とにかく曇る天才女優の幼馴染!(旧題:天才子役の幼馴染に勝てなかったので、分相応に生きていこうと思います)   作:サニキ リオ

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第13話 わかりやすさの大切さ

「他には?」

「キャラクターの目的を明確にする」

「目的?」

 

 池手が不思議そうに首を傾げた。

 

「主人公が何を求めているのか、何を解決したいのか。それがはっきりしてないと、内容が入りづらい」

 

 俺はスマホを操作して、有名な漫画の画像を見せた。

 

「有名漫画でも〝海賊王に俺はなる〟って宣言してるだろ。あれで、主人公の目的が読者にわかりやすく提示されているだろ」

「あ、確かに!」

 

 池手は思わず身を乗り出した。

 

「主人公の目的。私の小説、それが曖昧だったかも」

「たぶんな。主人公が何をしたいのかわからないから、読者も何を期待していいのかわからない」

 

 池手は考え込んだ。ペンを口元に当てて、視線を宙に彷徨わせている。

 

「主人公の目的。海が好きで、ヒロインと出会って……なんか曖昧だったかも」

「その辺をしっかりさせるところからだな」

「そっか。私、雰囲気だけ重視してたのかも」

 

 池手の声が、少し弾んだ。

 

「凪野君、すごいね。そんな風に考えたことなかった」

「台本を読むときはいつもそう考えてた。この場面は何のためにあるのか、キャラクターは物語においてどういう役割を持っているのか」

「……なるほど」

 

 池手は真剣な表情でノートに何かを書き込んでいる。

 

「他にも、アドバイスある?」

「そうだな」

 

 俺は少し考えた。

 ネット小説の文化はよくわからないが、テレビ番組のタイトルと同じ原理が働くんじゃないか。

 

「ネット小説は、タイトルとあらすじが命なんじゃないかと思う」

「タイトルとあらすじ?」

 

 池手が首を傾げた。

 

「テレビ番組も、タイトルで視聴率が変わるんだ。内容がわかりやすいタイトルは強い」

「あ!」

 

 池手は何かに気づいたように声を上げた。

 

「ネット小説も、タイトルで読むかどうか決めるってこと?」

「たぶんな。読者はタイトルとあらすじを見て、最初に読むかどうか判断する。そこで興味を引かないといけない」

「私のタイトル、〝この潮騒になんと名前を付けようか〟だけど」

 

 池手は不安そうに俺の顔を見た。

 

「ダメかな?」

「綺麗だとは思うよ。文学的で……でも」

「でも?」

「ちょっと抽象的すぎる」

 

 池手は少し落ち込んだ。肩を落として、スマホの画面を見つめている。

 

「抽象的、そっか」

「ネット小説って、タイトルで内容がわかるようにした方がいいんじゃないか。テレビのバラエティ番組と同じで」

「どういうこと?」

「例えば――」

 

 俺は少し考えた。ネット小説のタイトルは長いイメージがある。確か鹿角が話していたアニメも、やたら長いタイトルだった。

 あらすじは、異世界から来た人魚と一緒に閉館の危機を救う話のようだ。

 

「〝閉館寸前の水族館に異世界から人魚が紛れ込んできたので、一発逆転で人魚を展示しようと思う〟とか」

「え、そんなに直接的でいいの?」

 

 池手は驚いたように目を見開いた。

 さすがに、俺もこのタイトルはどうかと思うが、元のよりはマシだろう。

 

「最近公開された映画の〝週末、妻は女子高生に戻る〟なんて、シンプルだけど内容まんまだろ」

「そういえば、確かに……」

「ネット小説も同じなんじゃないか。読者は一目で何の話かわかる方が安心する。抽象的なタイトルは読まれにくいと思う」

 

 タイパが重視される時代に、わからないけど読んでみようは発生しづらくなっている。

 

 要するに、損をしたくないのだ。

 だから、みんなわかりやすさを求める。

 

 池手は真剣にメモを取っている。

 ペンを走らせる速度が上がっている。

 

「あと、あらすじも大事だと思う。あらすじで、物語の面白さを伝えないといけない。主人公は誰で、何をするのか。どんな困難があって、どう解決するのか。それを簡潔にまとめる。長すぎるあらすじは読まれないと思う。テレビ欄の番組紹介も、シンプルだろ。あれと同じで、サクッと物語の核心を伝えるのが理想じゃないか」

 

 池手のペンが止まる気配はなかった。

 頬がわずかに緩んでいる。

 

「凪野君、本当にすごい。私、全然できてなかったんだね……」

「いや、これは俺の推測だからな? ネット小説の文化は知らないし」

「ううん、すごく参考になる」

「俳優として、物語の構成は勉強してたから。テレビ番組の作り方も、現場で見てたし」

「ありがとう。早速、書き直してみる!」

 

 その表情は、さっきまでの不安そうな顔とは別人のようだった。

 

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