本編ではずっこけて1発KOだった山田先生だったので、その反省を生かして主人公に突っ込み1発KOをかましました。
いや、転ぶだけでエネルギー尽きる勢いで突進したのでそりゃあ受け手側がKOになるでしょう。
「えーと、自己紹介の時間です!」
IS学園入学式後、1年1組に集まった生徒たちが互いの顔合わせのために自己紹介を進められた。
女子しか入学できない筈の学校であるのだが、今年は一味違った。
織斑一夏、そして北川英二という男子がいる。
女子校に急に放り込まれた感覚の2人は常に身体に突き刺さる視線を感じながら黙り込む。
互いに顔は合わせなくとも似たような考えをしているのは分かる。
「「どうしてこうなった…………」」
「あ、あの、次は織斑くんの番ですよ?自己紹介してくれる、かな?」
意図せず同じ台詞が漏れたタイミングでの自己紹介が回ってきた一夏をよそに、変わらずオドオドした山田真那教諭が自己紹介を促した。
試験会場と同じ頼りなさそうな雰囲気、特に英二にとって一撃で倒された後に物凄く叱られたのかしおしおになっていた場面を見てしまったため、絶対に教師に向いていないだろと思われている。
性格はともかくISの腕は間違いないのは直に感じているので、性格はあまり考慮されていないのではないかと結論付けた。
「織斑一夏です、よろしくお願いします。以上」
淡白な自己紹介ではあったが、実際にこれ以上言うこともないのも事実。
未知の場所に放り込まれて多弁出来る方がおかしいと言うもの。
場が白けてしまうが、恐らく英二も似たような自己紹介になる。自分の事を必要以上に喋る必要性もなく、むしろ喋ったせいで自分の価値が下がる可能性だってある。
うかつなことを言えない、流石に情報が少ない自己紹介から若干の野次が飛ぶ中でそう思っていた矢先だった。
「自己紹介も満足に出来んのかお前は」
「千冬姉!あだっ!?」
「ここでは織斑先生と呼べ」
ここにきて世界最強、そして織斑一夏の姉である織斑千冬が登場する。
身内の登場に相性を込めた呼び名で呼んでしまったがために帳簿で頭を引っ叩かれている。
思ったよりも暴力的な姉が居るんだと若干顔に出てしまったのがいけなかったのか、千冬の視線が英二に向けられる。
目を合わせないように即座に顔を背けたが、それが余計に目をつけられる原因になったのかお構いなしに話しかけられる。
「北川、お前もこの馬鹿みたいに短い自己紹介で済ませるつもりじゃないだろうな?」
「…………ッス」
あからさまに不服層ではあるが、いくらなんでもこのように目をつけられていたら喋るものも出せなくなってしまう。
暴力的一面を見せても周囲の生徒が皆キャーキャーと黄色い声を上げているためカリスマ性はあるのだろう。
それはそれとして、自己紹介だが言葉を作るのは容易いが実行するには練習が必要だ。
短い時間とはいえさっさと短文で、なおかつそこそこ印象に残るような自己紹介を考える。
そしてどのように言い放つかだけが問題であった。
「き、北川君?そこまで思いつめた顔しないで、ね?相談事は先生、乗りますよ?」
「自分の順番が回って来ただけなのに何で先生が慌てるんですか?」
本当に大丈夫なのかと思いながらも一つ咳払いをして口を開く。
「北川英二、中学では映像研究部部長をやっていて、中学最後のコンテストに作品を例の適性検査に引っかかって提出できず、第一志望どころか第三志望の高校に入学すらできず、男は普通入学できないIS学園に入学した男だ。運が良ければ3年間よろしくお願いします」
あからさまに皮肉たっぷりな自己紹介に場がしんと静まりかえる。
本当にここに来たくなかったんだろうなという意思がひしひしと伝わってきており『どうするんだこれ』みたいな空気が流れ始める。
英二も本音を取り繕うつもりはなく、そのまま着席して時間が過ぎるのを待っている。
高校生活最初のホームルームと思えない空気ではあるが、無理にでも進行しなければならない。
「真耶、続きを」
「ええっ!?こここ、こんな中で!?」
「この後に授業も控えている。半月でISの知識をみっちりと仕込む。その後は実習だが基礎となる動作は半月で仕込んでやる」
有無を言わさないスパルタ教官な物言いでも尊敬されているんだ、というよりもミーハーな連中が多いんだとここで気づく。
「ファンクラブに来たんじゃないぞ…………」
中学の授業を映画を作るために何度もサボったことがある英二ではあるが、大スターを見るためにIS学園に来たわけじゃない。
そもそも来るつもりもなかったのだが、自分の趣味をどう続けるか、夢を追いかけるかを考える。
ホームルームが終わった後に始まる授業もそこそこ聞いておくが、3時間目にようやく異変に気付く。
「織斑くん、あの、本当に分かってますか?」
「いえ、全然」
「事前に渡された教科書はどうした?」
「電話帳と間違えて捨てました」
すぱぁん!と再び帳簿で叩かれる音が教室に鳴り響く。
「…………これと同レベルなのか?」
いくらなんでもドン引きするレベルの愚行は犯さないと自分では思っている英二は唯一の男子クラスメイトがこのありさまなことを見て学園生活が前途多難であることに頭を抱えるのであった。
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