鋼の錬金術師:極界の魔女~傲慢に恋した極界の少将は、今日も今日とてショタを愛でる~ 作:だいたい大丈夫
原作の設定・人物をベースにしていますが、
オリジナルの国家錬金術師および独自解釈が含まれます。
また、本作の主人公は倫理観がかなり偏った人物です。
ブラックコメディ要素や過激な言動も含まれますので、
そういった内容が苦手な方はご注意ください。
原作の出来事とは異なる展開もありますが、
「もしこの世界にこんな国家錬金術師がいたら」という
ifストーリーとして楽しんでいただければ幸いです。
タッカー邸でのあの最高にエキサイティングな査定から、きっちり二日が経過している。
現在、私は東方司令部の立派な応接室のフカフカなソファーの上に陣取っている。
外は今日もいい天気だけど、この部屋の中は私の情熱で真夏のような熱気に包まれているわ。目の前には、極上の柔らかさと純真無垢な瞳を持った、最高に愛らしい獲物がいるのだから。
「ゲヘヘ……ニーナちゃん、可愛いよ……」
ニーナちゃんが、大きなクッションを抱きしめながら少し怯えたようにこちらを見上げている。
その潤んだ瞳、小さな唇、マシュマロみたいに柔らかそうな白い肌。ああ、たまらない。
「お姉さん……なにするの……?」
その無防備な声が、さらに私の理性を削り取っていく。
「良いことよ、とーっても良いこと……。さあ、お服を脱ぎましょうね。恥ずかしがらなくていいのよ。お姉さんが、大人の階段の登り方を優しく教えてあげるからね」
「え?お風呂には早いよ?まだ外、明るいもん」
純真すぎるニーナちゃんの答えに、私は思わず身悶えする。
なんて可愛いの。この汚れを知らない真っ白なキャンバスを、私の色で染め上げたい。
「フフフ、お風呂なんて関係ないの。むしろ汗だくのほうが燃えるわぁ。さあ、私のこの魔法の指で、人生初の絶頂を……!!さあ、いらっしゃい!!」
私の手が、ついにニーナちゃんの可愛らしいワンピースの襟元に掛かろうとした、まさにその瞬間。
「やめんかァァァッ!!!!」
鼓膜が破れそうなほどの凄まじい怒号と共に、応接室の分厚い木製の扉が、蝶番ごと木っ端微塵に吹き飛ぶ。
廊下から部屋の中へ向かって、とてつもない熱量を持った爆炎が真っ向から私を襲う。
視界が一瞬で真っ赤に染まり、焦げ臭い匂いが鼻をつく。東方司令部の誇る「焔の錬金術師」ロイ・マスタング大佐による、問答無用の指パッチンの爆撃だ。
「なに晒しとるんじゃあ!マスタング!!私の生きがいを!!!」
私は炎の壁の中で、怒り心頭に発して叫び返す。
数秒後、もうもうと立ち込める煙と炎が晴れる。
そこには、髪の毛一本、軍服の糸くず一つ焦がしていない、全くの無傷で立つ私の姿がある。
私の周囲数十センチの空間だけ、陽炎のように空気が不自然にグニャグニャと歪んでいるのが見えるはずだ。
「残念だったわね!私の『極界』で、周囲の酸素分子の持つ微弱な磁性を操って、一時的に私の周りだけ酸素を完全に遮断したのよ。燃焼の三要素って知ってるでしょ?酸素がない空間で、あんたの炎なんて燃え広がるわけないじゃない!科学の基礎よ、エロ大佐!」
扉の残骸を踏み越えて入ってきたマスタングは、額にこれでもかというくらい青筋を浮かべて、私を睨みつけている。手には発火布のついた手袋がしっかりとはめられている。
「年齢的にアウトだ!!このド変態!!司令部の中で、しかも真昼間から児童に手を出す奴があるか!!貴様の頭の中はどうなっているんだ!!」
でも、そんなの私には痛くも痒くもない。
「大丈夫です〜!男の子は小さすぎるとまだ色々と難しいけど、女の子は早くから気持ちよくなる体の構造になっているんですー!だからこれは、立派な早期教育の一環よ!アメストリスの未来を担う女性への、愛のムチならぬ愛の指使いよ!」
「教育委員会にでも喧嘩を売る気か!!貴様、本当に逮捕するぞ!!軍法会議にかけてやる!!大総統閣下の威光が、この東部でも全て通じると思うなよ!!」
その瞬間、私の脳裏に、セントラルを出発する前に大総統(お義父様)から言われた言葉がフラッシュバックする。
『……逮捕されんようにな』
あの呆れ果てた顔と、冷たい眼差し。
もしここで本当に憲兵に突き出されて、セリム君に「逮捕された変態お姉さん」として軽蔑されるようなことがあれば、私の人生はそこで終わる。セリム君に嫌われることだけは、絶対に避けなければならない。
「ぐっ……!!!」
「ちぇっ。冗談も通じない堅物なんだから。……ニーナちゃん〜、遊びましょう〜!アレクサンダーもー!!おいでー!!」
一瞬で方針を転換し、純粋な「動物と子供好きの優しいお姉さん」のモードに切り替える。
柔らかい。温かい。これだけでも十分癒やされるわ。
マスタングはそんな私を見て、呆れ果てたように深いため息をつき、そのままクルリと背を向けて自分の執務室へと戻っていく。
◇
彼が今読んでいるのは、私が先ほど提出したばかりの、ショウ・タッカーの「国家錬金術師査定報告書」だ。
『やれやれ……。全く、嵐のような女だ。……さて、これが今回の査定か……。ショウ・タッカー……査定結果は『合格』か。まあ、あの女が直々に言うなら、錬金術の腕に問題はなかったんだろうが……』
『なになに……添付資料……『キメラ技術の応用による、欠損部位の再生の可能性について』……?なんだこれは』
彼の声に、明らかな動揺が混じっている。
『……生体組織の培養と、磁場を用いた細胞分裂の促進……拒絶反応を抑えるための、自己血液を利用した疑似キメラ化プロセス……』
『なるほど……このアプローチなら、完全な人体錬成にはあたらない。あくまで自己組織の再生だ。それに、人間と他の生物を丸ごと混ぜるキメラにするわけではないから、軍の倫理的な違法にもならない……。これが実現し成功すれば、アメストリスの医療錬金術としては歴史的な革新になるぞ。こんな柔軟な発想があったとは……』
◇
「ねえ、ニーナちゃん。お父さんのこと、好き?」
「うん!大好き!」
ニーナちゃんは、満面の笑みで即答する。その笑顔の奥に、何の疑いもない純粋な愛情が輝いている。
「そっか。よかった」
「お父さん、いつもお仕事ばっかりで大変だから、私がしっかりしなきゃって思うの!お母さんの分も、私がパパを守ってあげるの!」
小さな両手で拳を握りしめ、健気に宣言するニーナちゃん。
内側の、ずっと奥底にある、冷たくて硬い部分が微かに疼くのを感じる。
「そう……」
「お父さんのこと、大切にしてあげなさい。そして、自分自身のこともね」
「肉親っていうのはね、一度失ったら、二度と戻らない大事なものよ。どんなに錬金術が発達しても、どんなに強い力を持っていても、失われた命だけは、絶対に手の中には帰ってこない。だから、今ある温もりを、絶対に手放しちゃダメよ」
「うん!わかった、お姉さん!」
その素直な返事に、私は再びいつもの調子のいい笑顔を取り戻す。
「よしよし!いい子ねー!じゃあご褒美に、お姉さんがほっぺにチューしてあげるわ!」
「えーっ、それはやだー!」
ニーナちゃんが笑いながら逃げ回り、アレクサンダーが楽しそうに吠えながら私たちの周りをぐるぐると走り回る。
応接室が、平和で幸せな空間に包まれている。
その時、応接室の奥にある資料室の扉が開く音がする。
東方司令部には、軍の重要な文献が集められた資料室があり、そこには今日、あのお目当ての少年たちが来ているのだ。
「おい、変態女。まだいたのか」
「あら、エドワード君じゃない。そんなつれない顔しないでよ。いい資料は見つかったかしら?」
「ぼちぼちだがな。何とも言えねえな〜。探してる情報がドンピシャであるわけじゃねえし」
彼は右腕の機械鎧の関節を鳴らしながら、ぶっきらぼうに答える。
「そう?なら、私からとっておきの情報を教えてあげようか?今回の査定でタッカーさんが提出した論文、あれ、すごく面白いのよ。細胞を培養して欠損部位を再生する理論なの。あの論文が実用化されれば、貴方のその『手足の再生』の目もあるんじゃない?」
「冷たい金属のオートメイルより、血の通った生身の肉体の方が、将来イイコトする時も絶対に感度がいいわよ?私と繋がる時も、生身の方がお互いの体温を感じられて最高に気持ちいいはずだし」
「セクハラすんな!!てめえは口を開けばそればっかりか!!」
「それに、俺は今のこの自分の手と足がいいんだ!他の誰かの細胞やら、人工的に作ったモンをくっつける気はねぇよ!俺の目的は、元の体を取り戻すことだけだ!」
その言葉の端々に込められた、強烈な意志と、重すぎる覚悟。
『……なるほどね。自分の手と足。他のものでは代用できない、元の肉体。……やっぱりこの子、禁忌である『人体錬成』を侵して持っていかれたのね。だから、手足を失った。タッカーの生体錬成なんかじゃ満足できないわけだ。弟は天才、兄は秀才ってところかしら』
最高じゃない。罪を背負った美少年。私の大好物だわ。
「ふーん……。そっか。貴方たちがそういう覚悟なら、お姉さんは無理強いしないわ。でも、いつでも相談に乗るからね。……あ、そうだ!」
「アルフォンス君!」
「は、はい!なんでしょう少将閣下!?」
アルフォンス君が、ビシッと直立不動の姿勢をとって返事をする。相変わらず礼儀正しい子だ。
「貴方、国家錬金術師試験を受けなさいよ。私が特別に推薦状を書いてあげるから」
「えええ!!!ぼ、僕がですか!?」
「そうよ。貴方のその『遠隔操作技術』、巨大な質量をタイムラグなしで完璧に制御できるなんて、軍事的に見てもとんでもない価値があるわ。それをいつまでも隠していると、アメストリスの国益の損失よ!国家資格を取れば、研究費も潤沢に出るし、お兄ちゃんの旅のサポートもしやすくなるでしょ?セントラルで待ってるから、絶対受けに来なさいよ〜!」
彼が試験を受けに来れば、また堂々と彼らにちょっかいを出せる口実ができる。それに、エドワード君の抱える闇の深淵を、もっと近くで覗き込んでみたい。
「あ、ありがとうございます……考えておきます……」
私は満足して、応接室の扉へ向かって歩き出す。
最後に、部屋の入り口付近で小さくなっているタッカーの方を振り返る。彼は、私がマスタングに提出した論文のコピーを握りしめながら、私を神様でも見るような目で見つめている。
「タッカーさん!」
「ニーナちゃんを、くれぐれも大切にね。次に妙な気を起こして、私の美意識に反するような真似をしたら……分かってるわね?」
「はい……!重々承知しております!この御恩は一生忘れません。本当に、ありがとうございます、少将閣下……!」
彼の体から、あの嫌な狂気の波長は消え去っている。これで当分は、あのクズも大人しくしているだろう。
私はタッカーのために論文の草案を書いてやり、結果として、タッカーは資格を維持し、ニーナと犬は生き延びた。
私、エレハイム・アレイス・フォン・クイーンクロス少将も、
エドワード・エルリックたち兄弟も、
そして、ショウ・タッカーも……。
この瞬間、応接室にいる誰もが、このまま平和で幸せな未来が続くのだと信じていた。
私の極界の慈悲が、一つの悲劇を未然に防いだのだと、私は本気で思っていた。
◇◇
深夜の東方司令部。
「大佐!!大佐!!起きてください!!」
「何事だ! 騒々しい! 夜這いなら他を当たれ!」
でも、兵士の次の言葉が、彼のその不機嫌さを一瞬にして凍りつかせる。
「緊急連絡です!国家錬金術師、ショウ・タッカーが……!」
「ショウ・タッカーが、何者かによって殺害されました!!頭部を完全に破壊されて……即死です!!」
「……なんだと!?」
同じ頃。
司令部の上層階に位置する、来賓用の最高級スイートルーム。
「ゲヘヘヘ……ああっ、このセリム君の流し目、たまらないわぁ……!」
私の目の前には、ベッドいっぱいに広げられた数十枚の写真。
全部、私がこっそり隠し撮りした、愛しのセリム君の極秘コレクションだ。
「見てよこれ。朝ごはんの時の、私を汚物を見るような目で見下ろすセリム君!ああ、最高にゾクゾクする!こっちは官邸の庭を歩いている時のセリム君ね。無防備な後頭部が愛おしすぎるわ。そしてこれ!私が投げキッスした瞬間に、本気で嫌悪感を露わにして顔を背けた決定的瞬間!この眉間のシワ、国宝級だわ……!!」
写真を一枚一枚手に取っては、頬擦りをして、ハァハァと荒い息を吐き出す。
体内の鉄分をコントロールして、顔面に血流を集中させる「強制発情(セルフ・フラッシュ)」も絶好調だ。
体温は急上昇し、部屋の中は私から発せられるピンク色のオーラと熱気でムンムンになっている。
あとは数日適当に東部を観光して、セントラルに帰ってセリム君に突撃するだけ。
コンコンコンッ!
「ちょっと!今、私とセリム君の神聖な夜の営み(妄想)の真っ最中なんだけど!邪魔するなら磁力で全身の毛穴から砂鉄を吹き出させるわよ!?」
「も、申し訳ありません、少将閣下!!し、しかし、緊急の報告がもたらされまして……!」
「緊急?マスタングの寝小便が止まらないとか、そういうくだらない報告なら明日にしてちょうだい」
「違います!!その……ショウ・タッカー氏が」
「…………そう。タッカーさんが。で?なにがあったの。まさか、私の忠告を無視してあの可愛いニーナちゃんをキメラにしたとか言わないわよね?もしそうなら、今すぐあいつの血液を全部沸騰させてやるんだけど」
「い、いえ!違います!その逆と申しますか……ショウ・タッカーが、何者かによって殺害されたとのことです!!」
「か、閣下……?」
「……あの、ご令嬢のニーナちゃんと飼い犬のアレクサンダーは、無傷で現場に取り残されていたとのことです。ご遺体のすぐそばで……。現在、東方司令部の憲兵が保護の手配を進めております……」
パキンッ……!!
私の右手の中で、最高級のクリスタルワイングラスが、粉々に砕け散っている。
怒りに任せて力ずくで握り潰したのではない。
無意識に漏れ出した強大な『磁界』の波が、グラスの素材に含まれるごく微量な金属成分に干渉し、分子の結合を内側から強制的に引き剥がして破裂させたのだ。
「……ニーナちゃんは、無事なのね」
私の口からこぼれた声は、自分でも驚くほど低く、そして冷え切っている。
「は、はい……!」
副官が、ガチガチと歯の根を鳴らしながら答える。
「私が……せっかく『お膳立て』してやったのに」
「私が、あの可愛い子に絶対に手を出さないように、わざわざ徹夜で完璧な医療論文まで代筆してあげて。タッカーさんを国家錬金術師として生かして、平穏な日常を守ってあげたのに」
軍靴の下から、床の隙間に溜まっていた微細な砂鉄や、建物の構造材から剥がれ落ちた鉄粉が、まるで意思を持った黒い蛇のようにウネウネと這い出してくる。
部屋の中の調度品——金属製のランプスタンド、ドアノブ、窓枠の金具——それら全てが、私の怒りの磁場に共鳴して、ミシミシ、ギシギシと悲鳴を上げ始める。
「どこのどいつか知らないけど……」
私の頭の中には、タッカーに対する同情なんてミリ単位も存在しない。
あんな外道がどう死のうが知ったことではない。
私が許せないのは、私の「作品」が壊されたことだ。
私がシナリオを書き、私が生かしてやったおもちゃの箱庭。
ニーナちゃんとアレクサンダーが、無能な父親の元で平和に生きていくという、私が気まぐれに与えてやった幸せ。
それを、どこの馬の骨ともわからない部外者が、土足で踏み荒らしてぶち壊した。
私の『お気に入り(獲物)』の平和を、私の許可もなく奪い去った。
「私の箱庭を壊したクソ野郎……。絶対に許さない」
黒い砂鉄が私の周囲を竜巻のように渦巻き、部屋の窓ガラスが耐えきれずにピキピキとヒビ割れていく。
「誰がやったのか、徹底的に調べ上げなさい。アメストリス全土の鉄くずを総動員してでも見つけ出してやる。そして見つけたら……」
「私の磁力で、そいつの体内の血液を一滴残らず沸騰させてやるわ。血管を内側から引き裂いて、眼球を飛び出させて、最後に脳みそを綺麗に破裂させてやる。自分が誰の逆鱗に触れたのか、死の直前の無限の苦痛の中で、きっちりと後悔させてやるわ」
私の可愛いニーナちゃんを泣かせた罪、そして私の完璧な計画を台無しにした罪。
その代償は、命なんかじゃ到底足りない。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
今回はタッカー事件を「別の形で回避した世界」を描いてみました。
ただし、その結果が本当に幸せな未来につながるのかは……まだわかりません。
エレハイム少将の行動が、
エドワードたち兄弟や東部にどんな影響を与えるのか、
今後の展開で少しずつ描いていく予定です。
もしよろしければ、
・主人公のキャラクター
・原作キャラとの掛け合い
・今回の展開についての感想
などコメントをいただけると、とても励みになります。