両津勘吉 パトロールをしながらフーデリ配達で金儲けの巻 作:梅酒24
人間というものは不思議なものである。
一度金の匂いを覚えると、鼻が犬より利くようになる。
その日もわしは派出所の机で電卓を叩いていた。
カチカチカチ。
一件1100円。
一時間平均4件。
つまり
1100 × 4 = 4400円
一日10時間働くと
4400 × 10 = 4万4000円
さらに雨の日ブースト。
そして台風ボーナス。
さらに深夜料金。
さらにクエスト達成ボーナス。
さらにチップ。
カチカチカチ。
結果。
月収約300万円。
わしは電卓を見つめて言った。
「……これは革命だ」
フードデリバリーとは単なる配達ではない。
物流なのである。
そして物流を制する者は経済を制する。
世界史でも同じだ。
古代ローマも物流。
モンゴル帝国も物流。
Amazonも物流。
つまり――
「フーデリは現代のシルクロードだ」
わしは拳を握った。
「この亀有を制圧する!」
だが一つ問題があった。
人間一人では配達に限界がある。
どんなに頑張っても
一時間6件が限界。
しかしわしは考えた。
人間一人でダメなら――
増やせばいい。
翌日。
亀有駅前。
そこには奇妙な光景が広がっていた。
緑のバッグ。
赤いバッグ。
青いバッグ。
そしてその中央に立つ男。
わしである。
「諸君!」
周りには
学生
フリーター
元配達員
自転車マニア
20人ほど。
「これからわしがフーデリ界を変える!」
「名付けて!」
腕を広げる。
「両津フード物流株式会社!」
全員ポカン。
だがわしは続けた。
「配達を個人でやるから儲からん!」
「チームでやるんだ!」
わしはホワイトボードを書いた。
エリア分担
北千住
綾瀬
金町
青砥
亀有
「そしてAI配達システム!」
スマホ20台。
同時稼働。
注文を瞬時に振り分ける。
「最短ルート!」
「最短時間!」
「最短距離!」
学生が言った。
「でも両津さん」
「Uberは個人事業主ですよ?」
「会社でやると規約違反じゃ……」
わしはニヤリと笑った。
「だから会社じゃない」
全員「?」
「表向きは同好会だ」
フードデリバリー研究会。
通称
F研。
完全にグレーである。
そして作戦開始。
スマホ20台。
配達員20人。
1件1100円。
同時10件配達。
つまり
11000円。
それを1時間4回。
4万4000円。
それを10時間。
44万円。
それを30日。
電卓が止まった。
月1320万円。
わしは震えた。
「世界が見える……」
だが。
神はそんな甘くない。
その日。
関東に史上最大の台風が接近した。
風速
35メートル。
ニュースが叫ぶ。
「不要不急の外出は控えてください!」
だが。
わしは笑った。
「最高の稼ぎ時だ」
雨クエスト。
一件
1800円。
しかも注文が爆発。
そのとき。
スマホが鳴りまくった。
ピザ10件
ラーメン6件
寿司4件
同時20件。
だが次の瞬間。
突風。
ドォォォォン!!!
自転車が飛んだ。
ピザが空へ舞う。
ラーメンが宙を舞う。
寿司が空中回転。
普通なら終わりである。
だが。
わしは叫んだ。
「フォーメーションB!!」
学生たちが動く。
一人がピザ回収。
一人がラーメン死守。
一人が寿司キャッチ。
まるでラグビー。
台風の中の配達戦争。
だがそのとき。
警察パトカーが止まった。
降りてきたのは――
大原大次郎
「両津ぅぅぅ!!!」
全員凍った。
部長が叫ぶ。
「何をしている!!」
わしは敬礼した。
「災害時住民支援活動です!」
「台風で外出できない住民に食料を届けています!!」
部長
「む……」
ニュースを見る。
確かに。
避難所に食料不足。
部長は腕を組んだ。
「……今回だけだぞ」
わしは心の中で叫んだ。
(勝った!!)
その日の売上。
28万円。
だがその直後。
ニュース速報。
「フードデリバリー大量配達事件」
「謎の組織F研」
「リーダーは警察官?」
部長の拳が飛んだ。
ドゴォォォ!!
「両津のバカはどこだぁぁぁ!!」
わしは窓から飛び出した。
自転車を漕ぐ。
「逃げる!!」
こうして。
亀有フーデリ帝国は
わずか3日で崩壊した。
だが。
わしは思った。
「まだだ」
「次はドローン配達だ」
金の匂いは。
まだまだ消えていなかった。