ToLOVEる ~ 生まれ変わった意味を探して~ 作:アイスが食べたいマン
「うっひょ───っ!ヤミちゃんまで我が校に転入!?これでいつでもペロペロし放題──」
「調子に乗らないでください、それに私は優斗に───あなたなんかに興味はありません」
変態をトランスで殴り飛ばし、部屋を出る。
少し前の自分なら、一人の地球人にペロペロしたり、ペロペロされたり、えっちぃ事をしたいなんてこんな事を考えなかった。
いつからか、過去を捨てて、新しい生活を…ずっと彼の隣に居たいと思った自分がいる。
───コードネームが金色の闇って言ってたから、ヤミさんが呼びやすいなって思って、ダメだったか?
ヤミ、彼がくれた地球での私の名前。
───どうだろう、ヤミさん地球に残らないか?
───この星の文化、食事、娯楽何でもいい、ヤミさんに見て感じて欲しいんだ
結城リトを殺しに来た私を倒して、地球に残らないかと提案したお人好し。
───そして友達を作って欲しい
───ともだち…ですか?
───あぁ、ヤミさん頼みがある、俺と友達になって欲しい
───あなたと?
───ダメかな?
───私と関わるとあなたは──
───不幸になんてならない、大丈夫だよ
初めて出来た友達───優斗との出会いで私の中の何かが変わった、そして私は思い出した、大切な物──人の心を。
───ヤミさんは友達だからね、もう誰のことも君には殺させない
優斗と出会ってから、私は誰も殺していない。それ所か″美柑″という大切な友達もできた。
───ヤミさん、人を傷つける力は使い方次第で、人を救う力にもなる
───…使い方次第ですか?
───そうだよ、だから、今度はその力で誰かを救ってあげるんだ、ヤミさんにしか救えない人が必ずいるから
───ヤミさんなら、きっと出来るよ
優斗は人を傷つけることしか使い道がなかったこの力を、誰かを救う為に使えると教えてくれた。
───こんな平和な星に住んでいるあなたには分からないでしょうね、たった一人でこの宇宙を生きる孤独など…
───わかるよ、一人は寂しいよな
───あなたになにが─────
───君は大切な人を自分の手で殺した事はある?
───…一体何を
───俺はあるよ、最悪な気分だった、時間が経った今も尚、俺はその夢を見る
そんな優しい優斗は誰よりも辛い過去を持っていた。
…優斗にとって大切な人達が全員死んでも彼はたった一人で、最後まで孤独に戦った。
前世の話を聞いて、私は一人で全てを抱え込んで戦う優斗を守りたいと思った。
そして私の中で優斗はいつの間にか、友達から大切な人に変わっていた。
いや、きっと友達になったあの時から、私は優斗の隣に居たいと思っていたんだ。
だって私は優斗の事が───
───君の本質は闇…殺戮以外に生きる価値のない存在…地球人と仲良くできるはずが
私にはそんな資格、あるはずないのに…
優斗が私から離れてしまうと考えてしまうと…涙が出そうになってしまう。
(…胸が痛い…張り裂けそうな程に…私にとって優斗は…こんなにも大きい存在だったんですね)
「こんにちは、ヤミ″お姉ちゃん″」
「!?…お姉ちゃん?」
優斗の事を考えていて話しかけられるまで気づかなかった。
私をお姉ちゃんと言った相手を見ると、赤い髪の女子生徒が私を見ていた。
「うん、マスターから聞いてるよ?あなたは私のたった一人の家族なんだって…だから───」
彼女の三つ編みが徐々に刃へと形を変えていく。
「結城リトせんぱいの″抹殺″のお仕事がうまくゆくように、私が応援してあげる♫」
トランス…!!なぜ彼女が!?
「家族なら当然だよね…素敵♡」
光の灯っていない目が私を貫いた。
◇
「おーっす、メア!なんか嬉しそうだなァ、いい事でもあったか?」
「うん、ちょっとね♡」
私を姉と言ってきた少女…黒咲メア話はプリンセスナナと教室で話している。
…こうして見ると、周りにいる生徒と何も変わりませんね。
「そっか~!ところでさ!クラスの奴から聞いたんだけど、メアも転校生だったってホントか?」
「うん、二週間くらい前にね…わたし、お友達作るの苦手だから、あんまりクラスになじめなくて、だからナナちゃんが初めてのお友達なの♡」
黒咲メアが転校してきたのは、二週間くらい前…ちょうど優斗が連れ去られた時と被りますね。
「そ…そっか?なんかテレるな…あたしも地球の知り合いは姉上の友達ばっかりだからさ、ちゃんとした友達はメアが初めてだよ」
黒咲メアは私と同じ…第6次銀河対戦末期に創り出された生体兵器。
───私の…家族?
───うん、そうだよ
───私はヤミお姉ちゃんの開発データを元に造られたんだもん
黒咲メアの言葉を思い出す、笑ってはいたが彼女の瞳に写し出されていた物は真っ暗な闇。
…まるで…優斗と出会う前の私のような。
───このトランス能力が何よりの証拠でしょ?
───私も手伝うから頑張って結城リトせんぱいを抹殺しよ♡そして宇宙へ帰ろうよ
───そうすれば…マスターもきっと喜ぶよ
黒咲メアの話を信じるなら″マスター″という人物が黒幕…何者…?
私を作り出したエデンはクロによって潰された、けれど…
───忘れちゃったか~私は悲しいよ?″創造者″のことを忘れちゃうなんて~
クラウンだけは生きていた。
───今の君には興味がないんだ~早く″あれを″使いこなせるようになってね?
クラウンの目的は私だ、でもクラウンがマスターなら、黒幕が話した時、優斗の名前を聞いた理由がわからない。
…まさか、まだ生き残りがいた?
何にしても、まだ情報が少ない、黒咲メアはしばらく泳がせて様子を見るしか……
(あの二人のようには、なれそうもないな……)
頭の中で思い浮かべたのは、美柑と結城リト。
きっと私達は、あの二人の様にはなれない、どちらかと言えば…
優斗の前世で桐生夏海が優斗を殺したように…私達のどちらかが…
「ヤミさんっ!!」
「オ…オレ、本読むの大好きなんだ!友達になろうよ」
「たいやき好きなんだよね!オレ、たいやきに似てると思わない!?」
三人の男子生徒が下心丸出しのいやらしい目で私を見てくる。
優斗ならこんな目をしない…誰よりも真っ直ぐで…優しくて…真剣な目をする。
私は髪をトランスで手に変えて三人の男子生徒に向かって″しっしっ″と追い払う仕草をする、男子生徒達は落ち込みながら、その場を去った。
「…転入早々モテモテですね、ヤミさん♡」
「……転入早々モテモテなのはあなたでしょう、プリンセスモモ」
「あら、私は優斗さん以外の殿方に興味はありませんので♫」
プリンセスモモは不敵な笑みを浮かべて私に声をかけてきた。
「…その後″誰かさん″から何かアプローチはありましたか?」
「……」
「何か力になれる事があれば言ってくださいね♡」
プリンセスモモは顔を近づけて耳元で囁苦。
「これでも銀河を統べるデビルークの第3王女、先頭に限らず情報収集などでもお役に立てるかも…」
「頼もしい話ですが…プリンセスモモ、私はまだそこまであなたを信用していないので」
私の言葉を聞いたプリンセスモモは″かはっ″と何が刺さった様な声を出しながら後ずさる。
「…そんな事、言っていいんですか?例の件だってあるのに…」
「っ!あなた、まさか本気で言っていたのですか?」
「…もちろん、成功すれば″皆さん″で一緒に″幸せ″になる事ができますから」
プリンセスモモは私の耳に近づいて周りには、聞こえないように小さな声で囁いた後、作った様な笑顔で私を見た。
…プリンセスモモ、あなたは本気でやるつもりですか?
~回想~
昨日の夜、優斗のベッドにこっそり潜り込む為、私は美柑と優斗の部屋のドアノブに手をかける。
「…鍵、閉められてるね、ヤミさん」
「…大丈夫です、この程度簡単にこじ開けられます」
トランスを使って扉の隙間に入り込み、優斗部屋から鍵をこじ開けて、扉を開けると優斗が寝ているベッドに先客がいた。
「っ──────」
「…ちゅく…くちゅっ…ちゅぱ…はっ…あら?」
優斗の耳をえっちぃ音を立てながら舐めている、変態───全裸姿のプリンセスモモがいた。
「何してるの?モモさん」
「見て分かりませんか、美柑さん」
「あなたは本当に変態ですね、プリンセスモモ、いい加減優斗から離れてください」
私がトランスで手を作り、プリンセスモモを掴もうと髪を伸ばす。
「お2人もご一緒にいかかですか?」
「「…は?」」
「反対側が空いてますよ?」
プリンセスモモは私達を誘導する様に手招きする。
プリンセスモモ、あなたは一体何を考えているのですか?
「…何考えてるの?モモさん」
「何も考えていませんよ?」
「…嘘ですね」
私は全裸のプリンセスモモを掴み上げる。
何を企んでいるか知りませんが、優斗が起きる前に追い出した方がいいですね。
「…美柑、先に優斗と寝ていてください、私はこの変態を庭に埋めてきます」
「わかった、早くおいでね、ヤミさん」
「すぐ行きますよ」
私は掴んでいたプリンセスモモと一緒に部屋を出る、階段を降りてリビングに行き、庭に出ようと窓を開けようとするとプリンセスモモは″フフフ…チャンスだわ″と小さく呟いた。
「何がチャンスだか知りませんが、あなたは───」
「ヤミさん、皆さんで優斗さんに愛されませんか?」
「…本当に頭でも打ちましたか?プリンセスモモ」
…なんなんですか、あなたは昨日からおかしい事ばかり言っていますよ?
───…ヤミさん、私と友達になって一緒に優斗さんに愛されませんか?
そういえば、昨日も似たような事を言っていましたが、少し前までのあなたなら、こんな事はせず、一人で独占しようとしていたはず…
「ヤミさん、私は優斗さんのハーレムを作ろうと思っています」
「…は?」
プリンセスモモから言われた言葉に私は固まってしまった、その隙にプリンセスモモは私の拘束から抜け出して私に近づいてくる。
「優斗さんに好意を寄せている女性全員で一緒に幸せになる、素晴らしいことだと思いませんか?」
「…正気ですか?そんな事できるはずが───」
「なら、優斗さんに恋人ができたら、優斗さんの事…諦められるのですか?」
「それは…」
諦められるはず…ない…私は優斗を諦める事が出来ない。
張り裂けそうになる胸を抑えながら、近づいてくるプリンセスモモを見ると、彼女は私を見て不敵な笑みを浮かべていた。
「…美柑さんと共闘するくらいですから、諦められる訳ないですよね?」
「…っ!」
一瞬、狼狽えた私の反応を見たプリンセスモモは″ビンゴ″と呟いた。
…っ!鎌をかけられた………今のは反応するべきではなかったですね
「やっぱり、ヤミさんは美柑さんと共闘して優斗さんを一緒に手に入れようとしていた」
「………」
「優斗さんがハーレムを作れば、美柑さんと一緒に優斗さんの傍でずっと笑う事ができるんですよ?」
…優斗がハーレムを作れば、美柑とずっと一緒にいる事ができる…とても魅力的な提案ですね…ですが。
「美柑さんとじゃなくて、皆さんと一緒に優斗さんを手に入れるという話に変わるだけですよ?」
「…皆と一緒ですか…優斗はこの事を知っているのですか?」
「優斗さんも知っていますよ」
「優斗は賛同しましたか?」
優斗がハーレムに賛同していなければ、プリンセスモモがやろうとしている事は、優斗の意思を無視する事になる…
「…はい、賛同しましたよ」
「嘘ですね」
賛同したか聞いた時、プリンセスモモは一瞬歪んだ、それはつまり、優斗はこの事を拒んでいるということ…
「…論外ですね、優斗が賛同していないのにできるわけありませんよ」
「………」
「もし、私が優斗の事を諦めてることで、優斗が幸せになれるなら、私は優斗の事を諦めます」
私は嘘をついている、優斗の事を絶対に諦める事ができず…忘れる事も出来ず…ずっと泣き続けてしまうのに…
「その必要はありませんよ、私が優斗さんの考えを必ず変えてみせます」
「…え?」
「だから、考えておいてください」
「一体どうするつもりで───」
「それとこの事はまだヤミさんにしかお話していませんのでご内密でお願いしますね♡」
プリンセスモモはそう言って優斗の部屋に戻っていく。
「っ!あなたはどこに行くつもりですか!」
「優斗さんの部屋ですよ?」
その後、これ以上騒ぐと優斗が起きてしまうという事で、いつの間に優斗の部屋に来ていた、プリンセスナナも含めて、4人で優斗に抱きついて寝ることになった。
~ヤミside~
甘い理想を見てしまう、もし優斗がずっと居られたて、恋人同士になる事が出来たらと…プリンセスモモの言った様に優斗がハーレムを作ればそれも現実になる。
「私は諦めませんよ、必ず優斗さんのハーレムを創ってみせます♡」
プリンセスモモは″ちゃんと考えておいてくださいね?″と言うと満足した様に自分の席へと戻って行った。
~メアside~
「おい見ろよ、モモちゃんがヤミちゃんと話してるぜ」
「きっと人見知りのヤミちゃんを気遣ってんだよ」
「優しいなーモモちゃん♡」
「清純で可憐でいかにもお姫様ってカンジだし♡」
ヤミお姉ちゃんとモモちゃんが話しているのを見た周りのクラスメイトたちが騒いでいる。
モモちゃんはクラスの子に人気だからなぁ、ちょっと大変そう
「けっ、なーにが清純で可憐だよ、みんなモモの本性知ったらぶったまげるぞ」
「そーなの?」
「ああ!基本的に猫かぶってるからな、アイツ。いいコちゃんのフリして裏では色んな事考えてるんだ」
ナナちゃんは人差し指を立てながら″メアも気をつけろよ!″と言うと溜息を着いた。
「へ──っさすがよくわかってるんだぁ、モモちゃんの事」
「そりゃ双子の姉妹で、ずーっと一緒にいるワケだしな」
姉妹……ずっと一緒……
「…素敵ね!」
「?」
もし、結城リトせんぱいをヤミお姉ちゃんが殺せば、ヤミお姉ちゃんとずっと一緒に居られる、そうなったらとっても素敵…
───だがその前に一人厄介な男がいる
「あ…そうだ!そういえば、ナナちゃん達は時雨優斗せんぱいの家に居候してるんだよね?」
「え?あーよく知ってるな、そうだよ」
時雨優斗、マスターに楯突いて、ヤミお姉ちゃんに牙を抜き、温い生活を与えた地球人…
「時雨優斗せんぱいって…どんなひと?」
マスターに調べておけって言われたんだった。
「…お人好し……初めて会ったあたし達の事を命懸けで守ってくれるくらいの……あたし達が急に優斗の家に居候したいって言っても…暖かく迎えてくれた優しいヤツ…」
「へっ?ナナちゃん?」
時雨優斗せんぱいについて聞いた瞬間、ナナちゃんは顔を赤くして話し続ける。
「でも…辛い過去背負ってたり、誰かを助けるために無茶したりして、身体も心もボロボロになって…それでも誰かを助ける為に立ち上がって、ユウトは戦い続ける……宇宙一のお人好しだよ…」
最後の方は少し悲しそうな表情を浮かべて、拳を握りしめるナナちゃん。
「お人好し…」
「…だからみんな、ユウトを気に入ってる…あたしも…ユウトが………」
ナナちゃんは顔を赤く染め上げ、俯いてしまう。
身体も少しプルプル震えてる気がするけど、どうしたんだろ?
「…す…す……す…す」
「す?」
「…っ!なんでもない!!」
顔を真っ赤にしたナナちゃんは席に戻っちゃった。
″す″の後何を言いたかったんだろ?
ナナちゃんが席に戻った後、私は2年Aクラスの教室へ向かっていた。
お人好し…優しいヤツ…辛い過去を背負ってる…うーん、イマイチよく分からないなぁ…やっぱり本人に会ってみるのがイチバンかな。
時雨優斗せんぱい…ヤミお姉ちゃんを倒した実力者。
どんな相手なのか、もっとよく、知っておかなきゃ…もしかしたら、ヤミお姉ちゃんをめぐって戦うかもしれないし…
それに時雨優斗せんぱいは結城リトせんぱいと同じクラス、ヤミお姉ちゃんのターゲットである結城リト先輩の事も知るチャンス。
そう思いながら、私は2年Aの教室を覗くが、そこには時雨せんぱいも結城先輩の姿はない。
(時雨せんぱいと結城先輩は…いないのかな)
「……どうかしたの?」
2年Aの教室を見ているとショートヘアで前髪をピンで止めたせんぱい?に話しかけられた。
「あ…時雨優斗せんぱいと結城リトせんぱいに用があって…」
「結城くんと時雨くんなら、さっき屋上の方に行くのを見たけど…」
「屋上ですね!?ありがとうございましたぁせんぱい!」
時雨せんぱいと結城先輩は二人とも屋上にいるんだぁ…せんぱい達を知るチャンスかも…
私は名前も知らないせんぱいにお礼を言って走って屋上へ向かった。
「──────」
「──────」
屋上の扉を少し開けて様子を伺うと、時雨せんぱいと結城せんぱいは二人で何かを話していて上手く会話が聞き取れない。
上手く聞き取れないや、何の話をしてるのかなぁ。
「…プール…で…ラに…告白…」
プール?告白?なんの事だろ…それにしても今話してる結城リトせんぱいの隣にいるあの黒髪の人が時雨せんぱい?あの人がホントにヤミお姉ちゃんを倒したの?そんなに強くなさそうだけど…だって今なら簡単に殺せちゃう…
「…誰だ」
「…っ!?」
…え?ウソ!?バレちゃった?いやまさかそんなわけ…
ほんの一瞬、私が殺気を出しただけで時雨せんぱいは私が隠れてた屋上の扉に向かって殺気を放つ
「優斗?どうしたんだよ」
「…誰かは知らないが、扉の後ろにいるのはわかってる」
「…バレちゃった」
隠れて覗くのを諦めた私はせんぱい達の前に姿を現した。
こんな…おぞましくて素敵な殺気初めて…素敵♡
~優斗side~
リトと屋上で話していると一瞬屋上の扉から、誰かが俺に殺気を向けられたのに気づいて、声をかけて扉に向けて殺気を放つ。
俺の言葉に諦めたように出てきたのは、三つ編みをした赤毛の少女だった。
「…素敵な殺気…ゾクゾクしちゃう…素敵♡」
…まさか、この子は殺気を向けられて喜んでいるのか?
「…一応聞いておくけど、リト、お前の知り合いか?」
「いや知らねーけど…」
隣に居たリトに確認するがどうやら知らないらしい。
そうなるとこの子は一体…この前、猿山達を操っていた黒幕か…?
裏で猿山達を操っていたヤツがこんな簡単に姿を表すか?
「あなたが時雨優斗せんぱい?」
「…そうだ…君は?」
「黒咲メア、ヨロシクね、時雨せんぱい」
黒咲さんはそう言うと、俺とリトに向かってゆっくり近づいてくる。
口元は笑みを浮かべているが、目は真っ黒で何も映していない。
「…リト、逃げろ」
「逃げろって…ただの女の子だろ?」
「…ただの女の子はこんな殺気は飛───っ!?」
リトに話しかけている途中で黒咲さんは目の前から姿を消す、後ろから気配がして背後を向くと、黒咲さんにいつの間にか背後に回られていた。
「…っ!」
「わっ今の反応できるんだぁ!」
黒咲さんは俺に向かって拳で殴りかかってくるが、俺はそれを躱して腕を掴む。
「リト!早く行け!」
「いや!でも…」
「いいから早く───」
「…ちょーどいいや、時雨せんぱいがどんなヒトなのか見せてよ」
黒咲さんはそう言うと長い三つ編みの髪先が俺の額へと当てられる。
「…なに?」
その瞬間、俺の意識は意識を失うように目を閉じた。
◇
「…何?」
目を覚ますと周りには懐かしい場所が広がっていた。
「ここは軍事施設の訓練所か?」
約17年ぶりに見たこの場所は生前の俺が訓練していた場所と何も変わっていなかった。
「…へぇ、これが時雨せんぱいの精神世界なんだぁ」
「なぜ君がここに居る?」
後ろを振り返ると面白い物を見たと言わんばかりに笑顔で俺を見る黒咲さんの姿があった。
「それはね、時雨せんぱい、私達の心が今繋がっているからなんだよ?」
「…心が繋がっているだと?」
「そんな事より時雨せんぱい、その格好なぁに?」
黒咲さんに言われた俺は自分の姿を見る、黒い迷彩服に腰には刀と銃のホルスター、ポケットにはスマートフォンが入っていた。
「格好だけじゃないよね?身体も成長してるみたいだし…」
「…っ!?」
「教えて♡せんぱい」
一瞬で俺の前に近づいてきた黒咲さんは再び俺に抱きついてくる。
『絶体絶命だね?優斗』
『輝、笑ってる場合か?』
…とある任務で大人数の敵に過去囲まれていた時の…
『背中を合わせよう!反対側は任せたよ、親友!』
『…お前もしくじるなよ?相棒!』
お互いに背中を合わせて戦い、俺は刀を刃を振るって、輝が銃で敵を致命傷を避けながら無力化する。
『…さすがにきついね』
『………』
この時は確か数に押されていた、輝の弾薬も尽きかけ、俺の体力もなくなってきていた。
『お待たせしましたっす!』
そんな時に声と共にこちらへ向かってくる一機の戦闘ヘリ、そこから聞こえてきたのは駿の声。
『上空から戦闘ヘリでお届けっすよ!援護は自分がやるんで任せてくださいっす!!』
『頼もしい後輩だね、優斗』
『…そうだな』
なんでこの記憶が…まさか…
『優斗、包丁はこうやって持ってね』
『…こう?』
『そう!そのまま食べ物を抑える手は猫の手で…』
優華さんとの料理の記憶…
『今日は寝かせません、覚悟してください』
『ビーチの時の罰も残ってるから、泣き叫んでも、やめないよ、優兄?』
美柑とヤミに襲われた時の記憶…
『創りましょう…!優斗さんの″ハーレム″を!私がお手伝いしますから♡』
『見ないでもらってもいいですか…いやだからって触ろうとしな…まって、まさか咥えようとしてるの?やめ…ちょっ!マジでやめて!』
『優斗さんがその気になれば全員とえっちな事もできますよ?チュッ』
つい最近モモに言われたハーレム計画の記憶…黒咲さんに見られてるのか?
………悪いけど、これ以上君には俺の記憶は見せられない。
俺はこの世界から抜け出すように閉じるように目を閉じる。
『貴方の名前は…朝比奈桜よ…あの人を振り向かせる為にその名前をつけたの…』
…?なんだ?今の…″今の記憶を俺は知らない″
意識を現実に戻す直前で俺は、一瞬だけ知らない記憶を見た気がした。
◇
「うわっ」
「…勝手に人の記憶を見るな」
再び目を覚ますとそこは学校の屋上だった、周りを見渡すとリトは居らず、俺から距離を取った黒咲さんは俺を見て驚愕していた。
…逃げられたみたいだな、リト。
「ウソ、まさか、時雨せんぱいの精神世界から締め出されたの?」
″そんなのありえない″と狼狽えながら、俺を見る黒咲さん。
…今の能力は一体なんだ?それに最後に見た記憶は一体…
「…大したものですね…第2世代のトランス能力、生体との物流号、精神の接続まで可能とは…まあ、優斗には締め出されてしまったようですが…」
「ヤミお姉ちゃん!?」
髪をトランスで刃変えてたヤミが隣に立っていた。
第2世代のトランス能力だと…つまり黒咲さんも月城に…
「一つ忠告しておきます、優斗と結城リトに手を出したら、私はあなたを敵と見なします」
「素敵な目…♡」
ヤミは黒咲さんに殺気を放つ、さっきを放たれた黒咲さんはヤミの目を見て、目を輝かせながら笑っていた。
「…大丈夫だよ、ヤミお姉ちゃんのターゲットを取ったりしないって♫マスターにも怒られちゃうしね」
「………」
「でも、面白いものが見れたなぁ、時雨せんぱい?」
黒咲さんは俺を見て言う。
「せんぱいってこの世界の人じゃないんだね♡」
「………」
「それと…ヤミお姉ちゃんみたいに、私も時雨せんぱいをぺろぺろしてみたいなぁ!今度私にもやらせて!」
「…させると思いますか?」
ヤミは俺を前に守るように前に立つと先程よりも凄まじい殺気を黒咲さんに向かって放った。
「…素敵、ヤミお姉ちゃんがそんなになるまで…」
「………」
「今日はこの辺にしておくね、ヤミお姉ちゃん。今度は最後まで″記憶″を見せてくださいね?時雨せんぱい♡」
黒咲さんはそう言って屋上を後にした。
「…どこまで見られたのですか?」
「…分からない、でも全部は見られてないよ…」
ヤミは″寄りによってなぜその記憶を…″と小声で呟いた。
「優斗!」
「優斗さん!お怪我はありませんか!!」
屋上の扉が勢いよく開き、リトとモモが屋上へ入ってきた。
リトは逃げずに助けを呼んだのか…
「怪我もないから大丈夫だよ、モモ」
「一応、ワイシャツを脱いで見せてください!」
「…絶対やだ」
ヤミとモモの前で上裸になったら、そのまま君達、俺を襲うでしょ。
俺がこの場をどうするか考えていると、ヤミが上手いこと説明をしてくれたお陰でその場は収まった。
リトとモモが教室に戻った後、ヤミから黒咲さんの事はまだ誰にも言わないで欲しいと言われた為、誰にも話すことなくその日が終わった。
誤字報告ありがとうございます。とても助かります。
感想やお気に入りも励みになります。ありがとうございます。