家事代行先は闇堕ち寸前魔法少女の家でした~貧乏一人暮らしの俺は生活力を買われて内緒の焦れ甘同棲生活を始めることになる~   作:水瓶シロン

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第47話 四人中二人が名家の子なんて、流石は名門私立ですわ!?

 昼を迎えて下校となった新学期初日。

 新しく一年共に同じクラスで過ごすことになる学友との挨拶もほどほどに、望と妃菜、俊也、香澄は学園最寄りの駅の近くにあるファストフードチェーン店に来ていた。

 

 やはり新学期で同じことを考える者は多いようで、店内を見渡せば英志院の生徒も数組見受けられる。

 

 そして、その数組の内の一組である望達も、窓際に並ぶボックス席の一つに腰を落ち着けていた。

 

 窓側に望、隣に俊也。

 対面に妃菜、斜向かいに香澄という並び。

 

 バーガーやポテト、ドリンクなど各人で注文した商品が手元のトレーに載せており、テーブルの真ん中付近に置かれた大量ピースのナゲットに関しては、この集まりの言い出しっぺである俊也の奢りだ。

 

 ただ、可愛そうなことにそのほとんどを香澄がパクパクと自分の口に運んでいくので、雑談に夢中になっていた俊也が気付いたときには、もうほとんどなくなってしまっていた。

 

「ちょ、香澄それ俺のナゲットぉ~!」

「ふっふっふ。他人の金で食う飯は美味いですなぁ~!」

 

 テーブルに身を乗り出して手を伸ばし嘆く俊也の目の前で、香澄が残り一個のナゲットを高々と掲げてから、贅沢にマスタードソースをつけて口に運んだ。

 

 ぺろりと一口である。

 

 同じようなやり取りを既に一年間見てきた望は、これをまたもう一年見るのかと呆れてしまいながらも、お陰で少なくとも退屈することはなさそうだと笑ってポテトを食む。

 

「そういや最近まったくジャンクフード食べてなかったけど、久々に食べるとやっぱ美味いんだよなぁ」

 

 高塩分、高脂肪、高カロリーで低栄養価なジャンクフード。

 

 バイト漬け生活だった望には、放課後や休日に友達と遊びに行くついでに食べるといったような機会が少なかったため、特に高校入学してからここ一年はほとんど口にしていなかった。家で自炊するからなおさら。

 

 ただ、頻繁に食べるとくどいジャンクフードやカップラーメンなども、時々こうして食べてみると満足感が半端ない。

 

「なになにぃ~? もしかしてミモリンは庶民の味を知らないお坊ちゃまなのかなぁ~?」

「だったらバイトなんてしてないですねぇー」

 

 そういうお前こそ、と望は摘まんだポテトの先端で香澄を指す。

 

「大地主のお嬢様にはこの手の店は縁遠そうなものだけどな」

「まぁ~、確かに家では良いモノ食べさせてもらってるけどねぇ~。その反動か外ではこの通りっ!」

 

 香澄が望の手にあるポテトを食べようと口を開けて顔を突っ込むが、ここでも運動音痴を発揮してか、自ら眉間にポテトを刺しにいった。

 

「ちっ、チョロチョロと……!」

「チョロっとも動いてないけどな」

 

 流石に香澄の肌に触れたポテトを食べるわけにはいかないので、望は「ほら」と半目で悪態をつく香澄の口元にポテトを運んでやった。

 

 すると――――

 

「むぅ……」

「……な、何だよ?」

 

 気付けば正面から妃菜が拗ねたような視線を向けてきていたので、望が戸惑いながら尋ねると、妃菜はツーンと素知らぬ顔を作って「なんでもないよー」と自分の手で自分の口にポテトを持っていった。

 

 望が頭上に疑問符を浮かべていると、望に食べさせてもらったポテトを咀嚼し終えた香澄が何か思い出したように言った。

 

「あ、お嬢様って言うなら、ひなちーもじゃない?」

 

 ピタリ、と妃菜の動きが止まったのを望は見た。

 俊也は初耳の情報に驚きながら食いつく。

 

「え、マジで!?」

「多分? 『月ヶ瀬』って歴史の長い由緒正しい家門のはずだよ? 家同士の深い付き合いがあるわけじゃないからあんまり詳しくないけどねぇ。違ってたらゴメンだけど」

 

 たまたま苗字が同じだけというのはよくある話だが『月ヶ瀬』に関してはそう多くある苗字ではない。

 香澄の情報が確かであれば、妃菜はその名家の娘ということでほぼ間違いないだろう。

 

(まぁ、薄々太い実家なんだろうなとは思ってたが……)

 

 これまであえて触れることはしなかっただけで、望も家事代行で妃菜の家に行ったときから一般家庭ではないだろうなと察してはいた。

 

 小高い丘の上に立つレトロな二階建ての家。

 いくら魔法少女の稼ぎが良いと言っても高校生が買える物件ではなく、家族の所有宅と考えるのが妥当。

 

 加えて、妃菜が一人暮らしをしていたことを考えると、実家はさらに別にあることになる。

 

(置かれてる家具もどれも良い物だし、あの規模感の家を持て余せる実家だもんなぁ……)

 

 名家と聞かされればもちろん驚きもあるが、納得することの方が多かった。

 

 三人の視線を受けて、妃菜はニコッと笑顔を浮かべながら答えた。

 

「お、お嬢様かと言われるとちょっと違うような気がするけど……うん、確かに私の家は古いお家、かな」

「やっぱりねぇ~!」

「す、すげぇ……!」

 

 香澄と俊也が盛り上がる中、望は静かにストローでコーラを吸い上げていた。口の中をパチパチと炭酸が刺してくる。

 

 香澄や俊也を含め、普段学校でその妃菜の笑顔を見ている者はわからなくても、私生活で何も取り繕っていない妃菜の様々な表情を見てきた望は気付く。

 

(訳アリ、か……)

 

 愛想が良く一見可愛らしいその笑顔は、コミュニケーションを円滑に進めるため、場に合わせて取って貼りつけたモノ。

 

 もし俊也と香澄がここから根掘り葉掘り妃菜から家の話を聞き出そうとするなら、それとなく会話を誘導して別の話題へ持っていくことも考えていた望。

 

 しかし、その心配は杞憂だった。

 

 人によって家の事情は様々。

 特に両親を事故で失っているという望の事情を理解している俊也と香澄は、他の生徒よりもさらにその辺りのことを弁えている。

 

 まだ関係値の築けていない状態で、無遠慮に家の事情に踏み込むようなことはしなかった。

 

 何より、二人は妃菜と仲良くなりたいだけ。

 話の流れで表面的に家の話題に触れはしたが、知りたいのは家の事情ではなく妃菜本人のこと。

 

 実は名家な『月ヶ瀬家』の話題なんてものは、俊也と香澄がすぐに置き去りにしてしまった――――

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