和風陰陽師漫画の終盤で死ぬ親友枠に転生した俺はどうすりゃいいですか?   作:鬼怒藍落

43 / 43
第43話:邂逅一番土下座

 「ねぇ蓮、大丈夫?」

 

 意識が戻れば、そこはいつもの月の湖。

 どこか困惑したかのような相棒の顔を目覚めた瞬間に認識し、何が起こったのかわかってない俺はとりあえず聞いた。

 

「なにが、あったか分かるか?」

「意識外からの鳩尾へのアッパーカット、あれは見事だったぜ」

「なんで?」

 

 直前の記憶は、どことも分からない赫の世界。

 その直後に浮遊感を感じたのはまだ記憶にあるが、横でやははと笑う鬼曰く俺は宙を舞ったらしい。

 

「で、今どうなってるの俺」

「多分だけど、目的の屋敷で看病されてる。犯人は拘束中」

「来たばっかりですでにお腹いっぱいなんだけど芥火家」

「いいじゃねーか、面白いぞ?」

 

 俺としてはすでに結構なびっくり体験してるから面白くない。

 出迎え? というか入った瞬間にあの謎の世界を見せられたのもあるが気絶させられてるのもあるし。

 いやまぁ、あの世界の方には心当たりはあるんだけどさ……だからって目を付けられるのは――多分、俺の神依木の体質のせいだよなぁと。

 

「で、どうすんだ報復するか?」

「それはやめてくれると助かる……多分、あの子にも事情あるだろうし」

「やっぱり甘いよな。まぁご主人が言うならいいけどよ」

 

 少しだが残念そうにする金平鹿。

 ……どれだけ戦いたいんだよと思うが、俺ごしにあの世界の神威を受けて滾ってる気がしたので深くは追及しない。

 

「ねぇ、そろそろ起きる?」

「まぁ、いつまでも寝てるわけにはいかないし……心配かけてごめん空」

「大丈夫、でも気を付けてね」

「ん、了解」

 

 そうと決まれば早速起床、俺はもう慣れてしまった精神世界からの浮上を試みて……そのまま目を覚ませば。

 

「……えぇっと?」

「む、起きたか客人。丈夫なのだな」

「その貴方は?」

 

 そこにいたのは、俺を看病していたのかちょうどタオルを濡らしていた初めて会う少女。黒い髪を腰まで伸ばしている牛の角を生やした少女で、起きた俺からの問いに少し間を開けてから。

 

「儂か? 儂は緋星(あけぼし)……この屋敷に住んでる幽霊? のようなものじゃ」

「あ、丁寧にどうも。水蝕蓮……です?」

 

 とても自然な流れでそんな風に自己紹介をされた俺は、とりあえずそう返事をした。なんかさらっと幽霊とか言われたが、確かこのヒトは……。

 

「よろしくだ水蝕の倅。む、そうだ、体に不調はないか? 起きたら汝を呼んで来いと当主に言われておってな」

 

 とりあえずうなずいて、俺は彼女に案内されてこの部屋から出ることになった。

 今いた部屋から出て、歩いて見える景色は山のもの。

 とても澄んだ空気があたりに満ちていて、雰囲気としては神社が近い。それに、息を吸うだけでも肺の中に霊気が満ちるのを感じるし、神域だと思っていいだろう。

 案内されながら周りの景色に圧倒されつつも、俺は横目で緋星という少女を見る。暖色の着物に身を包む、幽霊を自称する鬼。

 

 記憶が確かならば、この少女は俺を殴っただろう少女の相棒キャラで、彼女の刀に宿る存在……だったはず。熱を集めるという力を持った存在で、あの子の姉の様な立ち位置にもいる的なヒトだった気がするが。

 

「む、まじまじとどうした?」

「あ、すいません。なんでもないです」

「くはは、そう畏まらんでもよい。それに、疑問も分かるぞ。この神域で妖怪である儂が平気でいるのが不思議なのだろう?」

「まぁ、はい」

 

 なんかそう言われたので、とりあえずそういうことにしてもらった。

 俺としてもかなり不躾に見てしまったし、そういう風に納得されるなら荒波立てずに、何より警戒されずに済むだろうから。

 

「っとついたぞ、中には現当主が待っているのでな気楽に話すといい」

 

 そう言われて戸を開けてくれる緋星さん。

 そのまま中に通される直前、一度深呼吸をしながら部屋に入る。入れば奥に座る人影があり、そこにはあの命式にいた気がする黒髪の女性がいて、その近くまで進む。

 

「来ましたか」

 

 凛とした声、一種の圧さえ感じる様なその人は明かりの灯った部屋で一人佇み俺を値踏みしているのかじっと見てくる。

 紅い目をした黒髪その人、長身であり鋭い目つきをしていて、確か名前は芥火刀花(あくたびとうか)さんとかだった気がする。

 原作の知識にはなってしまうが、かなり冷たいというか感情をあまり出さない人で、原作主人公君も最初は苦手意識を持っていた。

 作中で最初に語られた印象としては、最も五行家らしい人。掟に準じ、切り捨てるものは切り捨るそんな人。

 それを知っているからこそ、ちょっと怖いなとか思っていると彼女はゆっくりと口を開く。

 

「此度はよく来てくれましたね。芥火家現当主、芥火刀花(あくたびとうか)と申します――それで、さっそくにはなってしまうのですが」

 

 ごくりと唾をのむ。

 この場の空気が冷える中、何を言われるか分からなかったからだ。

 よく考えなくても、俺は警戒されていい対象そのもの。だって戦績が出来すぎているから、だからこそ俺も心してかかる必要があり、言葉を待っていれば。

 

「あのぉ、娘が本当にすいませんでした」

 

 なんか邂逅一番で土下座をされ、とても弱々しい声でそう謝られた。

 それは彼女を知っている俺からすると、まぁじで意味が分からなくて――俺は、完全に固まったのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

家事代行先は闇堕ち寸前魔法少女の家でした~貧乏一人暮らしの俺は生活力を買われて内緒の焦れ甘同棲生活を始めることになる~(作者:水瓶シロン)(オリジナル現代/恋愛)

「ぎゅって、して……?」▼「構ってくれないと闇落ちしちゃうよ……?」▼ 高校入学を機に一人暮らしを始めた『御守望』は、青春を勉強とバイトに費やすような限界貧乏生活を送っていた。▼ 幼くして両親を失っている望が頼れる人は、田舎に住む祖父母くらいだが、なるべく負担は掛けたくない。▼ そのため、睡眠時間を犠牲にして死に物狂いで勉強することによって好成績を維持し、入…


総合評価:4983/評価:8.76/連載:89話/更新日時:2026年07月03日(金) 12:07 小説情報

悪徳領主に転生して死亡フラグを折るために勇者パーティを育てたら、激重感情を向けられて逃げられない件(作者:激重大好き)(オリジナルファンタジー/コメディ)

目が覚めたら、プレイしていた百合RPGの「序盤のやられ役」である悪徳領主ルシアンに転生していた。▼しかも、すでに悪魔と契約済みであり、このままだと勇者に倒されなくても魔力タンクとして悪魔に殺されてしまう完全な『詰み』状態。▼どうしても死にたくない俺は閃いた。▼「原作開始前の勇者たちを見つけ出し、俺が育てて悪魔を倒す。これしかない!」▼悲惨な過去を背負うはずだ…


総合評価:3024/評価:8.33/連載:6話/更新日時:2026年04月02日(木) 18:30 小説情報

ソル&ヴァルキリー:かませ騎士に転生した俺、破滅回避のため落ちこぼれヒロインを育成していたらいつの間にか天才と呼ばれてしまう(作者:マテリ-AL)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

全51話・約32万字/完結済み▼毎日20:18更新▼『ソル&ヴァルキリー 』。神の代弁者・魂導者(ソル)となり、戦乙女(ヴァルキリー)を空へ育て導くヒロイン育成系学園RPG。▼これは、そんなゲームの世界で、▼「戦乙女という空を飛べて広範囲殲滅魔法を使える存在がいるのに、騎士になる意味はあるのか……?」▼と考えてしまい、魂導者となったやられ役のかませ騎士、ルシ…


総合評価:6626/評価:8.49/完結:52話/更新日時:2026年05月09日(土) 10:18 小説情報

厄ネタヒロインたちとラブコメをすることになった(作者:灰鉄蝸@機甲猟兵エルフリーデ発売中)(オリジナル現代/恋愛)

「キミが好きだよ。だから殺すね」▼「あなたが好きです。好きなので洗脳しますね」▼「俺の死因多すぎるだろ…」▼異能バトルも伝奇ホラーもある世界で、バッドエンドの元凶になるような厄い美少女に好意を抱かれる――好意全開の金髪巨乳幼馴染み、ややホラーな超能力者の黒髪ロング同級生、彼女たちが引き起こす破滅の未来に巻き込まれる少年。▼愛が重くて、死の原因になる厄ネタヒロ…


総合評価:5407/評価:8.85/連載:53話/更新日時:2026年09月09日(水) 19:12 小説情報

救いのない鬱ゲー世界で主人公御用達の喫茶店をやる(作者:音塚雪見)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

女しか魔法が使えない世界に転生した主人公。▼しかし彼だけは男ながらに魔法が使える。▼──これは俺が主人公ですね間違いない。▼馬鹿みたいな勘違いの末、彼は「世界最強の魔女」と呼ばれるほど実力を高める。▼だが見覚えのあるキャラクターと遭遇し、とある救いのない鬱ゲーに転生してしまったのだと知った。▼──ワッツ!? あかんこのままじゃ世界が死ぬゥ!!▼ということで爆…


総合評価:7217/評価:7.73/完結:53話/更新日時:2026年07月03日(金) 19:46 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>