機動戦士ガンダム クロスボーン外伝 ~腐敗した宇宙を焼き尽くす者~   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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【UC0122】ザビーネの忠誠と野心、そしてロナ家の影

宇宙世紀0122年。

F91計画のデータ強奪作戦を終えた俺—鉄仮面—は、フロンティアIV侵攻に向け、クロスボーン・バンガードの戦力を再編していた。

 

その中でも、最も厄介で、最も有能な部下―― ザビーネ・シャルの動向は、常に監視の対象だった。

 

ザビーネは、軍事的才能と操縦技術において、疑いようのない天賦を持っている。だが同時に、ロナ家の理念への献身と、個人的な野心という情動が、彼の中で複雑に絡み合っていた。

 

『鉄仮面様。F91のデータ……確かに奪取されました。 だがサナリィの連中は、あれほどの力を、なぜ貴族ではなく連邦に献上するのか。愚かとしか思えません』

 

ザビーネの声音には、不満だけでなく、技術への憧れと嫉妬が混じっていた。それは、俺の論理にとって危険な揺らぎだ。

 

『ザビーネ。情動は、判断を鈍らせるバグだ。 F91への執着を、支配の論理へ転換しろ』

 

『承知しています。しかし……』

ザビーネは一瞬、言葉を飲み込んだ。

 

その躊躇は、俺のセンサーには明確に“ノイズ”として現れた。

 

『ロナ家の理想が宇宙を治める未来こそ、我々が戦う理由。 だが俺は……俺自身の力で、その未来を掴みたいのです』

 

ザビーネの野心。それは単なる反逆心ではない。 ロナ家の理想を自分の手で体現したいという、支配欲に近い情動だ。

 

だからこそ、彼は利用価値がある。だが制御できなければ、危険なバグにもなる。

 

『ザビーネ。力を求めることは構わぬ。だが、その力を情動で使うな。 我々は、情動を捨てた論理で宇宙を変革するのだ』

 

ザビーネは静かに頷いた。だが、瞳の奥には疑念と憧れが揺れていた。F91という“人間の情動が力を与えるモビルスーツ”に対する、理解と拒絶が入り混じっている。

 

その感情は、彼自身がまだ認めていない。

 

『……鉄仮面様。俺はロナ家に忠誠を誓っています。 しかし、それは“血”ではなく、“理想”への忠誠です』

 

ロナ家の血統ではなく、理念への忠誠。 それは、俺が娘ベラに強制した“血統の論理”とは、別の形の信念だった。

 

『理想ならば構わん。 だが情動に支配された理想は、必ず破綻する』

俺はそう告げ、ザビーネにデータパッドを投げ渡した。

 

『F91のバイオコンピュータ解析が完了した。 情動が出力に干渉し、機体の限界を突破する――危険極まりないシステムだ』

 

『これが、貴様が憧れる技術の末路だ。 人間の情動を力に変換するなど、狂気の極み。サナリィは自ら暴走を招いたのだ』

 

ザビーネは沈黙した。目を細め、データに映る残像の軌跡をじっと見つめる。

 

その表情は、恐怖でも憎悪でもなかった。むしろ―― 「理解したい」という欲望。「並び立ちたい」という情動。

 

俺はそれを見抜いた。

 

『ザビーネ。貴様の情動の揺らぎは捨てろ。支配者を目指すなら、論理だけを残せ』

 

『……承知しました、鉄仮面様』

 

ザビーネは頭を垂れたが、その胸奥に燃える野心の火は、完全には消えていなかった。

 

彼は、ロナ家の理想に殉じる騎士であると同時に、 自らの頂点を夢見る“情動の怪物”でもある。

 

それは、これから訪れる戦場で、俺にとって強力な武器にもなり、同時に制御不能なバグにもなるだろう。

 

俺は静かに結論を下した。

 

『フロンティアIV侵攻は予定通り実行する。 ザビーネ、貴様の力はそこで証明される。 理想のために、情動を捨てられるかどうか――な』

 

ザビーネはゆっくり顔を上げた。

 

『ご命令のままに。……俺は、必ず答えを見つけてみせます』

 

だがその声には、 論理では説明できない、熱のようなものが宿っていた。

 

俺は密かに分析した。

 

――ザビーネ・シャルという男は、いずれ何らかの「破綻点」を迎えるだろう。

 

だがそれは、 俺の狂気の論理を加速させる“必要な誤差”でもある。

 

フロンティアIV侵攻作戦の準備は、着々と整いつつあった。

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