機動戦士ガンダム クロスボーン外伝 ~腐敗した宇宙を焼き尽くす者~ 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
宇宙世紀0123年2月。
コスモ・バビロニアのフロンティアIV侵攻作戦が迫る中、俺―鉄仮面―は、アナハイム・エレクトロニクスが密かに進めていたシルエットフォーミュラ計画のデータ解析を完了させた。
アナハイムの技術者たちは、連邦軍の小型モビルスーツ路線に抗えず、サナリィのF90/F91に対抗するため、旧世代技術を無理に小型化した“模倣的高性能化”に踏み切った。
その象徴こそ、RXF-91――シルエットガンダムである。
『アナハイムは、巨大な慣性から逃れられなかった。彼らが選んだのは創造ではなく、他者の成果の模倣という最悪の非効率だ』
俺は冷徹な論理で設計図を読み解いた。
F91のデータと旧式ガンダムの技術を強引に融合させた設計。
そこには、アナハイムが抱え続けてきた利権維持と保身という情動の痕跡が、明確に刻まれていた。
シルエットガンダムは、高性能を目指しながら、アナハイム特有の高コスト体質と思想の混乱を内包した不完全な機体だった。
『これは論理的進化ではない。技術的妥協だ。情動に囚われた組織が辿り着く典型的な末路だ』
アナハイムの技術が抱える“汚染”は、俺の論理の正しさを逆説的に証明していた。
情動は技術を濁らせる。
利権は判断を狂わせる。
妥協は未来を閉ざす。
それらはすべて、技術者が排除すべきバグである。
娘ベラ、つまりセシリーの教育も、ザビーネへの指導と並行して進められていた。
俺は彼女に、シルエットガンダムの設計思想の破綻を分析させ、技術の純粋性が損なわれる過程を理解させた。
『セシリー。利権と情動が技術を汚染する。支配者は、この愚かさを理解し、排除しなければならない』
ベラは、俺の冷徹な言葉を正確に復唱した。
だがその目の奥には、どこか痛むような影があった。
母ナディアの記憶を奪われた傷が、なお消えず残っているのだ。
それは小さなノイズ。
しかし、いつか致命的なエラーとなる可能性があった。
ザビーネ・シャルの教育も進んでいた。
彼は高い能力を持ちながら、野心という情動を抑えきれない“危険なプロセッサ”だった。
俺は、彼の感情すらシステムの一部として制御するよう、セシリーに教え込んだ。
『ザビーネは優秀だが、野心のバグを内包している。貴様はその情動すら統御し、最終決定権者として振る舞わねばならない』
冷徹さを装った彼女の姿には、わずかに震える呼吸が残っていた。
その揺れを、俺は初期段階の“誤差”として処理した。
マイッツァー・ロナは、俺の進めるラフレシア計画を熱狂的に支持した。
『鉄仮面よ。その兵器は宇宙の秩序を塗り替える。連邦の腐敗を断罪し、選ばれた者の支配を確固たるものにするのだ』
ロナ家の血統主義は、俺の技術的論理と交わり、情動排除という一点で絶対的な一致を見せた。
だがマイッツァーは、自らの血が娘ベラをどう変えているかを理解していなかった。
F91のデータ解析は、情動の危険性を技術的に確信させた。
その結論から導かれたのが、人類の情動を根絶する究極兵器――ラフレシアだ。
俺の狂気のシステムは、いよいよ最終フェーズへ移行しようとしていた。
遠く、フロンティアIV侵攻作戦の影が迫っていた。