ナイトメアにレクイエムを   作:AZ

3 / 3
エミリーと豆腐サバイバー

 

 ここは、どこだろう。

 陰鬱で、重苦しくて、どんよりとした閉鎖的な空間。

 

 モンスターたちの呻き声が四方八方から響いてくる。

 

 何をすればいいのだろう、どこへ行けばいいのだろう。何も分からないエミリーを、誰かが抱きかかえて、走っている。

 

 そうだ、前にもそんなことがあったはずだ。目の見えない彼女をあの地獄から救ってくれた、ヒーローがいたんだ。

 

 名前は、そうだ、グレースだ。また、助けに来てくれたんだ。

 ぼやけていた視界が、だんだんとハッキリしてくる。

 

 そして、エミリーの目に飛び込んでくる、憧れの人。

 体中が真っ白で、縦長の直方体で、腕も顔もなくて、ポヨンポヨンと軽やかな足音を立てて、スターズのベレー帽を被っていて……?

 

「グレース……?」

 

「お久しぶりやで~」

 

 エミリーを抱きかかえて走っている、『自称グレース』

 彼女が知っているグレースと、なんかちょっと違う。

 

 いや……? 色白で華奢で妙に足が速くて。ほなグレースか……。

 

 それにしても、どうして服を着ていないんだろう。ゴツゴツ、ザラザラしたお肌がそのまま露わになっている。

 

 エミリーはそっとグレース(?)のお肌を指で突いてみる

 

「なにすんねん!」

 

 怒られてしまったので指をひっこめる。

 

 それにしても、どうやって自分を抱きかかえているのだろうとエミリーは思う。だって腕もないのに。傍目から見れば、自分がこの四角い立方体にしがみついているようにしか見えないだろう。

 

「ねぇ、グレース(多分)、私たち、脱出できるのかな」

 

「はぁ~しんどぉ~」

 

 わからない、けど、全力でやってみるしかない……と言ってるらしい。

 

 そんなこんなで、館の出口付近まで辿り着いた時、そこには、目を見張る程の数のゾンビたちの姿。

 どれもこれもが腹をすかせ、エミリーとグレース(っぽいの)をじろりと睨んでいる。

 

「どうしよう……」

 

 エミリーが慄いていると、グレース(らしきもの)はエミリーを近くの椅子に置いて、どこから取り出したのかよくわからない包丁を一本持つと、「しばくぞ!」と言ってゾンビの群れに突っ込んでいく。

 

 

「いてっ!」

「やめろや!」

「なにすんねん!」

「やめて~」

「しばくぞ!」

「しばくっちゅーてるやろ!」

 

 ゾンビとの大乱闘。エミリーの目が間違ってなければ、多分食べられてる。噛まれてるとかではない、おいしく食べられてる。それでもまぁ、まだ声が聞こえるから生きてはいるんだと思う。

 

「グレース……まだ身体残ってるのかな」

 

 なんて呟きながら待ってると、グレース(無根拠)がゾンビの群れから戻ってくる。

 

「はぁ~しんどぉ~」と言いながら、体中ゾンビたちの歯型跡が残ってるが、割と平気らしい。

 倒れたゾンビたちの頭には包丁が刺さっている。

 

「全部やっつけたんだ、すごいね!」

「しばくぞ!」

 

 賞賛に喜んだのか、シンプルに怒られたのか、今のは分からなかった。

 

 そうしてまた抱きかかえてもらった時、どおん! と館の天井が付き破られ、そこから落ちて来たのは大型BOW。あの、ザ・ガール。

 

「でかい……!」

「どうしよう、グレース(と思われるもの)!」

「ほんまキツイってぇ」

 

 そして二人は追いかけるザ・ガールから逃げる。時折捕まって食べられたりしたが、グレース(決して豆腐ではない)が結構丈夫にできているので耐えている。

 

 そんなこんなで館の中を逃げ回り、鉄格子で遮られた行き止まりへ。

 隣に開閉器があるので急いで操作。鉄格子が徐々にリフトアップしていく。しかし、ザ・ガールは近くまで迫っている。

 

 僅かに開いた隙間から「ヨイショ」とすり抜けようとするが、ザ・ガールに足を捕まれて、格子の中へと引き摺り戻される。

 

「きゃあ!」

「もうあか~ん」

 

 そのまま暗闇に引きずられようとしたその時、ドン! と急な爆発音。

 ザ・ガールが怯む。開いた鉄格子の方には、一人のエージェントの姿。

 

「レオン!」

 

 二人を助けに来てくれた、DSOの敏腕エージェント。その出で立ちは、緑色のしっとりしたつやつやなお肌に、スターズのベレー帽を被っており、こちらも顔と腕がない。そして服も着ていない。

 

「シバクゾッ!」

 

 レオン(決してういろうではない)はザ・ガールに向かって追加で手榴弾をいくつか投げつけると、ザ・ガールは大きなダメージを受け沈黙する。

 

 そのまま、三人で館の外へ。二人揃ってポヨンポヨンと気の抜けるような音を出しながら、太陽のある方へと走っていく。そんな二人に抱きかかえられながら、エミリーは思った。多分この人たち、グレースとレオンじゃないなと。

 

 でもまぁ……いいか。

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

「……リー、エミリー起きて」

 

 優しい声色に意識を呼び戻される。気が付けば、ソファの上。ブランケットに包まって、胸の上には読みかけの本。

 

「あれ……?」

「おはよう、よく眠れた? そろそろお夕飯にしましょ」

 

 外の日がすっかり落ちている。台所にはグレースが、お鍋の湯気に包まれて立っている。

 テーブルに着くと、グレースがぐつぐつと煮えたお鍋を持ってきてくれる。

 

「今日のご飯なあに?」

「ふふ、寝起きには優しいスープだよ」

 

 そう言ってグレースが取り分けてくれるスープの中身は、コンソメベースに、カットされた野菜とソーセージ。そして、白くぶよぶよした何か。その何か、それは夢でみたグレースっぽいのとなんか似ている。

 

「これなあに?」

 

 スプーンに乗せて、グレース(本物)に見せる。

 

「豆腐よ、トーフ。とってもヘルシーで、美味しいよ」と言ってくれる。

「やっぱりグレースじゃなかったんだ」と呟くように言うと、グレースは不思議そうに首を傾げる。

 

 そして、豆腐を一口。なめらかな口触りと、見た目からは想像できない程しっかりとしたコク。

 

 こりゃ、ゾンビたちもこぞって食べたくなるだろうなとエミリーは一人ながらに理解した。

 

 





豆腐モード難しすぎな
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

BIOHAZARD ~The Twice Up Angels(作者:AZ)(原作:バイオハザード)

BIOHAZARD reqiem 妄想DLC▼レンウッドホテルの怪死事件から始まった、あの事件からしばらくして。▼一緒に生活を始めていたグレースとエミリーはとある遊園地に来ていた。▼穏やかで楽しい時間を過ごすはずだった二人、しかし運命は、彼女らを再び悲劇へと誘う。▼そして混乱の中、グレースと別行動を余儀なくされたエミリーは、一人の少女出会う。▼彼女の名は「ロ…


総合評価:42/評価:-.--/連載:12話/更新日時:2026年05月09日(土) 13:30 小説情報

生者に恐怖を、少女に祝福を(作者:狐畑)(原作:バイオハザード)

 バイオハザードレクイエムをクリアして二次創作がしたくなったので書いている作品です。実質的な処女作ですがよろしくお願いします。▼ 全てはもしもの物語、存在したかもしれない実験体の、あったかもしれない物語。▼ 2026年、8月、ローデスヒル療養所。そこは元アンブレラの研究員、ヴィクター・ギデオンが所長を務める会員制高級クリニック――そこでは恐ろしい実験が…


総合評価:21/評価:-.--/連載:3話/更新日時:2026年04月06日(月) 23:27 小説情報

【完結】神田.zipにはなりたくない(作者:翔々)(原作:龍が如く)

 目が覚めたら刑務所の中、おまけに龍が如く3のゆっくりこと神田強になっていた。ヤクザまんじゅうになる未来を避けるための戦いがいま幕を開ける。▼ 範囲としては『龍が如く3外伝 Dark Ties』のすべて。ゲーム本編の完全なネタバレ、またシリーズ全体のネタバレを含みます。未プレイおよびプレイ中の方はブラウザバックをお願いします。▼ pixivにて一話にまとめて…


総合評価:7999/評価:8.93/完結:14話/更新日時:2026年03月15日(日) 11:59 小説情報

ミーア・キャンベル()の憂鬱(作者:星乃 望夢)(原作:機動戦士ガンダムSEED DESTINY)

転生先は特大の死亡フラグが待っているあのプラントの歌姫()ミーア・キャンベルだった。


総合評価:17339/評価:8.89/連載:47話/更新日時:2026年01月08日(木) 00:00 小説情報

某魔法界でFateを布教する奴(作者:爆裂ハンター)(原作:ハリー・ポッター)

【簡易的なあらすじ】▼ビンボー気味な主人公(♂)が金稼ぎのためにFateシリーズを小説という形で執筆する話。▼なお、その小説は後々魔法界に多大なる影響を与えるとか。


総合評価:20104/評価:8.38/連載:9話/更新日時:2026年02月19日(木) 12:01 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>