化けガラスってマジっすか……。   作:SOGEKIKUN

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4羽:「穏やかな日々に届いた急な化け狸の知らせ①」

 

 

 

 

 

 

 

 夜も更けて、あれ程盛り上がっていた宴も萃香さんの暴走で酔い潰れてしまった脱落者が続出してしまい、そこで皆で解散となったことで、あっさりと終わってしまった。

 

 

 

 

 そして、そんな楽しかった宴の帰り道を、私達は空を飛ばずにてくてくと夜の更けた夜道を歩きながら、天魔様と龍さんも連れてシェアハウスまでの夜道を歩いていた。

 

 

「ふぅ………なんだか肩の荷が、降りた気がするわ……ねぇ?龍?」

 

「何を言っているのだ?凛楓?……ヒック。お前は文やはたてが一番大変な時期は世話していなかっただろ〜……ヒック。」

 

「もうっ……龍ったらぁ〜。はたてが成長したからって!嬉し涙を零しながら飲みすぎなのよ〜!

 言っとくけど、私は飲ましてないんだからね?今度は自分のせいだから?私は悪くないから起きても怒らないでよ?」

 

「ん……大体そもそもお前はいつも何事もの大体元凶だろうが………はぁ…お前、いつも思うけどなんでそんなにいい匂いなんだ?見た目も最高に完璧だし、ズルいぞぉ〜。私にも少しはその豊満で美しい身体を分けてくれ〜!特に胸と腰回りを〜!」

 

「いやッ……貴方の方が身体の線は完璧でしょうに………龍、頭を打った?そんなこといつもは言わないけれどしゃない?気を確かにしな―ヒャアッ!?……みょう〜!…頬をもちもちするにゃぁ〜!!兎にきゃく、しっきゃりひて!私は貴方がしっきゃりしてきゅれないひょ、まっちょうに生きていけないんひゃからぁ〜!てか、ほっぺたをひっぱらにゃいでぇ〜!!」ムニ〜

 

「むぅ……ヒック…お前はいい加減独り立ちしろ〜!…というか、なんだそのデカい胸は!いつも私にそれを当てつけのように腕に当ておってぇ〜!!え〜い!嫌味かっ!私に対する嫌味か?凛楓?……このっこのっ!」

 

「ヒャアッ!?そんなに私の胸の強く揉まないでよ〜!龍の馬鹿!貴方も十分胸はあるでしょうに!!貴方はただスレンダーなだけよ!飛燕ちゃんと同じ!ちゃんと十分と身体の線も綺麗だから!!いじけないでちょうだいよぉ〜!ンッ……ちょっとぉ〜!何処触ってるのよー!本当にどうしたの?」

 

「うるさい!凛楓!……ヒック……あと、女神みたいな絶世の美女にそんなことを言われたくないわ〜!ヒック、嫌味にしかきこえんわ〜!」

 

「キャアッ!?…龍!今度はお尻!?」

 

 

 天魔様が完全に酔っている龍さんに絶賛身体を弄られながら肩を貸して前を歩いている背中を、比較的酒に強い私と文は、はたてと椛ちゃんをそれぞれ背負いながら眺めていた。

 

 

 

「………龍さん…酔ってるなぁ………。ほら、はたて。もう直ぐ私達の部屋に着くんだから、まだ寝ちゃ駄目だよ?」

 

「スピー…スピー………ZZz………スゥ……スゥ……。」

 

「…………こりゃあ〜……グックリ寝てますわ。相変わらずお酒が弱いなぁ〜。」

 

「………はたて…あんたは酒が弱いってのに何をしてるのよまったく…………でも、飛燕。あんたの方は大人しい分まだマシよ。私なんかずっと背負ってる椛から首の裏筋を滑られてるのよ?犬みたいに。」

 

「文しゃまぁ…ペロペロ……ご立派にならへぇてぇ〜……椛は感服でシュゥ〜……。ペロペロ………。」

 

「ほら……もう、今だってこうよ。もう、後ろの首筋がベチャベチャよ。もうっ。」

 

 

「………まぁ、椛ちゃんも文とはたてのお世話をずっとしてたからね。それも四捨五入したら約四百年間くらい。やっと椛ちゃんの肩の荷が降りたんだから、許してあげて。」

 

「………はぁ〜………そう言われちゃったら、なんだか怒りも引っ込んじゃったわね。

 はぁ………でも、私の元従者の癖に元主人に世話されるなんて狼天狗風上にも置けない奴ね。ふんっ。」

 

「まぁまぁ。これからは同僚にもなるんだし、お互いに助け合っていきなよ〜。椛ちゃんも、私達とはもう殆ど家族みたいなもんなんだしぃ〜。」

 

「それもそうね。それにしても…………こんなだらけきった椛の姿を初めて見るなんて……なんだか変な気分ね。なんだかいつものしっかりした椛とは違うというか………。」

 

「確かに…………まぁ、私としてはいい変化だとは思うけど?」

 

「………いい変化?これの何処が?」チラ

 

「うへぇ〜……ペロペロ………文様の首筋って美味しいんですねぇ〜……ペロペロ。」

 

「アハハ………ま、まあ。少し考えてみてよ?ね?」

 

   

 私の催促に、文は訝しげに首を傾げて立ち止まった後に黙ったまま首だけ振り向いて、背後で眠っている椛ちゃんの弱々にだらけ切った表情を不思議そうに見つめる。

 

 それに合わせて隣にいた私も立ち止まってだらけきった顔をしている可愛らしい椛ちゃんと文の顔を交互に見つめることにした。

 

 

 すると、椛ちゃんが僅かに聞こえる程度の声でまるで狙ったかのようなタイミングで何か呟き出した。

 

 

「文様ぁ…はたて様ぁ〜……椛はこれからは〜貴方達のことをちゃんと友達と呼べれるんですかぁ〜?」ボソボソ

 

 

 文はそんな可愛い寝言を言っている椛ちゃんの言葉に何処か納得したかのような表情で、私に顔を向き直った。

 

 

「成る程ね。……椛にとって、私やはたては弱みを見せられるくらいには対等な相手になったってわけね?なんだか、生意気従者らしく少しムカつくわね。」

 

「ふふっ……まあ、そういうこと。文は椛ちゃんに頼られるようになったんだよ。まぁ……勿論はたてもね。」

 

「…………はたては、なさそうだけど?」

 

「…………ごめん。私もそこら辺は知らないや。」

 

 

「スピー…スピー………ん〜。もう食べられないよ〜。椛ぃ〜。」

 

 

 

「ふふっ………やっぱりなさそうね。」

 

「ふふっ………うん。椛ちゃんに頼られる日はもう少しだけ先みたいだね。」

 

 

 

 静かな夜道に龍さんと天魔様の騒がしい声が聞こえてくる中、私達はそれぞれに背負っている二人の寝息を聞きながら、シェアハウスへと向かっていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ― チュン チュン ―

 

 

 

 

 

 翌朝、早朝で太陽が昇る前から私は、緊急で青娥さんを背負いながら飛び立っていた。

 

 

 文とはたての枕元の包装しておいたそれぞれに写真機と少しの間だけ、『すぐに戻る』と言った旅に出る旨を手紙を置いて。

 

 

 

 

 何故ならば、マミゾウさんの子分の一人を名乗る化け狸さんから私と落ち合いたいと知らせを受けたからだ。

 

 

 ………どうやらその化け狸さん曰く、マミゾウは負傷していて、中々癒えない傷を癒すために掛かり切りで、身体は余り動けないらしい。

 

 

 マミゾウさん程の大妖怪が癒やせない傷を負うような事態が起きるなんて、そんなのただ事じゃない。

 

 今だって、知らせに来てくれた子分の化け狸も随分と動揺していた様子だ。今だって私の背中で、青娥さんの背中を芳香ちゃんと一緒に掴みながら不安そうにしているくらいだ。

 

 

 マミゾウさんが居候してた布都ちゃんの屋敷で何かあったんだろうか?いや……何かあったんだろう。そうでもなきゃこんなに焦ることはないだろうし…………。

 

 

「青娥さん!ルーミアちゃんを置いて行っちゃって良かったの?姿も見当たらなかったけど?」

 

「大丈夫ですわ!彼女は宴を解散した後に私達とは別行動中ですわ!後で私と合流する予定なので。それよりも、今はこちらに集中してくださいまし!飛燕さんはヒトを背負って『飛ぶ』のは慣れていないのでしょう?」

 

「分かった!」

 

 

 

 

 今、私達は長年旅をしてきたことで開発した最短ルートを爆速で渡っていた。

 

 

 早く、少しでも早く辿り着くために。

 

 

 数時間が、経った頃になると、太陽が真上に昇りきって、迷いの竹林や、聖域が遠くから点となって見え始めて、段々と近づいていっては、通り過ぎて背後の景色にのまれては見えなくなる。

 

 

 

 そして…………このルートを通っていると、必ず襲ってくるいつもの大鷲の大妖怪に追われながらも、その大鷲さんの追跡を何とか振り切ったりして、時間をいくつかロスしながらも私達は進み続けていく。

 

 

 

 そして、また数時間くらいが経った頃だろうか。沈みだして暗くなる頃には、諏訪の国の光が少し遠くから見え始めて、直ぐに通り過ぎていった。

 

 

 

 

 そして、夜も更けた頃。私達は化け狸が言っていたマミゾウさんが潜んでいるという、小さな洞穴があるという森へと降り立つ。

 

 

 私は青娥さん達を地面に優しく下ろした後、息切れしていた息を整えるために、地面にゆっくりと身体を横向きに寝そべらせた。

 

 

 

「はぁ……はぁ………流石にきついね………ヒトを複数人乗せてトップスピードを出し続けるってのは………。」

 

「ふふっ……お疲れ様ですわ。飛燕さん。」

 

「お疲れだぞ〜飛燕〜!」

 

「ど、どういたしまして………。ハァハァ。」

 

 

「少し休憩や食事をしましょうか?丸一日食べて居ないので、何か口に含めないといけませんわね。」

 

「私も食べたいぞ〜!」「キューキュー」(ならオラも食べたい!)

 

「はいはい。狸さんもですわよね?

 えっと…………確か、直ぐに食べれる乾燥食があったので、それと何か汁物を準備しようかしら?

 芳香ちゃん、化け狸さん。貴方達は今私が取り出した鍋に近くの川から水を汲んできて頂戴。」

 

「了解だぁ〜!化け狸〜!一緒に行くぞ〜!探検だぁ〜!」

 

「キュー」(芳香!オラ達は水を汲見に行くんだろ?探検する暇はないぞ?)

 

「私も分かってるぞ〜!化け狸〜!私達は今から水を汲むまでの道を探検するんだ〜!」

 

「キュー」(なる程な?なら、いいか!……ってなるかぁ〜!?真面目にやれぇ〜!!)

 

 

 そうして、漫才をこなしながら小鍋を加えた化け狸を連れた芳香ちゃんは、相変わらずぎこちないキョンシーらしい歩き方で、川があるという方の森へと消えていったのだった。

 

 

「それで……飛燕さんは…動けなさそうですわね?」

 

「うん。動けなさそうだ。………その身体が怠くて動けないから、その……食べさせて。」

 

「ふふ…♪わかりましたわ。最近は飛燕さんに任せて、料理を任せてばかりでしたし、私の番がきただけのこと。だから料理は任せてください♪…………にしても、疲れて動けない飛燕さんですか………いまなら……食べ放題ですわね?」ジュルリ

 

「あの………本当に勘弁してください。体力がモたないので………。」

 

「ふふ♪…分かりましたわ♪おつまみ程度にしておきますわね?」

 

「トホホ………昨日だって文に襲われたのに………青娥さんにも……ン……。」

 

「ふふっ……今は疲れているんでしょう?飛燕さん?なら、お喋りは不要です。だから、今は大人しくマグロになって食べられてくださいませ?……ン…。」

 

 

 ― チュク クチュ ―

 

 

 

 青娥さんに食べられてしまった私は、芳香ちゃん達が帰ってくるまでに何戦もさせられてグッタリさせられてしまったのだった。

 

 

 

 そんなこんなで、食事も兼ねた休憩を済ました私達は、ギリギリだけど、青娥さんがくれたお薬動けるようになった私を青娥さんと芳香ちゃんが両側から支えるようにしてもらい、洞窟の内へと妖術の炎を使いながら歩いていく。

 

 

 マミゾウさんの子分の化け狸に連れられて幾分か狸の拠点用に整備されている洞窟内を歩いて数分すると、数百匹はいるだろう大量の狸の微弱電流を感じた。恐らくマミゾウさんの子分達だろう。

 

 

「キュー」

 

「もう直ぐ着くらしいってさ。」

 

「……そうですか?動物とも気軽に話せるなんて、飛燕さんの能力も相変わらず便利な力ですわね?」

 

「青娥さんの道術もでしょ?動物とも話せるのはお互い様でしょ?そっちこそ、努力してできるようになったことなんだから誇りなよ。」

 

「ふふ♪……貴方のそういう素直な所が好きですわ。あっちの方もでも。」

 

「それは……だって…青娥さんが…的確な所を責めてくるもんから…。」

 

「飛燕さんのトロケきった恍惚な顔を見るとついいじめたくなっちゃいますのよ。身体を重ね合う時の貴方が大好きですので♪」

 

「も、もう〜!青娥さんったらぁ〜!そんなんじゃ私は落ちないからねぇ〜?今は文一筋なんだからぁ〜!」

 

「あらあら?今のは素直ではなさそうですわね〜?調教しがいがありそうなお言葉をありがとう御座います♪飛燕さん?」

 

「キャッ……ちょっとぉ〜!芳香ちゃんがいるんだからぁ〜太腿をそんな風に撫で回さないでよ〜!」

 

 

「キュー!」(オラの前でイチャイチャするな!緊急実態なんだぞ!)

 

 

 私と青娥さんが空気を軽くするために話していたら、化け狸に怒られてしまったので、私と青娥さんは苦笑い顔を見つめ合う。

 

 

「お硬い化け狸さんですわね?」

 

「空気を軽くしようと思ったんだけどね。気難しいね。」

 

 

 

 

 そして、私達が無言で洞窟内を歩いていると、洞窟の中で広まっていた空間にて、マミゾウさんの姿が妖術の炎の明かりに照らされた。

 

 

「おぉ〜。久しぶりじゃな〜。飛燕に青娥に芳香。元気だったかの〜?……イテテテ。」

 

 

 今まで案内してくれた気難しい化け狸の子が周りの仲間達の中へと消えて行く中、私は少し動揺してしまっていた。

 

 

 何故ならば、苦しそうに笑いかけてくるマミゾウさんのお腹にぐるぐるまきに巻いている包帯には血がべっとりとついていたから。

 

 

 

 

「ま、マミゾウさん?」

 

「……?…この人がマミゾウさんですの?」

 

「……ほらっ、ルーミアちゃんが布都ちゃんの別荘に持ってきたあの狸。」

 

「あ〜。道理で謎に賢くて人間臭かった狸でしたのね?成る程。気が付きませんでしたわ。」

 

「ん?そうなんだ〜?せいがぁ〜!」

 

 

「まさか…………お主等……気がついておらなんだか?…出来るだけ気が付かれるように動いとったんだがの……。未だにバレバレじゃないのはどういうことよ?やはり、わしの変化は完璧じゃな。イツツツ。」

 

 そう、ニコリと笑いかけてくるマミゾウさん。どうやら強がりでもなくそこまで酷いわけじゃないらしい。

 

 

 

「………マミゾウさん。意外と余裕があるね。それで?………その傷はどうしたのさ?」

 

「まあ、珍しく火遊びをし過ぎて、結果的に痛い目を見ただけじゃ。安心せい。これくらい死にはせんわ。

 ただ、手痛い法力での反撃を食らっての………ッ…グッ…イタタタ…ふぅ……久しぶりに痛いのは久しぶりじゃな………あの僧侶め。死にかけ老体の癖に、最後っ屁を儂にくれおって。」

 

 

 そんな悪態を笑いながらつくマミゾウさんのお茶目な一面を見せてくれる。まだまだ余裕がありそうなことを知って、私は少し安心したよ。

 

 一応致命傷とかじゃないなら取り敢えずは一安心だね。

 

 

「………それで、どうしてその傷を負ったのでしょうか?私を呼び出したということは。ある程度、想像はつきますが?」

 

「あ〜…それがの〜〜?…非常に言いにくいんことなんじゃがぁ〜…………青娥の言うとおり、今回の話しは豊聡耳神子とその従者達のことであっておる。」

 

「えっ………!?」

 

「……………。」

 

 

 私は頭が真っ白になって、努めて朗らかな態度をとろうとしているマミゾウさんと、黙りこくってしまっていた青娥さんの形だけの笑顔を交互に見つめる。

 

 

 そんな青娥さんは……無意識に私の芳香ちゃんの手を握っていた。

 

 

 

「どうやら、青娥はもう既に察しがついているようだの。まあよい。話が長くなるから少し座れ。子分達、客達の腰掛けと口に含めれる木ノ実でも探して持ってきておくれ。」

 

 

 周りで心配そうに見つめていた子分の化け狸達はマミゾウさんの指示に少し揺らいでいたが、マミゾウさんの優しい瞳で笑いかけられたことで名残惜しそうに、洞窟へと消えて行った。

 

 その間に、丁度座れそうな洞窟の段差に青娥さん支えられながら座った私達に、まだ残っていたマミゾウさんの子分の化け狸の数匹を仕方がなさそうに、抱き寄せたマミゾウさんは私達に、向き直る。

 

 

「では、話そうかの?この傷についての一部始終を。」

 

 

 

 

 あれは、冬が明けてすぐの頃じゃった。

 

 

 

 

――――

―――

―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 初春が戻ってきたのが分かるほどの暖かさと雪解けの合図が出始めてきた朝方。

 

 

 まだまだ冷え込む外の空気とは裏腹に、藁がそこら中に敷き締められてていて比較的温かい馬屋の中にて、一人の凛とした風味の女性が真っ黒な馬の身体を軽く布地で拭いたり、ノミやダニ落としの薬草を当てたり、冬の間に伸びた馬毛を整えたりしていた。

 

 

 この馬は一言に馬と言っても、大陸の馬のような足の長く背の高い大きな馬ではなく、日本古来からいる背の低く少しばかり背が小さい馬の種族である。

 

 しかし、小さい馬の種族の出と言っても、この馬だけは他の馬よりも一回り大きく、そしてその身に宿す筋力は凄まじくも美しく、まるで主人に似ているかのような素晴らしい姿形をしていた。

 

 

 そんな駿馬に対して、彼女は上機嫌にまるで自分の子かのように見えるほど大切に世話をし続けていく。そして時々、彼女はこの黒い駿馬の首筋や頭の耳の裏を撫でながら言葉が通じるわけでもない筈もないのに彼女は話しかけて具合を聞こうとする。

 

 そんな彼女に対してこの黒い駿馬は、彼女の語りかけに応えるように尻尾を揺らして話も通じる訳もない筈なのに、嬉しそうに返事をするかのような鳴き声をブルルと鳴らす。普段から機嫌も態度も仕草も荒々しいこの黒い馬の、機嫌が良い時は、自身の大好きな御主人に構われていることか、またはこれから散歩の時間が迫っているという近辺の時間ばかりである。

 

 

 そして、馬屋の入り口近くの藁の山のてっぺんに冬狸が一匹、身体を丸くさせながらそんな一人と一頭の様子を見ていた。

 その狸は決してその女性と黒い馬に近づくことはない。何故ならば、無闇に近づけば主人との憩いの時間を邪魔されることに腹を立てる荒馬に蹴っ飛ばされるからである。狸は経験から学ぶのだ。この時だけは近づいてはならないということを。

 

 

「ふぅ……もう直ぐ終わりますし、散歩にいきますが………狸のお方はどういたしますか?」

 

 

「キュー」

 

「……そうですか。では、乗るときは私の膝下にでも丸くなっていてくださいね。」

 

 

 そう言って、彼女は上着のフードをかぶり直して黒い馬に手綱と鞍ををつけていく。

 

 

 勿論、狸の正体はマミゾウだ。しかし、彼女とその優秀な従者達には未だにバレていない。従者の中には強力な力を持つ者もいるのに、この冬を越す間、バレることはなかった。

 

 それもその筈。ひとえにこの大狸の化ける力が強大だからである。

 

 しかし、化け狸は不思議に思っていた。この女には、化け鴉から聞いた話で、相手の欲を聞き取ることで相手の考えていることを聞き取ることが出来る能力があると聞いている。

 

 それ程耳が良いのなら、如何に化けようともバレるのは時間の問題だが、この女性は未だに気が付かない。

 

 

 

 既に、化け狸は『取り敢えず、正体がバレるまではここで居候を決め込む』という目的がかなり先の話になることを覚悟していた。

 

 

「さて、行きますよ?黒駒。」

 

「ブルル。」

 

「まあまあ。貴方は狸のお方と仲が良いのですから、多少は許してあげてください。」

 

「ブルル。」

 

「聞き分けのいい子は私は好きですよ。」

 

「ブルル。」

 

「ふふ……言わずとも貴方は私のお気に入りなんですから確認せずとも大丈夫ですよ。………さて、狸のお方?許しが出たようですので、行きましょうか?」

 

 

 その言葉を待っていたかのように、狸は藁の山の上からピョンと飛び降りて、ついて行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

(次回に続く)

 

 

 

 

 





 次回からまた記憶の中パートになります。

 まあ、数話程度ですし、原作の裏話や過去編のように作っているので原作知識がある人も楽しめると思いますよ。

 第二章で尺的に拾えなかったフラグの回収パートでもあるのでなので、原作をあまり知らない人も気楽に読めるようにしているので、見てくれると光栄です。

読者の皆様にとっての女オリ主のイメージを教えてください!

  • 可愛い! ここに皆入れてね!
  • 格好いい! そう?まあそれもありだね?
  • 美しいね! エヘヘー分かってんじゃん!
  • 変態! でも変態なお姉さんは好きでしょ?
  • 人情姉さん! 私についてきな!君達!
  • 大人なお姉さん! 妥当だよねー!うふふ♪
  • 乙女だよ! 分かってるねー!
  • 人妻最高! 良い子の皆は入れないでね?
  • 未亡人最高! なんか投票欄が怪しくない?
  • もっと強くなれよ! あっはい、頑張ります
  • ポンコツだね。 ん?これは褒め言葉?
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