってやってきたら『皆』警戒しますよ」
「そうかなぁ?」
小首をかしげている梔子。
すると、桃髪の少女がチラチラと俺を見ながら梔子に耳打ちをしている。
「連邦生徒会は今まで散々物資の要請を無視してきたんですよ?それが今更って皆疑いますよ」
「それは、う~~ん。確かに否定できないかもぉ」
何を話しているのかまでは聞こえないが、梔子の反応からして、どうやら俺が単独で訪れていたら不味い雰囲気のようだな。
「あぁ、すまないが良いだろうか?」
「あ、はい。何でしょう?」
「もしよければアビドス高校までの道案内をお願いできないだろうか?何とか地図や街頭の住所などを目安にしてここまで来たのは良いんだが、アビドス高校の詳細な位置情報までは分からなくてな。道案内を頼めないだろうか?」
先ほどの会話や反応からして、俺が1人でアビドス高校に向かうのは、あまり良い案では無さそうだ。ならばアビドスの生徒である、と思われる彼女達に同行してもらった方が良いだろう。そう思い、俺の方から願い出てみた。
「全然良いですよぉ。ちょうど私達もアビドス高校に戻ろうかなぁって思ってましたし」
「なら、私も一緒に行きます。ユメ先輩だけじゃ道中会話に夢中で道案内を失敗しそうですし」
「ひぃんっ!そ、そんな事流石に無いよぉっ!……多分」
桃色の髪の生徒の言葉に梔子が独特な悲鳴を上げながら抗議しているが、本人も自信がないのか最後に疑問符を浮かべていた。
「そうか。それじゃぁ」
後ろに乗ってくれ、と言いかけた時だった。
「ちょちょちょちょっ!ユメ姉さんっ!それにホシノの姐御ッ!そのアーマーの事忘れてませんかっ!?」
「「あっ」」
不良たちのリーダー格の少女が声を上げ、2人もまた咄嗟に声を上げた。
「そ、そうだったねぇ、ごめんごめん」
「いや結構大事な事ですよっ!忘れないでくださいよユメ姉さんっ!」
リーダー格の少女が、問い詰める。いや、というよりかは困惑しつつも少し呆れた様子で声を上げている。
「そ、そうですよユメ先輩」
「いやホシノの姐御も素で忘れてましたよねっ!?」
「う……ッ!?」
何と言うか、女子が三人寄れば姦しい、なんて言うが正にそんな感じだ。更に彼女達の後ろにいた不良らしい生徒たちも、やれやれと言わんばかりに苦笑したりしている。
ふむ、どうやら梔子たちとこの不良グループは仲が良いようだな。姉さんや姐御、と呼ばれている辺り間違いないだろう。
となると、彼女達は不良ではないのか?それに、手紙には不良生徒が、などと書いてあったが彼女達の関係は敵対などしていない。むしろ良好な友人関係のようにも見える。他にアビドスを襲った不良グループでもいるのか?
と、考えていた時だった。
「え~っと。すみません」
「ん?あぁ、なんだ?」
梔子に声をかけられた事で意識が現実に引き戻される。
「一応お聞きしたいんですけど、イチノセさんが来ているアーマーって、イチノセさんのなんですか?」
「あぁ。そうだ。今は退役しているが、俺は元軍人でな。訳あってこのキヴォトスにやってきたんだが、これはその軍人時代に世話になっていたアーマーでな」
「つまり、それはイチノセさんの私物って事ですね」
そう言って桃色の髪の少女が後ろの不良たちに目を向けると、彼女達はオドオドした様子でひそひそ話をしている。
「も~~。皆ダメだよぉ。勘違いで人に銃を向けたら」
「うっ。す、すみません、ユメ姉さん。でも、あのアーマーは、嵐さんが使ってたものだし、嵐さんは、うち等の恩人の1人なんで。だから……」
「嵐さんのが盗まれたと思って、怒っちゃったの?」
「は、はい」
梔子は、まるでどこか、悪戯をした子を叱りながらも優しく諭す、母親のような声でリーダー格の少女に話しかけている。
「でも、心配し過ぎだって。皆も嵐さんの強さは知ってるでしょ?」
「え、えぇ。そりゃもちろんですっ。一度は無謀にも挑んで、ホシノの姐御と嵐さんに、ボッコボコにされたのは、うち等なんすから」
「じゃあ、そんなに強い嵐さんが、そう簡単にアーマーを盗まれたりすると思う?」
「……考え付かない、ですね」
梔子の言葉に彼女は苦笑しつつそう答えた。
「じゃあつまりそういう事っ!これはイチノセさんの私物なんだよっ!はい、これで誤解は解けたねっ!」
そう言って笑みを浮かべながらパンッ、と手を叩く梔子。更に彼女は、リーダー格の少女の手を取って俺の前まで連れて来た。
「ね、姉さん?」
「ほらほら。喧嘩したあとは仲直りの握手だよっ!ね?」
「え?あ、え、えっと」
少女は俺の前で、戸惑いながら梔子と俺の顔を交互に見つめている。しかし彼女は少し怯えた様子で手を出せずにいるようだ。まぁ、いきなり仲直りの握手を言われてもな。ここは、俺が背中を押してやるべきか。俺は自分の右手を差し出した。
「え?」
「仲直りの握手なんだろう?まぁ俺のことは気にしなくて良い。元軍人だから、銃を向けられるのは慣れているし、幸い撃ちあいにもならずに済んだ。だから俺は怒っていないさ」
「そ、そうなん、ですか?」
「あぁ。だから、仲直りだ」
「っ、は、はいっ」
俺が笑みを浮かべると、彼女は俺の手を取って握手を交わした。しかし、俺と同じアーマー、か。
「そうだ。仲直りついでに教えて欲しいんだが、その嵐さん、というのは誰なんだ?もし俺と同じアーマーを着ているのなら、俺の古巣の戦友の可能性もある。名前をフルネームで教えてもらえないか?」
「あぁ、それは無理ですね」
「何?」
不意に桃色の髪の少女がそう言ってくる。
「どういう事だ?無理とは?」
「そもそも嵐さん、って名前自体、ユメ先輩が付けたあだ名みたいなものなんですよ」
「じゃあ、君たちはその嵐さんの本名を知らないのか?」
「えぇ。そのあだ名にしたって、嵐さんが名乗った軍人時代のコードサインをユメ先輩が感じに当てて作っただけですし」
「コールサイン?……嵐?」
嵐のコールサイン?そんなもの、真っ先に浮かぶのはストームチームだけで……。ッ!?
そこまで考えた瞬間、まさかの考えが体中を駆け巡り、そして俺は反射的に声を上げていた。
「そのコールサイン、教えてもらえるかっ!?」
「え、えぇ、良いです、けど?」
桃色の髪の少女が、俺の声に戸惑い驚きながらも答えてくれた。そしてそれは、予想通りであり、そしてそれ以上に衝撃的な名前だった。
「嵐さんは、私達にこう名乗ったんです。『自分のコールサインは、≪ストーム1だ≫』、って」
「ッ!?……なん、だと……ッ!?」
正直、心のどこかで予想している自分が居たのは、間違いない。アイテールも、スプリガンも、グリムリーパーも、そして俺たちも居るのなら、あいつも居るんじゃないか?とそう思って居た。
そしてどうやらその予想は、当たっていたようだ。
ストーム1。あの戦争を終結に導いた男。……お前も今、居るのか?このキヴォトスに。
戸惑う俺を他所に、乾いた風がただ、静かに俺たちを撫で、そして砂を攫って行く。
第13話 END
感想や評価、お待ちしてます。仕事の関係で投稿頻度が遅いですが楽しんでいただければ幸いです。