和風陰陽師漫画の終盤で死ぬ親友枠に転生した俺はどうすりゃいいですか? 作:鬼怒藍落
「ねぇ蓮、大丈夫?」
意識が戻れば、そこはいつもの月の湖。
どこか困惑したかのような相棒の顔を目覚めた瞬間に認識し、何が起こったのかわかってない俺はとりあえず聞いた。
「なにが、あったか分かるか?」
「意識外からの鳩尾へのアッパーカット、あれは見事だったぜ」
「なんで?」
直前の記憶は、どことも分からない赫の世界。
その直後に浮遊感を感じたのはまだ記憶にあるが、横でやははと笑う鬼曰く俺は宙を舞ったらしい。
「で、今どうなってるの俺」
「多分だけど、目的の屋敷で看病されてる。犯人は拘束中」
「来たばっかりですでにお腹いっぱいなんだけど芥火家」
「いいじゃねーか、面白いぞ?」
俺としてはすでに結構なびっくり体験してるから面白くない。
出迎え? というか入った瞬間にあの謎の世界を見せられたのもあるが気絶させられてるのもあるし。
いやまぁ、あの世界の方には心当たりはあるんだけどさ……だからって目を付けられるのは――多分、俺の神依木の体質のせいだよなぁと。
「で、どうすんだ報復するか?」
「それはやめてくれると助かる……多分、あの子にも事情あるだろうし」
「やっぱり甘いよな。まぁご主人が言うならいいけどよ」
少しだが残念そうにする金平鹿。
……どれだけ戦いたいんだよと思うが、俺ごしにあの世界の神威を受けて滾ってる気がしたので深くは追及しない。
「ねぇ、そろそろ起きる?」
「まぁ、いつまでも寝てるわけにはいかないし……心配かけてごめん空」
「大丈夫、でも気を付けてね」
「ん、了解」
そうと決まれば早速起床、俺はもう慣れてしまった精神世界からの浮上を試みて……そのまま目を覚ませば。
「……えぇっと?」
「む、起きたか客人。丈夫なのだな」
「その貴方は?」
そこにいたのは、俺を看病していたのかちょうどタオルを濡らしていた初めて会う少女。黒い髪を腰まで伸ばしている牛の角を生やした少女で、起きた俺からの問いに少し間を開けてから。
「儂か? 儂は
「あ、丁寧にどうも。水蝕蓮……です?」
とても自然な流れでそんな風に自己紹介をされた俺は、とりあえずそう返事をした。なんかさらっと幽霊とか言われたが、確かこのヒトは……。
「よろしくだ水蝕の倅。む、そうだ、体に不調はないか? 起きたら汝を呼んで来いと当主に言われておってな」
とりあえずうなずいて、俺は彼女に案内されてこの部屋から出ることになった。
今いた部屋から出て、歩いて見える景色は山のもの。
とても澄んだ空気があたりに満ちていて、雰囲気としては神社が近い。それに、息を吸うだけでも肺の中に霊気が満ちるのを感じるし、神域だと思っていいだろう。
案内されながら周りの景色に圧倒されつつも、俺は横目で緋星という少女を見る。暖色の着物に身を包む、幽霊を自称する鬼。
記憶が確かならば、この少女は俺を殴っただろう少女の相棒キャラで、彼女の刀に宿る存在……だったはず。熱を集めるという力を持った存在で、あの子の姉の様な立ち位置にもいる的なヒトだった気がするが。
「む、まじまじとどうした?」
「あ、すいません。なんでもないです」
「くはは、そう畏まらんでもよい。それに、疑問も分かるぞ。この神域で妖怪である儂が平気でいるのが不思議なのだろう?」
「まぁ、はい」
なんかそう言われたので、とりあえずそういうことにしてもらった。
俺としてもかなり不躾に見てしまったし、そういう風に納得されるなら荒波立てずに、何より警戒されずに済むだろうから。
「っとついたぞ、中には現当主が待っているのでな気楽に話すといい」
そう言われて戸を開けてくれる緋星さん。
そのまま中に通される直前、一度深呼吸をしながら部屋に入る。入れば奥に座る人影があり、そこにはあの命式にいた気がする黒髪の女性がいて、その近くまで進む。
「来ましたか」
凛とした声、一種の圧さえ感じる様なその人は明かりの灯った部屋で一人佇み俺を値踏みしているのかじっと見てくる。
紅い目をした黒髪その人、長身であり鋭い目つきをしていて、確か名前は
原作の知識にはなってしまうが、かなり冷たいというか感情をあまり出さない人で、原作主人公君も最初は苦手意識を持っていた。
作中で最初に語られた印象としては、最も五行家らしい人。掟に準じ、切り捨てるものは切り捨るそんな人。
それを知っているからこそ、ちょっと怖いなとか思っていると彼女はゆっくりと口を開く。
「此度はよく来てくれましたね。芥火家現当主、
ごくりと唾をのむ。
この場の空気が冷える中、何を言われるか分からなかったからだ。
よく考えなくても、俺は警戒されていい対象そのもの。だって戦績が出来すぎているから、だからこそ俺も心してかかる必要があり、言葉を待っていれば。
「あのぉ、娘が本当にすいませんでした」
なんか邂逅一番で土下座をされ、とても弱々しい声でそう謝られた。
それは彼女を知っている俺からすると、まぁじで意味が分からなくて――俺は、完全に固まったのであった。