家事代行先は闇堕ち寸前魔法少女の家でした~貧乏一人暮らしの俺は生活力を買われて内緒の焦れ甘同棲生活を始めることになる~   作:水瓶シロン

86 / 86
第86話 魔法少女同士の決闘はご法度じゃなかったのか

 その週の金曜日。

 望と妃菜は学校から帰宅すると、そのまま魔法少女協会へ足を運んでいた。

 

 到着するなり、不安でいっぱいになった表情を浮かべるテュカが出迎える。

 

「ちょ、ちょちょちょ妃菜ちゃん望ちゃん~! どうしてこんなに大事になっちゃってるんですかぁ~!?」

 

 協会の制服に着られている幼げな姿でパタパタと駆け寄ってくるテュカに、妃菜がご機嫌斜めに頬を膨らませて答える。

 

「日比峰の魔法少女が望くんを略奪しようとしてくるから、それを阻止する戦いなの」

 

 望は御使いとしてテュカに日々報告を上げている。そのため、もちろんここ数日は薫が接触してきたことや、望を巡って妃菜と薫が一触即発の状況になったこと、何かしらの方法で勝負すると決まったらしいことなども伝えてある。

 

 おおよその事情は把握したうえで、テュカは妃菜から詳細な経緯などを聞きたかったのだろうが、それは叶わず。代わりに隣に立っていた望に潤んだ瞳を向けてきた。

 

「望ちゃぁん……」

「悪い、俺のせいかも……」

 

 理由は不明ながら、薫は望に並々ならぬ好意を抱いている。そんな望の傍に他の女がいるのが面白くないと感じるのは自然なことだし、それが魔法少女で望を危険な戦場に連れ回していると知って止めようとするのも理解出来ない話ではない。

 

 望が意図的に招いた事態ではないにせよ、望を巡っての争いであることは疑いようのない事実だった。

 

「今からでも俺が薫を説得して――」

「――ううん、大丈夫だよ。望くん」

 

 謎に敵対心を発揮している妃菜の言葉は届かないかもしれないが、昔馴染みの望の言葉であれば薫も聞き入れる可能性は充分にある。

 

 そう考えて、望は本格的に二人が衝突する前に間に挟まる案を出したが、隣で妃菜が首を横に振った。

 

「確かに始めたのは向こうだけど、これは私が望くんをちゃんと守れるんだって証明する戦いでもあるから」

「もうすでに妃菜は俺どころか毎日街を守ってくれてるし、そんな証明しなくても俺は――むっ!?」

 

 少し焦ったように言葉を紡ぐ望の唇に、妃菜がスッと人差し指で触れた。突然のことに、望は目を丸くしながら、唇から妃菜の指先の熱を感じてドキッと胸の奥を跳ねさせる。

 

 そんな様子に妃菜も小さく笑みを溢し、気恥ずかしそうに目を細めて言う。

 

「ふふっ、これからも望くんが傍にいてくれるつもりなのは知ってるよ? でもね、それは私も同じなんだ。自分で自分が望くんの隣にいて良いんだって思えるように、頑張りたいの」

「……っ!?」

 

 妃菜が望の唇から離した指を胸の前で優しく握る。望は微かに赤らんだ顔を逸らして、恥ずかしさを誤魔化すような半目を他所へ向けながら呟いた。

 

「気恥ずかしいことをサラッと言うな……」

「えぇ、望くんがそれを言うのはちょっとなぁ……」

 

 と、そんな二人のやり取りを傍で見ていたテュカは――――

 

「てゅ、テュカは何を見せつけられてるんでしょうかぁ……」

 

 これから始まることに慌てている自分の方が馬鹿みたいに思えてきてしまっていたのだった。

 

 

◇◆◇

 

 

 巨大樹を成す魔法少女協会には無数の庭園が存在する。

 

 望や妃菜が定期的にテュカと話すように、普段魔法少女やその御使いが担当の協会職員とミーティングする場所としても使われている。

 

 しかし、用途はそこに留まらない。

 純粋に協会職員の憩いの場として利用されている庭園もあれば、少し身体を動かせるようになっている庭園もある。

 

 そして、魔法少女が訓練をするための庭園も存在しており、経験の浅い魔法少女や戦闘に不慣れな魔法少女がよく利用しているのだが――――

 

 

「ひ、広い……のに、誰もいないな……」

 

 そんな望の戸惑いの声が大きな空間に吸収されてしまって静寂が保たれる。他の魔法少女が訓練している様子などは一切見受けられない。

 

 フィールドは楕円形に近く、まるで繭の中。広さはおおよそ学校の体育館を丸々覆えるほどだ。地面は土や砂で壁は植物の蔓がびっしりと張り巡らされており、自然の息吹を感じる。

 

「貸し切り、みたいだね」

「――当たり前でしょう」

 

 妃菜の言葉に反応したのは、既にフィールドで待っていた薫。傍らには御使いと思しき妖精が浮遊していた。

 

「月ヶ瀬と日比峰の魔法少女の決闘なんて見せられるわけないじゃない。結果如何では、御三家のパワーバランスを揺るがしかねないもの」

「……今回のことに家は関係ないよ」

「関係なくても関係させてくるのが御三家の(しがらみ)。それくらい貴女もわかっているはずでしょう」

 

 対面早々睨み合う妃菜と薫。

 やはり両者の間には不可視の火花が飛び散っている。

 

 家の事情や『御三家』という初耳の単語はよくわからないまでも、相当に根の深い面倒事があるだろうことは隣で聞いている望にも察せられた。

 

「それとも、日比峰の私に負けたことが周知されて月ヶ瀬の権威を叩き落される方が良かったかしら?」

 

 腕を組んで不敵に笑ってみせる薫に、妃菜も表面上可愛らしく笑って返す。

 

「正直家の権威とかどうだっていいけど、決闘のあと同じようにその大口が叩けるとは思わないでね?」

「私に勝てると?」

「そうだね。負けるとは思ってないよ」

 

 妃菜はサッとフィールドを見渡す。

 自然豊かな雰囲気ではあるが、森林のように木々が生い茂っているワケでもなく遮蔽物は少ない。

 

「念のため確認だけど、勝負の方式は決闘――つまり、私と君が直接戦うってことで良いんだよね?」

「ええ、それが手っ取り早いもの」

「そっか」

 

 妃菜はそれなりに近接戦闘もこなせるが、得意は射撃や砲撃による距離を保っての戦い。特に広範囲への攻撃や火力を活かした殲滅攻撃に関しては相当な自信を持っている。

 

 大量の遮蔽物が設置され見通しが悪く、隠れられながら距離を詰められる環境であれば振りに立たされることも想定していたが、これだけ見通しの良いフィールドであれば最初から妃菜の土俵。

 

 加えて――――

 

(……見たところ、魔力量は大したことないよね)

 

 正確に測量することは出来ないが、相手を集中して見ればおおよその魔力量を把握することが出来る。

 

 流石に日比峰の血統の魔法少女というだけあって一般的な魔法少女よりは魔力量に優れているようだが、それでも平均よりやや多いという域を出ない。むしろ御三家の出の魔法少女と聞かされては拍子抜けするくらいだった。

 

 もちろん魔力量がイコール魔法少女の強さではないが、それでも重要な要素の一つではある。そして、その差が大きければ大きいほど、その他の要素では覆すことの出来ない残酷なまでの才能の格の違いとして現れることになる。

 

 どれだけ見事な業物を拵えた剣士でも、重戦車相手に勝ち筋を生み出せないように。

 

「じゃあ、やろうか。望くんは渡さないから」

「ええ、始めましょう。望は必ずもらっていくわ」

 

 

 魔法少女二人によって、火蓋が切られる――――

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

魔法少女を守る魔人に憐れみなんて要らないよ(作者:足洗)(オリジナル現代/冒険・バトル)

世界の平和と人々の安寧の為に魔物と戦う“魔法少女”達は……自分達が民衆の支持を得る為のただの広告塔に過ぎないことを知らない。▼それでいい。▼魔法少女が人々に笑顔をもたらすなら、魔人は己が血を流し肉を裂き骨を砕いて彼女らを守る。▼それでいい。それだけでいい。▼※ただし魔法少女は全員漏れなく曇る。


総合評価:1841/評価:8.58/連載:7話/更新日時:2026年03月08日(日) 14:47 小説情報

厄ネタヒロインたちとラブコメをすることになった(作者:灰鉄蝸)(オリジナル現代/恋愛)

「キミが好きだよ。だから殺すね」▼「あなたが好きです。好きなので洗脳しますね」▼「俺の死因多すぎるだろ…」▼異能バトルも伝奇ホラーもある世界で、バッドエンドの元凶になるような厄い美少女に好意を抱かれる――好意全開の金髪巨乳幼馴染み、ややホラーな超能力者の黒髪ロング同級生、彼女たちが引き起こす破滅の未来に巻き込まれる少年。▼愛が重くて、死の原因になる厄ネタヒロ…


総合評価:4241/評価:8.83/連載:36話/更新日時:2026年06月14日(日) 17:33 小説情報

和風陰陽師漫画の終盤で死ぬ親友枠に転生した俺はどうすりゃいいですか?(作者:鬼怒藍落)(オリジナル現代/冒険・バトル)

一般和風好き転生者VS曇らせと理不尽と絶望▼ファイ!▼カクヨムにも出します


総合評価:3898/評価:8/連載:42話/更新日時:2026年05月07日(木) 07:10 小説情報

夢現世界の災凶姫~Disastress in the Parasomnias~(作者:サッドライプ)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

或いは異世界転移して閉じ込められた遺跡ダンジョンで意味深に封印されていた眠り姫を勝手に脳内彼女にしていちゃこらする妄想電波を毎日垂れ流していたら実は意識があったので全部聞かれていた話。▼「はい♪あなた様が言っていた恋人同士の睦み合い、全部ぜーんぶやりましょうね!!」「え゛」▼脱出不可能なダンジョンに放り出されてモンスターとバトるか可愛い美少女を眺めるかしかや…


総合評価:5598/評価:8.8/連載:43話/更新日時:2026年06月17日(水) 06:01 小説情報

悪徳領主に転生して死亡フラグを折るために勇者パーティを育てたら、激重感情を向けられて逃げられない件(作者:激重大好き)(オリジナルファンタジー/コメディ)

目が覚めたら、プレイしていた百合RPGの「序盤のやられ役」である悪徳領主ルシアンに転生していた。▼しかも、すでに悪魔と契約済みであり、このままだと勇者に倒されなくても魔力タンクとして悪魔に殺されてしまう完全な『詰み』状態。▼どうしても死にたくない俺は閃いた。▼「原作開始前の勇者たちを見つけ出し、俺が育てて悪魔を倒す。これしかない!」▼悲惨な過去を背負うはずだ…


総合評価:2368/評価:8.26/連載:6話/更新日時:2026年04月02日(木) 18:30 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>