曇天を衝く!   作:もくせい

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三話 友(?)との出会い

 

 毎日、毎日、俺たちはダンジョンにもぐり続けた。ステイタスはダンジョンにもぐらずに訓練していたころとは比べ物にならない成長率で伸びていた。やはり実戦経験でこそ一番人は成長できるのだろう。

 

 しかしダンジョンとはあくまで実戦の場所だ。技術もステイタスも実戦を経て真のものになることは当然のことであるが、そもそも基となる技術がなければ効率も下がる。

 

 それに下層のモンスターと言えども俺を含めた新米冒険者にしては大きな脅威なのだ。起きてそのままダンジョンへ直行というのはすこし心もとない。

 

 そこで、俺は毎朝ダンジョンへ行く前に自信の体の調子を確認して技術を磨くための時間をとることにした。場所は昔からずっと使っているホーム近くの空き地でもよかったがどうせならどこか別の場所でやりたくなりオラリオを囲む城壁の上でやることにした。

 

 いざ城壁についてみるとなかなかいい場所だ。まだ薄暗い城壁の上には俺以外全く人はいない。ちょうど昇っている朝日を独占しながらウォーミングアップを始める。

 

 ゆっくり丁寧に槍の軌道を確認する。自分の筋肉や体重も意識する。まず基本となる地力がないとダンジョンという戦場で身についていくものが歪なものになってしまう。変な体重移動や筋肉の使い方が癖になってしまうのだ。そしてそれが怪我につながったり自身の限界を引き下げてしまうことになるかもしれない。

 

 モンスターへの対策も重要になる。段々と深い階層にまで行くようになってきて今は十階層をメインにもぐっている。十階層ともなるとダンジョンにもギミックが追加され始める。十階層は視界を妨げる霧がでてくる。それに、オークなど大型のモンスターも多く生まれ危険も大きい。ただオークなどの大きく視認しやすいモンスターが多いのは不幸中の幸いだろう。小さく奇襲性能に優れたモンスターばかりであったら十階層特有の霧と合わさってより苦戦を強いられていることだろう。

 

 これよりも深い階層となるとさらにリスクが増してくる。十二階層には実質上層の主であるインファイトドラゴンが出現する。さらに深い階層ともなればもう中層である。レベル1の範疇を超えレベル2の領域だ。

 

 インファイトドラゴンは特に意識しておくべきモンスターだろう。レベルを上げるためには偉業をなさなければならない。今日のような地道な努力は偉業をなすための足場に過ぎない。基本的にインファイトドラゴンを倒せばレベルが上がる可能性も高いだろう。

 

 強力な相手ゆえに単独での撃破でなくアジルとの共闘で狙うのがまるいだろう。そうなると今の俺に必要なことは何だろうか。俺の今のアビリティを鑑みると俺の役割は敵をほんろうして少しずつダメージを出していくヒットアンドアウェイだ。だが、上層最強のインファイトドラゴンを相手にすると考えると今の火力ではまだまだ不足する可能性が高い。何度切り付けてもその一撃が効果なしでは全くの無駄だ。

 

 威力を上げるためには色々と方法があるが一番単純なのは力のアビリティを上げることだろう。ではどうやって上げようかと考える。力のアビリティとは要するに筋肉を追い込めば上がっていくものだ。特に攻撃に関連した。

 

 となると自分の攻撃にかかる負荷をあげればよい。単純に考えれば武器を重くでもしたらよいだろうか。実際今の俺の装備は取り回し重視であまり力のアビリティが高くない俺からしてもかなり軽い。

 

 そうと決まれば話は早い。さっそくバベルの武器売り場へ!

 

 と思っていたがそういえば金がなかった。

 

 

✥✥✥

 

 

 城壁からの朝日に慣れだしてきたころ、ようやくたまった金で買った少しいい槍を携えてウキウキしながらいつもの城壁までやってきたのだが、なぜか今日に限って先客がいた。

 

「お前、誰だ?」

 

 尋ねた先の男は俺と同じくらいの年のように見える。俺よりも少し背は高くがっちりした体格だ。改めてみてみると頭から耳が生えている。獣人だ。それもボアズだろう。

 

 彼は背丈ほどの大きな大剣を持って振り向いた。

 

「俺はフレイヤファミリアのオッタル。手合わせ願えないか。」

 

 明らかに足りない説明に困惑してしまうが、なんとかあいての素性は分かった。フレイヤファミリアはいま勢いのある新規ファミリアの一つで、なんでも美の神であるフレイヤに心酔している奴らの集まりでかなり危ない奴らだと聞いている。ファミリアというより宗教とでもいったほうが良いかもしれない。ファミリアなどその構造上宗教が本来の形なのかもしれないが。

 

「俺はテミスファミリアのグラムだ。よろしく。それで手合わせってのは? 一体どういうことなんだ? それにどうして、何のために?」

 

「テミスファミリア? あのオシリスのところか。」

 

 オシリス? 知らない単語が出てきて困惑してしまう。

 

「オシリスってのは?」

 

 俺がそう尋ねるとオッタルは困惑して自信を無くしたような顔になった。といってもほとんど表情自体はほとんど変わっていないので本当にそう思っているかは定かではないが。

 

「ん? 何だお前知らないのか? それか別のファミリアのことだったか?」

 

 オッタルが空を見つめて一人でぼそぼそとつぶやいている。

 

「まあ、それはいい。最近朝ここにいるお前を見た。そして手合わせ願いたくなったというわけだ。」

 

 前後の脈絡が皆無である。しかしちょうどよい。良い腕慣らしとなりそうだ。

 

「まあ、説明にはなってないが… いいだろう。こっちもそろそろ相手が欲しくなってきたころだったんだ。」

 

 俺は背負っていたバックパックをそこら辺へ投げ捨てて背中に担いでいた槍を構える。オッタルが大剣を抜き構えるのを待つ。合図はいらない。ただ相手の出方を待つ。

 

 オッタルがしびれを切らして距離を詰めてくる。俺も距離を詰めるが槍のリーチを生かした適度な距離を保つ。オッタルの攻撃をなんとかさばきつつ新しい槍の感覚を確かめていく。格好つけてオッタルと戦ってみたはいいもののこの槍を実際に使うのは初めてなのだ。

 

 大剣の攻撃をさばきつつ、こちらも攻撃の機会をうかがう。大剣は一撃が重い分戻りが遅い。だがオッタルは本気の一撃を避けて戻りを意識しているのかあまりスキが見えない。そうなってくるとわざとこちらがスキを見せて戻りを無視した一撃を誘うか、こちら攻撃の主導権を握りに行くかの二択だ。

 

 俺は逆にさらに距離を詰めてオッタルに槍をふるう。俺の動きが意外だったのかオッタルは距離をとって一度リセットしようとする。それをしたことによってオッタルの攻撃のターンが終わって俺のターンになった。槍をふるってオッタルに攻撃のチャンスを与えないようにする。しかしオッタルの防御は洗練されていてなかなか糸口が見つからない。このままではジリ貧だ。

 

 仕方がない。俺は攻撃の手を緩め後ろに下がる。そしてその瞬間に俺にスキが生まれる。オッタルはそれを見逃さずに逃げる俺に追撃する。しかしそれも予測済みだ。なんとかぎりぎりで回避して体勢が崩れたオッタルの後ろに回って槍の先をオッタルの頭に少し当てる。

 

「参った。」

 

 オッタルがそういうと俺も槍をおろす。オッタルも大剣をしまいこちらへ向きを変える。

 

「手合わせ感謝する。毎日ここにいるんだろう?」

 

「あぁ。来たいなら来てくれたってかまわない。」

 

 俺はそう言って右手を差し出す。オッタルは最初何のことだかわからなかったようだが数拍おいて俺の手を握ってくれた。

 

 

✥✥✥

 

 

 ある日、俺はポーションなどのダンジョンでの必需品を買うために店に行っていた。

 

 しっかりと必要な分を買ってホームに帰っている時だった。

 

 帰り道には色々とお店が並んでいて飲食店も多い。そのうちの一つにドワーフや獣人なんかがよく利用しているレストランがあった。

 

 いつもは中をのぞくと明らかに屈強な男たちが顔と同じくらい大きさのグラスにこぼれそうなほどいっぱいに注いだビールを骨付きのワイルドな巨大肉と一緒に流し込んでいる平和な様子が見えるのだが今日はなぜか殺伐とした雰囲気で怒号が飛び交っていた。

 

 どうしたのだろう、と店の外からどうにか中を見ようとのぞき込んでみる。するとなにか取っ組み合いのけんかみたいなものが起こっていてかなり激しく殴りあっている。

 

 どっちが勝つかな、とのんきにのぞいていたのだがついに店長の堪忍袋の緒が切れ田のだろう。「お前は出禁だーー!」と外からもはっきり、というよりもうるさいほど聞こえるほどの大声で叫びとてつもないバカ力で喧嘩をしていた二人の小さいほうをまさに俺がのぞき込んでいた窓のほうへと投げてきた。

 

 とっさにそこから離れた。ちょうどさっき俺が覗いていたところにそいつが直撃して窓のガラスを突き破って俺の目の前にまで飛んできた。そいつは赤みが勝った髪色のヒューマンらしきやつだった。

 

 そいつはすぐに起き上がってそいつを飛ばした奴に殴りかかりそうな勢いで飛んでいった。さすがに色々と面倒なことになりそうだったのでそいつの腕を引いて止める。

 

「おい、何か知らんけど、取り合えず落ち着けって。」

 

 俺がそう言うとそいつは俺のほうに振り向いて、「うるせぇ! 黙れ!」といいながら今度は俺に殴りかかってきた。流石にそんなに九に殴られるとは思っておらず油断していたために頭にそいつの拳をくらってしまった。

 

 なかなかに重い一撃で頭がぐらぐらする。俺はよろよろと脇道のほうへとそれてそこに座る。

 

 すると通りすがりの冒険者らしき人が隣に座って軽く手当をしてくれた。

 

「大丈夫か?」

 

「大丈夫です。」

 

 本心ではかなりつらかったがなんとなくそんなことを口に出すのは恥ずかしく感じて虚勢を張ってしまう。

 

 その優しそうな冒険者もそれを見透かしたのだろう、持っていたポーションを殴られた頭の箇所にかけてくれた。そこでふと殴られた触ってみるとポーションとは違うドロドロしたものが手についた。どうやら出血までしてしまっていたようだ。

 

「あいつには気をつけろよ。『悪童』レオン・ヴァーデンベルクだ。気性が荒くてな、ことあるごとにすぐ喧嘩だ。冒険者としてはイイモン持ってんだけどな。なにせ素行が悪すぎる。」

 

「すごいですね。あんなドワーフのホームみたいな場所に殴りこみに行くなんて」

 

 正直彼の姿には素直に感心する。明らかにアウェイのところに殴り込みに行くその精神力はかなりの才能だろう。

 

「あぁ、お前それいったのが俺でよかったな。それまさにあいつの地雷だぜ。あいつあのなりでも一応ドワーフなんだよ。」

 

「えぇっ!」

 

 その言葉に驚きを隠せない。ドワーフと言えば低身長でもと丸っこい体つきをしているイメージだったのだが彼は明らかにそれとは真逆の細い体形をしている。だが確かに俺のくらったあの一撃はドワーフの重みがあったかもしれない。

 

 それにドワーフと一言で言ってもどれくらいドワーフの血が入っているかもわからない。最近はハーフも多いと聞くしそういった類の可能性も高い。

 

「あんまりかかわんないほうがいいぜ。あいつとかかわってもロクなことはない。」

 

 俺を手当てしてくれた心優しい冒険者はそのアドバイスをしてから俺の隣から去っていった。

 

 改めてオラリオはすごいなぁ、とのんきに思いながらホームへと帰った。レオン・ヴァ―デンベルグ。そいつを次に会ったら今度はボコボコにしてやると心に決めて。





オッタルは主人公の1歳下。
レオンは調べても年齢がよくわからなかったので主人公の2歳上、としています。
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