「はー、無事に帰ってきたっス、家は落ち着くっスねぇ」
家に帰った貴方は何も言わずにベッドに腰掛ける。
彼女の言う通り、貴方は身を隠す外の世界からこの部屋にたどり着いて大きな安堵感を得るだろう。
「今日はちゃんと寝れる時間はあるから安心するっスよ」
彼女の微笑みを見て、安心を感じる。
彼女が呼ぶ家と呼ぶこの場所は、既に貴方にもそう感じていた。
「ご飯の時間にするっス! 私も手伝わせて欲しいっス!」
この部屋にもずいぶん物が増えたようにも貴方は感じる。
廊下に置かれた即席のキッチン。
取ってつけられたような仕切り布に置かれたトイレ。
ゴミ箱、置時計、チリ紙が置かれたスペース。
雑多な娯楽品として、ゲームやマンガが重ね置かれていた。
「今日のご飯はなんスか? お米は炊けたっスけど。えっ!? これを冷やしてほしい……? ちゃーはん? は冷や飯で作ると上手い……? り、りょうりは奥深いっス……!」
貴方は成り行きであるが、彼女と過ごすこの時間が楽しいものであったと再認識させられ
た。
「ここで人間ちゃんが卵を投入だぁ!! 素早い! 素早いぞ、おぉっとすかさず冷めた米を投入! 早いぞ人間ちゃん! こ、これは……! お、お米が! お米が黄金色になってるゥ!? 一体どういうことでしょうか!」
貴方は彼女と寝食を共にして分かったことがある。
「いやぁ、機能的に何かが作り上げられていく光景はポルノっスね、みてて気持ちいいっス、じゃあ私は食器の準備に……って分かってるっス、お皿と食器は二つっスよね?」
彼女は優しい淫魔だ。
「いっただきまーす! モグッ……、な、なんちゅうもんを食わせてくれたんスか……、こんな旨い料理は食べたことない……、これに比べたら魔界産の料理はカスっス……!」
貴方は、ようやく認めざるを得なかった。
「一人で食べる飯とか、ただのオナニーっスねぇ……、マジ人間ちゃんに感謝っスよ……」
彼女の善意は、人間という種族に向けられたものではない。
「胸がいっぱいになったっス……、人間ちゃんも眠そう……、今日はあんまり寝れなかったから疲れちゃったんスね」
目の前でただのチャーハンに感動している。
どうしようもなく騒がしい一人の淫魔は、ただ貴方に優しかった。
「あ、あのぉ~、だ、だったら人間ちゃん……、えっ!? 今日も一緒に寝てくれるっスか! 人間ちゃん優しいヤッター!!」
だからこそ、貴方は彼女の恩に対して、言わねばならないことがあった。