貴方が側にいない人生など、僕はいらない。
貴方の温もりを感じれないこの身体など、もういらない。
ずっと好きでした。
さようなら、世界。
そして、小説初心者なので温かな目で読んでください。
それでは本編をどうぞ。
:|突然だが、恋をしたことがあるだろうか?
僕はしたことがある。それはそれは甘く苦かった恋をね。
書斎のような部屋で、一人の
:|やぁ、こんにちは読者さん。こんなところに来て…よっぽど暇だったみたいだね。
本を片手にしたその人は、その本を閉じるとこちらを向いた。
物珍しそうな顔で観察してきた上でこう言った。
:|…そうだ、自己紹介をしよう。
僕の名前は
せっかく来てもらったんだ。
そうだね…今回は僕の初恋について話すとしよう。
あの時の僕は、ただ勉学に突っ走るだけのロボットのようでいつも世界は灰色に見えていた。
でもそんな日々に色彩をくれたのが彼だった。
僕が彼を好きになったのは、高校入学から少し経った頃なんだ。
そう、あれは僕が家に帰りたくなくて教室に残っていた時の話だった___
はぁ…家に帰りたくないな。帰ってもどうせ親は仕事でいないけど、居心地が悪いんだ。
…もう少し勉強していようか。と言っても、宿題も残り少ないけど…
誰も残っていないシーンとした教室。夕日が眩しいほどに照らし、一面橙世界のようだった。
突如、教室のドアが開く音がする。誰かが入ってきたようだ。
「やーっべ、忘れもん忘れもん…」
彼はそう言いながら自分のロッカーに向かっていった。
レッサーパンダの獣人で、スポーツ推薦で入学したって聞いたことのある人だ。
名前は確か…そう、
噂では運動神経がかなり良くてだいたいの競技でもいい成績らしい。まあ、そんな体育会系男子とは一生関わることはないだろう…
そう、思ってた時だった。
「…よぉ!こんにちは…かな?」
「…?えっと…僕に言ってる?」
「そりゃそうだろ、ここにはお前しかいねぇぞ?」
「そっか…いや、ちょっとびっくりしただけ」
「ほーん…何してたんだ?」
「うーん…まあ、勉強かな」
「おー!お疲れ様だなぁ!」
「まあ…こんなの誰にでもできるし…」
僕は目を伏せた。
勉強なんてちょっと頑張れば誰にでもできることにお疲れ様だなんて言われても反応に困ってしまう。
もっといたら気疲れしそうだな…もう片付けて帰ろうかな。
そう思って机の上を片付けていた。
うっかり紙が何枚か床に落ちてしまった…めんどくさ。
拾うか…と思ったら彼が拾ってしまった。
「おいこれ、落ちた…ぞ?」
彼はその紙をまじまじと見つめている。
なぜだ。
「……ねぇ、早く返してほしいんだけど…」
手を伸ばしたその瞬間、その手をがっ!と勢いよく掴まれてしまった。
「お前すげーーーーーーなぁ!!!!」
………え?
ごめん、状況が読み込めないんだけど、いきなりどうした?
とでも言いたい。
だが驚きすぎて身体が動かない。こんなこと初めてだぞ。
幸い口だけは動かせるようだ。
「…えっと、何が?」
「だってこれ、入学初日テストだろ!?あの高得点者が少ないって有名な!!」
「…まあ、そうだけど。それが?」
「なんだよその反応!?これどれも90点以上だぞ!?」
「……おう」
「いやぁ、俺は動くことしか頭にないからさ〜。全教科合わせても…53点にしかならなくてな」てれっ//
(いや低すぎるだろ…?!)
内心そう思いつつも、いや蔑むのはやめよ…とブレーキをかけた。いつも無意識に自分と比べて優劣つけるのやめたいな…
でもあることに少し気づいた。
彼と話していると、なんだか少し楽しい。
気が楽になるとでも言えばいいか、とにかく今まで感じたことがない感覚だ。
「…あ、わりぃわりぃ、拾ったままだったな。返すぞ」
「あ…うん、どうも」
どうもってなんだよ。もっと他に無かったのか僕?
彼は隣の席に座った。どうやら話す気満々のようだ。
「いや〜でもさ、それだけ高い点数なら親もいっぱい褒めたんじゃねーか?」
「…?いや、こんなことでは褒められないよ」
「え、そうなのか?」
「ほめるどころか、次は100点を取れよって言われたよ」
僕は頬杖をついて、
『こんなもので満足するなよ』
そう言ってくる父をただ見ることしかできなかった。
父は勉強に関しては完璧主義で、それを僕に押し付けている。
もちろん、嫌だと言った日もあったけど、余計悪化した。
このテストを返されて父に見せた時も、
『受験よりも簡単じゃないか。何故満点が取れない?』
とだけ。
満点…満点か。
…そんなに、満点が大事なの?
なんて、思ったり。
ふと、彼の顔を覗いてみる。
なんだか少しぽかーんとしていて、でも真剣そうにしていた。
僕はそれが少しかわいいなと思ってしまった。
ナデナデ
!?
「え、ちょ、何!?」
「いや…さ、色々考えてたんだけどさ。お前なんだか可哀想だなって」
「…どういうこと?」
「ほら、さっきも言ってたろ?お前の親って全然ほめてくんないみたいだし。ならこういうのもされなかったのかなぁって。そう思ったら俺いてもたってもいられなくてつい撫でちまった。へへ…あ、嫌だったか…?」
長い沈黙のあと、僕は少し顔を赤くしながら
「…別に」
と言った。我ながらツンデレすぎる。もっと素直になれよ。
などと思いつつ。
彼は僕の頭を撫で続けた。
ナデナデ…ナデナデ…
なんだか少し気持ちいい。このままずっと撫でてほしいな……っは、落ち着け、まだ寝るわけにはいかない。
「…ね、ねぇ。もういいかな、眠くなってしまう…」
「そ、そっか…へへ、よく見たらかわいいなお前」
「か、かわいい…?僕が?」
「おう!へへ、なんだかいっぱい褒めたくなるな」
そう言って彼は僕の頭を撫でながらこう言った。
「お前が褒められなかった分、俺がいーっぱい褒めてやるよ!今までお疲れ様!かっこいいぞぅ!!」
やめて、そんな満天の星空のようで空に輝く太陽のような笑顔をされたら、僕は…
「……惚れちゃうじゃないか…」
「…?なんか言ったか?」
「あ、いや…別に何も…」
「んー…?ま、いいか!」
へへ!と笑った彼は撫で終えると手をどけてしまった。
「…そういえば」
「ん?」
「自己紹介……名前、言ってなかった気がするから」
「おー!そういや俺もしてなかった気がするな」
お互い姿勢を正しく、正面を向いて顔を見つめる。
「俺の名前は縞本あきら!動くの大好き青年だぜ!」
「…僕の名前は笹野叡太。えーと…勉強が取り柄です」
『………ぷっ』
「なんだよー!勉強が取り柄って…ふふ、もうちょっとこうなんかなかったのか?」
「そっちこそ、動くの大好き青年って…ははは!ヤバい、面白すぎる」
キンコンカンコーン…
学校のチャイムが鳴り響く。
時刻はもうすぐ18時近い。夕日が一番美しく世界がオレンジ色で染まりかける唯一の時間だ。
学生としては、そろそろ帰らないといけない。
「もうこんな時間だなー」
「うん…」
「なんだー?さみしくなったのか?」
「な、何言ってんの!僕が…さ、さみしいだなんて…」
「動揺しすぎだっつーの…」
「あっ…うぅ…」
「大丈夫大丈夫!明日も会おう!な!」
「………うん」
彼…いや、あきらと約束した。
必ずまた会おうって。
その日の帰り道はなんだかいつもより気分が良くて、まるで空に羽ばたいているような感覚だった。
:|これが僕とあきらの最初の出会いだった。
この時は本当に、すごく嬉しかった。あんな風に褒めてくれたのは初めてで、胸がドキドキしていた。
あきらへの気持ちはここから生まれたんだ。
あれから僕は事あるごとにあきらと絡んだり、遊んだり、勉強会をしてみたり、思い出を作っていった。
でも、こんなにも幸せだと感じていた日常はいつの間にか終わっていってしまう。
…続きを話そう__
それはバレンタインを過ぎて数日のことだった。
いつも通り今回も大量のチョコをもらってしまった僕は、消費するのに手一杯で一日中モグモグしていた。
中には校舎裏に来てくれという手紙もあった。あの日はたくさんの女子に告白されたが、僕は全員断った。
それは好みではないとか、嫌いだったとかでもなく…心に決めた相手がいたからだった。
あれから2年が経って、僕の気持ちも整理がついた。
僕はあきらに恋をしている。
ならば、それならば。
卒業するまでに必ず告白をする!ほかの生徒に告白されても断る!
そう決めたのだった。
……なんて記憶にふけっているうちにそろそろチョコの甘さで吐き気が…
パシッ!突然肩を叩かれた。こんなことをするのは…
「よっ!まだチョコ食べてんのか?」
やっぱり、あきらだった。あきらなら別にいいか。
モゴモゴ…ごくん
「うん、今やっと半分終わったよ」
「モテるってのも難儀なもんなんだな〜」
「うん…あのさ」
「ん?」
「その……今度の土曜日、あきらの家に行ってもいい?」
「んーとね…あ、部活あるわ。多分家にいないな」
「そっか…」
「でーじょーぶだぜ、日曜日はイケる」
「ほんと?じゃあ約束ね」
「何すんの?」
「んー…ゲームとか、雑談とか」
「おーけー!」
なんてことない普通の会話。
僕にはそれがすごく楽しい。
チョコの甘さもこれで苦にはならない。
しかし、僕の目の届かないところではまた別の出来事があったようで__
「なによ、あんなにイケメンのくせに私の告白を断るなんて!」
「ホントにひどいよね、調子に乗ってるんじゃない?」
「でも、あの孤高みたいな感じがいいんだよね〜!」
「…」「…」じー…
「な、なによ…悪かったって…」
「ふん!分かればいいのよ」
空き教室で昼飯を食べていた彼女たち。
それぞれが思い思いに
「だいたい、なんなの?あの縞本ってやつは」
「学力も平均よりも下、運動だけが取り柄の馬鹿のくせに叡太様と対等に話してるなんて…妬ましいわね」
「そう?アタシはお似合いだと思うなぁ〜!」
「……」「……」
「…もうしゃべらないでいるね…」
「………そうだわ、あの縞本ってやつを取り除けば…」
「それなら、私がやろうか?」
「…えぇ、頼むわ」
「………」(…どうしよ、なんだか大凶な気配がするよ…)
かくして彼女らは影の中で動き始めた。
全ては明るい未来を夢想して…
それから数日が経った。
今朝のことだった。
ふと、あきらがこんな話をしていた。
「最近よく俺んところの部活に差し入れをしてくれる子がいてなぁ」
「マネージャー的な?」
「そーそー、これがまた可愛くてな〜」
「…ふーん」
少し怪しいと感じてしまった。
僕の
無視しよう。自分のこういうところが本当に嫌になる。
そして時は流れ放課後の教室にて。
僕は今、覚悟を決めているところだ。
明日、あきらに告白する。
心臓が激しく鼓動し、汗が止まらない。
もし断られても、それは仕方のないこと…仕方のないことだから…!
そう思うと余計暑くなる。目頭も熱くなる。
深呼吸深呼吸……すぅー…はぁーー…
よし、行こう。
最後かもしれない
________________________
よし、あとちょっとで目の前だ。
ここを曲がれば更衣室の扉が見える。
汗と土の匂いが鼻腔につく。
夕日が部活の終わりを告げているように感じる。
…ふと、なぜだか嫌な予感もした。
絶対に当たってほしくないような、そんな悪寒。
「あ、あきらくん!」
「ん?どったの真理子ちゃん」
不意にあきらと知らない女性の声が聞こえた。
足が止まる。角で隠れながら様子を見る。
心臓が激しく鼓動し、緊張と不安で呼吸は落ち着かない。
「あのね…私、あきらくんのことが好き!」
電撃のような刹那に流れた言葉は、幻視した夢を破壊するにはあまりにも過剰だった。
「お、俺でいいのか…?…俺でいいならよろこんで!」
その場から逃げ出す。逃げ出した。振り返らず立ち去った。
もう後戻りはできなくなった。
呼吸が荒くなる。涙がこぼれてくる。
その先の言葉を僕は聞きたくなかった。
好きな人を、取られてしまった。
なんでもっと早く言えなかったんだろう。
なんで勇気が出なかったんだろう。
なんでもっと警戒すべきだったのにできなかったんだろう。
なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、
後悔が滝のように次々と現れては消えていく。
「…ぜぇ…ぜぇ…ゲホッゲホッ…」
走り疲れた。
涙で前が見えない。
ここがどこかわからない。
手探りで壁を触っていくと、教室のドアらしき物に触れた。
急いで開けて入り閉める。
そのドアを壁に座り込む。
「はぁ、ぁぁ、ぁぁぁぁぁ!!うっぐっうううううううううううゲホッゲホッ!!!」
好きな人を取られた。
この事実が胸を、頭を、心を、きつくきつく締め上げてくる。
まるで罪の清算のような出来事だった。
「あきらッ…!あきらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
泣き声はがらんとした教室に響くだけだった。
気持ちが少し落ち着いてきた頃。
涙を拭き、顔を見上げるとそこは、
あきらと初めて会った自習室だった。
立ち上がる力が出ない。
それでも無理やり立ち上がって、前にあきらが座っていた机に向かう。
懐かしい思い出がこみ上げてくる。
走馬灯のようにそれは頭にフラッシュバックしていく。
ガタン!
力が入らなくなって、途端にその机にもたれ掛かるように倒れた。
「………ごめんなさい」
「貴方を好きになってごめんなさい」
「貴方に恋をしてしまってごめんなさい」
「貴方と出逢ってしまってごめんなさい」
涙がまた溢れてくる。
彼への純粋な想いは致命傷となり永久に続く呪いと化してしまった。
あぁ、なんて
なんて最悪な日なんだろう。
物語はここでおしまい。
僕と彼の物語はここで幕を閉じ、バームクーヘンエンドで終わりましたとさ。
え?つづきが知りたいの?
うーん、その後もあんまりいい
でもいいよ。そのかわり簡潔に話させてほしい。古傷がさらに痛むからね。
あの後、僕は自然とあきらたちを避けるようになったんだ。
あきらはそれでも僕と関わろうとしてくれた。
理由はなんであれ、僕の隣にいようとしてくれていたのは感じていた。
まあ、少し嬉しかったけどさ。苦しくもあった。
僕はね、彼とは友達とか親友以上の関係になりたかった。
もう手にはいらないものを目の前にぶら下げられているだけなんて、なんていう拷問なの?なんて思ったりもして。
それで、大学でも同期になって…大人になっても同じ会社で働いて…ついにあいつは結婚までして。
スピーチは僕って決められてたなぁ。
………。
今でも思い出すよ。
あきらの幸せそうな顔、白くとても似合っていたタキシード。
とても綺麗だった。
僕もあの隣に立ちたかったな。
:|はい、ここで物語はもうおしまい。
これ以上先は無いよ。
ここまで読んでくれてありがとう。
最後に少し、
:|あの頃の夢はこうだった。
『あきらと付き合ったら、たくさんイチャイチャしたりとか、お弁当のおかずを分け合ったりとか、たくさんハグをしたいな。
もしも結婚までいけたら、家を買って二人で住みたいな。それで、あきらが仕事から帰ってきたら僕が「ご飯にする?お風呂にする?それとも…僕?」とかやりたいな!』
少し恥ずかしいけど、どう?
昔は本当によく夢を見ていたな。
本当に懐かしい。
…あぁ。
:|おや、もう終わりか。
ここまで読んでくれて本当にありがとう。
また来てくれるかい?
…うむうむ、そうかい。
ではさようなら、
おしまい。
ご読了誠にありがとうございます!
気分転換に作るつもりがめちゃくちゃ長くなってしまいました。つい熱がね、入っちゃってね。
叡太くんとあきらくんの物語はこれ以上の進展はありません。
要望があれば作る…かも…しれない?
現在連載中のアイス・ブレイク!シリーズもよろしくお願いします!
ではではさよなら〜