真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
この件を引き受けると決めたとき。
車椅子の紳士……
それが、女神ヘラの数々の制限事項の解除であった。
今の真月であれば、この女神を仲魔として完全に使役できるはずだから。
そう紳士は言っていた。
そして紳士にアームターミナルとCOMPのデータを弄って貰い
彼女は女神ヘラを他の仲魔と同じように、制限なく自由に召喚することが出来るようになったのだった。
女神は召喚と同時に口を開いた。
普通の仲魔と同じように。
「承知致しましたわ。契約主様」
その言葉と共に女神ヘラは腰を落とし、身構える。
その構えはレスリングの熟練者を思わせた。
レスリングは人類最古の格闘技と呼ばれるものである。
神である彼女が武器にするのは当然かもしれない。
そして突っ込んでくるアイギス目掛けて、タックルを仕掛けた。
アイギスの胴体に激突し、その胴体を両手でフックして押し倒そうとする。
だがアイギスはマウントポジションを嫌い、背中の飛行ユニットのバーニアを噴かす。
「くっ!」
バニーアの熱でフックの維持が出来ず、ヘラのタックルは未遂で終わった。
飛行状態に移行したアイギスにヘラは鋭い視線を向ける。
飛行能力が無いヘラには手が出せない。
「あなたは魔法は使えないのでありますか?」
アイギスがホバリング状態でそう問うと
「生憎と、私は稲妻や火炎を操る魔法は習得しておりませんの」
ヘラは油断なく腰を落とした姿勢でそう返す。
……女神ヘラは呪詛以外の魔法を使用する能力を持たない。
回復魔法も攻撃魔法も無いのである。
そんな、フィジカル全振りの女神であった。
「悪魔であるのに、意外でありますね」
「その分、殴り合いには少々自身がありますけどね……殿方相手でも一歩も引きませんわ!」
そのとき。
アイギスが急上昇する。
ミサイルの処理を終えた忍とヴァルキリーがアイギスに襲い掛かったのだ。
空中では忍とヴァルキリー。
地上に降りればヘラがいる。
アイギスとしてはやりにくい状態かもしれない。
真月はさらに仲魔の召喚を行う。
この状態では気になるのは
「機関砲掃射であります!」
飛行状態のアイギスがその両手の機関砲の銃口を向けてくる。
その対象は当然、真月である。
接近戦で真月を仕留めるのが困難であるなら、銃撃に頼るのは当然のことである。
掃射ということは、真月が回避行動をとることを想定し、逃さないように広範囲を攻撃する意思があるということか。
だが真月は
『DEMON KING SUMMON』
一瞬早く、召喚を完了させていた。
それは――
「グワッハッハッハー! させぬわぁ!」
緑色の巨大な男性器の姿の魔王……魔王マーラである。
魔王は召喚されると同時に念動力を発し、飛来する機関砲の銃弾を全てストップさせる。
アイギスの表情が少し強張った気がした。
機械の少女でも、この状況はマズいと思うものなのか。
魔王マーラの念動力は、アイギスの機関砲を無力化する。
そして
「ついでにおぬしも封じてくれる!」
マーラは念動力をさらに強め、アイギスそのものを抑え込もうとした。
空中でアイギスの動きが止まった。
……悪魔であれば、念動力の魔力に抵抗するという手段が取れる。
だが彼女は機械である。
それができないのかもしれない。
「ヌハハハハ! どうだワシの念動力は!?」
勝利を確信している魔王。
そして念動力で動きを封じられているアイギスの表情が
次の瞬間、決意が籠ったものに変わる。
そして彼女は叫ぶ。
「オルギアモード……発動!」
その言葉と同時に、アイギスの背中の部分に、輝くエネルギーが噴出する。
その輝きはまるで天使か妖精の羽根に思えた。
おそらく、これはアイギスの奥の手である。
何かしら大きなデメリットがあるに違いない。
あの表情は、そのデメリットを覚悟した決意の表情だ。
そこで真月は思った。
(あの子……多分感情がある)
そこに気づいたのだ。
アイギスには感情が無い。
真月は最初、そう思っていたのだが。
何故なら、人間の強さであり、同時に最大の弱点でもある「他者との繋がり」を作らないためには、感情が邪魔では無いか。
だがそうではない。
それを彼女はその表情で気づいてしまった。
「ヌオオオ!? ワシの念動力が!?」
魔王マーラの驚愕の声。
オルギアモードのアイギスが、魔王マーラの念動力を強引に振り払ったのだ。
その純粋な高馬力で。
「わたしは負けません!」
そして大きく吠え、魔王マーラに向けて突撃――
しようとしたとき。
「待って!」
その前に。
真月の声が飛んだ。
アイギスの視線が動く。
真月に向けて。
真月は真っ直ぐにアイギスを見据えていた。
その手に……
京都暫定政府の公務員証を手にして。
これは全ての京都暫定政府の公務員が与えられるもので。
顔写真と名前、そして
それを掲げつつ、真月はアイギスにこう呼び掛けた。
「話し合いをしましょう! 誤解があるわ!」
その言葉に。
真月はアイギスの瞳が揺れたような気がした。