家事代行先は闇堕ち寸前魔法少女の家でした~貧乏一人暮らしの俺は生活力を買われて内緒の焦れ甘同棲生活を始めることになる~   作:水瓶シロン

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第22話 お客さぁん、結構黒魔力溜まってますねぇ(汗

――――――――――――――――――――

【月ヶ瀬妃菜】

魔力量上限値:30

白魔力量  :6

黒魔力量  :10

 

☆☆☆☆☆☆・・・・・・・・・

・・・・・■■■■■■■■■■

※白魔力:☆ 黒魔力:■ 枯渇:・

――――――――――――――――――――

 

 

「えぇっと……俺の記憶が確かなら、熱が引いた昨日の時点で黒魔力量は九だった気がするんだけど……また一つ溜まってね?」

「う、うん……」

 

 落ち着いて話をするためにリビングソファーに並んで腰を下ろすことにした望と妃菜。

 

 本日分のバイタルチェックのため魔力を計測し終えた望は、くっつけていた妃菜の額から自身の額を離してぎこちない笑みを浮かべた。

 

 妃菜を魔法少女として万全な状態にするために、まずは目先のミッションとして白魔力の回復があるのはもちろんだが、同時に溜まった黒魔力を減らしていかなければならない。

 

 土日のつきっきりの看病の成果か、徐々にではあるが黒魔力も順調に減っていた。

 

 しかし、こうして折角減らした黒魔力がまた一つ増えたとなると、それは万全の状態にするという目標から一歩後退ってしまったことになる。

 

 そのことを申し訳なく思ったのか、妃菜は揃えた膝の上で両手をギュッと固く握って俯いてしまった。

 

「ご、ごめんなさい……御守くんが沢山お世話してくれて、折角少しずつ回復してたのに……わ、私が余計なこと、考えちゃったりしたからぁっ……!」

 

 妃菜の謝罪の言葉は徐々に涙声になって震え始める。

 

 それを聞く望の眉間には自然とシワが寄ってしまっていたが、すぐに眉尻を困ったように垂らして微笑むと、ソファーから立って妃菜の正面に回り込み、片膝をついて顔を覗き込んだ。

 

「おいおい、謝る必要がどこにあるんだよ? 別に月ヶ瀬が悪いんじゃないだろ?」

 

 安心を与えるように望が柔らかい声色で呼び掛けると、妃菜は俯かせていた顔を少しだけ持ち上げて、薄らと涙の滲む淡紅色の瞳を前髪の下から覗かせた。

 

「だって、私が一人で勝手に悩んで、モヤモヤして……御守くんの頑張りを無駄にするようなことしたからっ……」

「……はぁ、月ヶ瀬」

「な、なに――あうっ!?」

 

 望は妃菜の顔を覆っていた雨雲に風穴を開けるように、額をぺちっと指で弾いた。

 

 妃菜は短い悲鳴を上げて、小さい痛みの走ったおでこを手で押さえる。

 

 突然の出来事に妃菜は戸惑って目をパチクリさせるが、どんどん気分を落ち込ませる方向へ働いていた思考はリセットされていた。

 

「何でもかんでも自分で抱え込もうとするのはお前の悪い癖だぞ」

 

 望はそう言って肩を竦めたあと、少し呆れたように笑った。

 

「悩み事は一緒に悩もう。モヤモヤすることがあったら話してくれ。溜め込む必要なんてないんだからさ」

 

 ポンポン、と望に頭を優しく触れられた妃菜は、じわりと頬を仄かに色付かせながら、遠慮がちに上目を向ける。

 

「い、良いのかな……?」

「ああ。遠慮するなよ」

「うん……」

 

 気恥ずかしそうに首を縦に振る妃菜。

 望は取り敢えず妃菜が理解を示してくれたことに笑みを見せた。

 

「い、いやまぁ、偉そうなこと言ったけど、今回に関しては多分俺が原因だったりするんだよなぁ……」

 

 あはは、と曖昧に笑いながら後ろ頭を掻く望。

 

「あれだよな? やっぱ、俺達の関係性を悟られないようにと思って、学校ではあまり関わらないようにしてたのが良くなかったんだよな?」

「う、うぅん……」

 

 推測を口にしてみた望だったが、妃菜は煮え切らない表情を見せた。

 

「それもないことはないけど……」

「ほ、他にもなんかあるのか……?」

「ど、どうだろう……」

「この際だから、俺に対して思ってること全部言ってくれていいぞ。悪いところがあったら直すよう努力するからさ」

 

 いわゆる日頃の鬱憤。

 妃菜が一体どれだけそのようなものを抱いているのかはわからないが、それを口にすることで気晴らしになるかもしれないし、何より望としても指摘された方が改善に努めることが出来る。

 

(ま、まぁ、流石にボロクソ言われたらショックだけど……かと言って、月ヶ瀬に我慢させて黒魔力が溜まっても良くないしな……)

 

 望は何を言われても大丈夫なように、心を強く持とうと腹を括った。

 

「べ、別に御守くんに悪いところがあるとかじゃないんだよ? 本当に。ただ……」

 

 妃菜はどこか嬉しそうに口元を緩ませながら、ポロポロと言葉を溢していった。

 

「家では御守くんといつも一緒だし、何から何まで私の面倒を見てくれて、心配してくれて、お世話してくれるからさ……おかしな話だってわかってるけど、なんだか御守くんは私だけを特別に見てくれてる感じがして……」

 

 妃菜は一呼吸置いてから目を伏せる。

 

「でも、そうじゃないの。わかってたことだけど、御守くん特待生で人望あるし、友達もいるし……中でも特に服部くんや綾乃川さんと仲が良くて、いつも一緒でしょ? 冗談言い合って笑ったり、遠慮なく言いたいこと言ったり、昼食だってよく一緒に食べてるの知ってるんだ……」

 

 気付けば妃菜の口角は自嘲的に吊り上がっていた。

 

「だからね、そういうの見ると思っちゃうんだよね。『あぁ、別に私、御守くんの特別じゃないんだなぁ』って……御守くんが作ってくれたお弁当を見て私が御守くんのことを考えてるときも、御守くんが私のことを考えてくれてるとは限らないんだなって……あはは、ゴメン変なコト言ってるよね、私。そんなの当たり前なのにね? 一緒に住んでるとはいえ、つい最近関わるようになっただけのクセにね? 一年間同じクラスで友達やってる二人と自分を並べて考えるなんておこがましいにもほどがあるのに、馬鹿だなぁ……」

 

 饒舌、饒舌。

 やけに妃菜の舌が回っていた。

 

「ちょ、月ヶ瀬さん……?」

「ハハ……私、ちょっと気持ち悪いよね。ごめん……ごめんなさい……所詮見てくれが可愛いだけしか取り柄のない人間なのに、思い上がりも甚だしいって言うか……特別だとか一人で勝手に変な独占欲持っちゃって、何言ってるんだろうね、私……」

 

 望が呼び掛けても、生気の光をどこかへ落としてきた淡紅色の瞳は反応を示さない。

 

(こ、これ……もしかしなくても、ヘラってる……?)

 

 もう一回デコピン喰らわせようかとも一瞬脳裏を過ったが、今はそういうことが出来るような雰囲気ではなかった。

 

 自分の世界に入り込んでしまっていそうな妃菜の意識を引っ張り起こそうと、望は必死に話し掛けた。

 

「つ、月ヶ瀬、ストップストップ! わかった。お前が何を思ってたかはよぉくわかりました、はい!」

「……本当?」

「あ、あぁ! 本当、本当!」

 

 チラッ、と妃菜の瞳がこちらを向いた。

 望は少し妃菜の意識が戻ってきたことに安心しながら、大袈裟に二回、三回と頷いて見せる。

 

「そ、それでさ。どんな風に思ってたかはよくわかったから、具体的に月ヶ瀬は俺にどうしてほしいとかあったら教えてほしいかな。素直に何でも言ってくれていいからさ」

「……素直に?」

「素直に」

「何でも……?」

「何でも」

 

 望の言葉に、妃菜は顔を下に向けて数秒間沈黙を噛み締める。

 

 そして――――

 

「だ、だったら……」

 

 持ち上げられた妃菜の顔。

 気恥ずかしそうに胸の前で両手の指を絡めながら口を開いた。

 

「学校だからって変に私を避けないで……? 家の外でも仲良くしたいよ。服部くんや綾乃川さんと仲良くしてても、私のこともちゃんと見ててほしいかな。二人に比べてまだ一緒に過ごした時間は短いかもしれないけど、御守くんも私に遠慮なんてしないでほしい。距離感じちゃって寂しくなるから……それに、いつまで私のことを『月ヶ瀬さん』って呼ぶの? 服部くんのことも綾乃川さんのことも気さくにあだ名で呼んでるのに、私だけずっと苗字なのヤダなぁ。あと、学校でも時々でいいから私のことを考えて……? ふふっ、出来れば私が御守くんのことを考えてるときに、御守くんも私のことを考えてくれてたら嬉しいなぁ……」

 

 どこか恍惚とした様子で嬉しそうに、それでいて恥じらい混じりに微笑む妃菜の姿は、確かにいじらしくて可愛い。

 

 しかし、次から次へと絶え間なく捲し立てるように口から願望が零れる様が、そんな視覚情報とあまりに乖離していて…………

 

(ちょ、えっと……ナニコレ、怖いんですけどっ……!?)

 

 望は一種の恐怖を覚えていた。

 

(そ、そうだ。やっぱりまだ黒魔力が沢山溜まってるから、負の感情に引っ張られやすくて精神的に不安定なんだろう。うん、そうに違いない。間違いない。というかそうだと言ってくれ……!)

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