知るかバカ!そんなことより侵略だ! 作:ブラッキオ
Side in
ねぇ、皆さん。俺ってつい最近に皆にお世話になったことがあったじゃないですか。
――『誰に言ってんだダム』
いいから聞けって。
お世話になったってのは、アーシアの一件のことだ。あの時に周りの人達を総動員して俺の力を高めていたのだが、その協力には報いがあって然るべきだと思う。
そんなわけで俺は各所をめぐって色んなお礼をしている。意味は異なるが、まさしくお礼参りだ。今の所は生徒会メンバーが終わっていて、アーシアや俺の眷属の皆にもお礼をした。東京でのデートってことで済んだが、何で俺とデートなのだろうか。俺とデートして何が楽しいのか。あれか?ナンパ避けって奴か?だったらいつでもバッチ来いだ。
そんでもって、リアス眷属にも協力してもらったことには変わりないので、一人を除いて皆にお礼をした。
ゼノヴィアさんと塔城さんとはゲームをした。リアスと兵藤と木場とはわざわざ築地や色んな所に行ってグルメ旅をした。どうやらリアスはこの時のことをちょっとしたメモ書きにして冥界の雑誌の特集的に出すらしい。だったらもっといい所に行けばよかった。
で、その一人を除いてってのだが、それが今日お礼をすることになっているのだ。そんでもって意味が異なるお礼参りのアンカーを務めることにもなっている。
俺は駅前のベンチでのんびりと待っている。今日もいい天気だ。ここ最近発狂しそうなことが多いことを除けば気分が清々しい。今だけは色んなしがらみを忘れて楽しく生きていたい。どうしてこうなったんだろうね。
――『うーん、と。よいしょ。お、出来た。大地ー、記憶の修復出来たダム』
お、ありがとう、ドキンダム。で、何が戻った?
――『仮面ライダーの曲関係の記憶』
……もうちょっと生産的な記憶はないのか?こう、前世の嫁のこととか。
――『無いダム。その辺りは損傷が激しすぎて、マジでよっぽどのことがない限り戻れないダム』
そんな酷いことになってんのか。
実はちょっと前からドキンダムとアポロヌスがユノハ様の指示を受けつつ俺の記憶の修復をしてくれている。俺も俺で忘れた過去を思い出す必要があると思うし、その為に彼らには頑張ってもらっている。
――『大地、我の方の修復も終わった』
お、そっちは何が戻った?
――『お前の性癖』
……で、何?
――『巨乳。お前の巨乳狂いは筋金入りだったと言うことだ』
ねぇ、アポロヌス。お前ふざけてんの?
――『仕方あるまい。これでもかなり深層に潜っていたのだ。結果がこれだ』
分かったよ。お前もお前で何とかしてくれてたってのは理解した。
今日の成果は芳しくないって所だな。引き続き頼むよ。
――『うぃーっす』
――『ふん』
俺はリラックスする。自分の過去、ねぇ。もしかしたら、ここまで戻らないのは『戻す必要がない』って言う神様のお告げなのかもな。なーんて。
俺が諦めの境地に入っていると、こちらに来る人影が一つ。見知った顔である。
「ごめんなさい大地君、待たせちゃったかしら?」
朱乃だ。可愛らしいワンピースを着てのご登場である。
「いや、待ってないさ。こっちもこっちで色々考え事で黄昏ていた」
実際、俺も俺で色々やっていたしな。
失礼ながら朱乃の姿をまじまじと見る。いつもの大和撫子な感じの綺麗さとは一転して、現代の女の子らしい、可愛らしいものだ。流行りにノリに乗ったケバい感じじゃなくて、いつの時代も受けるタイプのシンプルなものだ。
「今日はいつもと打って変わって、可愛い系で攻めたのか?」
「ええ、折角のデートですもの。いつもと違う感じにして、あなたに見てもらいたかったの」
「そりゃ……嬉しいな」
我ながらちょろい。朱乃の一挙手一投足に見惚れている自分がいる。いやぁ、女の子って怖いね。こんなにも簡単に自分の雰囲気を変えてしまうんだから。俺なんて見てみろ、何やったってへっぽこ一択だぞ。
と、俺はここで妙に強い視線を感じた。そちらの方を見ると、何やら知った顔がいくつか。
その数はまるで朱乃を除いたリアス眷属+アーシアのそれだ。何なら、後ろの方で兵藤と木場が手を謝っている。おめーら、そんなに俺の失態を見たいか……。これでもそれなりにデートは出来ると自負できるぞ?
「あらあら、浮気調査にしては随分大所帯ですわね」
流石に朱乃も気づいたらしい。小さく微笑む彼女の顔の奥に、何かちょっとした悪さを考える姿を感じた。
そして、俺にくっついてきた朱乃。奴さん達のオーラが強くなる。いや、リアスとアーシアは俺とデートしたでしょうよ……。塔城さんとゼノヴィアさんは明らかにその場の雰囲気を楽しんでいるし。君達、何とかしてくれ。
「んじゃ、時間も勿体ないし、行こうか」
「ええ、そうしましょう」
こうして、俺と朱乃のデートが始まった。
内容は別にこれと言って変なものじゃない。無難に服のブランドショップに行っては朱乃のファッションショーを楽しんだり、クレープを食べたり。街中ではずっと手を繋いでいたり。我ながら甘酸っぱい青春をしているなって思った。
今日は彼女の彼氏代わりなんだなーって思うと、光栄に思える。
それにしても彼氏、か。いつかは朱乃にもそう言う『いい人』ってのが出来るんだろうと思うと寂しくも思う。いつも仲良くしてくれている彼女が旅立つ時が来ると思うと、やっぱ心に来るよな。その時が来るまでに腹を括れるようにしておこう。
「さて、折角のデートなのだからもっと色々行ってみるとするか」
俺はそう言うと、朱乃の手を握る。
「どうです?お嬢様」
ちょっと気障ったく言ってみた。すると、朱乃の顔に笑顔が浮かぶ。
「ええ、勿論ですわ。『王子様』」
カウンターでグサリと刺されながら、俺と朱乃は色んな所を巡った。ゲーセンだったり、何だったり。割と俺の趣味な所に行ってしまったが、それでも朱乃は笑顔でいてくれた。ごめんね、無理させちゃったかな?この失態は次に生かそう。
そして今は水族館を出て、次にどこへ行くのか考えている所だ。
空を見るとそれなりに日も西へと進んで、お昼になっている。もうこんな時間か。うーん、残された時間も少ないってわけよ。さて、どうしたものか……。
俺が考えていると、朱乃が俺の手を握った。
「リアス達もしぶといですわね」
「ん?」
そう言う朱乃は若干悪いことを考えているように見えた。きっとこれは気のせいじゃない。
「折角のデートなのですから……リアス達を撒いちゃいましょうか!」
そう言って、俺の手を引いて走り出した。別に俺が反応出来ない速度ではない。寧ろ、ブラックゾーンに追い付ける速度なんてものを知りたいくらいだ。敗北を知りたい。
ただ、そうじゃないのだ。何て言うか、朱乃はこんなにも押せ押せな感じじゃない気がしていたから、ちょっと驚いているのだ。彼女って実に『大和撫子』って感じだし、実際母さんも朱乃の和食作りスキルを受けて『すごいわね』なんて言っていたくらいだからな。
そんなわけで朱乃に手を引かれて町中を走る。狭い路地や大通りの人込みをかき分けたりした。何だろう、こう言うのを『逃避行』って言うのかな?そう思うと何だか面白くなってきたな。
狭い小路に入り、息をひそめる俺達。すると、リアス達が見えない俺達を目指して駆けていく。
少しだけ間を開けてから俺達は小路から出た。
「うふふ、どうやらリアス達はいない私達を追いかけていったようね」
舌をちょろりと出して、いたずらっ子のように笑む朱乃。可愛らしい。
さて、随分走ったもんだ。俺もここがテリトリーだとは言え、ここがどこなのかはすぐには分からないな。
周りを見てみる。そこにあったのはやれ『宿泊代』や『休憩代』の文字。そしてネオンの光。
うーん、ここラブホ街かー。
……。
「朱乃、ここは不味い」
こんな所を誰かにでも見られたら、俺の人生が終わるぜよ。二度と朝日が拝めなくなる。何なら君のお父様に示しがつかないのよ。こう、首を飛ばされる。
俺が朱乃を連れてその場を去ろうと手を握って踵を返すと、動かない朱乃にその足を止められる。
「朱乃?」
振り返ると、そこには顔を真っ赤にした朱乃がいた。……はい?
「いいよ」
「え?」
「大地が入りたいなら……いいよ、私。今日は、大丈夫だから……」
にょぉおおおおおおおおおおおおお!!!!!!
――『面白くなってきたダムねぇえええええ!!』
――『おいおいおい!これは我も楽しくなってきたぞ!』
――『抱けぇええ!抱けぇええ!』
おいおいおい!いつもの『あらあら、お可愛いことですねww』みたいな感じはどこに行ったんだ!君、そんな恥じらうキャラだったか?!そんな反応されると、俺も俺で返しに困るんだよ!
いや、最近俺だって欲望を解放出来ていないよ?そのせいでこうしている間に欲望ゲージが高まり溢れているのは確かだ。でも、俺だって立派な大人だ。そんな全てを擲ってホイホイ釣られるわけにはいかない。
何より、彼女のバックにいる大人が怖い。どう頑張っても見えるんだ、あの影たちが……。
堕天使Aさん『お前、ラヴィニアを待たせておいてそれかよ……』
(急所にパイルバンカーを撃たれた音)
あの人ならまだいい。あの人はどっちかと言うと、そう言うのを面白がりそうだから。本題はこっちだ。
堕天使Bさん『百鬼夜行をぶった斬る!地獄の番犬、デカマス
違った、これじゃない。
堕天使Bさん『見損なったぞ、ブラックゾーン!いかに貴殿が英雄であろうと、許すわけにはいかん!』
あわわわ……!ど、どうしよう……、朱乃も朱乃で全然動いてくれない。覚悟ガンギマリだ。
このままだと、俺の我慢が限界を迎えかねない!そうなると社会的に終わる!た、助けてリアス!戻って来て、リアス!
「全く、真昼から女を抱こうなと、随分やりおるな。『英雄色を好む』とはよく言ったものよ」
命のかかった俺に救済の光が差し込む。その声の方を見ると、そこにいたのはおじいさんとスーツの女性。女性の方は随分美人だ。銀髪が綺麗で、スーツがとてもよく似合う。
「久しいの。北の国から遠路はるばる来たぞい」
「オーディンさん!」
朱乃の手が離れた隙を見て、俺は彼女から少し気をそらしながら、挨拶をする。
「オーディンさんは確か北欧の方。何故、ここ日本に?」
俺が他愛ない話を振る。大真面目なことを考えよう。そうしなきゃ、死にそうだ。
さて、今現在の世界では
そんな時に何故日本を出歩いているのだろうか。仮にも主神なのがオーディンさん。護衛のいない所で命を落としたら、日本がたまったもんじゃない。仮に戦争になったら、家族を守るために俺は北欧神話と戦争をすることになる。
まさか、それを狙って?オーディンさんもアルベドじゃないだろうな?いや、テロリスト共の味方なのか?
その読めない行動に俺が思案にふけっていると、スーツの女性が横から入って来た。
「オーディン様!こ、このような場所をうろつくのは困ります!主神であるのですから、キチンとされてください!」
オーディンさんを叱る女性。何だか真面目だな。もしかして、彼女が護衛?にしては数が少ないな。不安を感じるよ。
「よいではないか、ロスヴァイセよ。お主とて勇者をもてなすヴァルキリーの端くれなんじゃろ?だったらこういう風景も見て覚えるべきじゃろ」
「どーせ私は色気のないヴァルキリーですよ。あなた達もお昼からこんな所にいちゃダメよ。ハイスクールの学生なら勉強しなさい、勉強を」
「うっす、その通りっす」
「ロスヴァイセ、そやつがブラックゾーンじゃぞ」
「……は?」
ロスヴァイセと言う女性、ヴァルキリーなのか。生ヴァルキリーだ。俺、ヴァルキリーってオーディンスフィアくらいしか知らないからちょっと感動している。あとはマクロスか。でもあっちはロボットやしな。戦乙女感はない。
ロスヴァイセさんにお説教を受けていると、朱乃が何やら詰め寄られていた。おっと、誰だ。仮にもバラキエルさんから預かっている娘さんを……
「ヒン」
俺から出ちゃいけないタイプの声が出た。
「どういうことだ、朱乃。これは一体……」
「あなたには関係ないでしょ!それよりも!何であなたがここにいるのよ!」
「オーディン殿の護衛だ。詳しくはまた後でだ。今はここから離れるんだ。お前にはまだ早い場所だ」
「いやよ!」
ヒョヒョヒョ……
「ブラックゾーン、まさか貴殿がここに……」
「だ、断じて違います!バラキエルさん!」
今一番会いたくない人がそこにいた。
Side out
まだまだ仕事の拘束が続く日々。うまくやっていこうと思います。