ToLOVEる ~ 生まれ変わった意味を探して~ 作:アイスが食べたいマン
九条先輩との稽古から二日後の月曜日の休み時間。
先生に頼まれた手伝いを終わらせて、保健室に行く為に中庭近くを歩いていた。
「はい!直ったよナナ♫」
「わ───!ありがと、姉上!!」
中庭のベンチから聞き覚えのある声が聞こえてくる。
俺が声の方向へ歩いていくと、ララさんとナナとモモの三人がデダイヤルを持って何かを話していた。
「何してるの?」
「あ…優斗さん、ナナのデダイヤルの調子が悪いのでお姉様に診てもらってたんです」
ララさんから直ったデダイヤルを受け取ったナナは、嬉しそうにデダイヤルを眺めていた。
「えへへゴメンね、姉上の休み時間つぶしちゃって」
「いいって、いいって」
「ナナったら、メカの扱いが荒すぎなのよ、昔から玩具とかもすぐ壊しちゃうタイプだったものね…少しは大人になって欲しいものだわ」
「む…胸を見ながら言うな───!!」
「あら、そんなつもりはないんだけど?」
胸を見ながら言うモモに向かってナナが叫ぶ、モモの前で腕を組んで笑顔を浮かべる。
…モモ…絶対そんなつもりあったでしょ、勝ち誇った顔してるよ?
「いーや、絶対あたしをバカにしてた!!」
「えっとナナ!」
二人が喧嘩になりそうになったタイミングでララさんが声をかける。
「私ね!ナナにいいもの作ったの!」
「え?」
「コレ!ぱいぱいアップくん!!」
ララさんのデダイヤルから出てきたのは紫色のスライムような見た目をした発明品。
名前からして何が起こるかわかる発明品だな。
「ぱいぱい?」
「そ!まだ試作品なんだけど、ちょっと試してみて」
ララさんに言われてナナがぱいぱいアップくんを使用すると″シュー…″っと音を立て″ボワン″と煙を出してナナとモモを包み込む。
…これ、なんかモモまで巻き込まれてないか?
「姉上…これは一体…!?」
「…え?」
ナナがそう言った瞬間、胸が″ポヨン″と音を出して膨らんだ。
「あっあたしの胸が!!」
「膨らんだ…」
「大成功!!」
「うわあああ!すっすごいよ!!姉上───!!」
「ふふっナナ、おっぱいの事気にしてたもんね」
自分の胸を触りながら大喜びナナにララさんが優しく微笑む。
女性は胸の大きさをかなり気にしているみたいで、以前から美柑やナナは御門先生や唯の胸を見て″私だって″と羨ましがっていたくらいだ。
だからこそ胸が大きくなったナナは相当嬉しかったんだろうな…
「ユウト!!ホンモノだぞ!!」
「ちょっナナ!?」
ナナは俺の左手を掴み胸へと押し付ける、俺の左手にとても柔らかい胸の感触が伝わってくる。
「んっ…ユウトに胸を揉まれる…夢じゃない…」
「そんな事しなくてもわかってるから大丈───」
「…ユウト、あたしの胸もっと揉んでいいんだぞ?」
「いや本当に何言ってんの!?」
胸が大きくなって何かのストッパーがぶっ壊れたナナは俺の右手も掴み胸へ押し付ける。
まて!?この感触…ナナはまさか、下着つけてないのか?
俺の両手に胸にあたる微かな突起…恐らくナナは下着をつけていない…それにナナ目がいつもと違ってなんかおかしい…
「嬉しそうだねーナナ!」
「いやララさん、止めてくれない?このままだと色々と…」
「お…お姉様!!」
「ん?」
俺がララさんに助けを求めているとモモの焦っているような悲鳴に近い声が聞こえてくる。
「わ…わわ…わたっ…私の胸がっ…無いんですけど…」
モモを見るといつもあった胸がなくぺたんこになっていた。
…もしかして、この発明品は小さい胸は大きくできるが、大きい胸は小さくするのか?
「モモがぺったんこに!?」
「あ…あれ!?」
驚いたナナは俺の手を離してモモへと方へと近づいていく。
…正直モモの方に気が向いて助かった、ナナがあのまま暴走していたら、学校の中庭で俺は襲われて大変な事になっていたかもしれない。
「ゴ…ゴメンね、モモ、なんか効き目が安定しないみたい…」
「……」
モモは何かを想像して涙目になりながら、俯いて小刻みに震えだす。
「…モモ、大丈夫?」
「私は胸だけじゃないです!優斗さん!!アソコだって気持ちいいですから!もっと可愛い声を出して興奮してください!!」
「いやまて、本当に大丈夫?てかモモの中の俺はどうなってるの!?」
胸を抑えながら叫ぶモモ。
頼むから中庭でそんなこと言いながら叫ばないで欲しい、てかモモの想像の中で俺はどうなっている?何されてるの?
「あはは!どうやらあたしの方が胸が大きくなる素質があったみたいだなぁ~♫まっ、気にする事ないって!ペタンコでも♡」
ナナが日頃の恨みと言わんばかりにモモを煽っていると二人の胸から″プシュゥゥゥ″″ポヨン″と音が鳴る。
「あ…あたしの胸がつぶれた───!!」
「あれーもう効き目が切れちゃった?やっぱ、まだまだ研究が必要だね」
「そ…そそ…そんな…」
「そうね…少しだけあなたの気持ちがわかったわ」
さっき程の仕返しと言わんばかりに″ホホホ…″と笑みを浮かべるモモにナナは″チクショ───″と声をあげる。
二人とも胸の大きさなんて気にならないくらい魅力があるのに何故そこまで胸にこだわるんだか…
「もう!未完成なメカなんか使わせないでよ、姉上───!!」
「あはは、ゴメンね───」
ナナは涙目を浮かべながらララさんに向かって叫ぶ。
そんなナナを見ていた瞬間、何故か俺の身体はナナの元へと勝手に動いていた。
「胸の大きさなんて気にしないよ、ナナ」
「でも…あたしの胸ぺったんこだぞ!?」
「ナナは今のままでもずっと魅力的だよ」
「なっ!?」
「ツンツンしてる時もあるけど…実は誰よりも優しくて…動物と心を通わせて…姉妹や友達想いで…実は甘えん坊…そこがナナの魅力でしょ」
「な…な…なっ!?」
俺はナナの頭を撫でると顔を真っ赤にさせたナナの頭からプシューっと湯気が出てくる。
「…あ…あ…あたしっ!ノート買ってくるっ!!」
叫びながら、ナナは見えないぐらい早く走って購買の方へと姿を消した。
…見えなかったぞ?今の俺の突きより早いんじゃ…
「…ナナばっかり…ずるい……でも、これは…良い兆しかもしれないわ」
この時の俺は気づかなかった、モモが俺とナナを見て嫉妬していると同時に何かを呟き密かに笑っていた事に。
◇
「へーえ、なかなか面白いもの作るわねェ、ララさんは」
中庭のおっぱい事件の後、俺とモモはセリーヌに会いに保険室へ立ち寄っていた。
「ホントにもぅ…すみません優斗さん、お見苦しい所を」
「別に気にしてないし、見苦しいとも思ってないよ」
俺には仲のいい姉妹が平和な日常を過ごしているようにしか見えなかった、それにきっとデビルークでは、あれが当たり前の日常だったんだはずだ。
「お二人とも紅茶入りました~」
「村雨さん、わざわざありがとうね」
「ありがとうございます!お静さん」
俺とモモは村雨さんからティーカップを受け取り、紅茶を飲む。
「美味しい」
「確かに、凄い美味しい」
「えへへ、御門先生の教育の賜物です~」
そうか、村雨さんは確か御門先生の家で助手をしてるんだったな、そこで紅茶の入れ方も教わったのか。
「でもララさんって本当、発明好きなんですねぇ、小さい頃からあんな感じなんですか?」
「そうですね、私が物心ついた時にはもう─── …」
ナナとモモが小さい頃に喧嘩をしていた時、よくララさんのメカが暴走してしまったらしい。
その暴走を止める為にナナとモモは二人で手を合わせて何度も止めていたとか…
最終的にメカを暴走させたララさんは、ザスティンさんに怒られたとか。
「とまぁ…こんな事が日常茶飯事で……」
「今人あんまり変わらないですね♫」
「子供のまま、大きくなったような人ですから…」
喧嘩をしていたタイミングに暴走ね…本当にただ暴走しただけなのか…
俺にはナナとモモを仲直りさせて、ザスティンが自ララさんだけが怒られるように立ち回っている様に聞こえるけどな。
「あ!モモちゃんにせんぱい、ここに居たんだぁ!ねーねーナナちゃん知らない?」
「ナナなら、ノートを買いに購買部へ行きましたよ」
ひょこっと保健室の外から顔を覗かせた黒咲さんはモモの言葉を聞くと″そっかありがと♫″と言って購買部へ行こうとする前に御門先生の方へ視線を向けた。
「…あなたがドクターミカドね、素敵♡」
「……」
「彼女が例の黒咲芽亜、自称ヤミちゃんの妹ね…」
「はい…御門先生、彼女について何かわかりましたか?」
「私も闇医者としてそれなりのネットワークは持ってるつもりなんだけどね、ヤミちゃんの居た組織が何年も前に壊滅しているせいで調べようにもとっかかりが無くて」
「仮に組織のメンバーが生きているとすれば、月城が生かしておくとは思えない」
月城はケイズや天野風磨を殺したように組織のメンバーが生きていれば殺しに行くはず。
「ティアーユさえ、見つかればね…」
「え?」
「いえ…何でもないわ、私の方でも調べを進めてみるから、引き継ぎよろしくね、ヤミちゃんの事…」
「言われなくてもわかってますよ」
俺が御門先生にそう言うと″優斗さんそろそろ授業が始まりますよ?″と言って俺の手を掴む。
「優斗くん、少し話があるから残ってくれないかしら?」
「良いですよ」
「え?なら、私も…」
「モモさん!授業が始まりますよ!行きましょう!!」
「え?ちょっとお静さん!?押さないで───」
「優斗さん、御門先生とお二人でごゆっくり!!」
一緒に残ろうとしたモモの背中を村雨さんが押して二人は保健室から廊下へと出ていく。
用事が終わればすぐに教室へ戻るからゆっくりも何も無いんだが…
「話っていうのはこの前約束したデートの事ですか?」
「そうよ、次の休みの日″夜″もしっかり空けておいて?」
「時間と場所は?」
「パチ公前の広場に朝の9時に来てちょうだい」
「わかりました、パチ公前の広場ですね」
パチ公前…結構気合いが入れているな、それに夜までいるのか。
「プランは全部考えたから、貴方は来るだけでいいわ」
「プランまで考えてもらってすみません」
「ふふふっ…いいのよ、だって私の為だもの…」
御門先生が微笑みながら俺を見る、なんか企んでいそうで少し怖くなってきた。
「…今日は襲わないんですね」
「期待してたの?」
「いや、最近は保健室に来た時、襲われていた記憶しかないので…」
「楽しみは後に取っておこうと思ったのよ、ワインだっては寝かせておいた方が美味しいでしょ?」
「…ワインはそうですけど…」
まさか、御門先生はデートの日に俺の貞操を美味しく平らげる、なんて事考えてないよな?
そんな事を考えていると休み時間の終わりを告げる、予鈴が鳴り響く。
「早く戻った方がいいんじゃない?優斗くん」
「…そうですね」
俺は保健室から出て教室に向かおうと廊下を走り出した時、後ろから御門先生に声をかけられた。
「優斗くん″デート″楽しみにしているわね」
御門先生の顔はまるで獲物を見るような目で俺を見ていた気がした。
◇
授業が終わり、放課後。
今日は結城家で皆で夜ご飯を食べる約束をしていた為、骨皮先生から頼まれた花壇の草むしりを早めに終わらせて昇降口に向かっていた。
「リト、どうした?」
「…優斗」
昇降口の前でCDの様な物を持っているリトに話しかける。
教室にいるまでは普通だったが、何かあったのか?
「…どうした?何かあったのか?」
「…それが」
リトから話を聞くと、どうやら俺が九条先輩と稽古をしていた日にルンさんとデートをしたらしい。
セッティングをしたのはモモで何故かナナやメアやヤミも影からついて行ったとか。
そのデートの最後にルンさんがレンくんが分裂して晴れて成人の身体になったとか…
「…分裂したのか?ルンさんとレンくん」
「…あぁ」
ルンさんとレンくんは別々に行動ができるようになった為、ルンさんはアイドルの仕事、レンくんは学校に来ていたらしい。
「…優しさに甘えているね」
「確かにレンの言う通りかもって思ってさ」
「……」
「ケジメをつけるために春菜ちゃんが好きだって事をララに伝えたはずなのに、それでもララが傷付かずに今も一緒に居てくれる事に…どこかホッとしてる自分がいるんだ」
帰りながら、リトの話を聞くと、先程昇降口でレンくんから″ララさんの優しさに甘えている″と言われてた事を考えてしまったらしい。
…その言葉は俺にも刺さる、俺も甘えている、自分の気持ちに気づけず、迷っていて…皆は想いを伝えるために勇気を出して告白してくれたのに…
「ルンにもうあんな辛い顔をさせたくないんだ…でもだからって、オレはどうしたらいいか分からねぇ…」
「…なるほどな、西連寺さんとララさんに加えてルンさんの問題も出てきて泥沼にハマったと」
ルンさんはデート中、リトの隣に立ちたいと想いが溢れて止まらなくなって泣いてしまったらしい。
一緒だな、俺も出来れば皆を悲しませたくない…でも一人を選ばないと行けない。
───…選ぶ必要あるんですか?
───仮に優斗さんが誰か一人を選んでも、選ばれなかった皆さんは諦めないと思いますよ?
───優斗さん次第で幸せになれる女性が沢山いるんですよ…それって…とっても素晴らしい事だと思いませんか?
───創りましょう…!優斗さんの″ハーレム″を!私がお手伝いしますから♡
モモの言葉が頭に木霊する、まるでその道を選べと言ってくるように…
リトはプールの時、ララさんに告白した際に言われた言葉″春菜がリトの事が好きなら言われた二人とも結婚すればいい″日本ではありえない話…でも宇宙では多重婚は普通の事…これが今のリトの心を迷わせている。
そしてモモがルンさんのデートをセッテングした理由は恐らく、ララさんがその事をリトに言ったことを何らかの形で知り、ララさん達にも幸せになって欲しいと同時に、リトにハーレム容認派にさせて俺の感情を揺さぶる、きっとそんな作戦で動いたんだろうな。
俺の外堀からどんどん埋められていく、恋の包囲網、俺はリト以上に泥沼にハマっている。
「…リト、お前はハーレムをどう思う」
「っ!!優斗!?お前まで何言ってんだよ!」
隣で並んで歩いていたリトは驚いた顔をして俺を見る。
俺はリトに何を聞いているんだ?
俺を見たリトはララさんと似たような事を言われるかもしれないと思ったのか正気かって顔をしていた。
「…聞いただけだ、忘れてくれ」
「いや忘れろって無理が───は?」
「どうした?リト…っ!!?」
俺とリトが青信号に変わった交差点を渡ろうとした瞬間、車がありえないスピードを出してこちらへ向かってくる。
リトは車の方を見て立ち止まり、俺は咄嗟にリトを抱えて横へ飛び、なんとか車と衝突する一歩手前で回避出来た。
あの車は俺達が居たのに気づいていたはず…何故、加速した!?
「ぐっ…大丈夫か…リト」
「あぁ…って!優斗!?腕が!!」
リトを庇うように下敷きになった俺の右腕からは血が垂れていた。
「このくらいなら、かすり傷だから問題ない」
「お…おい!優斗!?」
俺は急いで立ち上がり車の方へ視線を向けると俺達を轢き殺そうとした車はそのままものすごいスピードで真っ直ぐ行って姿を消した。
「チッ…」
…恐らく100キロ近く出ていた、あの車に引かれていれば俺達は死んでいたかもしれない。
「優斗!とりあえず!右腕の怪我の処置をしないと!早く帰るぞ!!」
「………」
一瞬見えた車内の人物はフードを被っていたが、この前、ナナと黒咲さんを轢きそうになったトラックを運転していた帽子を被った女性と似ている気がした。
「優斗っ!!急いで帰るぞ!!」
俺が考えているとリトは俺の左手を掴んで家に向かって走り出した。
◇
「おかえりなさい、優兄…っ!?リト!優兄に何があったの!?」
「美柑、そんな心配しなくても大丈夫だよ、ただのかすり傷だから…」
「かすり傷なわけないじゃん!早く消毒しないと!!リト、救急セットもってきて!」
「あぁ…わかった!」
俺とリトが結城家に帰って来ると出迎えてきた美柑が急いで俺をリビングへ連れていく。
前世なら皆このくらいなら、かすり傷って言ってたけどな……
「久々に帰ってきたのにごめんね、美柑」
「″リトの家″なら向かいだし何時でも行けるから…それよりまた無茶したの?」
「無茶してないよ、ただリトと俺が轢かれそうになって咄嗟に───って今なんて言った?」
…いや待って美柑、今″リトの家″って言わなかった?言っとくけどここは美柑の家でもあるんだからな?
「持ってきたぞ!美柑!」
「リト、そこ置いておいて」
リトから救急セットを受け取った美柑は怪我をした右腕に消毒液をかけて丁寧に処置していく…なんか処置がすっごく上手いんだけど、なんで?
「…優兄の事だから、リトを怪我させないようにって自分が下敷きになったんでしょ?」
「………」
「″私と優兄の家″に帰った時、覚えておいてね、優兄?」
俺の家を″私の優兄の家″って言わないで美柑、勝手に人の家を自分家にしないで?
「はい、終わったよ」
「…ありがとう、美柑」
「どういたしまして」
完璧に処置した右腕を見た後、ドヤ顔で俺に終わったと告げる美柑。
怪我の処置は完璧…処置の仕方や包帯の巻き方からして恐らく、御門先生に教わったのか?
「御門先生に怪我の処置の仕方を教わったのか?」
「…わかるんだ」
「処置の仕方と包帯の巻き方が御門先生にそっくりだったから…」
「タイムレインズの騒動の後、優兄が御門先生の診療所で入院している時に簡単な怪我の処置だけ教わったの、どっかの誰かさんがいつも怪我して帰ってくるから」
「すみません」
美柑はどうやら俺の為に御門先生から簡単な怪我の処置を教わったらしい。
家事をしながら、小学校に行って、怪我の処置を教わり、俺の見舞いに来る、美柑の歳なら外で友達と遊んでいたい年齢のはずなのにずっと俺の為にそばにいて沢山のことをしてくれる。
「…お代を払わないとな」
「お金ならいらなっ──!?んっ…!?」
俺は美柑の手を掴み、引き寄せてから抱きしめてから優しくキスをする。
「…ありがとう、美柑」
「…もう一回して?」
「恥ずかしいから、今日はもうしない」
「ムゥ…」
「そんな顔してもしないよ」
頬をふくらませた美柑から離れた俺は、リビングから廊下に出て電話をかける。
[はぁーい!南雲よぉぉぉぉぉんっ!!」
「…鼓膜破れるかと思った」
ワンコールもしないうちに何故かテンションが高い南雲が叫びながら電話に出てくる、正直かなり耳が痛いからやめて欲しい。
[あたしぃ!今!エステでお肌ツヤツヤにしてるんだけど何の用よぉー!貴方から探せって言われてたヤツならまだ見つかってないわよぉ!]
「エステ中に申し訳ないですが、探し物追加です」
[追加!?貴方またあるはずだとか、言って探させるつもりじゃ…]
「今から言うナンバーの車を探してください」
[は?く・る・ま☆]
この人はなんでエステに行ってるだけでこんなテンションが高いんだ?
頭おかしいのか…?いや、うん、ゴリラみたいな見た目で化粧してメイド服着てるらしいからだいぶ頭はおかしいか…(九条先輩談)
[そのナンバーの車がどうかしたの?]
「…俺達を轢き殺そうとしたので」
[たまたまじゃない?]
「この前も似たような事があって、中にいた運転手がおそらく同一人物です」
もしトラックと車の運転手が同一人物なら、昨日俺の後をつけていた女性はトラックの運転手でほぼ確定だ。
[狙いは?]
「俺だと思います」
[…貴方色々巻き込まれすぎじゃない?呪われてんじゃないの?]
「………」
″お祓いでも行ったらァ?″と言いながら、電話越しでエステの施術を受けるゴリラの声が聞こえてくる。
[仕方ないから、調べてあげるわよ]
「ありがとうございます」
[調べ終わるまでに死ぬんじゃないわよぉ]
南雲はそれだけ言うと電話を切った。
もし見間違えならそれでいい、でも見間違えじゃないなら、あの女性は誰だ?
「リト───っ、もうじき夕飯できるから、上にいるララさん達呼んできて───」
「わかっ───」
「リト、俺が行くから、セリーヌの相手してあげな」
「え?優兄が行くの?」
リビングに入るとちょうど美柑がリトを使ってララさん達を呼びに行かせようとしたが、俺がいた為、
「モモさんに襲われないでよ?」
「襲っ!?」
「わかってる、大丈夫だよ」
ジト目をしながら俺を見る美柑と、襲われないでよって言葉を聞いて何かを想像して顔を赤くしたリトに見送られながら、リビングを出て階段を昇る。
リトの部屋の隣の壁にある端末に触れると目の前の景色が変わり、ララさんのラボへ移動した。
三人の声が奥にあった扉を方から聞こえてくる。
「三人とも、夕飯だよ」
「もうそんな時間か…っ!!ユウト!?」
「わかりましたすぐに下に…優斗さん!?その右腕!どうなされたのですか!」
ララさんの部屋の扉を開けて楽しく談笑をしていた三人に声をかけるとナナとモモが立ち上がり、俺を見て右腕を見て驚いた。
「ユウト!お前!また無茶したのか!?」
「お怪我した場所を見せてください!」
「二人とも大丈夫だよ、骨も折れてないし、かすり傷みたいなものですぐに治るから」
ナナとモモに説明をするも二人は中々納得しない。
「何があったの?ユウト」
「リトと俺が信号無視をした車が轢かれかけただけだよ」
「私達がいない時にそんな事が…」
「危ないだろ!その車」
もしかしたら狙いは俺かもしれないという事を伏せて話す。
まだ憶測だ、今日の運転手がトラックの時と同一人物だった時は皆にしっかり話そう。
「リトの事、庇ってくれたんだね、ありがとう、ユウト」
「偶々庇うような形になっただけだよ」
「それでもだよ、ユウトがいなかったらリトが危なかったかもしれないんだし」
ララさんは笑顔でお礼を言ってくる。
モモは子供のまま大人になったと言ったが、表情も行動も俺はララさんが、三姉妹の中で一番大人に見えていた。
「…ほら、とりあえず、夕飯だから怪我の話はまた後にしよ?美柑が作ってくれた夕飯が冷めちゃうから…」
「後で怪我がどんなものかしっかり見せろよ、ユウト」
「かすり傷じゃなかったら、わかってますよね?」
ナナとモモが俺に向かってそう言うとララさん部屋を後にする。
「ララさん、行かないの?」
「これが終わったら、すぐ行くっ!」
ベッドの上に座りながら、パソコンで何かを作業をするララさん。
部屋の周りを見渡すと机には今まで使っていた発明品や今日使ったぱいぱいアップくんが置かれていた。
「おっかしーなぁ、何でうまく作用しなかったんだろ」
「聞いてもいいかな、ララさん」
「うん?何、ユウト?」
「ララさんって何で発明とか始めたの?」
「え?」
「今まで聞いた事なかったから、何となく気になってさ」
今日モモから昔のララさんの話を聞いて、ララさんの部屋の周りを見て何となく気になった。
「あーそういえば、話したこと無かったねー!でも、そんな大した話じゃないよ?王宮の暮らしがつまんないから、自分で楽しくしようと思っただけ」
銀河大戦が終わって平和になったからと勉強はばかりやらされてたまにルンさんと遊ぶくらいしか、娯楽がなかったらしい。
「なるほどね」
「それに~小さい頃からイタズラでデビルーク軍の宇宙戦艦を分解したりしてたから、メカの知識は元々あったんだよね~」
「………」
″もちろんあとで元に戻したよ♡″と無邪気な笑顔のララさん。
前世の俺がもしイタズラで戦車を分解していたら、間違いなく冬華教官に殺されていただろうな。
~モモside~
「あれ?ユウトと姉上が出てこないな」
「確かに少し遅いような…」
私とナナは気になってもう一度お姉様のラボへ戻る。
ラボの奥の部屋から微かに優斗さんとお姉様の話し声が聞こえた。
「どんな話をしているのかしら?」
「もう少しだけ近づいてみるか…」
ナナと一緒に扉の近くまで行くと、話の内容が聞こえてくる。
「えっモモがそんな話を?確かによくあったよ───そーゆー事」
優斗さんとお姉様の会話から私の名前が出てくる。
「あの頃から、ナナとモモは喧嘩ばっかりしててね───」
(私達の話…?)
~優斗side~
ララさんと話していると部屋の外からナナとモモの気配を感じた。
二人もせっかくいる事だし…″真実″を聞いてみるか。
「最終的にララさんの発明品が暴走してザスティンさんに怒られたって聞いたけど…ナナとモモを仲直りさせる為にわざと暴走させたでしょ?」
「どうしてそう思ったの?」
「暴走したタイミングが良すぎるのと、ララさんは優しいから自分がザスティンさんに怒られればいい済む事だって思ってそうだから…」
まあ、あくまでこれは俺の憶測だ、でももし本当なら、ナナとモモも知っておいた方がいい…ララさんが今まで二人をどれほど愛して守ってきたか。
「ユウトってやっぱりすごいね、それだけでわかっちゃうんだ」
「てことは、やっぱり…」
「二人とも私よりよっぽどしっかりしてるけど、やっぱり可愛い妹だからね、ケンカしてたら見過ごせないんだ…ユウトの言った通り、ザスティンとかには私が代わりに怒られれば済むことだし」
俺の憶測は正しかったらしい、やっぱりララさんは二人に仲直りして欲しくて、怒られるのが自分だけで済むように立ち回っていた。
「立派なお姉ちゃんだね、ララさんは…」
「全然、立派じゃないよ~」
「いや立派だよ」
俺と違ってララさんは立派な姉だ。
「ララさん、俺には腹違いの妹がいるって言った話を覚えてる?」
「えっと確か桐生夏海さんだっけ?」
「そう、あってるよ」
「あれでもその人って確かユウトの事を…」
ララさんは桐生夏海の名前を聞いて俺の死因を思い出したようだ。
「……俺は桐生夏海に殺される前に何度か桐生夏海に会ったことがあるんだ」
「…え?」
「一度目は、俺が18歳の時に桐生夏樹に娘がいることを知って…興味本位だった、自分の腹違いの妹がどんな子なのか気になったんだ」
「………」
「あったと言ってもすれ違った程度、話す事もなければ、相手が気づくこともなかった」
あの時の俺は桐生夏海と話す事を恐れてしまった、自分の正体がバレるかもしれないという不安や桐生夏樹の娘という抵抗が抜けきれず…
「二度目は駿が死んだ時、遺品と駿が用意した誕生日プレゼントを彼女に渡す為…もちろん駿死んだ本当の理由は話さなかった」
「…どうして?」
「駿が一番大切にしていた人だったからね…死なせてしまえば、駿に合わせる顔がない」
それに話しても信じてもらえるかわからない、仮に信じてくれても一人で動いてしまうかもしれない、そう思って話す事ができなかった。
「…駿が死んだ後、もしも桐生夏樹から何かされた時、桐生夏樹から彼女が逃げられるように色々と手を回していたよ」
「…ユウト」
「けど、俺は判断を誤った…月城に嘘の情報を吹き込まれて彼女はそれを信じてしまった…俺がもっと早く、勇気をだして、桐生夏海に接触していれば…彼女に本当のことを話していれば…彼女が復讐鬼になる事はきっとなかった」
俺は桐生夏海に会うのを怖がった、駿を死なせてしまった俺が、桐生夏海に会う資格なんてないって思ってしまった。
「その事、前にも話してくれたよね…確か駿って人が死んだのは優斗のせいだって…嘘の情報ってどんな内容だったの?」
「…俺が駿とその家族を全員を殺害したって嘘を流したんだ」
「っ!?」
俺は桐生夏海に兄として認めてもらうつもりはなかった、ただ俺とは違って何も知らずに駿と幸せに生きて欲しいってそう願っていただけだった。
それなのに俺は…
「俺の判断ミスで…彼女を復讐鬼に変えてしまった」
「…ユウト、それは…」
「だから、ララさんは立派なお姉ちゃんだよ、妹をしっかり守っているんだから…」
俺は守るどころか復讐鬼に変えて、彼女の手を汚してしまったでもララさんは違う、俺と違ってしっかり守っている…
「…長話をして悪かったね、行こうか、美柑達が待ってる」
俺はそう言ってララさんの部屋を出る。
「ユウト!」
「…ララさん?」
「ユウトはいつも自分が悪いって攻めてるけど、ユウトは何も悪くないよ?悪いのは騙した人達、ユウトは最後まで頑張ったよ」
「っ!?」
ララさんに頭を撫でられる、その姿が昔、俺の頭を撫でてくれた優華さんの姿に重なった。
「…ありがとう、ララさん」
「元気出た?ユウト」
「あぁ、元気出たよ」
「なら、行こっか!」
俺はララさんと一緒にリビングに向かって行った。
◇
とある廃ビルの中に作られた研究室
「アァァァッ…あ?やっと時間かァ?」
液体の入ったカプセルの様な物から出てきた男は身体を伸ばしながら周りを見渡した。
「身体の調子はどう?」
「最高にいいぜェ、この身体!″前世″と比べてかなり快適だァ!」
男に向かって話すペンダントをつけた謎の人物は男の様子を見てニヤリと笑った。
「ならいい」
「…で?日本を守る為に金色の何とかを殺すんだったよなァ?」
「日本だけじゃない、この世界を守る為に殺すの」
「そうだった…そうだった…でもなァ?マジでこの嬢ちゃんが世界を破壊するような存在には見えねェぜ?」
男はヤミの資料を手に取りながら言う。
「イヴ───金色の闇のダークネスが暴走する、或いは月城の手に渡れば、もう誰も止められなくなる」
「ダークネスが発動すりゃ、教官が言ってた地獄が始まるわけだ、まぁ、オマエがホントの事を行っていればの話だがなァ?」
男はあまり信用していないのか、謎の人物を睨む。
「あなたの調整は終わった、信用出来ないなら、その目で確認してみたら?」
「言われなくても、そうさせてもらうぜェ、この嬢ちゃんを殺すのは、この情報が正しくて、オマエが月城見てェーな道化師じゃねえか確認してからだ」
男はそういうと研究室の奥へと歩いていく。
「…扱いにくいヤツ…でも月城が動く前に金色の闇を殺す為にはアイツの力が必要」
パソコンに映し出された写真を見ながら、拳を握りしめる。
「⬛︎を利用した月城にあの力は絶対に渡さない…それにこれは、私なりの罪滅ぼしだから」
謎の人物はパソコンを閉じると、男が歩いていった方へ向かって歩き出した。
モチベが死んでる時に感想を頂けるととても励みになります、ありがとうございます。
投稿ペースももう少ししたら戻ると思います(戻らなかったらすみません)
確認はしましたが、誤字等見つけましたら報告よろしくお願い致します。