クリーザは懐かれていた。
惑星ノラの昼下がり。穏やかな草原でクリーザは数人に囲まれていた。
そこへネコマジンが来て話しかける。
「なんだ、大勢いるな、クリーザ、お前の仲間か?」
クリーザが答える。
「この前、メタルクウラ討伐戦の時に同じ小隊だった方たちですよ」
そして隊員の一人が、クリーザの知り合いが現れたのを見て、ぱっと顔を輝かせて言った。
「おお! クリーザさんのお友達ですか!? これは、正式にご挨拶させてください!」
ネコマジンは首をかしげる。
「正式に?」
クリーザは眉をひそめた。
まず、体格のいい隊員が前へ出る。
彼は突然、激しい手足の振りを伴う奇妙な動作を始め、最後にポーズを決め叫んだ。
「ニガリ!」
次に、技巧派らしいスマートな隊員が滑るように前へ出る。
派手に風切り音を立て手足を動かしステップを取り、鮮やかなポーズを決める。
「トフー!」
続いて、姉妹と思しき二人が軽やかにステップを踏みながら前へ。
息の合った動きで左右に広がり、順に名乗った。
「イーソ!」
「フラボン!」
最後に、リーダー格の男が堂々と進み出る。
全体を締めるように、重厚なポーズを取った。
「トニュー!」
そして全員が声を合わせる。
「みんなそろって! トニュー無調戦隊!」
ネコマジンはその場で固まり、ゆっくりとクリーザへ視線を向けた。
「お前…よく生きて帰ってこられたな…」
クリーザはかすかに答えた。
「…う、腕は良いんですよ…腕は…」
そしてトニューは告げた。
「我々は、クリーザさんにリーダーになっていただきたく、お伺いしたのです!」
隊員たちが頷き、トニューは続けた。
「もちろん、その時は部隊名も変更します!そして、クリーザさんを中心とした、新しいファイティングポーズも考えるつもりです!」
クリーザは、静かに、しかし確実に言った。
「それだけは…絶対にやめてください…」
そんな中、何の前触れもなく、二つの影が突然現れた。
トニュー無調戦隊の面々は、反射的に構えを取った。
クリーザとネコマジンは驚きつつも、戦隊ほど過剰な反応は見せない。
ネコマジンは、現れた二人を見て言った。
「どうやって現れたんだ?」
クリーザは推察し、言葉を紡ぐ。
「ヤードラット人には、瞬間移動という技術があると聞きますね。しかし、この方達は、ヤードラット人ではないようですが…」
現れた二人のうち、小柄な人物が一歩前へ出た。
彼は礼をし、丁寧な声で語り始めた。
「突然の訪問、驚かせてしまって申し訳ありません……私は 界王神、こちらは付き人のキビトです。我々はクリーザさん、あなたに会いに来ました」
クリーザは驚きながらも、冷静に言った。
「ほう……あなたが界王神さんですか。その存在は認識しています。そのような方が、私に何の用で?」
界王神は、その問いに答え、状況を説明した。
トニュー無調戦隊の面々は、その語られた、あまりにも荒唐無稽な内容を、にわかには信じられない。
「宇宙が消える?」「そんなバカな…」「ありえないでしょ…」
彼らの反応は、ある意味で正常だった。
クリーザも完全には信じきれなかった。
しかし、もし事実なら、迷っている間に宇宙は消されてしまう。
もし嘘なら嘘で、後でどうとでもなる。その冷静な判断で、クリーザは界王神を見据え言った。
「その選手候補になりそうな者なら、私以外にも、二人心当たりがあります。一人はそこに居るネコマジンさん。もう一人は、サイヤ人のオニオさんという方です」
それを聞いて、界王神は驚く。
「なんと!ここにもサイヤ人がいらっしゃるのですか!?サイヤ人の強さはよく承知しています!ぜひその方もお呼びください!」
ネコマジンはクリーザの推薦を受け、顔をしかめた。
「え……オレも行かないといけないのか……?」
クリーザは、ネコマジンの反応を予想していた様に言った。
「当然です。宇宙が滅んでもいいのですか?」
ネコマジンは「うーん……」と唸り、そして、渋々ながらも答えた。
「……でも、つまんないとこだったらオレは帰るからな」
「え!?」
宇宙の存続を賭けた行いに「つまんないなら帰る」という選択肢は、界王神にとっては想定外だった。
しかし、クリーザは微笑んだ。
「きっと面白いですよ。宇宙中の精鋭が集まるのですから」
そしてクリーザは端末を取り出し、オニオへメールを送る。
オニオの返信は早かった。そしてすぐに、この場へ駆けつけた。
その姿は、界王神とキビトの想像していたサイヤ人像とは違っていた。
界王神はぽつりと呟いた。
「……おじさんですね……」
キビトも続ける。
「それも、小太りの……」
クリーザはすぐにフォローを入れた。
「ご安心ください。彼も昔から私たちと組手などをして遊んでいるので強いですよ」
その言葉を聞いたオニオは、顔を輝かせた。
「おお! クリーザ様にそのように評価していただけるとは光栄です!」
界王神は困惑する。
「あ、遊びですか……?」
界王神は戸惑いつつも、迷っている暇はない。
どのみち真価は修行を始めればすぐに分かる。今は候補を集めることが最優先だった。
そして、トニュー無調戦隊の隊長トニューが、礼儀正しく、熱を帯びた声で言った。
「我々も、その修行空域へ同行することは可能でしょうか。選手候補とまでは行かなくとも、修行のサポート役としてはお役に立てるやもしれません」
界王神は慎重に言葉を選んだ。
「あなたたちも優れた戦士だとお見受けします。ただし、修行空域には破壊神ビルス様もいらっしゃいます。宇宙が滅ぼされる以前に、ビルス様に破壊される危険もありますが……それでも来られますか?」
トニュー無調戦隊の面々は、またしても常識外の話に一瞬固まる。
「…破壊神!?そんな方が実在するのですか…!?」
しかし、彼らは一拍だけ悩み、そして決心した。
「このタイミングで界王神様に出会えたのも何かのご縁。もし破壊されてしまったとしても……どうか宇宙のために働かせてください!」
界王神はその言葉を聞いて覚悟を認めた。
「わかりました。同行を許可します」
修行空域。
そこには既に、幾人かの候補たちが集まっている。
悟飯、トランクス、アカッゴ。魔人ブウ。ブロリー。
そして、ラーネと16号も既に招集されていた。
破壊神ビルスは、昼寝中。
到着してすぐ、界王神は、忙しくすぐに発つ。
「では、我々は次の候補者の元へ向かいます」
界王神とキビトは再び瞬間移動で姿を消した。
悟飯は、クリーザの姿を見て驚いた。
「……あれは、まさか……フリーザと同じ種族……?」
だが、その気は静かで、フリーザのような冷たい殺意はない。
むしろ、柔らかい気配すらある。
アカッゴは、現れた強者たちを観察し、その中に、彼女の視線を強く奪った存在がいた。
それは、ネコマジン。
アカッゴは初めての感覚に胸の奥がざわつく。
「あ、あれは……なんと形容すればいい……」
横にいたラーネが、ぽつりと言った。
「ああ、モフモフだねぇ」
その言葉は、アカッゴの胸に雷のように落ちた。
「モ、モフモフ!?そ、それは、いったい……!?」
アカッゴにとって未知の感情。
ラーネは尋ねる。
「猫、撫でたことないの?フワフワのサラサラのモフモフだよ」
アカッゴは目を丸くし、ラーネへ向き直った。
「三つの形容の融合!!??……そ、それはいったい……」
面々が互いに軽く挨拶を交わす中、ネコマジンはふと視線を感じて振り向いた。そこには、アカッゴがまるで未知の神秘を見るような目で固まっていた。
ネコマジンが問う。
「なんだ……?オレになんか用か……?」
アカッゴは驚き、おもわず答えた。
「あ……は、はい……あの……少し……撫でさせてもらってもよいでしょうか……?」
ネコマジンは怪訝な顔で言った。
「お前なぁ……初対面の相手に撫でさせてくれと頼まれて、お前は撫でさせるのか?」
その言葉はもっともだった。アカッゴは申し訳なさそうに頭を下げる。
「す、すみません……!失礼な発言を……!」
そのやりとりを見ていたオニオが、近所のおじさんのような顔で口を挟む。
「おい、ネコマジン、意地悪言うなよ。人は猫を見ると撫でたくなるもんなんだよ」
しかしネコマジンは即座に抗議した。
「猫差別だ!」
チライもそのやり取りを見てフォローに入る。
「そうそう、わかるよアカッゴちゃん。猫見たら撫でたくなるよね。あ、でもビルス様はそうでもないか……」
ネコマジンは、少しムッとした顔をしながら、持ってきたグミの袋を抱え、むしゃむしゃと食べ始めた。魔人ブウはそれを見て、興味深げに声をかける。
「おい、お前、何食ってんだ?」
ネコマジンは食べながら答えた。
「グミだよ」
ブウは首をかしげる。
「グミってなんだ?」
ネコマジンは驚いたように答える。
「なんだ?お前、グミ知らないのか?しゃーないな、ほら、やるよ、二粒」
猫の手でつまんだ二粒を、ブウの手のひらにぽとりと落とす。
ブウは嬉しそうに受け取り、満面の笑みで言った。
「おー、サンキュー」
そして、グミを、口に放り込み咀嚼する。
「うーん!これ、ぷにぷにしてて美味いな!」
その感想に、ネコマジンは満足げに尻尾を揺らした。
「そうだろう。仕方ない、もうちょっとやるよ」
「おー!サンキュー!」
二人は並んで座り、グミの食感を楽しんだ。
その光景を見ていたオニオが、クリーザの横でぽつりと言った。
「なんかあの二人、キャラ被ってますね……」
アカッゴは、ネコマジンと魔人ブウが並んでグミを食べている様子を観察して気が付いた。
「なるほど……ビルス様も、ネコマジンさんに似ているブウさんも、特に撫でたくはならなかった……」
「……つまり……モフモフの本質は毛並み……!」
修行開始前に、アカッゴは既に一つの学びを得ることとなった。
トニュー無調戦隊の面々は、この場の空気などまったく気にせず、いつもの儀式を始めた。隊員各々が音を立てながら派手なポーズを決めていく。
そして、戦隊が自己紹介のポーズを決め切った後、その場は、静寂と困惑が入り混じった微妙な空気に包まれていた。
そんな空気の中で悟飯は、ぽつりと呟いた。
「カッコいいな……」
「えっ!?」
トランクスは本気で驚き、声を上げた。
トニュー隊長は悟飯の言葉を聞き、悟飯へ向いて言った。
「流石!この様な場に召集される一流の戦士殿!センスも一流でいらっしゃる!」
悟飯は照れながら笑う。
「い、いや……そんな……」
そしてトニューは言った。
「もしよろしければ!あなた様向けのファイティングポーズも考えましょうか!」
悟飯は笑顔で答えた。
「え?いいんですか?嬉しいな……」
それを聞いてトランクスの心が揺れた。
「え!?…や、やめてほしいな……オレの、悟飯さん像が壊れる……」
その様子を見ていたチライが、呟いた。
「あの人…意外とノリがいいんだね…」
ラーネは悟飯の反応を見て考えた。
「悟飯さんほどの人が興味を持つとは……あの人たちのポージングには、何か計り知れない意味があるのかも……」
アカッゴも真剣に悩み、考察を試みる。
「現段階では解析不能……私もまだまだ未熟……」
修行空域はまだ、せわしない様子だった。
だが、ゆっくりと、少しずつ、修行の準備が整おうとしていた。