"兎狩り“からしばらく経った。
ケルゲンさんが何やらすごい頑張ったと何度もぼやくぐらいの働きかけによって法律は変えられたようで、“兎"含む獣人が人間のための法律に当てはめられるようになった。
ネコアルクさんもその対象だったけど、どうやら本人(?)はすごく微妙な顔をしながらみんなに猫耳を生やして遊んでた。
……私に猫耳生やしたら、なんだかすごく頭がうるさく見えませんか?これ。え?可愛い?、、、ほんとですか?
瑞希人はちっちゃい頃に別れてからあんまり会ってないらしいし、私は人でもなければ本人でもないけど、優しく接してくれた。私のこと“姉ちゃん"って呼んでくれた。死んじゃったと思ってた兎のみんなと合わせてくれた。
みんなは私のこと恨んでると思ってた。みんなを救えないと思って、私は逃げ出したから。けど、私が生きていて良かったって喜んでくれた。私もそんなふうに言ってくれたのが、すごく申し訳なくて、すごく嬉しくて、みんなの前で泣いてしまった。
このまま瑞希人と一緒に暮らすのもいいかなと思ったけど、私はある学校に入るとともに寮に入った。
京都呪術高専。呪術というものについて学ぶための学舎で、東堂さんがいる場所だ。
私はこの埋め込まれた魔導書の影響で、負の感情に由来した呪術というのに適正がある、、、らしい。確かにみんなが言うには呪力を使えるようになるのは確かに早かったらしいけど、あんまりよくわからない。
結界術というのは肌にあった。元々魔法を使って身を隠して、逃げてを繰り返していたから似たような感覚で扱えた。
けど、私がここに来たのは、呪術に興味があったからじゃない。
まず、私みたいな変なのがいても変じゃない場所だから。
京都高には東堂さんを始めとして、魔法使いみたいな女の子だったり、メカみたいな人がいる。東京の呪術高専にはパンダがいるらしい。何それ。
だから、ウサ耳とウサ尻尾が生えてて本当は形が変わるスライムだなんて、ちょっとした個性でしかない。いきなり普通の学校に行くよりかは、よっぽど気楽だった。
あと、瑞希人の家が近いから。
瑞希人と一緒に住むのはちょっと恥ずかしいけど、別に会いたくないわけじゃない。だって唯一残った直接血のつながりのある人だから。会いたいと思うときに会える距離にいる。それぐらいがちょうどいいのかなって思った。
最後に……東堂さんがいるから。
"兎狩り"のとき、初めて会った時は私がもう1人いるみたいな違和感を覚えてちょっと気持ち悪かったけど、なんだか私のこと凄い気にかけてくれるし、私のために頑張ってくれる。私が日記"を見て暴れたときも止めてくれた。国会議事堂の地下で戦う時と助けてくれたし、私も最後危ないところだった東堂さんを助けることができた。
だから、その、私も東堂さんのためにできることがあるんじゃないかなって思って……
ま、まぁそんなわけで私は今、3級呪術師として京都高に席を置いている。もっぱら最近は得意の逃げ足と魔法と結界術を使って任務の下見を窓の人と一緒にやることが多い。敵を倒すっていうのはあんまり得意じゃなくて……
それで、暇な時には東堂さんと高田ちゃんっていうアイドルの推し活をしたり、アレックスさんや瑞希人と遊んだり……。アイドルってすごいですね……!東堂さんがオススメする理由もわかります。見てるだけですごい元気をもらえるというか……!
あと、たまにケルゲンさんのお手伝いをしてます。AGさんのことについてもたまに相談させていただいてます。なんだか突然腰を振り始めることがあるんですけど、これはほっといていいんですか?何か不満なんですかね?あ、ほっといていいんですね……
東堂さんとよく話してるからか、東堂さんにこれを伝えておいてください、これお願いしてくださいって言われることが増えました。東堂さん、みんなからなんというか、その、あんまり良く思われてないというか、難しい人と思われてるみたいで。すごくいい人なんですけどね。でもちょっとわからないこともなかったり。
一応引き受けはしてるんですけど、東堂さんは自分が動くべきと思わなかったり、高田ちゃんの何かがあればテコでも動かないので、一応私も無理だろうなーって思いながら伝えることもままあります。でも、ちゃんとやるべき理由があれば真面目にやってくれるので、やっぱり優しい人だと思います。私の経験を積むために連れていってくれることもありますし。
……でも、ちょっと困ったことがあるんです。それは、東堂さんが私に、その、好意?を抱いているようなことをいろんなところで言いまわっていることです。
多分、高田ちゃんに感じているような思いと似たようなものなのでしょうけど、こんなこと言われてたよって言われた時、ちょっと恥ずかしいというか、照れると言うか……。言われるのは、ちょっと、いやすごく嬉しいんですけれども。
……でも、思うことがあります。私は東堂さんにそう思われるような人間なのでしょうか。
東堂さんのように頭が良いわけでもなければ、生得術式もありません。……魔法とか、この触手とかはちょっと似たようなものかもしれませんが。
とにかく、東堂さんが豪語するようにすごいわけじゃないないんです。だから過大評価されるのが、嫌……というよりかは、申し訳なさというか、私なんかにって思うと言うか。
まぁでも、頑張るしかないんですけれどもね。私はあのとき、守られてばかりでした。ずっと守られてばっかりで、むしろ暴れて迷惑かけちゃって。
だから、いつかの私のような子をあのときの東堂さんみたいに、アレックスさんみたいに、ウルトラマンさんみたいに、教授さんみたいに、ネコアルクさんみたいに。
誰かの力になれるような“人"になりたいな。そう思います。
─────電話が鳴る。
はい。月島兎羽です。……呪霊の報告件数が異様に少ない海沿いの町?わかりました、調査ですね。はい、解決できれば解決、誰かに引き継ぐ裁量は私に。わかりました。では、早速調査に向かいますね。
─────電話が切れる
ふぅ。振り返り終わりっ。さっ、頑張りましょう!