選択騎士の受難   作:名無しさん

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第1話

 

 

「──よぉ、今日も来たな舎弟(▪▪)

「おす!お疲れ様です!」

 

元気よく、目の前の女性に体育会系のノリで頭を下げる俺。

 

何の変哲もないただの公園。

そこでこうして目の前の人物と会うのが日課になっていた。

 

「うーし、んじゃまずはいつもみたいに準備運動から。ちゃっちゃと終わらせろよー」

「うっす!行ってきます!」

 

ベンチに寝そべり、気だるそうな態度で顔には"ニヘラ"という言葉が似合いそうな、そんな表情を浮かべながら言われた言葉に反応して早速走り出す。

 

──どうしてこうなったんだ?

 

顔を背け、相手から見えない角度になるとそんなことを思いながら俺は頭を抑えた。

 

 

▼▼▼

 

 

この世界には異能の力がある。

 

千人に一人、その異能の力を操る才能を持って生まれる。そんな人らを伐刀者(ブレイザー)と呼ぶ。

 

魔力を用いて異能を使い、超人を超えた超人となれるのだ。

 

そんな異能の力は様々だ。

身体能力を上げたり、水や炎を操ったり、時間や重力……果てには概念までもねじ曲げられる者もいる。

 

文明の発展、格闘技、それから"戦争"……色んな場面で伐刀者というのは重宝される。

もはや世界にいなくてはならない存在だ。

 

そんな伐刀者を選ばれた人類……なんて考えてテロを起こすものまでいたりする。世紀末かな?こわいね。

 

かく言う自分もそんな伐刀者としてこの世界に生まれ落ちた。

まあ……調子に乗るよね。うん。

それはそれは調子に乗った。調子に乗りすぎて鼻なんて2キロは伸びたね。

そりゃ男の子だもん。炎ぶわー!水ぷしゅー!雷どーん!なんて憧れですよ。

 

でも、自分の異能を使ってみて、"あぁ…(絶望)"という感情だったね。

 

故にもう大人しく、平和に、穏やかに、健やかに、人生を平凡に謳歌しようとそう思った。そう思ったんだ。ホントダヨ。

 

なのに──

 

 

 

 

 

「ぜぇ…ぜぇ…」

「おいおい準備運動でバテたってか?情けねえな、本番はこっからだぜ?」

 

目の前の女性がこれみよがしに肩を竦め、首を横に振る。

 

バッキャロー。子供(小学生)の体で10キロランニング、腹筋腕立てスクワット500は死ぬんだよ。何が準備運動だ。完走出来たのもつい最近だぞ。

 

魔力がなければ即死だった。

 

伐刀者で良かったあ……まあ伐刀者だからこうなってる訳だが。

 

 

……こっからあとどうすっかなぁ

 

 

おい、ボソッと言ってても聞こえるぞ。

やっぱり何も考えてないじゃないか!

 

強くしてくれって弟子入りしたは良いものの内容が適当すぎる。

準備運動だって、"体づくりは基本中の基本、やれ"とか言われたからやってるけどさ、思いつきのノリじゃん!内容がさァ!

 

その瞬間だった。

 

自分の周り一帯の動きが止まった。

目の前の女性も、空に浮かぶ雲も、心地よい風も……そして自分の体さえも時間が停止したように完全に停止した。

 

はいはいはい、来たね来たねいつものね。

 

そんなことを思っていると、目の前に何やら文字が浮かんでくる。

 

 

 

【今だ!と、気合一閃。彼女に奇襲を仕掛ける】

【よろしくお願いします!と一言添えて固有武器を構える】

 

 

 

これが俺の異能だ。

そう選択肢。ふざけよる。

 

今までもそうだった。何かと目の前にこうして選択肢が現れて、選ばない限りこの止まった時間の中で拘束され続ける。

選んだら選んだで最後、選んだ選択肢を実行するまで強制的に体が動かされる。

 

俺は!平和に!平凡に!生きたかったのに!

こいつの!せいで!何かと!巻き込まれちゃうんだよねえ!!

 

弟子入りだってしたくなかった。疲れるの嫌だし、戦って痛い痛いになるのも嫌だから強くなりたいとかなかった。

 

なのに!なのに!!

 

俺の意志とは関係ない選択肢ばかり来てさあ!なんだかもう嫌になっちゃう…!

 

はぁ……、とにかく選ぼう。嘆いていても始まらない。どうせやらねばなるまいて。

奇襲するとあとが怖い。経験済みです。

故に正々堂々と行きましょ。どうせ勝てないし。

 

そうして選択肢を選ぼうとするとマウスカーソルのようなものも出現する。

選びたい選択肢の方に動けと念じればそれに連動してカーソルも移動。そのままクリックと念じれば──

 

「……ヨロシクオネガイシマス」

 

──そして時は動き出す。

 

……無情にもね。

 

「……ッ、へぇ…?」

 

あの、その、こいつ面白いって顔やめない?怖いんだけど?

 

どうせボコボコのボコでしょ。知ってる、進研ゼミで勉強したんだ。

 

「いいぜ?あたしに一撃入れられたら今日はしまいな?」

 

……あ、無理です。はい。

 

それから数時間後。気絶する小学生と、それを見下ろしてドヤる女子高生の図が出来上がった。なにそれ事案?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、俺こと"選波(センバ)択士(タクシ)"が選択肢に振り回されながら魔導騎士を目指す物語である……不本意だけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日のことだった。

"西京寧音"は暇を持て余していた。

 

ふと立ち寄った公園。ベンチに座り頭によぎるはとある他学園の女生徒。

 

生涯のライバルとして見初めた好敵手。

まさしく恋焦がれる乙女のように頭の中はその人物一色だった。

 

気持ちよく流れる時間。どう倒すかの脳内シミュレーションに勤しんでいる時だった。

 

 

 

「覚悟ォッ!!」

 

「ッ!?」

 

飛び込んでくる1つの小さな影。

 

スッと避け……ることはせずに拳を握りそのまま影へと向かって突き出した。

 

「ぐえっ…!?」

 

衝突事故のように吹っ飛び地面に転がるそれ。

見てみれば、黒髪のどこにでも居そうな小学生。

 

頭に疑問符を浮かべる彼女は思わずと言った形でその少年に向かって口を開いた。

 

「なんだお前?」

「ぐふ……ふふふ、さすがに強いな。だが!これで終わったと思うな!サラバ!」

 

そう言って鼻から血を流したまま手で押えて走り去る。

 

「なんだったんだ…?」

 

さしもの彼女も困惑の感情しか湧かなかった。

 

 

 

 

 

あの日だけかと思ってた。

次の日の朝には頭からその存在は抜けていたが──

 

「また来たのかお前…」

「次は作戦立ててくるから!」

 

呆れながら迎撃すれば、そんな元気な一言を置いて去っていく。

 

 

 

「…………」

「くっそー…!また明日!」

 

 

 

「…………」

「後ろに目でもついてんの!?」

 

 

 

「…………」

「見えた!突破口!明日がお前の命日だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──よく飽きないなお前」

「ゑ?」

 

夕方になれば襲撃しに来る小学生。

それをいなすのは彼女に撮っては赤子の手をひねるより簡単だ。

 

そんな圧倒的な差。それでも毎日めげずに向かってくる少年に呆れを含んだ目線でそんなことを言う。

 

「勝てるわけないんだから諦めれば?」

 

──雑魚が頑張ってるのを見ると哀れすぎて涙が出てくる

 

そんな価値観を持つ彼女。

目の前の少年はおそらく伐刀者だろう。

だが、才能は無い。少しの関わりしかないがそれはありありと理解できた。

 

だが、

 

「諦めなんて言葉は俺には似合わないね」

「……あっそ」

 

飄々とそんなことを言う少年。

興味は失せた。

 

もしまた、次目の前に現れた時はボコボコにしてやろう。そう決意してその場を去ろうとした時だ。

 

「あ!じゃあ……俺があんたに勝てるようになるまで俺の事鍛えてよ!

「……は?」

 

なんて言ったかこの少年。

面倒を見ろと?誰が?誰を?

 

「いやいや、なんで私が──」

 

とそこまで言って言葉を止める。

無茶苦茶な無理難題をふっかけて諦めさせればいい。そんなことを考えたのだ。

 

そうと決まれば早い。

 

「──いいよ」

「え?まじ?」

 

「そっちから頼んでなんだその反応。いいからやるぞ。まず準備運動で10キロ走ってその後腕立て腹筋スクワット500な。体づくりは基礎中の基礎だ、やれ」

 

「分かった!」

 

 

そんな元気に溢れた返答。

うおおお!なんて叫びながら早速走り去っていく少年。

 

そんな彼の背を呆けて見届けるだけ。

まさか間を置かずに、やり出すとは思ってなかった。

 

いやいや、まあどうせ無理だ。諦める。子供の思いつき程度のもの。すぐ音を上げる。そう思っていた──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……zzz」

「…………」

 

目の前で眠る少年。

まさか、最近になってからとはいえあの無茶苦茶な準備運動という名の無茶振りを完走した。

 

彼女にとっては余裕な内容だろう。

だが、なんの訓練もしてない伐刀者、しかも小学生ともなれば別だ。

 

ほんとに強くなる気があるのだろう。じゃないとやりきるなんて無理だ。

 

「……ふん」

 

雑魚は雑魚でもパシリくらいには使えるだろう。

何より暇を潰すにはまあ悪くない。

 

──もう少しだけ面倒見てやるか

 

そんなことを思いながら西京寧音は気持ちよく眠る少年の額を軽く小突いた。




落第騎士、読み直さなきゃ
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