機動戦士ガンダム クロスボーン外伝 ~腐敗した宇宙を焼き尽くす者~ 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
宇宙世紀0123年3月16日。運命の日が訪れた。
俺—鉄仮面—が技術と戦略の全てを統括したフロンティアIV侵攻作戦が、静かに、そして冷徹に開始された。
この作戦は、単なるコロニー制圧ではない。
腐敗した連邦の支配システムに対する、俺の狂気の論理による破壊の実行だった。
『連邦の統治は、その情動的な怠惰と利権構造によって、すでに自己崩壊寸前にある』
『我々クロスボーン・バンガードの攻撃は、その腐敗を宇宙に暴露し、新しい秩序(コスモ・バビロニア)の樹立を促すための、トリガーに過ぎない』
クロスボーン・バンガードのモビルスーツ部隊は、ザビーネ・シャルを先頭に、フロンティアIVコロニーへと侵攻を開始した。
ザビーネは戦場の先端に立ちながらも、俺の与える冷酷な戦術論理を完全に理解していたわけではない。
彼の胸奥には、騎士道的な自負と、勝利への欲望が燃えていた。
それは、俺にとって制御可能な“利用価値のある情動”だった。
娘ベラ、つまりセシリーは、ブリッジでその戦闘映像を見ていた。
彼女の瞳には、まだ小さな揺らぎが残っていた。
論理として組み込んだ“セシリー・フェアチャイルド”という人格と、切除しきれず残った“ベラ・ロナ”としての心が、静かに軋んでいる。
『セシリー。連邦のモビルスーツが情動で揺らぐ一瞬を逃さない』
『支配者とは、情動を持たない。情動を持つ者は、支配される側に落ちる。これが、新しい宇宙の秩序だ』
ベラは映像を見つめながら、無言で頷いた。
しかし彼女の沈黙には、確かな抵抗の微光が宿っていた。
俺はその揺れを、まだ修正可能な初期エラーだと判断した。
鉄仮面の開発は最終段階に入っていた。
この装置は、単に顔を隠すための仮面ではない。
俺の脳波とモビルスーツ制御系を直接結びつけ、情動のノイズを完全に排除するための、絶対的インターフェース。
『俺はもはや人間ではない。情動を持たない、純粋な論理システムそのものとなる』
『この鉄仮面を装着したとき、俺の狂気の論理は完全な絶対性を得る』
俺はそう宣言し、自身の人間性を切り離すプロセスを進めていた。
ベラはその背中を見つめていた。
彼女の胸奥に、まだ名前を持たない痛みが静かに息づいていた。
第一次オールズモビル戦役を経て、冷酷な効率性は証明されていた。
ザビーネはその象徴として戦場を駆け、ロナ家の理想を、自らの力で体現しようとする情動的な野心を燃やしていた。
それすらも、俺の論理は利用可能な変数に過ぎないと判断した。
サナリィがF91計画を進める中、俺はその技術的成功と失敗の全てを監視していた。
F90シリーズの純粋な技術思想が、いかにF91へと引き継がれ、そして情動によって駆動されるという最大の欠陥に到達していくのか。
俺はそれを待っていた。
『情動は、必ず論理を狂わせる。F91は、その愚かさを宇宙に示すだけの存在だ』
俺はそう結論づけ、侵攻作戦の指揮系統を確立させた。
フロンティアIVは、すでに逃げ場のない包囲網に囚われている。
この作戦で、俺の狂気の論理は人類にとって不可逆の現実となる。
そして、娘ベラ、つまりセシリーの胸奥でゆらめく小さな情動の火は、
まだ誰も気づいていなかったが、
俺のシステム全体を崩壊させる最初の火種となっていた。