頭脳派たちよ、ようこそ実力至上主義の教室へ 作:NO NAME NO LIFE
私はグループメンバーと話していた。毎日笑顔を貼り付けているせいか、最近は頬がよく攣ってくるのを感じる。この嘘を、いつまで隠し通せるのだろうか?すると、ポケットが振動した。どうやら、龍園から電話がかかってきたようだ。私は、「ごめん、探し物があるから、テントに行ってくるね」とだけ言い残し、個室で龍園と話すことにした。
「悪いな櫛田。龍園グループはアカギグループの犬になった」
「アカギグループの傘下になっただって?どういうことか説明しなさいよ」
「お前のスマホから送られたDクラスのリーダーはお前が送ったものじゃなかったんだ。綾小路。奴はアカギグループのスパイだった」
「それで?あなたが犬に成り下がったのはなんでなの?」
「アカギはな、こう言った」
「何て?」
「俺がヘマしたって他クラスに流すなら、二階堂グループからもらったCクラスの情報を全部バラすってな」
「……」
「嫌なら傘下に入れってよ」
脅し返されるって何よ。前に龍園に期待を寄せた自分が愚かに感じてきた。受話器越しに、氷がグラスに当たる音がした。
「落ち着けって、櫛田。表向きでは、俺とお前の同盟は無効だが、利害を考えればまだ有効だ」
「説明して。納得できる形で」
「冷静に考えればわかるはずだ。これはピンチであると同時にチャンスなんだよ。アカギの傘下として信頼を勝ち取れば、裏切りやすくもなる」
なるほど。信頼を得てから裏切る。彼らしい作戦だ。龍園はまだ諦めていなかったのか。スマホを握る私の手が、微かに緩んでいくのを感じた。
「じゃあ、もうすでにアカギを嵌める作戦は考えてるのね?」
「さあな。教えちゃ意味がねぇだろ」
「同盟のルールでは、情報は全て隠さないという契約だったはずだけど」
「情報はな。戦略には無効だ」
確かに。悔しいが龍園の言うとおりだ。私に教えれば、私と龍園がまだ繋がってるのをアカギに勘ぐられるかもしれない。
「……ねぇ、龍園?」
「なんだ?」
「本当にアカギグループの犬に"成り下がった"の?」
「好きに解釈すればいい」
そんなことを話していたら、かなり長く話してたらしく、グループメンバーが、「櫛田さ〜ん。探し物は見つかった?」とやってきたので、小声で電話を切ることを伝えてから切った。口角を上げ、声の高さを半音上げる。完璧な“櫛田桔梗の理想像”を作り直して、返事をした後テントから出た。
龍園は、本当に犬なのだろうか?
ーー無人島試験が始まって、3日目
「葛城。お前と契約したい」
俺は、突然やってきた渡久地グループのリーダー、渡久地東亜と話をしていた。
「なんの契約がしたいんだ?」
「俺が渡久地グループの情報を全部やる」
「……いくら欲しい?」
すると渡久地は、話が早いと俺のことを褒め始めた。冷静に考えればわかることだ。同盟を組むなら、情報を全部もらうのは前提条件。それを餌に契約したいとなれば、必然的にPPとなる。
「800万PPほど、な?」
「800万?何が目的だ」
自グループの情報を全てやるというのだから、1人分のクラス交換権を買える2000万PPほどを覚悟していたが、想像の半分未満の値段に驚愕する。
「落ち着けって、この値段は今の俺らに絶対必要なものなんだ。こんな安値で俺らのグループの情報全てはいるんだから、契約しない手はないと思うがな」
「その通りだな。800万払おう」
そうして、800万PPを渡久地に支払う。すると、渡久地は、俺から受け取った800万を確認もさせず、どこかに即送金した。渡久地グループの情報全て、約束通り手にすることはできたものの、新たな謎ができてしまう。
「しかし、わからないな。今の渡久地グループにどうしても800万PP必要だということが」
今の情報をまとめると、渡久地グループにいるメンバー、そしてどんな戦略を使うかだったが、どうして渡久地が800万PPを要求したのか全くわからなかった。
「しかも、お前の言った戦略を本当に実行するつもりなら、今俺に情報を伝えるのは悪手のはずだ。なぜ、今になって情報を伝えたんだ?」
「グループメンバーにも隠してる戦略だ。それは言えねえな。俺は、渡久地グループの"情報"を全てやると言ったんだ」
「確かに、その通りだな。しかし、800万の使い道くらいは教えてくれてもいいんじゃないか?」
「罠じゃない。とだけ言っとく。だから安心しとけ」
安心できるわけがないが、渡久地グループの情報がたった800万PPで手に入れられたのは大きい。何も疑ってない顔を作って、俺は秋山達に渡久地グループの情報を伝えに行った。
ーー無人島試験が始まって、4日目
4日目も夜になりました。私は、葛城グループを裏切るため、渡久地グループのリーダー、渡久地東亜くんに話をしに行きます。そして、渡久地くんにこのことを伝えました。
「葛城グループの戦略を伝えにきました。」
「なるほど。グループから信頼を獲得したお前は葛城グループを裏切りたいんだな坂柳。そして、そのため俺と同盟を結びたいと」
渡久地くんは、ソファに座りながら私に話していました。彼には隠したいわけではないので、「ええ。そうです」とだけ答えます。
「肝心の戦略はなんなんだ?」
「最初に秋山くんをグループリーダーとし、占領スポットをたくさん取って他グループに知らしめます。その後、インフルエンザワクチンを利用して佑くんをリーダーに変更……」
「そうやって、リーダーの誤答を狙いたいのか。俺は、佑をリーダーに指名すればいいんだな?」
私が言い切る前に渡久地くんが言います。
「ええ、そうです」
私は彼に隠すことなく伝えます。変に勘繰られれば、同盟を蹴られてしまうリスクもありますし。
「その作戦を考えたのは?」
「秋山君です。彼が考えました」
「やはり秋山か。ムカつくな、秋山深一」
私は思わぬ発言に、「何故ですか?」と聞くことしかできませんでした。
「勝つってことは、相手を蹴落とすってことだ。あいつ、自分が犠牲になりゃ勝てると思ってる。そういう勝負を舐めた真似するやつが、俺は一番嫌いなんだよ」
相手を蹴落とす、その通りだと私は感じました。そして、同盟を結ぶという目的のため、会話を繰り出します。
「それでは、契約成立ということでいいですか?契約が完了したら、同盟を結びたいのですが」
「あぁ、それでいいぜ。同盟だが、俺らがAクラスに行くタイミングで、お前らをPPで貰い受ける。ってので問題ないか?」
「ええ、それで問題ないです」
そうして同盟を結んだ私は、Aクラスのテントに戻り、偵察は終わりました。と、葛城くんに伝えました。……本当に、単純な方々ですこと。
ーー無人島試験が始まって、5日目
目覚めの良い朝だ。現状を整理するにはちょうどいい。
私がこのクラスのリーダーとして願うこと。Bクラスのメンバーを、誰一人として、退学させたくない。しかし、Aクラスにいきたいという子もいる。そのために、葛城グループと同盟を組み、PPのやりとりもしている。
それもこれも、副リーダーの類家くんの功績が大きい。彼はとても有能で、私の作戦は必ず成功させてくれるし、私の思い付かない作戦も考えてくれる。実際、葛城グループと同盟が結ぶのを提案したのは類家くんだった。そんなことを考えてると、クラスメイトが話をしにきてくれた。
「一ノ瀬さん!!大変です!!我がBクラスの一大事です!!」
まるで火を吹いてるように真っ赤な顔で慌てた様子だったので、どうしたのか聞いてみた。するとその子は私に伝えます。衝撃で、嘘であると信じたい、そんな事実を。
「俺らのクラスの副リーダーである類家さんは、最初から渡久地グループの裏切り者だったんですよ!!」
そんなはず、ない。私は絶対的な証拠がない限り、類家くんを信じると決めてるからだ。