とにかく曇る天才女優の幼馴染!   作:サニキ リオ

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第129話 超乱闘クラッシュファイターズ

 俺が孫悟空役だったと判明したことで、天太と沙也加とはすっかり打ち解けていた。

 

「次はクラファイやろうよ!」

 

 天太が目を輝かせながらテレビの前に陣取る。

 表示されているのは、世界的に有名な対戦アクションゲーム〝超乱闘クラッシュファイターズ〟の最新版だ。

 

「やるやるー! ルナちゃん強い?」

「さあ、どうかなー?」

 

 ルナはにっこり笑いながらコントローラーを受け取った。

 そこから十五戦、俺たちはルナに一度も勝てなかった。

 

「えっ、なんで!? 三人がかりなのに!?」

「私のお父さん、このゲームのプロだよ? 小さい頃から鍛えてもらったんだよねー」

「ズルじゃん!」

 

 天太が悲鳴に近い声を上げ、沙也加が半泣きでコントローラーを握り直した。

 ルナはどこ吹く風で、余裕の指捌きで俺たちを撃墜していく。

 

「もう一回! 今度は入力の速さで押し切る!」

「お兄、さっきも同じこと言ってた」

「うるさい」

「俺も作戦を変えよう。ルナ、このキャラの弱点を教えてくれ」

「ダメに決まってるじゃーん」

「ですよねー」

 

 テレビ画面の前で、四人分の声が入り乱れていた。

 お菓子の袋が増え、クッションが一つ床に落ち、ゲーム開始前に沙也加が用意したジュースが空になっていた。

 

 そのとき、玄関の鍵が開く音がした。

 天太と沙也加の動きが同時に止まり、コントローラーを握る手が固まる。

 さっきまでスピーカーから流れていた効果音が、ひどく遠くなった気がした。

 廊下を歩く足音が近づいてきて、リビングの扉がゆっくりと開いた。

 

「ただいま」

 

 入ってきたのは、朝香だった。

 出かけたときの格好のまま、鞄を肩にかけている。

 千三郎さんのところから戻ったばかりなのだろう、どこか疲労の色がある。

 朝香は俺とルナの姿を確認すると、静かに告げる。

 

「今注目の若手俳優とトップアイドルが、こんなところに何の用?」

「朝ちゃんに会いに来たに決まってるじゃーん」

「居座るつもり?」

「もう居座ってるよー」

 

 ルナが笑いながら答え、朝香は何も言わなかった。

 視線が天太と沙也加へ向かう。

 二人とも、姿勢が少し伸びていた。

 

 さっきまでルナに向けていた顔とは確かに違う。

 朝香はそれを指摘せず、ソファの端に腰を下ろした。

 

「千三郎さんは、なんて言ってたんだ」

「翼には関係ない話よ」

「そうかよ」

 

 それ以上は聞かなかった。

 テレビ画面では、ルナが選んだキャラクターが勝利モーションを繰り返している。

 

 朝香はその様子を、少し離れた場所から黙って眺めていた。

 

「姉ちゃんも……やれば」

 

 ぼそっと呟くように、天太が朝香へと告げる。

 

「コントローラー余ってるなら」

「あっ、これ!」

「ありがと」

 

 沙也加が慌てて差し出したコントローラーを朝香は無表情で受け取る。

 四人対ルナという構図が出来上がるまで、一分もかからなかった。

 三戦やって、三戦とも見事に負けていた。

 

「……相変わらず、憎たらしいぐらいに強いわね」

「ふふーん、私に勝とうなんて百年早いよー」

 

 ルナはあっけらかんと言ってのけた。

 

「朝ちゃん、翼君と連携とってみなよ。二人でコンボ狙えば入ると思うから」

「連携って……」

「やるわよ、翼」

 

 何故かやる気を出した朝香と組み、ルナへ挑むことになった。

 

「入った!」

「今のよかったじゃん!」

 

 対戦が始まると、沙也加が声を上げ、天太が前のめりになる。

 

「翼やるわよ!」

「おう!」

「そーい」

「み゛」

 

 結局、試合には負けた。

 

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