冬木アクターズ・ラプソディ ~観光に来た演劇バカの女子大生、うっかり龍之介を轢いてしまったので、キャスターの「ジャンヌ役」として聖杯戦争を完遂します~ 作:斉宮 柴野
・王は受肉したがります。
・弟子は手綱を握らされます。
・宇宙が次のオケアノスになります。
・騎士は今日も抗議します。
・演出家が最強です。
「さてさて皆様!ギルガメッシュ王の『聖杯なんていらないからゲーセンで遊びたい』という、まさかの途中リタイア宣言でスタジオが一時騒然としましたが!」
「気を取り直して、どんどん進行していくわよ!じゃあ次は、ここまでウェイバー君と一緒に見事なコンビネーションで一流席をキープし続けている、アレクサンドロス大王!貴方の番よ!貴方がこの聖杯にかける野望は何かしら!?」
「だから小娘、いい加減、余をアレクサンドロスと呼ぶのはやめて、イスカンダルと呼んでくれんか?そっちの方が響きが力強くて気に入っておるのだ。アレクサンドロスだと、なんだか学者か文弱の王みたいではないか」
そうね、確かに「アレクサンドロス」より「イスカンダル」の方が、ロボットアニメの巨大戦艦みたいで強そうだわ。番組的にもそっちの方がテロップの文字数が少なくて助かるし。
「はいはい、わかりましたよ、イスカンダルさん!で?貴方の願いは何なの?」
「……まあ良い。我が聖杯に託す唯一の望み、それは『受肉』だ」
受肉。つまり、この現代に本物の肉体を持って生まれ直すということ。
「なるほど……。肉体を持って、もう一度、現代のこの世界で世界征服を始めたいってこと?でも、今でもこうして現界しているじゃない。それでは不満なの?」
「その通りだ!不満だらけよ!いいか、聖女よ」
「我ら英霊は、確かに魔術によって強力な力を得ているが、結局のところ、それは過去の歴史から引っ張り出されたただの残像、魔力で編まれただけの『霊体』に過ぎんのだ。風の冷たさを、大地の熱を、そして至高の酒の酔いを!この五感と、本物の血と肉で直接味わえぬ征服になど、一体何の価値があるというのだ!」
「余は、この手で直接世界を掴み、この本物の足で大地を踏み締めながら、世界の果てを目指したいのだ!夢や幻ではなく、確かな現実としてな!」
圧倒的ね。なんて分厚くて、熱量の高い『脚本』なの。これこそが、本物の「英雄」の持つ説得力よ。
「なるほど……。実に見事な、血肉の通った良き物語です。征服王」
でも、バラエティ番組のMCとしては、ただ感動しているだけではダメよ。もっと深く、彼の思想の裏側に斬り込まなくちゃ。
「では、イスカンダルさん。貴方は、肉体を得て、具体的に何をもって世界を『征服』したとするつもりですか?」
「力による戦ですか?それとも、文化や経済の侵略ですか?土地や民を奪うこと?それとも……力無き者への容赦のない殺戮ですか?」
「支配」という言葉の裏に必ず付きまとう、血塗られた歴史と、虐げられる者たちの悲鳴。私はそれを、あえて彼に突きつけるように問うた。
「無論、戦もするし、他国の文化も民も奪い尽くすぞ!」
「だが、余の征服は、ただ奪い、殺し、従わせるだけではない」
「民たちに、この王の果てなき覇道と、どこまでも貪欲に生きる背中を見せつけることだ!そして、余の背中を見た民たちもまた、『自らも王たらん』という、己の人生を切り拓く強烈な欲を抱くように仕向けること!それこそが、余の真の征服よ!」
「己の欲望の果てを隠さずに示し、それに魅せられ、共鳴した者たちが、それぞれの覇道を抱いて共に荒野を駆け抜ける。それを実現できる手段であれば、余は手段を問いはせぬ!」
なんて規格外の覇道なのかしら。「お前たちも俺みたいに欲張りに生きろ!」と民を扇動する王様。
「……っ!ふざけるな!!」
案の定、スタジオの最底辺、薄暗いゴザの上から、甲高い、そして激しい怒りと嫌悪に満ちた声が響き渡った。
「民に、自らも王になりたいという野心を抱かせるだと……?それでは国は乱れ、力を持つ者同士が争い、戦火は永遠に絶えぬではないか!」
「王とは、民のために己の欲望を完全に殺し、自らを犠牲にしてでも、国に秩序と平穏をもたらすもののことだ!貴様のように、民の欲望を煽り、戦火を広げる者を、私は王とは認めない!!」
アルトリアちゃんが、自らの信じる「清廉潔白な王道」を盾にして、イスカンダルさんの覇道を真っ向から否定する。
「ガッハッハ!相変わらず、息の詰まるほど窮屈なことを言う小娘だな、魔女よ!」
「己を殺して得た平穏に、果たして何の歓びがあるというのだ?誰かの自己犠牲の上に成り立つ平和など、ただの綺麗事に過ぎん!良いか、王というものはな、誰よりも強欲に、誰よりも豪笑し、そして誰よりも激怒せねばならんのだ!」
「人間の持つ善なる心も、悪なる欲望も、すべてを清濁併せ呑み、その極みに立って人生を謳歌する!その圧倒的な生のエネルギーを見せつけるからこそ、臣下は王の背中に魅せられ、共に地獄まで駆け抜けようと思えるのだ!貴様のように、感情を殺した機械のような王に、誰が心からついていくものか!」
「くっ……!!」
彼女の脳裏に、かつて自分が理想の王を演じ続けた結果、最も信頼していたはずの臣下から「王は人の心がわからない」と言い残して去られた、あの決定的な決別の記憶が、ズキズキと、古傷のように痛みを伴って蘇っているのだ。
「おお……王よ……!そのようなことは……!!」
「私めが不甲斐ないばかりに……王に、あのようなご負担を……!!」と、一人で勝手に罪悪感を増幅させているわ。
「はいはい!そこまで!思想のぶつかり合いは、テレビの討論番組でやってちょうだいね!」
「イスカンダルさんの、欲望全開の『受肉して世界征服!』っていう少年漫画みたいな熱い夢、しっかりと受け取ったわ!視聴者もきっと、貴方のその豪快さに魅了されているはずよ!」
◇◇
「でも、大王。ここでとっても残念なお知らせがあるんだけど」
「なんだ?余の果てなき覇道に水を差すような凶報か?敵の大軍でも押し寄せてきたとでも言うのか?」
「ううん、もっと残酷な、現代の常識という名の『特大のネタバレ』よ。貴方がさっきから熱く語っている、この手で掴みたい『最果ての海』だけどね。そんなロマンチックな場所、今のこの地球上のどこを探しても、もう絶対に存在しないわよ?」
「は……?なんだと?海がない?そんな馬鹿な話があるか。大地が続いている以上、その果てには必ず底知れぬ大海原が広がっているはずだ。かつての学者たちもそう言っていたぞ」
「だから僕は最初からずっと言ってるじゃないか!!」
「ホテルで世界地図のポスターを見せただろ!この地球は丸いんだよ!東へ東へ進み続けても、結局は元の場所に戻ってくるだけなんだ!貴方の目指した最果てなんてものは、最初からどこにもなかったんだよ!」
「そうそう、ウェイバー君の言う通りよ」
「今は人工衛星っていうのが宇宙をグルグル飛んでてね、その気になれば衛星軌道からこの地球の裏側まで全部丸見えなの。スマートフォンっていう小さな板切れのアプリ一つで、冬木市の路地裏から貴方の故郷のマケドニアの王宮跡地まで、上空から全部見下ろせちゃう時代なのよ。海も陸地も、全部計測済み。未知の土地なんて一ミリも残っていないわ」
「な、なんだと……!?宇宙から大地を見下ろすだと!?」
イスカンダルさんの目が見開かれる。
「それにね、人間はとっくにこの地球っていう狭い枠組みを飛び出して、大宇宙にすら手を伸ばしているのよ。数十年前には、あの空に浮かぶ月にだって人間は足跡を残して帰ってきたんだから。貴方が馬に乗って一生懸命目指していたオケアノスなんて、現代人からすれば『昔の人の可愛い勘違い』レベルの知識なのよ」
これでどうよ!自分の生涯を賭けた夢が、最初から存在しない幻だったと思い知らされた気分は!普通の英霊なら、ここで絶望して膝から崩れ落ちるところよ!
さあ、バラエティ番組らしく、思い切りリアクションしてちょうだい!
「おおおおおおおっ!!なんということだ!!」
「地球が丸いだと!?大地は繋がっており、世界の果てはないだと!?そして、人間はすでに空の星々にまで手を伸ばしているというのか!!ガァッハッハッハッハ!!なんてことだ!!なんという胸躍る時代なのだ!!」
絶望するどころか、かつてないほどの興奮状態で高級ソファを叩きまくる。
「ええっ!?ちょっと、大王!?自分の夢が否定されたのに、なんでそんなに喜んでるのよ!」
「小娘!なぜ喜ばぬ理由がある!!余がかつて目指したオケアノスがないというのは確かに驚きだが、それはつまり、この世界が余の想像を遥かに超えるほどに広大で、無限の可能性に満ちているという証明ではないか!!」
「大地に果てがないなら、永遠に馬を走らせて征服を続けることができる!そしてこの大地すら狭いというのなら、次はあの星々の海、宇宙とやらを新たなオケアノスとして目指せば良いだけのこと!余の覇道に、もはや限界など存在しないというわけだ!!」
「こ、こいつはこれだから困るんだよぉぉぉ!!」
「現代の科学の進歩を、全部自分の征服欲の新しい燃料にしやがる!!世界地図を見せた時も、自分がちっぽけだって落ち込むどころか、『こんなに広い世界があるのか!』って大喜びして本屋で世界歴史の図鑑を買い漁ってたんだぞ!この筋肉ダルマのポジティブ思考は、物理法則すら無視して暴走するんだ!!」
なるほどね、自分の存在の小ささを知って絶望するんじゃなくて、じゃあもっと大きくなってやろうって考えるタイプなのね。完全に少年漫画の主人公のメンタルじゃないの!
「宇宙か!良い響きだ!坊主、その宇宙とやらへ行くにはどうすれば良いのだ!?馬車では無理なのだろう!?やはりその『なさ』とかいう組織に殴り込みをかけて、宇宙船とやらを奪い取れば良いのか!?」
「『NASA』だよ!殴り込みなんて絶対にやめろ!国際問題どころか世界大戦になるぞ!宇宙に行くには、超エリートの科学者になって厳しい訓練を受けるか、何百億円っていうお金を払うしかないんだよ!」
「なんと!そんなに金がかかるのか!ならば手っ取り早く、あの金ピカの蔵から宇宙船を一つ借り受ければ良いではないか!」
ターゲットを最上段のギルガメッシュ王へと変更する。
「おい金ピカ!貴様のその万能の宝物庫の中に、星の海を渡れる船は入っておらんのか!?余の受肉の祝いとして、一つ気前よく貸してみよ!共に星の海へ乗り出そうではないか!」
「図々しいにも程があるわ、この征服馬鹿め!!」
「誰が貴様のような野蛮人に我が至高の宝を貸すものか!それに、この星の空も、その先にある無数の星々の海も、もとよりすべて我が庭よ!貴様がどれほど無様に空へ向かって足掻こうが、所詮は我が手のひらの上で遊んでいるに過ぎんわ!宇宙を目指すなどと、片腹痛いわ!」
「ガッハッハ!相変わらずケチな男だ!ならば仕方ない、坊主!お前がその超エリートの科学者とやらになれ!お前がその小さな頭脳で最高の宇宙船を作り上げ、この余がそれに乗って星の海を征服する!完璧な布陣ではないか!」
「無茶言うな!!僕は魔術師だぞ!科学の最先端なんて完全に専門外だ!物理学とかロケット工学なんて、時計塔の授業じゃ一ミリもやらないんだよ!!」
「えー?ケイネス先生、時計塔ってそんなに時代遅れなんですか?宇宙開発の学科とかないの?」
一段下のケイネス先生にマイクを向ける。
「……天体科(アニムスフィア)という学部は一応存在するがね」
「だが、あそこは物理的な鉄の塊を空へ飛ばすような、下品で無粋な真似はせん。我々魔術師は、自らの魂と魔術回路を用いて、精神的に宇宙の真理と交信するのだよ。あのような野蛮な英霊の言う宇宙旅行など、魔術の探求とは対極にある俗物の遊戯だ」
「魂だけ飛ばしてどうする!この本物の肉体で星の海を感じねば、征服の意味がなかろうが!やはりお前たち魔術師というのは、どうにも頭の固い、窮屈な連中だな!」
「なんだと?この知性の欠片もない筋肉の塊が。己の蛮勇を誇るしか能のない過去の亡霊が、我が時計塔の崇高な学問を愚弄するか」
「まあまあ、先生、落ち着いて。筋肉ダルマの言うことなんて気にしちゃダメよ」
今度は底辺のゴザの上から、またしても甲高い抗議の声が上がったわ。
「待て、イスカンダル!宇宙などという、空気すら存在しない危険な未知の領域に、貴様は己の民まで巻き込むというのか!」
アルトリアちゃんが、イスカンダルさんをキッと睨みつける。
「王の我儘で民を死地に追いやるなど、言語道断だ!そこには苦痛と犠牲しかないではないか!王とは、民を安全な城の中で護り、笑顔で暮らせる平和をもたらす存在であるべきだ!」
「だからお前は小娘だと言うのだ、魔女よ!」
「危険があるからこそ、未知の領域だからこそ、余が誰よりも先に先陣を切るのだ!己の命を懸けて未知を切り拓くその背中を見せてこそ、王ではないか!苦難や犠牲があるからこそ、それを乗り越えた時の歓びは計り知れずデカいのだ!お前のように、傷つくことを恐れて民を過保護に囲っているだけでは、国は熱を失い、やがて腐り落ちるぞ!」
「私は過保護になどしていない!私はただ、正しく国を導き、皆が幸福になれる道を……!」
「でもアルトリアちゃん、貴女のその完璧で安全な国、結局最後は身内の反乱が起きてボロボロに滅んじゃったじゃないの」
「ぐさっ!?」
「一番信頼していたはずの部下の騎士さんに、『王は人の心がわからない』ってキツイ捨て台詞を吐かれて、国を真っ二つにする内乱になっちゃったんでしょ?それって結局、貴女が自分一人で全部抱え込んじゃって、イスカンダルさんみたいにバカみたいに夢を語って周りを巻き込むような『コミュニケーション能力』が、決定的に欠けていたからじゃないの?」
現代の企業コンサルタントみたいな容赦のないダメ出しをする。
「そ、それは……!私は……私はただ、王として正しくあろうと、己の感情を殺して……!!」
顔を真っ青にして、言葉を詰まらせる。
(王よ……痛いところを的確に突かれましたな……。私も生前、貴女のその完璧すぎる自己犠牲の背中を見るのが、息が詰まるほど辛かったのです……)
「貴公は黙っていろ、ランスロット!!私の傷口に塩を塗るな!!」
「ひぃっ!申し訳ありません、我が王!!全てはこの不甲斐ない私の罪です!!」
なにこの悲惨すぎる主従のコント!見ていて涙が出てくるわ!
「はっはっは!小娘の言う通りよ!正しさだけで人はついてこん!関係ないのだ、現代の常識も、科学の壁もな!」
「彼方にこそ栄えあり!!」
スタジオの空気を震わせる、王の絶対の咆哮。
「届かぬからこそ挑むのだ!見えぬからこそ手を伸ばすのだ!地球が丸くて果てがない?宇宙は暗くて空気がなくて広すぎる?だからどうした!果てがないからこそ、余の覇道は終わることなく、永遠に進み続けられるではないか!これほど胸躍る時代に再び喚び出されたこと、神に感謝しきれんわ!」
イスカンダルさんは、隣に座る小柄な少年の肩を、自分の分厚い胸板に引き寄せるようにガシッと力強く抱き寄せた。
「覇道を謳い、覇道を示す!この広大な未知の荒野を前にして、立ち止まる理由などどこにある!この余の背中を見守り、共に駆け抜けてくれる臣下がいる限り、余はどこまでも、宇宙の果てまででも進み続けてやるぞ!なぁ、そうであろう、坊主!!お前も余と一緒に、星の海まで付き合う覚悟はあるな!!」
それは、マスターへの確認ではない。共に歩む対等な相棒への、究極の魂のプロポーズだ。
ウェイバー君は、イスカンダルさんの強すぎる抱擁に顔を歪めながらも、決して逃げ出そうとはしなかった。
彼は、真っ赤になった顔を上げ、大粒の涙をポロポロとこぼしながら、しかし、これ以上ないほどに力強い声で叫び返した。
「っ……!ああ、ああそうだよ!!宇宙でもどこでも行ってやるよ!!」
「お前は本当に馬鹿で、無茶苦茶で、人の話を全然聞かない、最高に傍迷惑な王様だ!!歴史上の偉人だかなんだか知らないけど、現代の常識とか科学とか、ちょっとは勉強しろってんだ!!星の海まで行くのに、どれだけ僕の魔力を吸い尽くす気だよ!!だから……だから僕が、最後の最後まで、お前のその無茶苦茶な背中を見届けてやるんだ!!宇宙だろうがなんだろうが、僕がお前の手綱をしっかり握って、お前がどこかで野垂れ死なないように、最後まで付き合ってやるよ!!僕は、お前のマスターなんだからな!!」
「ガァッハッハッハ!!言ったな坊主!!その言葉、違えるなよ!!余の栄光の覇道、貴様のその小さな目に、しかと焼き付けてやるわ!!」
魔術師と使い魔という冷徹な契約の縛りすらも完全に超越した、人間と人間の魂の、最も美しい共鳴の形だった。
私は、マイクを口元に当てたまま、しばらくの間、完全に言葉を失っていた。
ただただ、その二人の姿が眩しく映っていたのよ。私は『詐称者』世界なんてものはすべて私が書き換えることのできる「虚構」の舞台であり、他者の人生や感情すらも、私がテレビ番組を盛り上げるための「配役」や「演出」として消費してきた。
すべては作り物で、すべては私の思い通りのシナリオで動くおもちゃ箱だと、そう思っていたのに。
私の魔眼を通して見ても、彼らのその絆には、一切の虚飾も嘘も存在しない。ただ純粋な、魂と魂のぶつかり合い。
「……………貴方もまた、真の王だわ」
「ギルガメッシュ王のように、絶対の法をもって世界を支配し、孤独に頂点に君臨するのも一つの王の形でしょう。でも、貴方のように、自らが泥にまみれて先陣を切り、人々の背中を押し、共に笑い、共に走るのもまた、間違いなく真の王の姿ね」
「たとえ貴方のその無茶苦茶な征服が、途中で魔力切れになって、夢半ばで終わってしまったとしても……。きっと貴方という豪快な王様がこの世界に、そしてウェイバー君の隣にいたという事実は、人類史に深く刻まれた、掛け替えのない『奇跡』なんでしょうね。私の書いたバラエティのシナリオを、真っ向から物理で粉砕する、最高の演技……ううん、最高の『生き様』でした。完全に私の負けよ。ブラボー」
私が、マイクを持たない方の手で、パチ、パチ、パチ……と、ゆっくりと、しかし心を込めて拍手を始める。すると。
「おおお!筋肉ダルマの野蛮な王様だと思っておりましたが、その果てなき熱き心意気、我が愛しのジャンヌにも通じるものがありますぞ!!見事なり、征服王!!」
「イスカンダルさんも男らしくて素敵だわ!ランサーの忠義とは違うベクトルだけど、あの少年を引っ張っていく包容力、完全に推せるわね!頑張れライダー陣営!!」
客席のソラウさんが、今度はイスカンダルさんの名前が入った手作りのうちわを振り回しながら、黄色い声援と拍手を送っている。
「ふむ……。魔術の探求とは程遠いが、あそこまで己の欲望を肯定しきれるのならば、それはそれで一つの極致と言えよう。ベルベット君も、良い保護者を見つけたものだ」
スタジオ中から割れんばかりの、地鳴りのような拍手喝采が巻き起こったのだ。
「ガッハッハ!照れるではないか、聖女よ!そして貴様らもだ!余の覇道は、まだまだこれから始まったばかりよ!まずはこのスタジオを完全に制圧し、聖杯とやらを酒盃に変えて祝杯を上げ、次はあの星の海を目指すぞ!!」
ウェイバー君は、恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にして、両手で顔を覆って縮こまっているわ。本当に可愛いマスターね!
「はい!というわけで!!」
「その圧倒的な存在感と、どんな逆境も跳ね返すポジティブな絆を最大限に評価して!!イスカンダル大王とウェイバー君のライダー陣営は、文句なしの、完全無欠の『超一流』認定でーーす!!このまま最終決戦まで、その熱苦しい覇道を突き進んでちょうだい!!」
彼もまた王…であれば、で、あるのならば。私は演者たれるのだろうか?演出家で終わるのだろうか?
※ご視聴ありがとうございました。
・覇道は宇宙に拡張されました。
・少年は泣きながら覚悟を決めました。
・演出家は、初めて言葉を失いました。
【超重要・展開が変わります】真樹は聖杯にかける願いを…。
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言う
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言わない