全くありふれてない職業HEROは地上最強【完結】 作:びよんど
アンケート結果を受けて、ダントツだったこのエピソードを小話として皆様に贈ります。
別名:推しの子アイちゃん生存ハッピー裏話。
小話① 名曲『星の王様』誕生秘話
私は嘘吐き。
考えるより先にその場に沿ったことを言う。
自分でも何が本心で、何が嘘なのか分からない。
<<< S市 >>>
「ふはっ……痛いかよ……ッ」
痛いよ。
お腹を刺されたんだもん。
「俺はもっと痛かった!苦しかった!!」
分からない。
私みたいな
「アイドルの癖に子供なんて作るから……!ファ、ファンを裏切るふしだら……ッ」
世間はそう見るよね。
でも
自分の幸せを求めちゃいけないの?
「ファンのこと蔑ろにして、裏ではずっとバカにしてたんだろ!」
そこまで性格悪いことはしてないけど……。
「この嘘吐きがッ!!」
……アイドルは夢を売る仕事だ。
いつでも可愛く、純粋で清純で、真っ直ぐな愛を歌う。
でも私は清純じゃないし、ずるくて汚いし、そもそも人を愛することがよく分からないし……。
ただ可愛いだけの私が皆に夢を見せる方法は、やっぱり嘘しかないワケで……。
「散々好き好き言って釣っておいてよ!全部嘘っぱちじゃねえか!!」
やっぱり分からないよ。
「……私なんて元々無責任で、どうしようもない人間だし、人を愛するってよく分からないから、私は代わりに、皆が喜んでくれるような、きれいな嘘を吐いてきた……」
でも、これが嘘でも言わないと。
「いつか、嘘が本当になることを願って、頑張って、努力して、全力で嘘を吐いてたよ」
自分にも嘘を吐いてた。
その代償がいつ降りかかっても、仕方のないものだって覚悟はしてた。
「
誰かが言ってた気がする。
その人を愛するって、その人のために死んでもいいって覚悟なんだ。
「いつかそれが、本当になることを願って。……今だって君のこと、愛したいって思ってる」
「嘘吐け……俺のことなんて覚えてもいないんだろ!見逃してもらおうと……」
「リョースケ君だよね。よく握手会来てくれてた」
「ッ〜〜〜!!!」
「あれ?違った?ごめん私、人の名前覚えるの苦手なんだ。お土産でくれた星の砂嬉しかったな。……今もリビングに飾ってあるんだよ」
逆に、リョースケ君以外のファンの子、ちゃんと覚えられていたかな……。
これで、違ってたら、傷付け、ちゃうよね……。
「んだよ……それ……そういうんじゃ……!ァァァぁぁあああああああ!!!」
……ごめんね、やっぱり私……。
「アイ!!!きゅ、救急車呼んだから……!!」
「いやぁ油断したね。こういう時のためにドアチェーンてあるんだ。……施設では教えてくれなかった」
「喋るな!!しゅ、出血が……腹部大動脈かクソ………ッ!!」
………………アクア。
………………おいで、アクア。
「ごめんね、多分これ、無理だぁ……」
「ッ〜〜〜」
覚悟してても、痛いのはイヤだったなぁ……。
「大丈夫?アクアは怪我とかしてない?」
「……………………………………してない」
……良かったぁ。
「今日のドームは中止になっちゃうのかな……?皆に申し訳ないな。映画のスケジュールも本決まりしてたのに。監督に謝っておいて……」
「ねぇ、どうしたの……?そっちで何が起きてるの……?」
「来るなルビー……」
「ねえってば!!」
………………ルビー。
………………聞いて、ルビー。
「ルビーのお遊戯会の踊り、良かったよー。……私さ、ルビーももしかしたらこの先、アイドルになるのかもって思ってて、いつかなんか上手く行ったら、親子共演みたいなさ、楽しそうだよね」
……楽しいんだろうなぁ。
「アクアは役者さん?……それとも、アマイマスクさんみたいなヒーローになる?」
……きっと、私に似たイケメンの、アイドルヒーローにだって、なれるよね。
………………ヒーロー、かぁ。
「二人は、どんな大人になるのかな?……あー、ランドセル。小学校の入学式も見たいし、授業参観とかさー、ルビーのママ若すぎない〜?とか言われたい」
………ヒーロー。
三年前くらいに、ヒーロー協会ってところが出来て、それで、怖い怪人を倒しまくって、それで……。
……あれ?なんで私、こんなことを……?
「二人が大人になってくの、側で、見て……ッ」
「……アイ?」
なんで、なんでなんでなんで?
いま泣くところじゃないのに、なんで私……ッ
「……いや、しにたくないよぉ」
「アイ……!」
「ママ……!」
「わたしの人生ここからで、アクアとルビーと、ずっとずっと生きていこうって、ほんとに、おもって……!!」
「アイ、アイィィ!!」
「ママ、ママァァ!!」
お願い神様、どうか今だけ、私の
嘘を吐き続けた私の、本当が何かも分からない私の。
まるで嘘みたいな、本当の願い。
「たす、け、て、ヒー、ロー……」
「随分血の匂いが濃くなったなぁ……って、うおっ!!?マジかッ!!?」
<<< 少し時間を遡り、S市 >>>
「……ムフッ、これで粗方揃ったかなぁ?」
レジ袋の中身を漁りながら
……よしよし、全部揃っているようで何より。
おっとっと……噂をすればだなぁ。
「はいもしもしサキ氏」
『レイタロウ氏〜?例のブツ、ちゃんと手に入った〜?』
「勿の論。……S市のコミケで現れるっつー噂はマジだったワケさぁ……」
『もはやその界隈では
「〝この目は闇がよく見える〟」
「〝鎮まれ、俺の右手〟」
「〝今宵も邪気眼が疼く〟」
「〝我が闇の眷属となるがいい〟」
「……
『……パーフェクトだ、褒めて遣わす』
「感謝の極み……」
いやホント、よく見つけられたと思うよ。
ここ最近の
それがホラ、さっき言った
先生は端的に言って凄い。
ジャンルは間違いなくエロで、台詞回しは中二病のソレなんだけど、そんなものどこ吹く風と言わんばかりの巧みな構成力と圧巻の説得力で読者を引き込み、今や出展から30分も経たずに完売するほどの売れっ子作家となられている御仁なのだ。
……まぁ御仁っつっても姿を見たワケじゃないけどね。
これこそが深淵卿先生を人気たらしめる最大の要因で、これほどの人気と注目を一身に受けているというのに、誰も先生の姿を目撃したことがないというのだ。
会計をしようとすると何処からともなく声が聞こえ、いつの間にか会計が完了しているという。
最初は眉唾だと決めつけていたが、実際に体験してみてよーく分かった。
……深淵卿先生は〝隠〟を極めておられる。
戦闘を生業とする身として、先生のその謙虚な有り様はとても参考になった。
俺も隠形の術を習得せねば……。
『あ、でもごめ〜ん。今日はリサんちで線引き手伝わないといけなかったよ〜』
「えっ、マジで?」
『てゆーか今日は徹夜で仕上げなきゃだから、おうちに帰れませ〜ん』
「うぅ……この溢れる
「まぁまぁ……帰ってきたら
「俺にお腐れ様になれと?御免被る!」ピッ
野郎同士の絡み合いなんて見たくないよ俺ェ。
……やれやれ、ということは今T市にいるってことか。
確か……同い年のヲタ友だって言ってたな。リサって人。
直接顔を合わせたことはないけど、サキ氏が浮気しているなんてことはないはずだ。たぶん。メイビー。
「ひっ……ひっ……俺は……なんてことを……!!」
ん?なんだあの……黒パーカーの彼?
イヤに
「普通の弱パンチ!」
ゴスッ「ぐっ………はっ………!!?」
……っぶね〜、思わず逃しちまうところだったぜ〜(汗)
向かって反対側から走ってきた黒パーカー男の土手っ腹に手加減マシマシの弱パンチを叩き込み意識を奪う。
「キャァァァァァァ!暴漢よォォォォォォ!!」
「き、君!いきなり何をやって……!?」
白昼堂々と行われた凶行に通行人達がどよめく。
でもねぇ、これには理由があるんですよぉ……?
「そこのあなた!警察に通報をお願いします!」
「えっ……?」
「
「は、はい!」
えーと、確か上着の内ポケットに
これでこいつの親指同士をきつく拘束して、と。
よしよし、これで自力では逃げ出せない。一安心だなぁ。
……さてと、ほんじゃあ怪我人がいないか軽く見て回るとするかね。
さっきチラリと見えたナイフに付着していた血痕、まだ完全には乾きっていなかったと思うから、ここから現場はそう遠くはないはずだけど……。
「な、なあ、あの人って……」
「間違いねーよ。あの人は……!」
「なんでこの街に?」
「メッチャ
「ねぇ、確かあの人ってヒーローの……」
「うん、この地上で最も強い男の人で……」
「……この世界に唯一降り立った救世主」
「「「「 キングさん!! 」」」」
うん、とりあえず逃げよう。
俺は血の匂いを辿るようにその場を後にした。
……本日手に入れた同人誌をレジ袋ごとその場に置いていく形で。
「随分血の匂いが濃くなったなぁ……って、うおっ!!?マジかッ!!?」
そして、忘れ物に気付いた頃には腹から血を流して死にかけている女の子と対面していた。
つまりはアレ、遅きに逸したのだ。
……忘れ物を取りに戻るタイミング的な意味で。
「!?……だ、誰だ!!?」
子供が吠えるのも構わず、俺は玄関から堂々と侵入し、腹から血を流して虫の息になっている女の子を診た。
……腹部大動脈を鋭利な刃物で傷付けられたか。
こりゃ見た目以上に危ない状況だな。
血を失いすぎてるし、輸血は必須。
時間をかけすぎると脳に障害が出る恐れ有り、と。
「問題、ない。……君は、助かるぞ」
「えっ―――!!?」
子供には見向きもせず、即座に『気』を放出して半径5m内のあらゆるバイ菌やウイルスの除去を行う。
ほぼ無菌状態にしたら、次は彼女の体内に俺の『気』を流し込んで全身をくまなく巡らせる。
彼女の体内で起こっている
まぁ刺し傷を癒やして元通りにする程度なら何の問題もないけど、問題はその間に失われた血液をどうやって補填するかなんだよね。
この子はどうやらA型、B型の俺とは血液型が合わない。
そもそも輸血用器具なんてものも持ち合わせていない。
ならどうするか?……そこら辺も抜かりないさ。
『気』を
彼女の体内を巡っていた『気』に指向性を与え、その形質をガラリと変化させた。
俺の『気』は無色透明な力の塊、言ってしまえばそこに無いのと同然の存在なのだ。
例え血管の中を悠々と行き来したところで人体に害などありはしない。
ただ、この『気』を変質させるとなると話は変わってくるのだが、それはまた後日に話そうと思う。
「z―――、z―――……」
みるみるうちに彼女の血色は良くなり、虫の息だった呼吸の乱れも安定し、体力を回復させるためか静かに寝息を立てていた。
「……とりあえず、応急処置は、施した。あとは、救急車を呼んで、病院で、診てもらうと、いい」
「嘘……そんな、どうやって、もう治ってる……!?」
「……噂をすれば、だな。それでは―――」
「まっ……待ってください!!」
「…………なんだ?」
ホントに何なの?
さっきまで彼女にしがみついていた……息子さんかな?が急に呼び止めてきた件について。
俺ねぇ、こう見えて今メチャクチャ気まずいのよ?
人んちに勝手に上がり込んで、挙げ句医師に断りもなく勝手に治療行為をやったワケなんだから。
ジーナス博士から基礎的な人体学や医学を学んでいても、医師免許も持ってない俺じゃただのモグリだからさ。
勿論人死にを出さないようメチャクチャ気を配ってるし、ヒーロー協会から正式認定されたプロヒーローではあるけれども、どっちみち褒められた行為じゃないからね。
容態が安定すればそそくさと逃げるに限る。
「あ、あなたの名前を教えてくれませんか!!?」
……な、名乗りたくねぇ……。
俺のことなんて放っておいてくれていいんだよ?って言いたいけど、調べればヒーロー名簿に俺の名前がしっかりと載ってるんだよなぁ……。
どう返せばいいか……あっ、そうだ。
「俺は、趣味と実益を兼ねて、ヒーロー活動を、している者だ。……名乗るほどの名前は、ない」
「もしかしてプロヒ―――」
「もしかしたら!……また、巡り合う時が、来るかもしれない。その時まで、サラダバー」
「えっ、サラダバー?」
やっべ噛んだ、マジ恥ずかちー!
パーリーピーポーと鳴き声を上げる救急車が到着するよりも早くその場を後にした。
深淵卿先生の同人誌は結局回収できなかった。
俺が出没したという噂を聞きつけて、とんでもねー数の野次馬が殺到していたためだ。ちくせう。
この
……
長くて三話程度で終わらせる予定です。
こんなつまらん話はいいから新作を書けと言われればこれで止めますし、面白いから続きを書いて!という感想があれば続きを書いていきます。
ただ一つ言えることがあるとすれば、この世界に生きるアイちゃんは世界で一番のラッキーガールだってこと。