こちら、シスイとイタチがちゃんと忍をしている貴重な回となります。
短冊街では珍しい十階建てのビルの窓から街を見下ろし、カネモリは愉悦に浸っていた。肥えた豚のような顔と腹だが、それに合わせて仕立てた背広のお陰で幾分かはマシに見える。
馴染みの商家と口裏を合わせ、この街に古くから住まう住民の土地を買い叩き、大型の萬屋を建設。その工事につけても自身と所縁のある外部の業者に依頼した。食に欠かせない農作物や精肉に関しても、業者を選んで優先的に必要な情報を流すなどし、カネモリはこの街での権力を高めていった。
今や、カネモリへの袖の下なしにこの街で商いをするには相当な覚悟が必要だ。
さらにカネモリは、この国の大名の甥であるまどかエニシの庇護の下、幼い子どもを利用した闇の商売に手を出した上に規模を拡大しようとしていた。
執務室に音もなく、口元と首を黒い襟巻きのような布で覆った男、ノワキというカネモリに雇われている暗黒街の忍が現れた。
「奉行所に動きがあった。……街の外に通じる道は検問所が設けられている」
「無駄なことをするもんだ。ワシにはエニシ様がついている。慌てんでいい」
奉行所が動いたところで、短冊街の属する郡よりも上位の国には権力の中枢であるエニシがいるのだから、あったことでもなかったことにすることは造作もないと、カネモリはたかを括っていた。
「呑気なもんだな」
「誰だ!」
シスイはカネモリの問いに答えず、言葉を続ける。
ノワキはクナイを手にシスイを目掛けて距離を詰めるが、ゲンマ、ライドウ、イワシがそれを許さない。
「お前の悪事に関する書類を、出してもらおうか」
にっこりと笑うシスイの目には三つ巴の写輪眼が浮かんでいた。カネモリの身体がぐらりと揺れたが倒れる事はなく、のろのろと動きはじめる。
その青年よりも幼く見える二人の少年と一人の少女が現れ、ゲンマ、ライドウ、イワシがそれぞれ対峙するが、相手が若年故のやり辛さは否めない。
シスイの幻術を止めるべくノワキは再び接近を試みるが、カネモリから視線を外さずともまるで全ての動きを読んでいるかのようなシスイの体捌きにノワキは敵ながら舌を捲く。
「アンタ、名は。オレはノワキ」
「うちはシスイだ」
「生きてみるもんだな。うちはといえば……狂気の一族だと聞いたことがある」
一対一ならば迷わず逃げろ。二対一なら背後をとれ。今の状況は少なくとも一対一ではないだろうと、ノワキの目から戦意は消えない。
「狂気って……。俺は至ってマトモだよ。知らないところで酷い言われようだな」
忍界に語り継がれるうちはマダラの伝説がそう言わせるのだろうと、シスイは苦笑を浮かべる。
執務室は戦闘をするには狭く場所を変えたいところだが、カネモリがまだ隠し文書や裏帳簿のようなものを出している。
シスイの背に放たれた手裏剣が金属音と共に弾かれる。
「ここの職員は眠らせた」
気配もなく現れたイタチはシスイと背合わせとなり、顔も見ぬまま報告をする。
「よし。奉行所との連携は任せるよ」
「ああ」
イタチは机の上に置かれた書類や帳簿を手にし、姿を消した。ほぼ同時にカネモリの幻術が解かれると、操られながらも記憶は残っているため重要な書類を奪われたことに声を荒げた。
「何をやっている!里の忍ごときに手こずるとは!地下だ!地下に行くぞ!」
カネモリはその大きな図体を目一杯動かし走っていく。ノワキとその部下もカネモリが動けば着いていく他ない。ゲンマたちは後を追おうとするが、シスイが左手を上げてそれを制する。
「少し、泳がせようか。行き先は大体わかるしね。」