最終決戦から2か月が経った。
俺は日本にある枢木スザクの墓の前で報告している。
「スザク。E.U.が超合衆国へ加盟した今、世界はルルーシュの手に収まったよ」
誰からも献花されていない、その孤独な墓に最初の花を添える。
朝、まだ誰もいないその場所で一人でしんみりしている様子は他から見れば、死者を悼んでいるように見えるだろう。
その姿を想像して、自虐的にふっと笑みをこぼしてしまった。
なんて白々しい。
「じゃ、
そう言って俺は墓の前を離れた。
冷たい朝の風が吹き、献花された豪華な墓を撫でていった。
その日の午前、皇帝直轄領となったトウキョウ租界では世界統一をはたしたルルーシュのパレードが行われていた。
メインストリートには沢山の観客が怖いもの見たさだろう、道の両脇を埋めていた。
ルルーシュが座っている祭壇を模した車の周りには
俺はナイト・オブ・ワンとして、アレクサンダ Type-09に乗り
そして、これはルルーシュに逆らった罪人を処刑台に運ぶショーでもあった。
黒の騎士団の主要メンバーや、シュナイゼルなど表立ってルルーシュに逆らった面子が車に磔にされている。
そうしてパレードは全世界へ中継され、改めて皇帝ルルーシュの威光が示される。
はずだった。
「それ」はパレードが中ほどまで進んだ頃に現れた。
「それ」に気づいたパレードの護衛部隊は足を止める。
パレードに逆らうように陽炎が立つ道の中央に現れたそれは、まさしく「ゼロ」であった。
ゼロはパレード、正確にはルルーシュに向かって走り始めた。
途中、最前に立っている
パレードの列半ばまで侵略されると、ジェレミア自らが前にでた。
「私が相手をする!」
ジェレミアは手甲から刃を出し、ゼロへと肉薄する。
しかし、ゼロはジャンプしてジェレミアの肩を踏み台にして、更には俺のアレクサンダ Type-09も踏み台にしてルルーシュへと肉薄していった。
それを俺はアレクサンダ Type-09のコックピットから眺めている。いや、眺めることしかしない。
そして、ゼロがルルーシュの前に降り立つ。
ルルーシュは懐から銃を取り出して応戦しようとするが、ゼロが腰に下げている剣を手に掛け一閃すると銃は手からこぼれ落ちた。
ゼロは振り上げた剣を構えると、その刃が陽の光を浴びて一際輝いた。
そして、その刃はルルーシュの胸に音もなく吸い込まれていった。
その光景に誰もが絶句し、無音が世界を支配した。
ルルーシュの命が刃に吸われると、ゼロは刃を引き体を横へと移動する。
命を吸われたルルーシュはふらふらと前に歩いていき祭壇から転げ落ちると、そのまま動かなくなった。
誇り高きルルーシュはその生涯を終えたのだ。
そのタイミングで、コーネリア様が脇のビルから姿を表した。
「魔王ルルーシュは死んだぞ! 人質を解放しろ!」
その言葉で世界に音が戻り、皆がパレードに殺到する。
場が混乱に陥ったため、俺達は
*
悪逆皇帝ルルーシュの死亡で世界は混乱するかに思われた。
しかし、ブリタニアはいくつかの国家に分裂し、それをシュナイゼルがまとめる形でブリタニア合衆国として平定した。
そのブリタニア合衆国も超合衆国へ批准することで世界は安定していったのだ。
ブリタニア軍は解体され、世界の軍事力は黒の騎士団に集中することで軍事面でも安定していった。
世界は本当の統一と平和を手に入れたのだ。
軍が解体されたことで、wZERO部隊も解散となった。各員は各々散っていった。
皆との最後の挨拶は軽いものだった。まぁなんとなくだけど何処かで会えるだろうと皆思っていた。
そして、俺という戦争しかできない駒は世界に取って不必要となった。
コーネリア様からは黒の騎士団に入って欲しいと言われたが、ルルーシュに付いた俺を世間は許さないだろう。
ジェレミアはアーニャと一緒に隠居するようだし、俺も俗世に関わらないのが正しいのだ。
だが、最後にやらなければいけない事があった。
俺はコーネリア様とジェレミアを連れてホッカイドウ・エリアにある一つのコテージを訪れた。
そのコテージにはまずジェレミアとコーネリア様に入って貰う。なぜなら、日本人である俺は入れないからだ。
コテージの入り口で待つ5分位の時間が俺には永遠に感じた。
疑問がずっと頭を回る。ギアスキャンセラーは正しく
そして、コーネリア様が入り口から顔を出して、俺を呼んだ。
その眼は少し赤かった。
「カイ、入ってもいいぞ」
おそらく、今までで一番緊張しながら俺は入り口をくぐった。
コテージの中はそこで生活している人そのものを表しているように整理整頓され清潔さがあった。
生花を飾っているのだろうか、部屋には甘い匂いが満ちている。
部屋に入ると、中央に服はいささか質素になっているが、あの時と変わらないユフィの背中が見えた。
ユフィはコテージに入る俺に気付くと、こちらに振り向き、目を向けて、前と変わらない花のある優しい声で俺を呼んでくれた。
「お久しぶりです。カイ」
そう呼んでくれただけで、俺の眼は、心は熱くなった。熱い涙が頬を伝っていく。
涙を流しながら、それでもなんとか笑顔を作ってユフィに返事をする。
「ああ、久しぶりだね。ユフィ」
これで、胸のつかえは取れた。やり残したことは無いのだ。
*
やり残したことを終えると俺はトウキョウ租界に戻り、とある倉庫に入った。
そこには前から準備していた遠征用のバックパックと、一台の大型バイクが置かれている。
出発向けて準備していると、その倉庫にヴィレッタが入ってきた。
ここの事はヴィレッタには教えてなかった気がするが、どうやって知ったのだろうか。
準備をしながら背中越しに尋ねる。
「よくここが解ったね?」
「わたしが知らないはずがないだろう」
さも当然にそう言われると、そうなのかと思ってしまう。
準備を終えヴィレッタへと向き合い、真正面から視線を合わせる。
ヴィレッタも目をそらすような事はしなかった。
「行くのか?」
「ああ」
「もう、おまえが最前線にでる理由はないだろう?」
「そうかもね。でも、誰かは最前線にいないと」
「しかし!」
「これは俺の役目なんだ。それは仕方がないことなんだよ」
「……やっぱり、お前は変わらないんだな」
諦めたような関心したような声でつぶやくと、ヴィレッタはこちらへと近づき、俺の顔を両手で挟むと、唇を重ねてきた。
短いような、長いような時間のあと1つの影は2つに別れた。
「いつでも帰ってこい。私はここにいる」
「ああ、そうさせてもらうよ」
そうして、俺はバックパックを背負い、バイクに跨りエンジンに火を入れる。
最愛であり、最良の人の視線を背中に受けて、俺は次の最前線へと走り出した。
「さてと、次は何処かな」
フロントライナーは足を止めない。それが生き残る最高の手段だからだ。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
この物語はこれで一旦の終演を迎えます。
途中、キャラブレや、文章ブレなど見て頂いた皆様を混乱させてしまったこと、作者の技量不足の為、申し訳ありませでした。
復活や奪還などの物語は別の物語で書くかも知れません。
改めて、拙作を読んで頂きありがとうございました。