だから付き合ってないってばよ   作:冬乃菊

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【注】捏造。下部にアンケートを設置しました(5/18)


少女たちの夢と希望

 喫茶店の開店前の準備で母のサエは奥の厨房に立ち、泡立て器でスポンジケーキの材料を混ぜていた。双子の娘であるイコイとナゴミはホールの清掃を終え、持ち帰り商品のラッピングをし丁寧に陳列する。これが彼女たちにとってのいつもの朝。

ーーバンッ

 扉が勢いよく開く音がし、サエが作業を止めてホールの様子を確認すると、そこには包み紙とリボンで結ばれた焼き菓子が床に散らばっていた。店の扉は開いたままだ。

 咄嗟に外に出て辺りを探すが、左右どちらを見ても娘たちの姿は見つからない。日の出間もない卯の刻ということもあり、通りを歩く人影さえなかった。

 二階が住居となっており、同じくけたたましい扉の音を怪訝に思った夫が一階の様子を見に降りてきた。

「あなた!娘たちが!」

 血相を変え慌てふためく妻を抱き止め、この状況は自分が招いた結果だと気づき、ギリと強く噛み締める。

 

 

 

 奉行所という警備や取締りをするような公的な施設であっても、忍の立場であれば普通の建物と何ら変わりない。

 所長室に他の人物がいないことを確認し、部屋の扉を開ける。

「……ナルコ?」

 所長室の椅子には、賭博場で会ったあのガタイの良い男が座っていた。

「たしか、ヨリアキ?だっけ。……そーゆうことか」

 酒場の店主の話では、奉行所所長が反乱分子の長でもあるということだった。ならば、最後に行ったあの賭博場が反乱分子の拠点だったということになる。

 あの時、ヨリアキは自身を自虐してあのようなことを言っていたのだ。腑抜けだと。

「……今朝、娘たちも拐われた」

「拐われた?……これって、喫茶店の」

 ヨリアキは手元の二枚の書類を差し出す。その娘たちはあの喫茶店の給仕をしていた少女たちで、イタチやライドウの話してた内容と話が繋がる。

「知っていたのか。……隠れ里に依頼したことがバレたんだろう。この街には赴任して約半年とまだ日が浅いが、街長からは余計なことをするなと当初から脅されていた。この奉行所職員も半数が街長一派の者だ。……お前と話した後に己の愚かさに気付かされてな。あそこに居た仲間も共に立ち向かうと言ってくれた。それで依頼書を書いたんだが……」

 まさか、自分ではなく娘たちが標的となるとは思いもしなかった。

「……聞けば聞くほどゲス野郎だな。後はオレたちに任せてくれってばよ」

「俺たちにも、何か……できることはないか」

 ヨリアキはこれまでの選択を悔い、今は忍に頼るしかない不甲斐なさ、その選択が生んだ今の状況から無力感に苛まれながらも、前を向こうとしている。

 現時点での情報は一旦里へ全て報告している。火影を経由して必要と判断されたものは大名へ渡るだろう。国が動くのはその後だ。

 シスイは一考した後に口を開く。

「まずは子どもたちの人命を優先し、我々が潜入します。それを敵に気取られるわけにもいかないので、それまではいつも通り過ごしてください。一定時間の後にオウギ診療所周辺で戦闘が発生するので、危険区域からの退避や交通制限が必要となります。そのタイミングは俺が知らせます。あと……この奉行所職員の半数が街長の一派ということでしたね。後で特定し縄をかけておくと、後の処理が早いかもしれない」

「……承知した」

「では、これにて失礼します」

 執務室は再び所長一人のみとなった。部下の中には情報をリークする者もいるため、迂闊に相談することもできない。しかし、奉行所の所長としてまだやるべきことがある。机上に短冊街の地図を拡げた。

 

 

 

 ナルコとサスコは一足先にオウギ診療所を目指した。曰く付きの診療所であっても普通の患者も数人おり、患者が途切れたところで潜入しようと診療所の側の背の高い木に身を潜める。

 二人は突如感じた気配にナルコはクナイを、サスコは草薙の刀を構える。

「……なんだ、綱手のばあちゃんとシズネの姉ちゃんか」

「お前たち……また変化の術か」

 外見はかなり違うが、チャクラの質と雰囲気と類似点も意外と多い。変化していないナルトとサスケの姿を見たことのない綱手にしてみれば三十路の男が年端もいかない少女に変化したようなものであり、どこからどう見ても可愛らしいくノ一であるナルコとサスコを前にしてその心境はとても複雑だった。

「話は後な。任務中なんだよ。ここに女子が監禁されてんだ」

 綱手とて、このオウギという女医には怪しさを感じており動向を気にしていた。女子誘拐事件と関連があると聞けば納得がいく。これまでも短冊街では神隠しのように、少女が姿を消すことがあった。それがここ最近、頻度が高くなっているような気がした。賭博場でもそのような噂が耳に入ってくるのだ。

「それでくノ一に……」

 二人が真剣にこの任務に向き合っていることはその眼差しを見てわかる。しかし、被害者が少女だと気を遣っているにしてもここまでやる必要はないのではないかと思わなくもないが、綱手はその言葉を飲み込んだ。

「……私も行こう」

「「は?!」」

「ついて行くだけさ。お前たちのお手並拝見といこうか」

「綱手様、私は……」

「お前はここに残れ」

「……はい」

 

 

 サスコの写輪眼をもってして潜入することは容易い。女医とその従業員は幻術をかけた上で拘束し、地下施設への扉の鍵も探すまでもなく土遁を応用し器用にピッキングしてのけた。

「よし、近くには誰もいねーみてえだ」

 チャクラが感知できたのは、少女たちが監禁されている場所のみ。

 地下に続く螺旋状の階段を降りて行く。

 

 少女たちのいる部屋の扉の隙間から、手のひら程度の小さな蛇が顔を出す。サスコのチャクラを感知し指示を受けるべく出てきたらしい。

「……サスケ様、大変お可愛らしいお姿でいらっしゃる」

 第一声がこれである。

 扉一枚越しに敵がいるのだから蛇の鳴き声のように小さい声だが、サスコの耳にはしっかりと届いている。今はそのような言葉遊びに付き合っている時ではなく、すぐに手信号を送ると蛇は再び扉の中へと消えた。そしてサスコは、必死に笑いを堪えているナルコと綱手を睨む。

「ぐあっ……」

「グッ……なん、だ」

ーーゴトッ

 扉越しに男の呻き声と倒れる音がし、再び蛇が扉の隙間から「どうぞ」と顔を出す。

 後になって騒がれては困ると、中で倒れている二人の男には幻術をかけ眠らせ、同じように拘束する。

 

 部屋の半分が牢で、もう半分は処置台となっている。処置台の上には六歳程の幼い少女が横たわっていた。生気のない目をしており、身体はガタガタと小刻みに震えている。両手は処置台に括られており、腕からは血液の入った細い管が伸び装置まで繋がっていた。

 細い管に薄らと見える赤いものに気づいた綱手の手が、小さく震える。

「管を抜けばいいんだろ?オレがやるってばよ」

 そう言って処置台の側に行こうとするナルトの腕を綱手が掴んだ。

「……いや、私がやる。直に触れるわけじゃないんだ。これくらいなら……」

 血液とはいえ直に触れるわけではない。装置を停止させ、少女の腕から針を抜けばいいだけだと自分に言い聞かせる。目の前に横たわる少女は素人目にもおそらく分かる程に衰弱しており、血色の悪い肌の色をしている。急を要するのは明らかで、医療忍術を身につけている者が対応した方が良いに決まっている。

 下忍になって経験も浅いだろうナルコとサスコが、少女たちを安心させるためだけにくノ一に変化するというある意味での捨て身ともいえる手段を選んだのだから、彼らよりも明らかに場数を踏んでいる者がこの状況に恐れをなしていてはどうすると、綱手は震える手を押さえ込んだ。

 

 そちらは綱手に任せ、ナルコとサスコは牢に近づく。

 親から離れて子どもたちだけで遊び始める六歳という年頃は、親の目が行き届かなくなる時期でもある。分かっていて狙っているのだろう。

 ヨリアキの娘二人は、三人の幼い少女たちを守るように肩を寄せ合っていた。

ーーギリ

 腑が煮え繰り返りそうだ。

 ナルコは俯いて大きく息を吐ききり、その場に膝を折った。

「怖かっただろ。もう、大丈夫だ。みんなで逃げるぞ」

 ナルコはニカッと笑ってみせる。

 雷の性質変化を加えたチャクラが草薙の刀の刃を覆う。上下二段の二薙ぎで鉄格子が抜け落ち、人が裕に出入りできる大きさの穴ができた。

「まだ安心するには早い。……蛇か蛙の口の中にしばらく隠れているか、自分の足で歩いて逃げるか。どちらか選べ。十秒だ」

「サスコ……」

 ナルコはじとりとサスコの顔を見上げるが、ただの美少女だった。言いたいことは色々あったが、あの頃のサスケであったならまずこのような変化の術にさえ応じてくれなかっただろうと、思いを馳せる。

 サスケがサスコに変化していなければ、アカデミー生の頃のように視線を集めて逃げるどころではなくなっていたかもしれない。応じてくれてよかった。

「ありがとうございます。あなた方は……忍だったんですね」

 ヨリアキの娘のうち一人、肩より上で切り揃えられた髪と意志の強さが伺えるぱっちりとした瞳が印象的な少女。立ち上がって小さな子たちにも声をかけ始めた。

「お姉さんたち、プリピュアみたい……」

 六歳くらいの少女が放った一言に、他の幼い二人もパッと顔を上げてナルコとサスコを見るとその暗く沈んでいた目が途端に輝いた。

「「「ピュアサンシャインとピュアムーンライト」」」

 ナルコもサスコも女児の父であったが故に、昔からあったというプリピュアについては知っている。里に入ってきたのは随分後になるが。だが、まさか少女たちに指さされそのようなことを言われよう日が来ようとは思うまい。

 そんなにキラキラしているか?とナルコとサスコは互いを見るが、もちろんキラキラはしていない。少女たちにフィルターがかかっているだけある。

「……それで、蛇か蛙の口の中か、歩いて逃げるか、決めたのか」

 好き好んで蛇や蛙の口の中を望む者はいないだろう。どういうわけか囚われていた少女たちのメンタルが回復したようで、無理に逆口寄せを使うこともなさそうだ。満場一致で自分の足で歩くことを選んだ。

 その一部始終を見ていた綱手は、なるほど、そういうことかと一人で自己完結していた。ナルコとサスコがこの状況を計算に入れていたわけでは全くないのだが。

「綱手のばあちゃん、その子はどうだ」

 綱手は少女に繋がれていた管を抜き、拘束具を外して抱き上げていた。

「かなり血が抜かれていて危険な状態だ。急いだ方がいい。お前たちが先行しな。私がこの子を抱いて最後に行こう」

「……よし、みんな、行くぞ。声は出さないようにな」

 少女たちはコクリと頷いた。

 




 シリアスな設定とギャグはかなり相性が悪いと身をもって学びましたが、捏造した設定があまりに闇深すぎるから色んなことで誤魔化しています。
(2026/5/14)加筆・修正

 次話執筆中です。敵キャラについて悩んでいるのでアンケートを設置しました。構成を練っているところなのでもう少しお時間をいただきます。
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