ジャンプはジャンプでも 作:通りすがりの最下級大虚
という訳で両方同時進行させるため少し時間を頂くかもしれません。
ふぅ。と息を吐き、大太刀を納刀する。
辺りを包み込んでいた光が収まると同時に、その中央にいた人物――東桔梗の姿も元に戻る。
「能力の詳細はこんな感じかな?」
その傍にいた魔防隊5番組組長、蝦夷八雲が彼女に声を掛ける。
周囲には哀れにも能力の実験台として利用された嘗て徒党を組んでいた醜鬼の死骸が散乱している。
「いやぁ、にしても凄いね。まさか桔梗ちゃんの能力にまだ先があったなんて」
八雲が驚嘆の声を挙げる。
今まで単純な能力だと思っていた桔梗の能力にまさかの拡張性が存在したのだ。無理もない。
しかし、その当人は何処か浮かない顔をしている。
「あれ? どうしたの?」
「……あ、いえ、何でもないです」
八雲がソレに気が付き尋ねるも声を掛けられた本人はその表情を一変させ今までと同じように振舞う。
納得できない八雲がいつも道理の攻勢を仕掛けるのを、桔梗はこれまたいつものようにいなしながら昨晩の事を思い出していた。
「まずは妾の力を開放できたこと、褒めて遣わす」
夢の中。眼前の人物が桔梗に告げる。
周囲の景色は真っ新な砂漠ではなく、一等明るい星が瞬く星空の下草原が広がっている。
彼女と桔梗の周囲には星型の青紫色の花が咲き誇っていた。
「あ、あの、先日とは様子が変わっているのですが……」
桔梗は怪訝に尋ねる。真っ白な景色がまるで見違えたかのように自然にあふれているのだから、尋ねるのは当然の事である。
その質問に、眼前の人物は事も無げに答える。
「お主が
未だ混乱する桔梗に彼女は言葉を続ける。
「そも、あの景色は未だ何者にも染まらず、また何者にも染まり得るからこそ現れたのだ。能力を開放すれば自ずとその
「は、はあ……」
つまりはあの景色はいわば新しいキャンバス。これからどのように染めるのかは自分次第である。
そういう事だろうと自身の中で噛み砕き、納得できる形に変えて飲み込む。
「しかし、お主は力を開放しただけ。それもまだ妾の真の名前を知らぬ状態だ」
「――え?」
その言葉に驚愕する。
「し、しかしあの時確かに名前を」
「よく思い出せ戯め、途切れ途切れでしか聞こえなかったであろう」
その言葉に桔梗は力が解放された時の事を思い出した。
あの時、あの空間から引き戻された際に聞こえたと思っていたが、思い返せば途切れ途切れだった気がする。
「なら、今なら貴女の真の名前をお聞きすることも――」
「ならぬ」
眼前の人物は3文字で拒絶した。
桔梗は再び混乱した脳で必死に尋ねる。
「な、何故ですか!? あの時のように余裕がないわけでもありません。今ならば確りと貴女の名前を聞くことも可能なはずです!」
眼前の人物は深くため息を吐くと、告げた。
「真の力を開放したくば妾の由来、そして
「ど、どういう―――」
「よもやお主自身が孤児であると本気で信じておるのか?」
「それは――」
なおも問いただそうとする桔梗だがしかし、視界に映る周囲の景色が引き延ばされ始めた。
この感覚は知っている。意識が現実に引き戻される前兆だ。
「暫く、いや真の力を開放するまで妾はお主の前には現れぬ。妾の言葉をその脳裏に刻み付け、励むが良い。その起源に辿り着いた時、真の力が解放されるであろう」
景色が引き延ばされ暗闇が覆い尽くす寸前、その言葉だけが耳に残った。
――私の出生。孤児ではないとしたら一体誰が。
寮に帰る道中、桔梗はその言葉をいつまでも繰り返す。
答えを知っている者は自身の知る限り2人、いやもしかしたら3人。
現当主である東海桐花。育ての親の一人である東風舞希。そして―――もう一人の育ての親である使用人―。
――あれ。
ふと桔梗は思い起こす。
考えすぎだと思う一方、他の使用人よりも明らかに一線を画す扱いだったことを思い出す。
ただ桔梗だけにつきっきりで仕えている事、時折当主直々になにかを命じられ何処かへと赴く事。
怪しい。疑念が深まる。
しかし、取り敢えず確実に聞くならば現当主である海桐花に効くのが最初であろう。
今度の休日に実家に帰ることがあれば彼女に問うてみよう。
未だに彼女に過激なスキンシップを試みる蝦夷組長をいなしながら彼女は帰路についた。
此処は現世。日本のとある地方。
今や全国でも解決が難しい少子高齢化に伴い、シャッターが眼立つ商店街のある建物。
その出入口を二人の人間が見張っている。その横には「自己啓発セミナー ~人類があるべき姿~」の文字。
疎らに入ってくる人間に声を掛け、参加証の提示と軽いボディチェック―主に録音機やカメラの有無を調べるだけだが―を行って問題が無ければそのまま中に入れている。
「カッタルい」
タトゥーの目立つ女があくびをしながら愚痴を溢す。大きく空いた口元からピアスのついた舌が覗いていた。
「我慢なさい」
それを片割れの女が諫める。腕を組み建物の壁に凭れ掛かってリラックスした姿勢ながらも、その視線は油断なく辺りを警戒している。
彼女達はセミナーの人間であり、今回の講習会の主催者である。他にも様々な集団が講習会に特別講師として招かれている。
「今回は大幅に失った人員の再統合の為なんだから、部外者は排除するのよ」
―が、それは表向きの話。彼女達の正体はとある存在に仕える『神奉者』と呼ばれる集団である。
人影が少なく、行政の干渉も少ない此処は凡そ表立って活動できない彼女達にとっては絶好の隠れ蓑であった。中に入っていく参加者も当然、それに連なる者達であり一般人の姿は無かった。
「へーへー……ったく。オメェは真面目なんだよ」
両膝を折り、その場にかがむようにして座り込んでいたタトゥーの女は立ち上がると勢いよく伸びをして再び監視業務に戻る。
そこへ一人、新しい人影が近づいてきた。
新しい参加者かと思い、眺める。
―服装はジーンズに厚手のパーカー。体形は判らない。
―素顔はフードで隠れていてわからない。
―背丈は2メートル。背中には竹刀袋。
その姿を見た二人の思考は珍しく一致した。
――怪しい。と
少なくとも社会に紛れ込み活動をしている自分たちですらしないような怪しすぎる格好。
通すわけにはいかない。よしんば本当に参加者だとしても、あそこまで姿を隠して外をうろつくのは今まで引き籠っていた社会不適合者か、或いは自分達と同じ爪弾き者だ。
「ちょっとそこのアンタ。参加者ならワリィんだけどそのフード外してくんね? 顔が見えねぇんだわ」
まずは穏便(本人比)に声を掛ける。これで素直に外してくれれば良し。それでなくとも何かしら反応はあるだろう。
しかし、彼女達の予想とは裏腹にその人物は歩みを止めず、かといって言葉に従ってフードを外す様子も無い。
ならば確定だ。引きこもりなら自分の姿を見て怯む。怯まないのは少なくとも『こういう裏社会』で場慣れした人間だろう。
力で以ておかえり願おう。
無言で互いに目配せして拳を構える。
相手が何の力を持っていようが数の有利は此方にある。それに表の騒ぎを聞きつければ応援もやってくるだろう。
どちらともそれらしい合図も無く同時に殴りかかり―――吹き飛ばされた。
彼女達が。
何が起きたか認識する間もなく木製の扉に背中を打ち付け、その勢い故に木製の扉は破壊され二人諸共建物内に転がり込むこととなった。
中にいた参加者に扮した仲間が何事かと身構える。
粉塵が舞う中、ゆったりとした足音が建物の中に響く。
足音の主が言葉を発した。
「悪いんだけどさ」
驚愕する周囲を他所に、特段緊張した様子も無い声は続く。
「ちょっと探しものがあるんだけど、知らない?」
竹刀袋包まれた状態の獲物を露わにする。
中から鞘に包まれた状態の真剣が姿を見せた。
「――っ敵襲!!」
一人がその身体を異形に変え襲い掛かる。
いくら真剣を持とうがこちらは能力者であり、そもそも純粋な力量差もある。ただの男に勝てる見込みもないだろう。
襲い掛かった神奉者はほくそ笑み―――その表情のまま両断された。
「ンッン~……この様子だと此処も『アイツ等』に関係あるっぽいし、適当に探し回れば見つかるかね? いや、目ェ付けられるかもしれないし、あんまり暴れるのも宜しくなさそうだけど、まっこれも致し方なし。か」
独り言のような呑気な声が部屋の中に響き渡った。
その傍らには、濡れるような刀身が喰らい室内で光を放つ。
「んじゃ、『探し物』について知ってる奴いたら教えてくれや。教えてくれなくても別に此処探し回れば見つかるかもしれんし、別にいいけど」
一瞬、刀身の姿が揺れると周囲が瞬く間に血と肉で彩られる。
人の気配が亡くなったロビーの中、変わらずゆったりとした足音が響き渡った。
桔梗ちゃん:始解を開放したけど、「ワイの力まだこんなもんやないで」言われてモヤモヤしている。
阿加保之:力が開放できたので態度が一気に変わった。ただし本当の名前で呼ばれていないし、始解も今の所熟練度が足りないので全力には程遠い。
???:自分のやらかしの後始末で奔走中。あまり派手に暴れると連中に見つかるかもしれないし、そもそも警察にも目を付けられかねないので全力は出せていない。因みに探し物は見つからなかったし、服も汚れたのでまた新しく調達する為にこの後『路地裏の親切なお兄さん方』に交渉をして、お金を『恵んで』もらった。
R-18 (余裕があれば)
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欲しい
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別にいいかなって……