家事代行先は闇堕ち寸前魔法少女の家でした~貧乏一人暮らしの俺は生活力を買われて内緒の焦れ甘同棲生活を始めることになる~   作:水瓶シロン

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第46話 男同士の触れ合いも禁止です!?

 四月に入って一週間。

 敷地内に植えられた桜が満開からややピークを過ぎてその花弁を春風に乗せる中、ここ私立英志院学園高校では新学期の始まり迎えていた。

 

「多分アレだろうな。文科省の定める指導要領に式典における校長とか学園長の話は何分以上でなければならないって書かれてるんだろうな」

 

 始業式が終わって体育館から各自新しい教室へ帰っていく道中、望がくたびれた様子でそんなことをぼやいていると、隣を歩いていた俊也が楽しげに笑う。

 

「いやぁ、新学期早々皮肉がキレてますなぁ~!」

「別に皮肉ってワケじゃないけど、あの量の話ならいっそのことプリントにでもしてもらって、あとで配って各自で読むようにしてほしいなと。んまぁ、配られても読まんけど」

「そこは読んであげてくれぇ」

 

 式典で校長、学園長の話が長いのはもうほとんどの学校でお決まりのようになっているだろうが、はてさてその内容を覚えている生徒はどの程度の割合なのだろうか。

 

 望がそんな不満混じりの疑問を抱いていると、俊也が「まぁまぁ」と宥めるように肩を叩いてきた。

 

「そんなことより、もっと気分上がること考えようぜ? ほら、折角今年も同じクラスなんだし!」

「気分上がることねぇ……」

「あるだろぉ? ほら」

 

 肩を組んできた俊也が前に指を差す。

 望がその指先を目線で辿ると、ハーフアップにされた白髪が歩くたびにふわっと揺れているのが見えた。

 

「今年は月ヶ瀬と一緒のクラス、とかさ! 香澄なんて我慢出来ずにもう話し掛けに行ってるし」

 

 俊也が指先を数センチ横にずらして、妃菜の隣で揺れる亜麻色のサイドテールを指した。

 

「そういや、スミもまた同じクラスか。これは、引き続き騒がしい一年間になりそうだなぁ……」

「友達の友達は友達ってことで、香澄が月ヶ瀬と仲良くなったら紹介してもらおうぜ……!?」

「シュンがスミに『え、幼馴染であって別に友達じゃないんですけど』とか言われてあしらわれるのが目に見えるようだ」

「……俺もそんな気がしてきた」

 

 望の隣で俊也が悔しそうに拳を握り固める。

 

「きぃ~、香澄の奴めぇ。望だけでなく月ヶ瀬まで俺から奪おうというのかっ……!」

「奪うも何も、俺もアイツも元からお前のじゃないっての」

 

 そう言って望は半目でツッコミを入れながらも、仲の良い友達と同じクラスになれたことは素直に嬉しく思っていた。

 

(ただ、学校での妃菜との接し方には気を付けないとな……)

 

 私生活でいつも一緒にいるため、もうそれなり以上に関係値が出来上がってしまっている。

 

 家が半壊して以降同棲していること。

 妃菜が魔法少女で、望がその御使いであること。

 

 もしバレるようなことがあれば、ちょっとどころの騒ぎでは収まらないだろう。

 

(夜道で男子に背中を刺されないためにも、慎重にいこう)

 

 

◇◆◇

 

 

「ミ~モリ~ン! ひなちーと仲良くなったからぁ……連れてきちゃった! えっへん!」

 

 出席番号順で並ぶ席に座る望の前で、香澄が両手を腰に当てて、同世代と比較しても主張の強めな胸を自信たっぷりに張って得意気な顔をしている。

 

 何かを彷彿とさせるなと思えば、まさしく形の良い木の枝を咥えて持ってきた犬だ。実際に持ってきたのは木の枝などではなく、マジカルな少女であるワケだが。

 

(連れてきちゃった、じゃねぇよ!? なぁにやってくれてんのぉおおお!?)

 

 表向きは取り敢えず笑顔を貼り付けておきつつも、内心でそう叫ばずにはいられない望。

 

 学校での妃菜との付き合い方は慎重に模索していこうと考えていた矢先にコレ。事情を知らない香澄に文句は言えないが、少なくともやってくれたなと思わずにはいられない。

 

「ひなちー、この人はミモリン。この学園のマスコットキャラクターだよ?」

「お前独自のあだ名で勝手に俺をマスコットに就任させるな」

 

 望は香澄が紹介するように差し出してきた手をぺしっ、と払い除けてからすぐ隣に立っていた妃菜へ視線を向ける。

 

 てっきり香澄のノリに戸惑っているかと思ったが、意外にも妃菜は楽しそうに微笑んでいた。

 

「ふふっ、仲良いんだね」

「あったぼうよ! なんたって私とミモリンはマブダチにして、学年成績一位の座を争うライバルだからねぇ!」

「俺とお前にそんな少年漫画みたいな熱い関係性があったなんて初耳なんだが」

「今日初めて言ったからね!」

「そっか。明日には忘れてそうだな」

 

 そんなやり取りをしていると、他の顔見知りに一通り挨拶を終えてきた俊也が「おいおいおいおい!」と慌ててやってきた。

 

「なーにお前らだけで盛り上がってんだよ~! 俺も混ぜろよぉ~!」

「あ、俊也はお呼びじゃないよー」

「相変わらずひっでぇの!?」

 

 香澄がひらひらと手を揺らして俊也をあしらうので、妃菜は小首を傾げながら恐る恐る尋ねた。

 

「えぇっと、二人は仲良しじゃないの?」

「「んー、腐れ縁」」

 

 俊也と香澄が見事に声を揃えて答えるので、望は二人をまとめて親指で指し示して言う。

 

「ご覧の通り何だかんだ仲良しだ」

「ふふっ、みたいだね」

 

 望の言葉に妃菜が納得してしまっているのが不服そうな香澄だったが、食い下がってまで否定してこないのは望の解釈が間違いでないことの証だろう。

 

「てかさ、てかさ!」

 

 俊也が望の肩に手を置いて、少し興奮気味に口を開く。

 

「今日学校昼までだし、放課後四人でどっか食べ行かね? 親睦会ってことでさ!」

「へぇ、俊也にしては珍しく良い提案じゃん。よしっ、じゃあ私とぉ、ミモリンとぉ、ひなちーとぉ……あと一人誰誘う?」

「いや、誘った張本人の俺も入ってるに決まってんでしょうが!」

 

 相変わらずの二人のやり取りを傍らに、望は少し考えていた。

 

(親睦会か……確かに、個人じゃなくグループとして妃菜と関わって仲良くなっていくなら、変に関係性を勘繰られたりもしないか)

 

 望と妃菜の関係性をバレないようにするために一番手っ取り早いのは、やはり学校での関わりを一切持たないようにすることだ。

 

 しかし、こうして同じクラスになった以上それは難しいし、何より妃菜が以前家の外でも仲良くしたいと言っていたので、その思いを無下にすることはしたくない。

 

(って、そんなことしたらまた妃菜の変なスイッチが入っちゃう……)

 

 であれば、いっそのこと公で仲良くしていても不自然でないようにしていけばいい。そのために、グループぐるみでの付き合いを重ねるのは良策だった。

 

「どうだ~、望?」

「そうだな……うん、良いんじゃないか? 何だかんだ春休み忙しくてシュンと遊べてなかったのもあるしな」

「おぉ~、流石は俺の望ぅ~!」

「だからお前のじゃねぇって」

 

 俊也が喜びを表すように抱き締めてくるので、望は鬱陶しそうに表情を歪めて腕を掴んで引き剥がそうとする。

 

「ひなちーも予定大丈夫そ?」

「…………」

「ひなちー?」

「…………」

「お、おーい……」

 

 妃菜は俊也に抱き締められる望の姿を物言いたげにジッと見つめており、隣から呼び掛ける香澄の声など聞こえてはいなかった――――

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