時系列的には2045年辺りになりますかね、ヒーローに目を輝かせていた子供たちのその後……みたいな。
て言うかこれはオリ主カウントになるの……?
ふとした拍子に背後から聞こえた
就職を機に始めた独り暮らしもはや数年、BGV代わりにテレビを点けっぱなしにするのも日常になって久しい。別に見たいものがあるのではなく、無音が落ち着かないから。これだとネットを介さないから電気代以外かからないし、片手間に流すくらいがちょうど良い……のだけれど。
振り返って見た画面は既にコマーシャルになっていた。こういう時はリアルタイム放送が恨めしい、見返したい時に見返せない。まあ後でTverでも使って再チェックすれば良いか、とりあえず手元を片付けてしまわないと。独り暮らしだと自分が行動しないと何も動かないからな、やりかけの家事も出し損ねたゴミもずっとそのままになってしまう。
しかしシンクを片している間も、耳のなかにはそれが反響している。確かに聞こえたのだ、――エンゲージ! という懐かしさを覚える声が。
洗い物と細々した片付けを終え、やっと座ってスマホで番組検索。
どうもそれは懐かしモノ回顧企画の1コーナーだったようで、アーカイブ版を見返しても大した尺を使っている訳ではない。大半は芸能界の過去ネタ擦りと大袈裟な年代ギャップ弄り、いつものありふれたバラエティ。その中で僅かに特撮ネタが混ざっただけだ。
でも古い記憶を揺り起こすには、十分だった。
「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー……か」
俺が幼稚園の時にやっていた番組だ、正直内容は殆ど覚えていない。YouTubeの公式配信を見付けたから観てみたけどこんなシナリオだったんだな。多分当時はただカッコいいとしか思ってなかっただろう、て言うか絶対そうだ。ヒーローは赤くてカッコいいもの、なんとなくずっとそう思ってきたし。その原型はここだったんだな、うん。
しかし調べたところ他シリーズの要素も多いそうで、これ結構視聴のハードル高いんじゃないかな。まさかシリーズを50年ずっと観てた人向けって訳じゃないだろうに、前提条件になる必須知識が多すぎる。過去作のオリジナルキャストったって、なあ。
でもま、頭にエンゲージ!がこびりついてた辺り、俺は理解できない割にこういうのが好きだったのだろう。少なくとも、中学生くらいまでは。
ゴジュウジャーの後はギャバンだったか、その後も同じ系列の番組を観ていた筈だ。でも部活を始めたり友達と遊び歩いたりで、十歳くらいになると日曜の朝をテレビの前で過ごす事は無くなっていた。オモチャ箱も押し入れに追いやられ、気がつけば存在自体を忘れていく。
そして小学校を卒業した頃、なんとなくヒーローから離れた。子供っぽいから、とかそんな理由で。
それ自体が子供っぽい考えだなんて、思いもせず。
こうやって観直しても通じないネタやピンと来ない描写はやっぱりある、でも――カッコいいじゃないか。ヒーローってのは、カッコいいんだ。それで良いんだ、だって何でもカッコいい方が良いに決まってる。
大人になったからこそ、それがよくわかるのかもしれない。いや俺は大人なんだろうか、うーん。
サブスクに転がっていたスーパー戦隊シリーズを見つけ出し、それを順繰りに回していく。ゴジュウジャーからブンブンジャー、キングオージャー。遡って観つつ色々調べていくと、ネット上の古い記述もあれこれ発掘出来た。何十年経っても残ってるんだな、こういうの。まあ当時から、やいのやいの言ってるのはいたわけだ。マンネリだの玩具展開先行だの受注生産ばかりで出回らないだの、そんな声もそこそこある。
でも主流なのは、毎回いつも同じ流れ。
情報が出始めると「なんか違う」されて、でも現行戦隊終盤の先行登場で「なんだ、動くとカッコいいじゃん」になり。バトンタッチして本放送が始まると皆夢中になって、変身アイテムの解析バレが出回ったり追加戦士が背負う重いエピソードに熱くなったりと大騒ぎ。そしてクライマックスが近付くと、ああもう終わっちゃうのかと名残惜しくなって――の繰り返し。
なんか良いよな、それ。毎年毎年、お祭りだ。産まれるのがもう少し早ければ、俺もそれに参加できたのに。
今はもうその枠も無くなっててヒーロー特撮も下火だけど、またこんな時代が来てほしい。
ヒーローなんて古くさい終わったコンテンツだ、なんて嘘っぱちさ。ヒーローは死なない限り立ち上がる、立ち上がれる限り絶対に負けない、負けない限りは死なない。だって、ヒーローはそういうものなんだ。時間はかかるかもしれない、でも正義は最後に必ず勝つ。ヒーローはいつだって、それを教えてきたのだから。
――そう気が付いたのは、勿論俺だけではないらしい。東映ヒーロー復活を願うコミュニティや、製作支援を目的にした気の早いクラファンも見つかった。
これがもっともっと大きくなったら、新作も出てくるかもしれない。いつになるか分からないけど、さ。
俺がこの先、ちゃんとした大人になれたとしてだ。自分の子供がヒーローに夢中になる姿を見られたら、きっとそれは幸せだろう。
その日が来るまで、頑張っていこうかね――と。