機動戦士ガンダム クロスボーン外伝 ~腐敗した宇宙を焼き尽くす者~ 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
宇宙世紀0119年。
サナリィ(S.N.R.I.)がフォーミュラ計画の初期試験を続ける一方で、連邦軍内部では、マフティー動乱以降に強まった「管理優先」の論理が再び主導権を握りつつあった。
高性能モビルスーツが反乱の象徴となることを恐れた連邦は、小型化に向かう技術の流れを十分に理解しながらも、その進化を“抑制”しようとしていた。
『この臆病な停滞こそが、技術の純粋性を腐らせる』
俺は、連邦の硬直した論理とは対照的に、サナリィの技術者たちが示す静かな反抗――
「小型化こそが論理的進化である」という純粋な姿勢を高く評価していた。
サナリィは、連邦の予算管理と倫理規制という情動的な壁を、技術という唯一の論理で突破しようとしていた。
そして俺は、彼らが進めるフォーミュラ計画、F90技術の“外側”で、もう一つの流れが生まれつつあることを確認していた。
後に オールズモビルと呼ばれる宙賊勢力の台頭だ。
まだこの時点では、オールズモビルは単なる散発的な武装集団に過ぎない。
だが、俺は確信していた。
『旧式モビルスーツを魔改造し、情動を徹底的に排除した効率重視の戦闘ロジックへと向かう……。その流れは、やがて俺の計画と完全に交差する』
オールズモビルという名前が宇宙に響くより前、俺はすでにロナ家の私兵組織を通じて“彼らの実験場”を確保させていた。
俺が求めるのは、純粋な論理で動く戦闘システムだ。
パイロットの情動に左右されず、命令と演算のみで殺戮を遂行する兵器。
サナリィの小型化は、その論理への布石であり、オールズモビルは、情動を排した戦闘実験に最も適した器だった。
セリアは、俺のこの静かな支持を敏感に察し、深い不安を覚えていた。
『カロッゾ……あなたは、技術の進化を見ているのか、それとも破滅への階段を登っているの?』
俺は答えた。
『進化と破滅は、論理に従う限り同じベクトルだ。情動が技術を縛る限り、人類は停滞し続ける。俺は、その不合理を正すだけだ』
セリアの瞳には、俺の論理が人間性から遠ざかっていくのを恐れる感情が、確かに揺れていた。
だが、俺は、彼女の揺らぎを“ノイズ”として処理した。
情動の揺らぎこそが技術の劣化を生む。
その事実を、俺はこの頃から確信していた。
娘ベラには、オールズモビルの実験による戦闘映像を見せ、情動の排除こそが支配者の論理であると教育した。
『貴様が見るべきは、破壊の美学ではない。
情動に揺らぐ連邦の隙を、合理的に突き続けるOMSの挙動だ』
ベラの小さな瞳には、理解と戸惑いが同時に宿っていた。
それは、ロナ家の血に刻まれた“感情というバグ”が、まだ完全には消えない証拠だった。
鉄仮面の開発は、この年から本格的に進み始めた。
俺自身の情動を完全に遮断し、システムとしての絶対性を得るための装置だ。
『俺は、情動を捨てる。人類の停滞を生み出すこのバグを、まず俺自身から切除する』
U.C.0119。
この年は、第一次オールズモビル戦役の“前夜”に過ぎない。
だが、おーの戦闘データ、小型化の技術成熟、鉄仮面の設計進行――
すべてが、ゆっくりと、しかし確実に一点へ収束していった。
俺の狂気の論理が、姿を成し始めたのだ。