家事代行先は闇堕ち寸前魔法少女の家でした~貧乏一人暮らしの俺は生活力を買われて内緒の焦れ甘同棲生活を始めることになる~   作:水瓶シロン

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第85話 取り敢えず助けてくれる友達がいないことはわかった

「おいおい御守くんや。なぁにしれっとした顔で座ってるんだい?」

 

 翌日。

 朝礼が始まる前に、望の座る席の周りにクラスメイト達が寄り集まってきた。

 

「や、やぁやぁ、皆さんお揃いで……」

 

 どうしてこんな状況下に置かれているのか、望は何となく心当たりを覚えながらも、ぎこちない笑みを作って素知らぬ顔を向ける。

 

「一体全体、俺に何の用でしょうかぁ……」

 

 ははは、と望の乾いた小さな笑い声。

 びきっ、とクラスメイトら――主に男子生徒らのこめかみに青筋が立つ。

 

「コイツとぼけてやがる!」

「知らないとは言わせないぞ昨日のぉ!」

「誰だよあのクールビューティーは!?」

「公衆の面前で抱き合いやがってぇ~!」

「羨まけしからぁんっ!!」

 

「ちょ、別に抱き合っては……!? 一方的に抱き付かれただけで――あ」

 

 抱きつかれていたと抱き合っていたでは、内容として似て非なるもの。望は咄嗟に否定して訂正するが、それすなわちもう知らぬ存ぜぬのスタンスは使えなくなったということ。

 

 口走ってからそのことに気付いた望が後悔するより先に、周囲でわっと声が上がる。

 

「認めたな!? 今認めたなぁ!?」

「さぁ、吐け!」

「あれはどこの誰でどんな関係だぁ!?」

「彼女か? 彼女なのかっ……!?」

「何か訳アリっぽかったよなぁ!?」

「ってか華女のお嬢様だろ? 逆玉狙いかっ!?」

 

 前衛で興奮気味に質問攻めしてくる男子諸君。その後ろで興味津々ながらもそれを前面には出さずひそひそと言葉を交わしながら好奇の視線を向けてくる乙女達。

 

 そんな布陣に追い詰められながら、望は群衆の隙間からチラッと妃菜へ視線を向けた。妃菜もこちらの様子が気になって見ていたようで、パチッと目が合う。

 

(助けてくれ、妃菜……!)

 

 そんな念を飛ばす。

 一つ屋根の下で共に生活し、恐ろしい敵に立ち向かうパートナーとして信頼と絆を育んできた間柄。望の救援信号もきっと伝わるはず――――

 

 ぷいっ。

 

(妃菜ぁあああああ!!)

 

 妃菜は自分の机に肘をついた手に乗せていた顔を、反対方向に背けた。直前に面白くなさそうな表情が見えたが、今はどんな顔をしているのか望からは見えない。

 

 あと、望が頼れる相手と言えば――――

 

「待て待て、お前らぁ。そう一気に詰めたら、望だって困っちゃうぜぇ~?」

「しゅ、俊也……!」

 

 群がるクラスメイトらの間を縫って望の前までやって来た俊也。望にとって学校生活の象徴と言っても過言ではないその姿に、少なからず安心感を覚える。

 

「だってよぉ、服部ぃ……!」

「俺達は悔しいぜ!」

「特待生様にはリアルな充実度でも勝てねぇってことなのかよぉ……!?」

 

 一人はギリッと歯を鳴らし、一人はギュッと拳を固く握る。並ぶ悲壮な面を見て、俊也はその無駄にイケメンな顔をもってして爽やかに笑ってみせる。

 

「ふっ、お前ら。その気持ちは痛いほどよくわかる……」

 

 ポン、と手近な生徒の肩に手を置いた。

 そうやって落ち着かせてくれているのだろう、と望は思った。

 

 が、

 

「なのでっ、ここはお前らを代表して俺が質問するぅうううううッ!!」

 

「テメェ待てコラおい!?」

「なに自分だけ聞き出そうとしてんだ!」

「これは俺達全員の問題だっ!」

「御守と仲いいからって調子乗ってんじゃねぇぞ!?」

 

 ドタバタドタバタ。

 それはもうギャグマンガの謎煙モクモクの乱闘を見ているような気分だった。

 

 一瞬でも俊也に感じた安心を返してもらいたい心地で望が半目を作っていると、そこへさらに新手がやって来る。

 

「まぁ、待ちなって君達。そもそも一介の生徒に過ぎない――その中でもさらに下の下な俊也が取り仕切ったところで、収拾なんてつくワケないのだよ」

「うわ何か来た……」

 

 望の半開きの目の上で眉が寄る。

 視線の先には、トレードマークの亜麻色に輝くサイドテールを揺らす香澄の姿。

 

 得意気に腕なんか組んじゃって顎をしゃくらせていた。

 

「ふふん、ここは私にドンと任せておきなさい。この――特待生にして不動の学年成績一位にして生徒会執行部員の綾乃川香澄ちゃんにさぁ!」

 

「「「おぉぉ……!!」」」

 

 それは何のどよめきなんだ、と望は呆れずにいられないが、確かに香澄は肩書きもスペックも同世代と比較して群を抜いている。

 この騒ぎも香澄なら取集してくれるかもしれないという期待を抱くのも当然か。

 

 対して、望としては不安しかなく、正面にやって来る香澄に苦い視線を向ける。

 

「やだなぁ、ミモリン。そんな目で見ないでよ~。大丈夫、私のこの天才的な頭脳をもってして、必要な情報をしっかりまとめてあげるから!」

「なにもだいじょばないな」

「と、いうワケで~」

「俺の話を聞こうな?」

 

 ズイッ、と顔を近付けてきた香澄が面白可笑しそうに口角を歪める。

 

「本命はひなちーか、あのクールビューティーお嬢様か――さぁどっち!?」

「何でこんなとこでカミングアウトせにゃならんのだ!」

 

 間髪入れずに望が突っ込む。

 すると、それにハッとした表情を浮かべた香澄が、微かに頬を色付かせて胸の前で両手を握り…………

 

「それとももしかして、私……?」

「是非今後とも良き友人としてお付き合いいただきたく存じます」

「ヒロインレース参戦の流れかと思ったら、遠回しにフラれたんだけど私っ!?」

 

 そんな調子でガヤガヤと周囲が騒ぐ中で、正直なところ望の頭の中はそれどころではなかった。

 

 

『どちらが望に相応しいか、勝負よ』

 

 

 昨晩、薫にそう持ち掛けられた妃菜は迷うことなく受け入れた。

 

 勝負の形式で直接手合わせをすることになった以上、周辺環境への被害も考えて昨晩のうちに河川敷で済ませるということは出来なかった。

 

 それなりの場を設ける必要があったため昨夜はあのまま解散し、後日改めてということになったのだが…………

 

(あぁ、胃が痛い……)

 

 街の平穏の守護者同士の衝突に、望の心はとても平穏ではいられなかった――――

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