世界の平和のため侵略者と戦うのは、しずかちゃん!?
地球から300万光年の彼方にあるM78星雲から、女戦士が飛び立つ。
彼女の名はウルトラウーマンサイレンス。地球を守る任務を受けた新人のウルトラ戦士だ。
サイレンスが宇宙を航行していると、バルタンの母船を発見した。
(バルタン星人)
サイレンスは母船を追う。
母船は地球の前で停滞する。
一体のバルタンが地球に向かう。
サイレンスはバルタンを追跡し、地球へ降りる。
(この姿では目立つな)
サイレンスは女児に姿を変えた。
そこにメガネをかけた、黄色いシャツに紺の短パンを履いた男児が現れる。
小学五年生くらいか、その男児は女児を見て近づいてきた。
「やあ、しずかちゃん」
(しずかちゃん?)
辺りを見渡すも、自分以外に女児はいない。
女児は自分を指さした。
「しずかちゃん?」
男児が疑問符を浮かべる。
その時、遠くで悲鳴が聞こえた。
女児は悲鳴の元へ駆けった。
「待ってよしずかちゃん!」
男児は走り去る女児の背中に向かって手を伸ばすが、彼女はあっという間に小さくなってしまった。
悲鳴のした先で、女児と同じ姿をした地球人が、バルタンに襲われている。
(しずかちゃんってひょっとして)
地球人は、女児の目の前でバルタンに攻撃され、意識を失う。
「トヤ!」
女児はバルタンに飛び蹴りを放ち、着地して身構える。
「貴様は何者だ?」
バルタンが訊ねる。
「私はサイレンス。ウルトラウーマンサイレンスよ」
「なに? そうか。少々分が悪そうだ」
バルタンはそう言うと逃走した。
女児は気を失って倒れている地球人に近づく。
「ねえ、しっかりして」
女児は地球人を揺さぶる。
「う……」
意識を取り戻した地球人が、女児を見て驚く。
「ど、どうして私がそこに?」
「君がしずかさんね?」
「そうだけど」
「私はサイレンス。M78からこの星を守る任務でやってきたの」
「サイレンス? って、私と同じ名前じゃないのよ」
「しずかちゃーん!」
男児の声が聞こえる。
(まずい)
女児、もといサイレンスはしずかを空き地のドカンの裏へ連れ込んだ。
「どうして隠れるのよ?」
「私はあなたと同じ姿をしている。見られたら混乱が起きるわ」
「確かにそうね」
サイレンスは懐からベータカプセルを取り出す。
「これをあなたに預けるわ。もしも、さっきの怪物がやってきたら、このボタンを押して」
サイレンスはそう言うと、光になってしずかの体へと重なる。
「え?」
物音に気づいた男児がドカンの裏へやってくる。
「しずかちゃん、いきなり走り出してどうしたの?」
振り返るしずか。
「うん? ちょっとね」
「ちょっとって?」
「ちょっとはちょっと」
「あ、そうだ。僕、しずかちゃん家に行こうとしてたんだけど、ちょうどいいや」
「あら、どうしたの?」
「先週借りた漫画を返そうと思って」
しずかは男児の手元を見るが、何も持っていないことに気付く。
(この子、忘れてきたのね)
「奇遇ね。私ものび太さんのところへ行こうと思ってて」
「じゃあなんで急に走り出したりしのさ?」
(忘れ——)
「——ものよ」
サイレンスの思ったことが、しずかの口から放たれる。
「のび太くーん!」
まん丸と太っただるまのような青い何かが空から現れた。
「あ、ドラえもん」
「のび太くん、肝心なこれを忘れてるよ」
ドラえもんがのび太に漫画を渡した。
しずかはその様子を不思議そうに見ている。
「あ、しずかちゃん。どうしたの? 僕の顔に何かついてる?」
「たぬきが喋ってる……」
「僕はたぬきじゃなーい!」
「あ……いや、今のは私じゃなくて……」
「君がしずかちゃんでなければ誰なんだい?」
「私は正真正銘、源 しずかよ」
「おい、のび太!」
その声の先に、ガキ大将がお似合いの体の大きな少年が立っている。
「じゃ、ジャイアン!?」
怯えるのび太。
「むしゃくしゃするから一発殴らせろ!」
ジャイアンという少年が駆け寄ってくる。
「うわああああ!」
のび太、絶体絶命のピンチの時、しずかが止めに入った。
「やめなさいよ、このマウンテンゴリラが」
「しずかちゃん!?」
「いや、だから今のは私じゃなくて」
ジャイアンがポカーンと口を開けてしずかを見る。
「行くわよ、のび太さん」
しずかはのび太を連れてジャイアンの元を離れた。
取り残されたジャイアンの前に、バルタンが現れる。
「な、なんだお前!?」
「私はバルタン。君の体を貸してもらいたい」
「俺の体を? 嫌なこった!」
ジャイアンはバルタンに殴りかかる。
バルタンは超能力でジャイアンの動きを止める。
「なんだこれ!? 体が動かねえ!」
「貸してもらうぞ」
バルタンがジャイアンの体に入り込んだ。
ジャイアンは意識を失い、バルタンが彼の体を乗っ取る。
「あ、ジャイアンだ。ジャイアーン!」
と、そこに現れたのは不思議な髪型をしたスネ夫という少年だ。
「お前は誰だ?」
「何言ってんのジャイアン?」
スネ夫は疑問符を浮かべる。
しずかの部屋。
のび太がしずかに言う。
「今日のしずかちゃん、おかしいよ。何かあったの?」
(隠せないわね)
しずかの体から光が出てくる。
その光はしずかそっくりのサイレンスに変わる。
「し、しずかちゃんが増えた!?」
「私はサイレンス。M78星雲から来た宇宙人よ」
「M78星雲の宇宙人?」
「私は宇宙警備隊所属のウルトラウーマン。地球を守る任務を受けてこの星にやってきたの」
「守るって何から?」
「侵略者からよ。今、この星をバルタン星人が狙ってるわ」
「バルタン星人って?」
サイレンスは携帯端末を使って星人の巨像を空中に映し出した。
「うわ!」
驚くのび太。
「なにこの、セミのようでザリガニみたいなやつは?」
「バルタン星人。宇宙のならず者よ」
「そのバルタンがなぜ地球を?」
「バルタン星が壊滅し、地球を新たな
「そんなバカな」
サイレンスは巨像をオフにして携帯端末をしまう。
「いや、それは事実かもしれない」
と、ドラえもんが歴史の書物を読んでいる。
「2人とも、これを見てくれ」
ドラえもんが書物をのび太としずかに見せる。
そこには、巨人と怪獣が戦っている様子が写真で掲載されている。
「これは未来の平和記念館の書物なんだけど、これによると地球は宇宙人や怪獣に襲われていたんだ。僕も最初は信じられなかったんだが、今のサイレンスの話で合点がいった」
「ジャイアンとスネ夫に知らせよう」
のび太は立ち上がると部屋を飛び出して行った。
「僕も行くよ」
ドラえもんが後を追う。
「う……」
サイレンスが具合悪そうにする。
「サイレンス?」
「活動限界よ。しずかさん、悪いけど入らせて」
サイレンスは光になると、しずかの体へ入り込んでいく。
のび太とドラえもんはジャイアンとスネ夫を探していた。
「ジャイアーン、スネ夫ー!」
彼らの家にも、町中にもいない。
「2人ともいったいどこにいるんだ?」
そこに、バルタンが現れる。
「バルタン星人!?」
「ほう、私を知っているのか」
ドラえもんがポケットから空気砲を取り出す。
「なんのようだ?」
「こちらの人間の体をいただきに来た」
「それって……」
「そういうことだ」
バルタンがのび太に入り込もうとする。
「ドカーン!」
ドラえもんの空気砲が、バルタンを吹き飛ばした。
「貴様……!」
巨大化するバルタン星人。
「踏み潰してくれるわ!」
バルタンはドラえもんを踏み潰そうとするが、硬質なのかびくともしない。
「こんな硬いたぬきは初めてだ」
「僕はたぬきじゃなーい!」
ドラえもんが空気砲を飛ばす。
だが、バルタンはよろめくだけで倒れることはなかった。
「ドラちゃん、のび太さん!」
そこへしずかが駆けつける。
手元にはベータカプセル。
「ここは私に任せて2人は逃げて!」
「危険だよしずかちゃん!」
しずかはベータカプセルを頭上に掲げる。
「大丈夫だから」
そう言って、ベータカプセルのスイッチを押す。
大きな手が地面から現れ、しずかの体を掴むと、光と共に巨大化したウルトラウーマンサイレンスが出現する。
「しずかちゃんが巨人に……」
のび太とドラえもんがサイレンスを見上げている。
サイレンスは足元の2人を見る。
「そこにいると踏み潰してしまうわ」
のび太とドラえもんがその場を離れる。
サイレンスはバルタンの方を見て身構えた。
「フォフォフォフォフォッフォー」
叫び声と共に、仲間のバルタンが姿を現す。
「三体一なんて卑怯だぞー!」
地上でのび太が叫ぶ。
バルタンの放った機銃がのび太の足元で火花を散らす。
「うわああああ!」
飛び退くのび太。
サイレンスは三体に分身すると、それぞれがバルタンと戦い始める。
「いいぞ、やれやれー!」
バルタンを追い詰めるサイレンスをのび太が応援している。
のび太の背後にスネ夫が現れる。
「おい」
のび太が振り返る。
ブン!——スネ夫の拳がのび太にクリーンヒット。
「何するんだスネ夫!?」
「スネ夫? ああ、この肉体の名か」
「お前はいったい?」
と、ドラえもん。
スネ夫の体からバルタンが飛び出し、のび太に飛びかかった。
「うわああああ!」
のび太は倒れて苦しそうにのたうち回っていると、バルタンが彼の体内へ入り込んでしまう。
「のび太くん!」
「フォフォフォフォ!」
立ち上がったのび太がドラえもんをぶん殴って気絶させる。
「あおだぬきは眠ってな」
刹那、大きな爆発と共に、巨大バルタン三体が消滅する。
どうやらサイレンスがバルタンを倒したようだ。
サイレンスは光に包まれると、縮んでしずかの姿になる。
「のび太……さん」
しずかはのび太に取り憑いているバルタンに気付く。
「のび太さんを返しなさいよ!」
「やーだね」
逃げ出すのび太。
しずかは後を追うが、流石はのび太。逃げ足だけは速かった。
「はあ……はあ……どこに行っちゃったのかしら?」
足を止めるしずか。
のび太を見失ってしまったのである。
「闇雲に捜していても埒が明かないわね」
しずかはドラえもんの元へ移動した。
ドラえもんのそばに、スネ夫も倒れている。
「ドラちゃん、スネ夫さん、いつまで寝てるのよ?」
ドラえもんとスネ夫が意識を取り戻した。
「あれ? 僕はいったい……?」
と、スネ夫が疑問符を浮かべる。
「あ、しずかちゃん。こんなところで何してるの?」
スネ夫がしずかに気づいて声をかけた。
「スネ夫さん、大変なの。のび太さんが」
「のび太がどうしたの?」
「実は——」
しずかはスネ夫にのび太の身に起きたことを説明した。
しかし、スネ夫はあまり驚いてはいない。
「実はジャイアンが」
スネ夫はジャイアンがバルタンに取り憑かれていることを話した。
「武さんも?」
「二人を助けよう!」
ドラえもんが言った。
「たぬきに何ができるの?」
しずかの問いに。
「僕はたぬきじゃ……って、あーもういいや」
と、諦めるドラえもん。
「しずかちゃんだよね?」
スネ夫が怪訝そうな顔で見つめる。
「スネ夫、しずかちゃんはしずかちゃんだよ」
「けど出てくる言葉がいつものしずかちゃんじゃないよ?」
「そこは気にしないで」
それで——と、続けるドラえもん。
「のび太くんとジャイアンのことだけど、二人の体からバルタンを引っ張り出す方法を見つけないと……」
「未来デパートでなんか売ってないの?」
「未来デパートか」
ドラえもんは未来デパートのカタログを取り出す。
「ドラちゃん、これは?」
しずかがカタログの一箇所を指差した。
骨抜きスティックと書かれている。
「骨抜きスティック。体から安全に骨だけを取り出す道具さ。魚の骨を取るのに開発されたんだけど、人でもできると思う」
「これでバルタン抜けないかな?」
「わからない」
ドラえもんはページを送る。
「これは?」
しずかはチャックの写真を指差した。
「それは体内入り込みチャック。人の背中にこのチャックを貼り付けて開けると、その人を着ぐるみのように着用して体を乗っ取る道具さ」
「なんで未来にそんな物騒な道具があるの?」
と、スネ夫が突っ込む。
「ロボット開発の権威が作ったからだよ」
「その権威って何者なの?」
「それは厳重にブロックされてるから僕の記憶回路からは入れないんだ」
しずかが口を開く。
「ドラちゃん、その体内入り込みチャックは使えないかしら? のび太さんと武さんの背中に貼り付けて、バルタンを引っ張り出すのよ」
「試してみるか」
ドラえもんはポケットから携帯電話を取り出す。
「未来デパートですか? 体内入り込みチャックを二つください」
注文をして電話をしまうと、すぐに商品が送られてきた。
ドラえもんはたずねびとステッキを取り出す。
「のび太くんの居場所は?」
ステッキを地面に立てると、コンピュータがのび太の気配を察知し、その方角へ倒れた。
「こっちだ!」
三人はステッキの倒れた方角へ急ぐ。
「あ、いたぞ!」
三人は彷徨い歩くのび太を見つけた。
「えい!」
ドラえもんは体内入り込みチャックをのび太の背中に向けて投げ飛ばした。
チャックは綺麗にのび太の背中に貼り付いた。
「……………………」
のび太の動きが止まる。
ドラえもんはチャックを開け、中からバルタンを引っ張り出した。
「なに?」
バルタンは疑問符を浮かべた。
「まさかお前たち地球人がそんな不思議な道具を持っているとはな」
バルタンは巨大化した。
しずかはベータカプセルを取り出すと、サイレンスに変身した。
「しゃあ!」
バルタンと対峙するサイレンス。
バルタンが両手のハサミから機銃を放つ。
サイレンスの体に機銃が当たり火花が散る。
「ぐ!」
サイレンスは怯んだ。
バルタンが隙を突いてサイレンの側頭部をハサミで殴りつける。
「ぐわ!」
サイレンスはバランスを崩して倒れ、高層ビルを破壊した。
ピコン、ピコン。
サイレンスのカラータイマーが通常より早く点滅を始めた。
先ほどの戦闘からそんなに経っておらず、エネルギーが回復していなかったのだ。
「しゅわ!」
サイレンスはエネルギー光弾をバルタンに投げ飛ばす。
バルタンは
「スネ夫、しずかちゃんを援護するんだ」
ドラえもんはビッグライトをポケットから出す。
「僕が? 嫌だよ」
「つべこべ言わないの!」
スネ夫にライトを照射。
みるみる巨大化するスネ夫。
「やーいやーい、おしーりぺんぺん」
スネ夫は自分のお尻を叩きながらバルタンを挑発した。
「どうやら君から消されたいようだな」
「うわああああ!」
スネ夫は迫ってくるバルタンから逃げ出す。
「いまだ!」
サイレンスは立ち上がり、腕を十字に組んでバルタンの背中目掛けて渾身の力で光線を放った。
「うおおおお!」
バルタンは大爆発を起こして消滅した。
サイレンスのカラータイマーがより一層早くなる。
「あ……もうダメ」
サイレンスは光に包まれると、小さくなってしずかに姿を変えた。
パタリと倒れるしずか。
ドラえもんはスモールライトでスネ夫の大きさを戻すと、しずかに駆け寄った。
「しずかちゃん!」
「力を使いすぎたわ。これでは武さんを見つけても動けないわ」
ドラえもんはお医者さんカバンを取り出すと、聴診器をしずかの体にあてがう。
お医者さんカバンによる診断が行われ、栄養ドリンクが飛び出した。
「これを飲んで」
しずかは言われるがままに栄養ドリンクを飲み干した。
「……!?」
しずかの体力がみるみる回復していく。
「ありとう、ドラちゃん」
しずかとドラえもんはたずねびとステッキを使ってジャイアンの居場所を特定して駆けつけた。
河原でジャイアンが同級生たちを襲っている。
「そこまでよ、バルタン星人!」
「俺をバルタンと知っているってことは、貴様は宇宙人だな?」
ドラえもんがジャイアンの背後に回り込む。
「気づいていないと思ったか?」
ジャイアンは振り返り、剛腕でドラえもんを薙ぎ払う。
その隙にしずかがチャックをジャイアンの背中に貼り付け、バルタンを彼の体から引っ張り出した。
「ほおう?」
バルタンは巨大化した。
同級生たちが慌てて逃げ惑う。
しずかはサイレンスに変身した。
サイレンスとバルタンが格闘する。
「ぐお!」
サイレンスの怒涛の攻撃がバルタンを怯ませる。
バルタンは空へ飛び上がると、母船に向かって逃げ出す。
サイレンスは八つ裂き光輪でバルタンを真っ二つにぶった斬ると、バルタンの母船をスペシウム光線で粉砕するのだった。
光に包まれ、しずかに戻るサイレンス。
しずかはジャイアンの背中のチャックを閉めて外した。
「あれ、俺なんでここにいるんだ?」
ジャイアンは疑問符を浮かべながら去っていく。
「ドラちゃん、大丈夫?」
「うん。痛かったけどね」
「それじゃ、のび太さんのチャック外しに行きましょうか」
しずかとドラえもんはのび太の元へ移動すると、背中のチャックを取り外した。
「あれ? 僕は一体なにを?」
疑問符を浮かべるのび太。
「のび太さん」
振り返るのび太。
「しずかちゃん」
「バルタンの脅威は去ったわ」
「本当に?」
「ええ」
「それじゃあ、地球はもう安全なんだね!?」
わーい!——と、大喜びののび太であった。
ご拝読ありがとうございます。
ドラえもんとウルトラのクロスはいかがだったでしょうか?