「パパ!」
「パーパ!」
「ん……あぁごめん…」
昼下がり、満腹、木陰のベンチ、温かな日差し、柔らかい潮風。
「んも~せっかくのデートなのにィ!」
「食べてすぐ寝るなんて信じられない」
そして14才の二人のアスカ。
なんというか幸せな……ん?
二人?
「そんなに疲れてるんだったら……今日はあたしが背中流してあげるわ」
「じゃあ…あたしは前洗ってアゲルっ!」
「ストップ前は自分で…って背中も洗えるから……な?」
二人して腕に絡みつくように騒ぎ始めるので股間に悪い。
「パパ。あんまり待たせちゃ可哀そうよ?」
ずしりと後ろから頭に柔らかい物体が押し付けられ、顔を抱きしめられる。
自信に満ちた強い声と鼻腔をくすぐるいい匂いが記憶を一気に呼び起こす。
「ママ……どうしよう。パパ全然だめ」
「大丈夫。パパを信じて強気で行くのよ?」
娘に余計なアドバイスをするついでの耳へのキスでほぼイキかけた。
弁明。
俺の魂、14年間禁欲。
俺の記憶、14年分のアスカとの蜜月の日々が氾濫。
俺の身体、28才大人アスカに頭抱きしめられながら耳キス。
「ほらこうやって強引に迫ったら受け止めてくれるわ」
「……アスカ。娘に変なこと教えないでくれよ」
「パパ……あたしにとっては大事なことよ」
俺の娘、式波・アスカ・ラングレーがまっすぐこちらを見据えてそう答える。
「じゃあパパが教えてよ……変なこと」
俺の娘、惣流・アスカ・ラングレーがいたずらっぽく笑うが目は真剣だ。
「いい加減答えてあげなきゃダメじゃない!」
俺の妻、平丘・アスカ・ラングレーはそう無責任なことを言い放つ。
「だから俺はパパなのっ!」
そして俺、キョウキチ・アスカ・ラングレーは言い聞かせようと必死だ。
どうしてこうなった?
シンジがネオンジェネシスを成功させてエヴァがなくてもいい世界に書き換えた。ここまではいい。さっきまでのように思い出せる。
で、この現状だ。
よしよしエロ以外の記憶がだんだん戻ってきたぞ。
原因は妻だ。来歴を思い出そうか。
この世界で彼女はとある権力者の愛人の娘だったらしい。
幼少期に母は死去、数年後に父も死去。遺言に守られて育つ。
だが父の影を見る周囲に嫌気がさし士官学校入学。飛び級で卒業。
空軍に入隊しグングンと頭角を現して昇任。
特殊作戦の一環で日本の中学校に入学。
俺と出会い何故か気に入る。
実父の影響が強い、恐ろしく都合の良い島に俺を拉致結婚。
28才にして30人近くの娘に囲まれる。 ← イマココ
は?
エヴァがないだけの世界だからまぁスペック通りだな。
俺が近づいたのはわかる。1周目の記憶しかないからな。
そんでこの島何?なんで共用語が日本語なの?なんで14才で結婚してんの?
法律で『キョウキチ・アスカ・ラングレーの多重一親等*1以外の重婚を認める』ってなに?
なんでアスカと俺の名前ごちゃごちゃになってんの?
俺……アスカ・ラングレーになっちゃった…。
「パーパどうしたの?」
「水でも飲む?」
「ごめんちょっとトイレ……」
ジョロジョロジョロジョロ__。
いや!そんなことより言いたいことがある!!
世界の復元力か何だか知らないけど……なんでこんな複雑な家庭環境にアスカを置いた!!
普通に両親がいて、普通に愛されて、遺憾なくその能力を発揮して、ふさわしい相手と幸せになる!
それで良かったじゃないか!!
なんで新しい世界でそこを引き継いだんだ。
ジャバジャバジャバ__。
そもそも俺!なんでアスカとくっついてんの!?
なんでこんなっ……他人の親になりたがるような精神異常者がっ…アスカに釣り合う訳がないだろ!!
拒絶できない状況だったが……もっとうまく引けよ。
ちきしょう……。可愛い妻と娘たちに囲まれちまってるじゃないか……。
冷水を頭から被る。
自分を思い出す。
大事なのはアスカの幸せだ。
彼女が俺を選んだならそれに応えるだけだろう?
よし――。
俺はトイレから出て娘たちの元へと戻る。
てか俺……娘29人もいるの?
おかしくない????
衝撃のままに重たい腰をベンチに戻した。
「パパ」
パパ……。
パパ。
「パパ……まだぼォっとしてる?」
てか呼ぶ声……見えてる数より多くないか……!
その時俺に電流が走る。
向こうでオリジナルのアスカに向かって「お前たちみんなのパパ」的なこと言わなかったか?
俺的には式波、惣流、オリジナル相手くらいのつもりだったんだが……。
オリジナルの補完を通してシキナミタイプ全員に届いた?
エヴァがいなくなるとクローンも最初から居なかったことになって……じゃあ魂は?
パパ。
パパ……。
ははは……。シキナミタイプ360人くらいいなかったか?
無理だろ。全員は。せめてじいじくらいで……。
……いや。
妻がこの調子なら40人は固い。
魂が俺にくっついてるなら、俺の子供としてなら産まれてこれるだろ?
で、俺は法律上重婚できるから……。
いやいや。他の女性と結婚するとか
「さっきからパパ、スキだらけ」
腕に
「……」
「お姉ちゃんも反対側来ればいいのに」
ちゅ。
頬に柔らかい感触。
浮気は絶対認めない。けどこの状況は止めてない。
法律上も俺は娘と結婚できる。
……娘たちの中で同じだけ産んでくれる子が9人いれば360人のパパか。
いやいやいやいやいやいやいや。
モラルどうなってんだよ。もうおやすみしたのか?
いや、前周で母親のクローンであるレイとシンジが結婚してたけれども……。
そもそも無理して俺のところに来なくてもきっとお前たちは幸せになれる。
パパ?
大丈夫さ。きっとね。
「ほら大丈夫よ、きっと」
視界いっぱいに
「パパっ!ママは良くてあたしじゃダメなの?」
見たことのある瞳だった。
『40年放置したくせに他の女は抱けるんだ』と語っているようで、思わず『そんなことない!』と言いそうになる。
「嫌なら嫌ってはっきり言いなさいよ?」
見かねた
彼女は娘ではない。最初はそう接していたが、殻を突き破り妻として俺の隣にいる。
つまり俺の扱いがうまい。どうしようもなく。
今も絶対に出来ないという信頼の下で発破をかけられた。
「パパ…嫌なの?」
それに対する娘の
「ぃ……娘に好かれて嫌なわけあるか!パパは幸せだ!」
「逃げるなキョウキチ!」
「なぁアスカ……いま幸せか?」
はぐらかすように妻に問いかける。
「愚問ね。でも、もっと幸せにしてくれてもいいのよ?」
絶対の自信と我儘。
彼女が満たされ、甘えることができている証拠。
「この子たちもそれを望んでいるわ」
そして他人をよく見て望みをくみ取り、逃げ道を塞ぐ。
アスカは成長した…か。
ははは…。どうしようもなく幸せだなぁ。全く…。
ゴール設定は『今いる娘たちを幸せにする』だ。
これは絶対だ。俺のの目的のために利用するようなことはできない。
まずは良く話をして本当に後悔のない選択を考えないとな。
そして二次目標として『まだ産まれてないアスカも幸せにする』だ。
自分同士で争わなくていい世界を、エヴァに乗らなくていい世界を享受させてあげたい。
俺は選ぶ。だが同時に出せる手は差し伸べるさ。
パパを待ってろよアスカ。
キョウキチ・アスカ・ラングレーの最近の悩み
・実の娘が性的に迫ってくること
・妻がそれを応援していること
・下の子たちもそういうもんかと見ていること
・いまだに第9使徒バルディエルの精神世界に囚われている可能性を捨てきれないこと